ニュース

日産、2016年度通期決算の発表会を実施。営業利益は前年比6.4%減の7422億円

2017年度に発売する新型「リーフ」にプロパイロット機能を搭載

2017年5月11日 発表

「日産パワー88」の最終年度となる2016年度の通期決算を発表

 日産自動車は5月11日、2016年度の通期決算を発表した。2016年度通期の売上高は前年比3.9%減の11兆7200億円、営業利益は前年比6.4%減の7422億円、営業利益率は6.3%、当期純利益は前年比26.7%増の6635億円(2016年11月22日に発表した自動車部品子会社「カルソニックカンセイ」の売却益を含める)となった。なお、自動車事業でのキャッシュフローは前年比1959億円増の6771億円となっており、三菱自動車工業への出資とカルソニックカンセイの売却益を含めても増加している。

日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者(CEO)西川廣人氏

 この通期決算の発表に際し、カルロス・ゴーン氏の後任として4月1日付けで社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した西川廣人氏が登壇。2016年度の通期決算の数字とポイントを説明するとともに、2010年度から実施していた中期経営計画「日産パワー88」の成果を発表。次の6カ年の中期経営計画に関しても概要を述べた。

 2016年度が減収減益となった原因としては、いずれも為替変動による影響が大きいとしており、参考値として為替の影響を取り除いた場合の金額は、売上高が前年比7855億円増の12兆9750億円、営業利益は前年比1.4%増となる1兆241億円と発表している。さらに、中国の合弁会社との比例連結値では、営業利益は1兆1941億円で営業利益率は8.3%に達するとのこと。

2016年度の主要な財務指標
為替の影響により2016年度は減収減益となった
財務実績の増減分析
財務実績の内訳
2016年度の主要な財務指標(中国合弁会社比例連結ベース)
中国の合弁会社比例連結ベースでは、為替の影響を除くと営業利益は8.3%に達すると説明
2016年の全体需要と販売実績
全世界の販売台数は、上期は下がったが下期で持ち直している

 販売台数の推移としては、上期でやや減少したものの下期で持ち直し、全世界で562万6000台と前年比3.7%増となった。日本では55万7000台と2.6%減、中国では135万5000台(8.4%増)、米国では158万1000台(4.2%増)、欧州では77万6000台(3.0%増)、その他の国では80万8000台(3.3%減)となった。

 日本は「デイズ」と「デイズ ルークス」の販売停止の影響でトータルでは減少しているが、8月に「プロパイロット」を搭載して発売した「セレナ」と11月発売の「ノート e-POWER」の好調で持ち直している。これにより、通期では市場シェアは11.0%と0.6ポイント減少しているが、下期は12.5%と0.7ポイントの増加となっている。

 全体の市場が拡大している中国は販売台数は伸びているものの、中国のローカルブランドの台頭により市場シェアは0.3ポイント下がる結果となった。対策として「ヴェヌーシア T90」を投入することで販売台数を伸ばしている。

 北米での販売台数は好調となっており、前年度を上まわる伸び率4.2%増の158万1000台を記録。市場シェアは0.4ポイント増加の9.0%となっている。需要がクロスオーバーにシフトしてきており、日産にとっては追い風になっているという。メキシコでもシェアは首位をキープしており、販売台数は記録更新となる14.4%増の40万9000台となった。

 欧州では「キャシュカイ」と「ナバラ」の販売が好調。年度末には第5世代の「マイクラ」の出荷を開始しており、販売台数は3.0%増の77万6000台となった。一方、ロシアでは経済の先行き不透明感と景気の後退で販売台数が減少している。

 その他の地域では、中南米で需要を上まわる販売台数となっているが、全体需要が下がっている中東では台数が減少、アジア・アフリカに関してはイランで全体需要が伸びているものの、ここでは日産が事業を行なっていないため減少傾向。アジア・オセアニアに関しては今後の課題となっているとのこと。

日本の販売実績と市場シェア
中国の販売実績と市場シェア
北米の販売実績と市場シェア
欧州とロシアの販売実績と市場シェア
その他の地域の販売実績と市場シェア
2016年度に発売した新車

2017年度に発売する新型「リーフ」にプロパイロット機能を搭載

 2016年度の「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」の進捗に関しては、セレナに量産車としては初めてプロパイロット機能を搭載。電動化の領域でノートにe-POWERを搭載したほか、新領域の「コネクテッド&モビリティ」の分野では、DeNAと提携して将来に向けた無人運転車の開発と運用の実証実験を行なう準備を始めているとアピールした。また、2017年度に発売する新型「リーフ」にもプロパイロット機能を搭載するとしている。

 また、2016年10月に出資を完了して、三菱自動車がルノー・日産アライアンスの第3のパートナーとして正式に加わったと報告。3社の合計で1000万台規模のアライアンスになったとのこと。アライアンスによる購買や物流のシナジー効果は2017年度で240億円規模に達するという。さらにプラットフォームの統一など、中期的な協力関係の構築に関する議論も進んでいるとのこと。

 アライアンスに関しては、従来のサプライの関係を超えた企業との関係構築も重要だとしており、自動運転の分野で提携しているDeNAに加え、マイクロソフトやモービルアイ、transdevとも将来に向けた取り組みを開始している。また、米国ではNASAとの共同研究も進めている。

「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」の進捗状況
アライアンスによる購買や物流のシナジー効果は2017年度で240億円規模に達する
アライアンスに関しては、従来のサプライの関係を超えた企業との関係構築も重要

 中期経営計画「日産パワー88」に関して、この2016年度で2010年度からの計画に区切りがついたこともあり、その成果が発表された。西川氏は「“88”という数字の1つである、目標としていた8%のグローバルシェアには届かなかったものの、6年間で売上高、販売台数、総資産ともに増加しており、次の6カ年の大きな基礎になったと評価している」と述べた。もう1つの8という数字、事業の収益性やそれを維持できる事業運営の効率化という面に関しては「計画の前半に大きな投資をし、事業規模を拡大させたことにより、効率や品質の面で問題があった。しかし、それを2014年度以降で回復させている。為替の影響によりトータルで営業利益は6.9%となったが、その影響を除けば8.3%という数字を確保できるところまで来た」と述べ、条件付きではあるものの数値目標を達成したとアピール。「今後は厳しい経済状況のなかでも8%を維持できるようにブラッシュアップをしたい」と語った。

中期経営計画「日産パワー88」により6年間で売上高、販売台数、総資産ともに増加
計画の前半に大きな投資を行なって事業規模を拡大させたことにより、効率や品質の面で問題があったが、それを2014年度以降で回復。為替の影響を除けば営業利益は8.3%となった

 2017年度は「着実な成長」「新車と新技術による攻勢」「アライアンスの活用」という3つのテーマを掲げるという。販売に関しては全体の需要予測が2.4%増の約9402万台と予想しており、日産では3.6%増の583万台を目指すとしている。内訳として、回復を見込んでいる日本と中国での販売台数の増加を見込んでいるが、米国市場に関しては競争の激化により、伸び率の予想は慎重な予想になっている。

2017年度は「着実な成長」「新車と新技術による攻勢」「アライアンスの活用」の3つがテーマとなる
販売に関しては全体の需要予測が2.4%増の約9402万台と予想しており、日産は3.6%増の583万台の販売を目指す

 2017年度の業績の見通しとして、為替レートを108円とした場合に売上高は0.7%増の11兆8000億円、営業利益は7.7%減の6850億円、営業利益率は5.8%、純利益は19.4%減の5350億円となっている。

 内訳としては、カルソニックカンセイが連結決算から外れるため、その分の営業利益が減少している。販売の増加とコスト削減効果で1950億円のプラスを見込むが、将来に向けた350億円の開発費の投資と原材料の高騰の影響で900億円、その他で247億円のマイナス要素を見込む。とはいえ、このマイナス要素だけならば7450億円と2016年度よりも営業利益は微増するが、為替の影響が600億円のマイナス要素となるため、結果的には減益となる模様だ。この為替の影響は米ドル対円ではなく、イギリスのポンドやカナダのドル、タイのバーツ、エジプトのポンドなどとの悪化による影響とのこと。

2017年度の業績の見通し
為替の影響で600億円のマイナスを予想しており、結果的には減益となる見通し

 株主への還元に関しては今後も積極的な配当施策を採るとしており、2017年度は5円プラスの1株あたり53円の配当を見込んでいる。

 2017年度は次の中期計画をキックオフするとしており、「持続的成長」と「技術と事業のさらなる進化」がテーマとなっている。持続的成長に関しては8%の収益性を維持しつつ売り上げを増大させ、6年後には12.8兆円から16.5兆円の売上高を目指すという。また、6年間の累積キャッシュフローは最低2兆5000億円の積み上げを目指すとのこと。なお、中国のシェアを8%まで拡大できれば、グローバルでも8%の市場シェアを達成できるだろうと西川氏は語っていた。

 技術開発に関して「この6カ年は大きな変化に入っていくだろう。『NISSAN INTELLIGENT MOBILITY』に関しては、アライアンスの取り組みをどこまで効果的に、効率的に行なえるかが鍵になる。ルノー・日産や三菱自動車のアライアンスをいかに効率的に進めるかを深く議論をしているところだ。2017年度の後半には全体の計画が発表できるだろう」と西川氏は述べた。

 また、記者から質問でフランスの大統領選でエマニュエル・マクロン氏が当選したことに関して、西川氏は「マクロン氏の陣営とは深い話し合いをすでに重ねており、マクロン氏が大統領になったことを歓迎する」と語った。

2017年度は5円プラスの1株あたり53円の配当を見込んでいる
「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」に関しては、アライアンスの取り組みをどこまで効果的に効率的に行なえるかが鍵になる