ニュース

【SUPER GT 第6戦鈴鹿】2018年8月の「鈴鹿10時間耐久レース」ワンメイクタイヤのサプライヤーはピレリに決定

レース開催概要も公表される

2017年8月25日 開催

第47回サマーエンデュランス「鈴鹿10時間耐久レース」の記者会見

 鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドは、8月26日~27日の日程で開催されるSUPER GT 第6戦「第46回インターナショナルSUZUKA 1000km "SUZUKA 1000km THE FINAL"」が行なわれる三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで記者会見を8月25日に実施。今年でSUPER GTのシリーズ戦としては最後の開催になる伝統の“鈴鹿1000kmレース”の後継として、2018年8月下旬に開催が予定されている「第47回サマーエンデュランス『鈴鹿10時間耐久レース』」(鈴鹿10時間耐久レース)に関する発表を行なった。

 このなかでモビリティランド 取締役社長 山下晋氏は、鈴鹿10時間耐久レースのタイヤがワンメイクのコントロールタイヤであり、そのサプライヤーがイタリアのタイヤメーカーであるピレリであることを明らかにした。

 また、SUPER GTのGT500クラスに参戦する日本の3メーカー(ホンダ、日産、レクサス)の代表者が登壇し、鈴鹿10時間耐久レースへの期待や、3メーカーがカスタマーに販売しているFIA-GT3車両の可能性などに関する座談会が行なわれた。

“10耐”を2輪の“8耐”に並ぶ夏の恒例イベントにしたいと鈴鹿サーキット

 記者会見には主催者を代表してモビリティランド 取締役社長 山下晋氏、そしてコラボレーションパートナーとして、GTアソシエーション(GTA)代表取締役 坂東正明氏とSROモータースポーツグループ 創始者 兼 CEO ステファン・ラテル氏が同席して行なわれた。主催は鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドになるが、GTAとSROがBOP(Balance Of Performance、性能調整のこと)などで運営に協力することになるため、コラボレーションパートナーと位置づけられているのだ。

株式会社モビリティランド 取締役社長 山下晋氏

 冒頭で挨拶した山下氏は「今年3月に行なったモータースポーツファン感謝デーで、来年の8月最終週に10時間耐久レースを行なうと発表したが、今日でちょうどあと1年になったので、コラボレーションパートナーもお招きして記者会見を行なうことにした。今日、GT300のエントラントに対して参戦申し込みを配布するなど、あと1年となりカウントダウンが始まっている。FIA-GT3の車両を世界から集めて、50台フルグリッドを目指している。鈴鹿市などの地元自治体とも協力して、7月末には8耐、8月末には10耐という形で夏の恒例イベントに育てていきたい。その一方、これまで鈴鹿1000kmとして開催してきたSUPER GTのレースは今回でファイナルになったが、SUPER GTのレースは5月に移動して300kmレースで開催していく。これからは5月の300kmレースを、鈴鹿1000kmレースに負けないイベントに育てていきたい」と述べた。

株式会社GTアソシエーション 代表取締役 坂東正明氏

 山下氏のあとに登壇したGTAの坂東代表は「2006年から鈴鹿1000kmはSUPER GTのレースとしてやってきたが、それは今年でひと区切りとなる。明日、明後日はその締めくくりとなるいいレースをやってきたい。来年からは10時間レースとして再スタートを切ることになるが、世界標準と言われるFIA-GT3とGT300が共にレースができるグローバルなレースになる。我々はアジアでのGT300のレースを目指しており、そうしたJAF-GTを含むGT300が走れるレースとして、モビリティランドさん、SROさんと協力してプロモーション活動などを粛々と行なっていく。また、SUPER GTのレースに関しては5月20日決勝で300kmレースを行なうので、モビリティランドさんと協力してしっかり運営していきたい」と述べ、GTAが鈴鹿10時間耐久レースの運営やプロモーションなどに協力していくという姿勢を明らかにした。

SROモータースポーツグループ 創始者 兼 CEO ステファン・ラテル氏

 SROモータースポーツグループのラテルCEOは「我々がここでレースをしたのは1998年で、そこから20年が経つ2018年に再び帰ってこれるというのは嬉しいことだ。50台フルグリッドを目指して、インターコンチネンタルGTのシリーズ戦としても組み込まれるので、海外のトップチームにエントリーを働きかけていきたい。日本のSUPER GTのチームと世界のトップチームが一堂に会してハイレベルなレースが展開されると考えると、鈴鹿10時間耐久レースは非常にエキサイティングなレースになるだろう」と述べ、こちらも鈴鹿10時間耐久レースへの期待感を表明した。

BOPをシンプルにするためコントロールタイヤを選択。タイヤはピレリが供給

 その後、もう1度モビリティランドの山下社長が再度登壇し、「この場でワンメイクのタイヤサプライヤーを発表する。これまで鈴鹿10時間レースのタイヤサプライヤーの決定に関しては、国内外のタイヤメーカー様から熱いオファーを受けた。感謝したい」と述べ、そうしたオファーの中からイタリアのピレリに決定したことを明らかにした。なお、別途配布されたニュースリリースによれば、契約期間は2018年~2019年の2年間。

鈴鹿10時間耐久レースのワンメイクタイヤサプライヤーはピレリに

 ピレリはF1や、その直下のF2、GP3などにもタイヤを供給しているほか、2016年からはF3のマカオGPにもコントロールタイヤを供給するなど、近年特にフォーミュラレースでの活動が目立っている。ヨーロッパではそれらに加えて、SROが主催しているブランパンGTシリーズにもコントロールタイヤを供給しており、ヨーロッパのFIA-GT3レースではスタンダードのタイヤの1つと言ってよい。鈴鹿10時間耐久レースがFIA-GT3を利用した世界決定戦的なレースになるのだとしたら、コントロールタイヤにピレリというのは自然なチョイスと言えるだろう。

F1へのワンメイク供給でもお馴染みのピレリ
ピレリがタイヤを供給しているシリーズ。FIA-GT3の最も有名なシリーズであるブランパンGTシリーズにもタイヤを供給
PIRELLIモータースポーツ、モータースポーツビジネス担当取締役 エルネスト・ガルシア・ドミンゴ氏

 そのピレリからはピレリ モータースポーツ モータースポーツビジネス担当取締役 エルネスト・ガルシア・ドミンゴ氏が壇上に呼ばれ、挨拶を行なった。ドミンゴ氏は「ここに来れて嬉しい。日本でこうした重要なレースに参加するのはピレリとしては初めての経験で、興奮している。もちろん責任も重いが、それに応えられるようなタイヤをこのユニークなイベントに供給したい」と述べ、日本のレースシーンにピレリとして初めて本格的にタイヤを供給することを喜んでいるとした。

 その後、質疑応答が行なわれた。以下はその模様だ。

質疑応答の様子

――GTAの坂東代表に。GT300の車両が出走した場合、SUPER GTのポイントが付くとか、そういうことはあるのか? GTAはどのように関わっていくのか?

坂東氏:ポイントに関しては別の話しになる。GT300のエントラントに対して、彼等がこのレースに出る場合に、レースのオーガナイザーと協力してサポートしていくということ。どのような条件で彼等がこのレースに参戦するのか、それを詰めている段階。ポイントを付与するという話は、今はない。

――SUPER GT GT300クラスのタイヤは3メーカーが競合している。それとワンメイクは異なるが、どのような影響があると思うか?

ドミンゴ氏:コントロールタイヤとコンペティションではかなり異なると思うので、チャレンジではある。しかし、コントロールタイヤにすることで、タイヤの有利不利なく戦うことができる。我々のタイヤの品質はブランパンシリーズなどで証明されており、問題はなく、日本のチームにも満足してもらえると思う。

ラテル氏:日本のレーシングチームは適応能力が高いので、すぐに適応すると思う。先日の我々のアジアシリーズでも日本のドライバーが勝ったし、そんなに時間はかからないと思う。

――スパ24時間でインターコンチネンタルGTシリーズに組み込まれることを発表したが、ヨーロッパのチームのこのレースへの反応は?

ラテル氏:今の時点では、チームやマニファクチャラーが非常に興味を持っていると思う。そして日本のメーカーも興味を持ってくれていると考えている。

――タイヤサプライヤーがピレリに決まった決め手は何か?

山下氏:今回のレースでは日本だけでなく、世界中のチャンピオンチームを呼んできたい。世界中のクルマがやってきて戦うときに大事なのはBOPで、それをしっかりやっていかないといけない。そのときにはコントロールタイヤでないと、BOPはかなり困難になるということで、ワンメイクにすることにした。多くのタイヤメーカーからご提案をいただいたが、そこで最もしっかりした提案だったのがピレリだった。

――レースウィークでサポートレースは?

山下氏:現時点ではサポートレースについてはまだ検討段階。日曜日にやるのはほぼ不可能。夏の一大フェスティバルにしたいと考えているので、金土に多くのお客様に来ていただきたいと考えており、金土に魅力的なレースを入れていきたい。

いずれもFIA-GT3車両を持っている3メーカー。参戦には前向きな姿勢

 記者会見の後半には、SUPER GT GT500クラスに参戦している3メーカー(ホンダ、日産、レクサス)の代表者を呼ばれ、レーシングアナウンサーのピエール北川氏とのトークショーが行なわれた。

 FIA-GT3の車両は自動車メーカーが製作するが、基本はレーシングチームに販売するカスタマーレーシングが一般的で、メーカーが前面に出て戦う形ではない(実際にはワークスチームで参戦する場合もあるし、“隠れワークス”的な運営が行なわれていることも少なくないが………)。このため、今回のトークショーもホンダ、日産、レクサスがワークスチームを結成して鈴鹿10時間耐久レースに参戦するというのではなく、3メーカーの担当者がそれぞれ期待感を表明する形に留まっていた。

 参加したのは、本田技研工業 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(NISMO)代表取締役社長 兼 CEO 片桐隆夫氏、トヨタ自動車 GRマーケティング部 主査 高橋敬三氏の3人で、司会をピエール北川氏が行なう形で進行した。

本田技研工業株式会社 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏

司会:明日からの鈴鹿1000kmレースで、NSXのGT3版を国内で初お披露目する予定だとか。当然、来年の10時間には出るのか?(笑)

山本氏:ホンダとしては、みなさんのレースを盛り上げるようにしていきたいとは考えている。現在はIMSA、ピレリチャレンジを走っているが、SROのラテルさんに協力していただいて、ヨーロッパでGT3版の販売を開始するリリースを出した。明日走るのは研究所で開発したテストカーだが、ようやく日本のみなさまにもお見せできる。トヨタさん、日産さんと一緒に貢献したいと考えている。

トヨタ自動車株式会社 GRマーケティング部 主査 高橋敬三氏

司会:レクサスはRC FのGT3版がGT300などに参戦している。どのようにGT3と関わっていくのか?

高橋氏:レクサスもGT3を日米欧で走らせている。日本ではGT300だし、米国ならIMSAになる。来年には世界中の方に買っていただけるような準備を進めている。ぜひみなさんに買っていただいて、10時間耐久レースにも参戦してほしいが、現時点で発表できることはない。

司会:それは欧州やアメリカも含めて、がんばってほしいのか?

高橋氏:日本のチームが参戦するのが最初の候補だが、マザーシャシーのチームがどうするかなどに関しては、これからじっくり話し合いたい。

ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 片桐隆夫氏

司会:日産/NISMOはGT3カーをいち早く市販するなど積極的な取り組みに見えるが、10時間耐久レースはどうか?

片桐氏:10時間レースに関しては、詳細を今日聞いた形で、具体的な話はまさにこれからという形になる。日産/NISMOはGT3は大事だと思って取り組んでいる。日本のチームと世界のチームが参加するレースはエキサイティングなので、NISMOとしても積極的に検討していきたい。

司会:GT-RのGT3は来年改良版が導入されるという話も出ているが……

片桐氏:GT-Rは2012年にGT3版を投入してからだいぶ時間が経っている。エボリューションカーの計画をすでに発表しており、現在、開発まっただ中。

司会:今回はジェンソン・バトン選手がGT500に登場するが、鈴鹿10時間耐久の方も出てみたいという話はないのか?

山本氏:それについてまだ話していない、朝会ったときに「来年の話をあとでしようぜ」と言われた(笑)。屋根が付いているのがいいか、付いていないのがいいかという話はまだしていない(笑)。

司会:ホンダにはインディ500のチャンピオンもいる。それとバトン選手のコンビはどうか?

山本氏:JBと琢磨はF1時代には組んでいたし、それはそれで面白いのだが、問題はインディカー・シリーズのスケジューリング。ただ、鈴鹿10時間は世界統一戦ということで、なるべく1台でも、できれば500のドライバーチームとか世界の人たちに負けないトップチームを組んでみたい。

高橋氏:そういうのも1つのアイデア。若手に経験を積ませるというのも1つの手である。いろいろな可能性がある。TDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)のドライバーなど、若手にチャンスをあげる可能性もある。

片桐氏:これからもGT3に力を入れていく。GT3はカスタマーレーシングの頂点。カスタマーチームが夢のようなレースにできるよう、カスタマーを全力でサポートする。

司会:最後に、現時点での鈴鹿10時間耐久レースへの見通しを

山本氏:先月行なわれた2輪の8時間耐久レースと同じように、10時間耐久レースも夏のお祭り的な、夏休みの最後に楽しめるレースになってほしい。鈴鹿10時間耐久レースが成功するように、3メーカー含めて盛り上げていきたい。

片桐氏:世界の名物レース、例えばスパ24やニュル24などの有名なレースの仲間に入ってくれれば素晴らしいと思う。

高橋氏:世界中にいろいろなマニファクチャラーのクルマがあり、そのなかで一番を決めるワクワクするレース。来年からスタートなので、それに向けて準備をしていきたい。

記者会見終了後に行なわれたフォトセッション