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日産、新中期計画「M.O.V.E.to 2022」で売上高を2022年には約3.7兆円増の16兆5000億円へ
2017年度上期の営業利益は前年比13.2%減の2818億円
2017年11月8日 22:16
- 2017年11月8日 発表
日産自動車は11月8日、2017年度上期の決算を発表した。2017年度上期の売上高は前年比8.1%増の5兆6525億円、営業利益は前年比13.2%減の2818億円、当期純利益は前年比0.7%減の2765億円、売上高営業利益率は5%となっている。なお、営業利益の数値には、日本での完成検査に関連する問題、米国での集団訴訟などによる特別損失となる408億円を盛り込んだ上での実績となる。
また、前出の特別損失やコスト効率化の進捗状況などを考慮して、2017年度通期での営業利益の見通しについて、400億円減の6450億円に下方修正。逆に当初想定していた数値から営業外収入の改善、実効税率の低下などが見込まれることから、当期純利益、売上高については当初見通しのまま変更なしとしている。
同日に行なわれた決算説明会では、日産自動車 社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏が登壇。西川氏は決算に関する説明に先立ち、9月に明らかになった完成検査に関連する一連の不適切な処理に関連してコメント。「お客様、取引先様、販売会社のみなさん、日産をサポートしていただいたすべてのみなさん。さらに国土交通省をはじめとする関係省庁のみなさま。このみなさまからいただきました日産に対する信頼を揺るがす結果になってしまったことを、まず深くお詫び申し上げます。今後の取り組みをつうじてみなさまからのご信頼を再度取り戻していけるように全力を挙げてまいります」と語り、謝罪した。
また、西川氏はこれまでの取り組みの結果、再発防止策を講じ、完成検査の再開に関わる国交省の確認も得たことから、同日までに日産車体のオートワークス京都を含む6工場で国内向け車両の生産・出荷を再開したと報告。しかし、第三者機関による調査も含めた国交省に対する報告については、同日までに完了させて公表する予定としていたが、2回目のリコールを行なうことになったこと、国内向けの生産・出荷の再開に向けた取り組みに集中したことを理由に、国交省に対する報告は「来週中には報告書を提出する方向で進めております」とした。
営業利益の通期見通しを6850億円から6450億円に下方修正
西川氏は2017年度上期決算の売上高、営業利益、純利益などを数値を紹介し、「前年から販売台数、売上高、市場占有率は伸長する一方、収益は前年並みのレベルに止まりました」と語り、国内市場での完成検査に関わる影響、米国でのタカタに関連する集団訴訟の費用などが営業利益を圧迫した結果だとした。
販売状況については、グローバルの全体需要が対前年比1.9%増の4555万台という状況で、日産のグローバル販売台数は同4.6%増の273万3000台となり、マーケットシェアは0.2%向上の6%となっている。
日本国内では対前年比34.1%増の28万3000台を販売。これは登録車の「セレナ」「ノート e-POWER」、軽自動車の「デイズ」「デイズ ルークス」が健闘した結果という。暦年ベースの中国市場については7月~9月の第3四半期の販売状況として、「エクストレイル」「シルフィ」などが販売を牽引して同15.7%増の36万9000台を販売している。
米国などの北米市場では全体需要が減少しており、日産でも1.3%減の103万5000台を販売。米国では「ローグ」「ローグ スポーツ」が人気となっているという。ロシアを含む欧州市場では、ロシア市場が長い経済に対する不透明感から回復する兆しを見せており、モデルチェンジした「キャシュカイ」や新型「マイクラ」などが台数増加に寄与して対前年比3.6%増の37万5000台を販売している。
その他市場では「キックス」のほか、ダットサンブランドの「redi-GO」などが牽引役となって全体で前年比2.3%増の39万台を販売。アジア・オセアニアは2.0%減、中南米は12.2%増、中東は4.8%減、アフリカ・その他は15.6%増で、中東とアフリカの市場では全体需要の伸びを上まわる販売になっているという。
また、通期見通しについては前出のように、完成検査に関連する費用が発生し、問題が下期にも影響を与えること、当初予定よりも進捗しているのビジネスプランがあることなどを勘案し、営業利益を6850億円から6450億円に下方修正したことを説明。これからの年度末に向け、国内で起きた完成検査の問題を処理し、信頼を回復させて販売の挽回を図るほか、重要市場である米国などの全需の動向やインセンティブの増加、原材料価格の上昇などに対応していく必要性を紹介。好材料としてはコストの効率化が進んでおり、中国市場での販売は引き続き好調で、利益の源泉となる販売・金融も好調に進んでおり、為替については「逆風がやや緩和されている」と表現。西川氏は「日産はオポチュニティを最大限に生かし、日本市場でのリカバリーを進めてリスクの影響を打ち消すべく、取り組みを進めていきたい」と述べた。
6年後に売上高16兆5000億円を目指す「Nissan M.O.V.E.to 2022」
このほかに今回の説明会では、2011年度から2016年まで実施された中期計画「日産パワー88」に続く新しい中期計画「Nissan M.O.V.E.to 2022」の概要説明も実施された。
すでに動き始めているNissan M.O.V.E.to 2022では、日産パワー88で掲げた「持続可能な成長」「技術とビジネスの進化」という大きな2つの要素を受け継ぎつつ、M.O.V.E.の文字で2022年に向けて取り組む要素を表現。このなかで西川氏は「2022年というのは、それ以降に来るさらなる変革の準備になります。まず、2022年までに準備を進めるということを念頭に置いております」と語った。
また、持続可能な成長として、売上高を12兆8000億円から2022年には16兆5000億円に増加させ、前提となる営業利益率を8%に高める。キャッシュフローでも2兆5000億円を作り出すという具体的な指標を掲げた。そのために西川氏は、米国、中国、日本といったメインのマーケットで確実に成長し、日産パワー88で大きな投資を行なったブラジル、アルゼンチン、インド、ロシアなどで「成果の刈り取り」を実現。現状では成果が薄い欧州や中東、アセアンなどの市場を成長の源泉として取り返していくことが必要だと分析した。