ニュース

三菱自動車、燃費不正後の社内改革の進捗報告。ITでの走行抵抗データの処理自動化などを説明

「三菱オートギャラリー」は5月にリニューアル

2017年4月13日 開催

燃費不正を受けた社内改革の進捗状況を紹介する記者説明会を4月13日に開催

 三菱自動車工業は4月13日、2016年4月に表面化した一連の燃費不正の公表からまもなく1年が経過することを受け、問題の解消に向けた社内改革の進捗状況を紹介する記者説明会を開催した。

三菱自動車工業株式会社 取締役 副社長執行役員 開発・品質担当責任者 CPLO(チーフ・プランニング・オフィサー)山下光彦氏

 説明会では、三菱自動車工業 取締役 副社長執行役員 開発・品質担当責任者 CPLO(チーフ・プランニング・オフィサー)の山下光彦氏から燃費不正の概要やこれまでの経緯などが冒頭で取り上げられ、この問題によって多くのユーザーや関係者などに多大な迷惑を掛けたことについて改めて陳謝した。

 これまでの経緯で直近の部分では、3月9日に国土交通省に対して第3回となる経過報告を行ない、4月1日付けで再発防止策として提出した31項目のすべてについて実施に至ったことを報告しているという。

燃費不正の概要とこれまでの経緯

 再発の防止にあたっては、2016年8月に特別調査委員会から指摘された「開発プロセスの見直し」「屋上屋を重ねる制度、組織、取組の見直し」「組織の閉鎖性やブラックボックス化を解消するための人事制度」「法規の趣旨を理解すること」「不正の発見と是正に向けた幅広い取組」という5点を骨子を意識して活動を進め、問題の背景を「組織」「仕組み」「風土・人材」「経営レベルの関与のあり方」の4項目に分けて取り組みを実施。山下氏は社内改革の柱を「再発防止策31項目への対応」「PRev(Performance Revolution)活動の推進」の2つであるとした。

「再発防止策31項目への対応」「PRev活動の推進」の2つを社内改革の柱とする
再発防止策31項目の詳細
問題の背景として項目立てされた4つのポイント

 再発防止策の具体的な取り組み内容としては、2016年12月に発表した組織改革による責任や作業負荷の分散、組織階層のフラット化による意思疎通のスムーズ化を、新経営体制移行に合わせて実施。

 商品開発のプロセス見直しは膨大な項目におよぶため、課題となるポイントの洗い出しには時間がかかるとしつつ、とくに燃費の問題に関連する基本的な部分から3点を重要課題として対策を実施。まず先行技術の開発では、4月1日付けで「先行車両開発部」を組織として立ち上げて担当部署を明確化。また、開発がスタートしたあとから商品の方向性が迷走しないよう、商品企画フェーズを充実させて開発が動き出す前に深く構想を練り上げる仕組み作りも実施。さらに製品開発の早い段階からサプライヤーが参画できるようソーシングプロセスの改善も行なっており、とくにプラットフォームに関わってくるような重要な部品についてサプライヤー選定をこれまでより早めるようにして、積極的にサプライヤーの協力が得られる体制作りが進められているという。

これまでPX(プロダクト・エグゼクティブ)1人が責任を持っていた「PX制」から、領域別の3人体制にして負荷と責任を分散させる新しい仕組みに変更
開発本部を「開発マネージメント本部」「プロジェクトマネージメント本部」「車両技術開発本部」「EV・パワートレイン技術開発本部」の4つに分け、それぞれの本部長を副社長の下に置く新しい組織体系
商品開発は継続して課題の洗い出しを進めつつ、重要課題となる3点で対策を実施

走行抵抗のデータ測定にITを導入して自動処理化

測定データ処理の自動化システムについては、会場内のディスプレイで動画を使って解説

 不正の直接的な問題点となった走行抵抗の測定については、再発防止策の6番目で提案されていた自動化システムの導入について具体的なシステム開発が完了しており、会場のディスプレイで実際の測定風景が動画で紹介された。

 自動化システムではテストコースに設置された風速や気温などを観測する気象計のデータが無線LANによって車両に送られてデータ連係を実施。実際の動画では、車内のセンターコンソールに固定された2in1 PCの画面をタッチして設定を操作しながら走行抵抗の測定が行なわれ、算出されたデータがそのままPDFファイルとして保存される様子が明らかになった。このシステムはすでに完成して、開発現場での運用がスタートしているという。

 なお、山下氏によればこの自動化システムは国内の自動車業界で初めて導入されるもので、「この情報を発表したことで、他社からも紹介の依頼があるかもしれませんね」と自信を見せている。

システム概要図
デリカD:5のセンターコンソールに2in1 PCを固定。助手席の座面上にはGPS測定器が載せられている
タッチパネルディスプレイを使ってコース側の無線LANと接続
気象条件や風速、気圧などの数値が画面に表示されていた
自動化システムを搭載した車両で惰行法を計測するテスト走行を実施
計測が終了し、数値が画面に表示される
計測されたデータはそのままPDFファイルとして出力される

 2つめの柱となるPRev(Performance Revolution)活動は、社員の全員参加による活動で抜本的な構造改革と意識改革を図り、全社的なパフォーマンス向上につなげていくことを目的に実施したという活動。まずは山下氏の直轄部門から活動をはじめ、「商品戦略」「開発」「デザイン」「品質部門」と、関連子会社である三菱自動車エンジニアリング(MAE)を対象にタスクチームを編成。このチームごとに「現状認識と課題抽出」「課題解決策の策定」と展開して、1月には「従業員全員参加型の活動」に拡大しているという。タスクチームから提出された課題は263件あったが、これを内容ごとに集約して25件にまとめ、3つのカテゴリーに分けて解決・改善に向けて検討を始めていると説明された。

 このほか、PRev活動の一環としてインフラの不足や職場環境の改善も行なわれることになり、老朽化が進んできた岡崎地区の施設を中心に、新しいオフィスビルの建設や来客に対応する受付窓口の改修、トイレや来客スペースの改修が予定されており、さらに愛知県岡崎市の三菱自動車技術センター内にある「三菱オートギャラリー」についても、5月をめどにリニューアルを実施。三菱自動車のヘリテージである名車たちを眺めながら打ち合わせや会議などが行なえる環境が整えられるとのこと。

PRev活動の全体像
PRev活動は、範囲、視点、順序などを明確化しながら進められていく
山下氏の直轄部門から構成されたタスクチームは、部長層以上が26チーム、若手・中堅社員が11チームの計37チームで活動をスタート
25の課題が3つのカテゴリー別に検討が始められている
PRev活動を目的とした社内意識調査も実施。今後も2回/年のペースで続けられる予定
「三菱オートギャラリー」は5月にリニューアルオープンする