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【F1日本グランプリ 2017】決勝レースで最終周までのマッチレースをわずか1.2秒差で制したのはルイス・ハミルトン選手

予選2位のセバスチャン・ベッテル選手はエンジントラブルでリタイア。選手権争いはハミルトン選手に有利に

2017年10月8日 開催

優勝したルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

「2017 FIA F1世界選手権シリーズ 第16戦 日本グランプリレース」(F1日本GP)が、10月6日~8日の3日間に渡って三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいて開催された。会期3日目となる10月8日には決勝レースが行なわれ、メルセデスのルイス・ハミルトン選手選手(44号車 メルセデス)が優勝した。2位はマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)、3位はダニエル・リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)。

 2位からスタートしたセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)はエンジントラブルでリタイアに終わり、これによってハミルトン選手との差は59点差となり、次戦アメリカGPでハミルトン選手が2位以下に75点以上の差をつけた場合、自身4度目の世界チャンピオンを獲得する状況となった。

多くのドライバーがギヤボックスおよびPUエレメント交換でグリッド降格に

 金曜日に行なわれたFP3では豪雨によりほとんど走れず、その影響で土曜日の朝までウェット路面となっていた鈴鹿サーキットだが、日曜日は一転して気温が25~28℃にもなる非常によい天候に恵まれることになった。FIAのタイミングモニターによれば、路面温度はレース前の13時30分の段階で44℃にも達しており、今週末で最も高い路面温度になっていた。ドライで行なわれたFP1、土曜日のFP3と予選とはタイヤへの影響も変わってくることが想定されるレースとなった。つまり、タイヤをどう使うか、それが勝負の大きな分かれ目になりそうだ。

ストフェル・バンドーン選手(2号車 マクラーレン・ホンダ)

 なお、予選の順位からバルテリ・ボッタス選手(5グリッド降格=ギヤボックス交換)、キミ・ライコネン選手(5グリッド降格=ギヤボックス交換)、カルロス・サインツ選手(20グリッド降格=PUエレメント交換)、ジョリオン・パーマー選手(20グリッド降格=PUエレメント交換)、フェルナンド・アロンソ選手(35グリッド降格=PUエレメント交換)のグリッド降格が実施されたため、スターティンググリッドは以下のようになっている。

F1日本GP 2017のスターティンググリッド
グリッドカーナンバードライバー車両備考
144ルイス・ハミルトンメルセデス-
25セバスチャン・ベッテルフェラーリ-
33ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー-
433マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー-
531エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス-
677バルテリ・ボッタスメルセデスギヤボックス交換で5グリッド降格
711セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス-
819フィリペ・マッサウィリアムズ・メルセデス-
92ストフェル・バンドーンマクラーレン・ホンダ-
107キミ・ライコネンフェラーリギヤボックス交換で5グリッド降格
1127ニコ・ヒュルケンブルグルノー-
1220ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ-
138ロマン・グロージャンハース・フェラーリ-
1410ピエール・ガスリートロロッソ-
1518ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス-
169マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ-
1794パスカル・ウェレインザウバー・フェラーリ-
1830ジョリオン・パーマールノーPUエレメント交換で20グリッド降格
1955カルロス・サインツトロロッソPUエレメント交換で20グリッド降格
2014フェルナンド・アロンソマクラーレン・ホンダPUエレメント交換で35グリッド降格

 これにより、予選3位だったベッテル選手(5号車 フェラーリ)が2位とフロントローに繰り上がり、ポールポジションからスタートするハミルトン選手(44号車 メルセデス)と、1コーナーにどちらがトップで入るのか、選手権の1位、2位がグリッド1位、2位という展開に、スタート時にはサーキット全体に緊張が走ることになった。また、予選11位だったストフェル・バンドーン選手(2号車 マクラーレン・ホンダ)も9位に繰り上がっており、タイヤを自由に選べる立場となり、その選択にも注目が集まったが、結局バンドーン選手はスーパーソフトの新品を選択した。そのほか11位以下で自由にタイヤを選べるドライバーの多くも、スーパーソフトの新品を選んでいる。

 ソフトタイヤを選択したのは、5グリッド降格が決まっていたため、Q2をソフトタイヤで走ったボッタス選手(77号車 メルセデス)、ライコネン選手(7号車 フェラーリ)、さらにはニコ・ヒュルケンブルグ選手(27号車 ルノー)は新品のソフトタイヤを選択した。

スタートしてすぐベッテル選手のエンジンにトラブル。序盤でリタイアに

スタートの様子。ハミルトン選手が順調なスタート切った

 14時に切られたスタートでは、1コーナーまでにハミルトン選手がよいスタートを切り、トップのまま1-2コーナーを駆け抜けていった。後方では9位からスタートしたバンドーン選手が2コーナーでコース外に飛び出し、ほぼ最後尾に順位を落とす。その後、S字でサインツ選手もコースアウトする。

 そこから誰もが目を疑う展開になったのは、ヘアピンの立ち上がりで3位に上がっていたフェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)が、2位だったベッテル選手をアウトから豪快にオーバーテイク。ベッテル選手のフェラーリは、グリッドでエンジンカバーを開けて作業をしており不安があったが、その不安が的中した状況となり、ベッテル選手は1周目の終わりのメインストレートで、エステバン・オコン選手(31号車 フォースインディア・メルセデス)、リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)、ボッタス選手(77号車 メルセデス)に相次いでオーバテイクされ、明らかに1台だけ遅いという状況が発生した。

 その後、2周目にはコースアウトしたサインツ車を排除するためセーフティカーが出動して、セーフティカーによる2周の先導走行が続いたあと、4周目からレースが再開されると、再びベッテル選手は後続にオーバーテイクされる状況で、結局その周の終わりにベッテル選手はピットイン。クルマはガレージに入れられて、ベッテル選手は完全にレースから脱落してしまった。

エンジントラブルで順位を落としていくセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)

 これでレースは1位ハミルトン選手、2位フェルスタッペン選手、3位オコン選手、4位リカルド選手、5位ボッタス選手、6位セルジオ・ペレス選手というトップ6になった。オコン選手はフェルスタッペン選手から徐々に離される展開になっており、レースはハミルトン選手とフェルスタッペン選手とのマッチレースになっていった。

2位に上がったフェルスタッペン選手がトップのハミルトン選手を激しく追い上げる展開に、ボッタス選手が援護射撃

ベッテル選手を抜いて2位にあがりトップのハミルトン選手を追いかけるマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)

 レースはその後も荒気味で、8周目にマーカス・エリクソン選手(9号車 ザウバー・フェラーリ)がデグナーでコースアウトしてタイヤバリアに突っ込み、その車両を排除するためバーチャルセーフティカーが出され、レースは一時的にホールドされた。

 そのバーチャルセーフティカー明けの11周目、4位だったリカルド選手が3位オコン選手に襲いかかり、1コーナーでアウト側からオーバーテイクし、3位に上がった。さらにその翌周、ボッタス選手もオコン選手もオーバーテイクし、これで1位ハミルトン選手、2位フェルスタッペン選手、3位リカルド選手、4位ボッタス選手となり、メルセデスとレッドブルのマッチレースという状況になっていった。

 上位勢で最初にピットインしたのはフェルスタッペン選手。これにより1位のハミルトン選手のアンダーカット(先行車よりも先にタイヤ交換して新しいタイヤでタイムを削ることで前に出る作戦のこと)を狙ったが、メルセデスはすぐそれに反応して、翌周にハミルトン選手もタイヤを交換。両車ともにスーパーソフトからソフトタイヤに交換し、結局差は若干縮まったものの、2秒程度のタイム差でレースは進んでいった。

 その後、リカルド選手がタイヤ交換したあとは、タイヤ交換をしていないボッタス選手がトップになり、2位ハミルトン選手、3位フェルスタッペン選手という展開になった。2位のハミルトン選手がまだタイヤを交換していないチームメイトに引っかかると、ハミルトン選手とフェルスタッペン選手の差は1秒以下になり、トップ争いは俄然白熱してきた。ここでメルセデスチームは上手なチーム作戦を発動し、タイヤ交換していないボッタス選手に2位のハミルトン選手に先を譲るよう指示。ボッタス選手を2位に下がらせると、そのままフェルスタッペン選手の前に居座るという作戦に出て、僚友のハミルトン選手を援護した。

4位を走行するバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)、チームメイトのハミルトン選手を援護

レース終盤は1位と2位、3位と4位の差が急速につまるが、ハミルトン選手が約1.2秒差で逃げ切って優勝

右フロントのホイールが壊れてストップするランス・ストロール選手(18号車 ウィリアムズ・メルセデス)。この後、2回目のバーチャル・セーフティカーになる

 32周目にボッタス選手がピットインすると、2位に上がったフェルスタッペン選手と、ボッタス選手があいだに入っているときに3秒差をつけたトップのハミルトン選手によるマッチレースという構図がより明確になった。チームにラジオでタイヤの状況を聞かれたフェルスタッペン選手は「いいよ」と答えたのに対して、ハミルトン選手は「リアが少し苦しい」と答えており、実際にその状況を反映するように、両車の差は2~3秒前後の差で緊張感の高いレースが続くことになった。

 レース後半で盛り上がったのは、フィリペ・マッサ選手(19号車 ウィリアムズ・メルセデス)を先頭にする8位争い。マッサ選手を先頭に、ケビン・マグネッセン選手(20号車 ハース・フェラーリ)、ロマン・グロージャン選手(8号車 ハース・フェラーリ)、ピエール・ガスリー選手(10号車 トロロッソ)、ヒュルケンブルグ選手(27号車 ルノー)の5台が並ぶ展開になった。まず、ヘアピンでガスリー選手が止まりきれずにタイヤにフラットスポットを作ってしまい、ピットに入りタイヤ交換をして順位が下がり、その後、ヒュルケンブルグ選手のリアウイングでDRSが開きっぱなしになり、こちらはピットに入ってそのままガレージにクルマが入れられ、リタイアになってしまった。

 その8位争いに決着がついたのは、43周目の1コーナー。マッサ選手がワイドになったところを、マグネッセン選手がインに入り、マッサ選手にラインを残した状態でオーバーテイク。両車は軽く接触したが、どちらにも大きなダメージはなくレースが続行された。なお、そのマッサ選手がふらついたところを、マグネッセン選手の後方につけていたグロージャン選手も抜き、ハースの2台が8位、9位に上がった。

 これでレースはほぼ落ち着いたと思ったが、48周目にランス・ストロール選手のクルマの右フロントホイールが割れてコースアウトし、S字でクルマを停止する事故が発生。その車両を排除するために、残り5周でバーチャルセーフティカーが出されることになった。

終盤フィリペ・マッサ選手(19号車 ウイリアムズ・メルセデス)を追いかけるフェルナンド・アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ホンダ)

 残り4周でレース再開された終盤の焦点は、3位リカルド選手と4位ボッタス選手の表彰台争いで、タイム差は2.1秒。10位マッサ選手と11位アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ホンダ)の入賞圏争いでタイム差は1秒。

 だが、5秒の差があった1位ハミルトン選手と2位フェルスタッペン選手の争いも1秒以内で、残り2周で0.5秒差になった。急に両車の差がつまり、トップ争いは最後の最後に緊迫した展開になっていった。

3位に入ったダニエル・リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)を追いかける4位のボッタス選手
終盤、トラブルを抱えたハミルトン選手にフェルスタッペン選手が迫る。差は1秒以下に

 しかし、最終ラップで周回遅れがあいだに入ったこともあって、フェルスタッペン選手の激しい追い上げから辛くも逃げ切ったハミルトン選手が、約1.2秒差でポール・トゥ・ウインを飾ることになった。3位は、ボッタス選手の追い上げから逃げ切ったリカルド選手。以下、4位ボッタス選手、5位ライコネン選手、6位オコン選手、7位ペレス選手、8位マグネッセン選手、9位グロージャン選手、10位マッサ選手となり、最後の鈴鹿ランとなったマクラーレン・ホンダは11位のアロンソ選手が最上位になった。

3位に入ったダニエル・リカルド選手

 この結果によりランキングトップを維持したハミルトン選手は、2位だったベッテル選手がリタイアに終わったことにより、その差を59点差に広げることになった、残り4戦で最大100ポイント獲得することができるため、このレースではチャンピオン決定にはならなかったが、次戦アメリカGPで75点差をつけることができれば、ハミルトン選手の4回目のチャンピオンが決定することになる。次戦アメリカGPは10月20日~22日(現地時間)に開催される予定だ。

レース結果
順位カーナンバードライバー車両周回数タイム
144ルイス・ハミルトンメルセデス531時間27分31秒194
233マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー53+1.211秒
33ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー53+9.679秒
477バルテリ・ボッタスメルセデス53+10.580秒
57キミ・ライコネンフェラーリ53+32.622秒
631エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス53+67.788秒
711セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス53+71.424秒
820ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ53+88.953秒
98ロマン・グロージャンハース・フェラーリ53+89.883秒
1019フィリペ・マッサウィリアムズ・メルセデス52+1周
1114フェルナンド・アロンソマクラーレン・ホンダ52+1周
1230ジョリオン・パーマールノー52+1周
1310ピエール・ガスリートロロッソ52+1周
142ストフェル・バンドーンマクラーレン・ホンダ52+1周
1594パスカル・ウェレインザウバー・フェラーリ51+2周
R18ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス45DNF
R27ニコ・ヒュルケンブルグルノー40DNF
R9マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ7DNF
R5セバスチャン・ベッテルフェラーリ4DNF
R55カルロス・サインツトロロッソ0DNF
ドライバー選手権ランキング
順位ドライバー車両ポイント
1ルイス・ハミルトンメルセデス306
2セバスチャン・ベッテルフェラーリ247
3バルテリ・ボッタスメルセデス234
4ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー192
5キミ・ライコネンフェラーリ148
6マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー111
7セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス82
8エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス65
9カルロス・サインツトロロッソ48
10ニコ・ヒュルケンブルグルノー34
11フィリペ・マッサウィリアムズ・メルセデス34
12ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス32
13ロマン・グロージャンハース・フェラーリ28
14ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ15
15ストフェル・バンドーンマクラーレン・ホンダ13
16フェルナンド・アロンソマクラーレン・ホンダ10
17ジョリオン・パーマールノー8
18パスカル・ウェレインザウバー・フェラーリ5
19ダニール・クビアトトロロッソ4
20マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ0
21アントニオ・ジョビナッツィザウバー・フェラーリ0
22ピエール・ガスリートロロッソ0
コンストラクターズ選手権ランキング
順位チームポイント
1メルセデス540
2フェラーリ395
3レッドブル・レーシング・タグホイヤー303
4フォースインディア・メルセデス147
5ウィリアムズ・メルセデス66
6トロロッソ52
7ハース・フェラーリ43
8ルノー42
9マクラーレン・ホンダ23
10ザウバー・フェラーリ5
表彰式後のトップ3会見に登壇した3選手。左から2位のマックス・フェルスタッペン選手、優勝したルイス・ハミルトン選手、3位のダニエル・リカルド選手

優勝したルイス・ハミルトン選手のコメント

優勝したルイス・ハミルトン選手

 セバスチャンもそうだったと思うけど、スタートはわるくなくて1コーナーに入って行けた。ところが11コーナーでセバスチャンが抜かれているのが見えて、マックスが2位に上がってきたので、あとはひたすらマックスとの差をマネージしていた。(なぜ1ストップだったのか聞かれ)タイヤライフには問題がないので、2ストップは無理だと最初から分かっていた。それでタイヤ交換したあとは、マックスと2.5秒差を維持しようとマネージしながら走っていた。ただ、終盤はタイヤかクルマに問題があってマックスとの差が縮まったけど、最後までマネージすることができた。(ポイント差が59ポイントになったことを聞かれ)59点差は信じられないよね。ただ、F1では信頼性がなによりも重要で、メルセデスはそこでほかのチームをリードしているし、チームがいい仕事をしたってことだと思う。ただ、まだ4レースあって先は長いよ。

2位のマックス・フェルスタッペン選手のコメント

2位のマックス・フェルスタッペン選手

 ルイスがレースをコントロールしていることは分かったけど、そこに追いつくだけの速さがなかった。終盤に彼がトラブルを抱えているようなことが分かって、こちらのソフトタイヤはとてもよかったので頑張ったんだけど、追い越すまではいかなかった。それでも2位で表彰台に上がれたので、嬉しかったよ。

3位のダニエル・リカルド選手のコメント

3位のダニエル・リカルド選手

 先週のレースのように、ペースを維持することに気をつけた。バルテリが来ていることは分かってたけど、レースペースはよかったのでそんなに心配していなかった。僕のレースそのものはそんなにエキサイティングではなかったけど、初めて鈴鹿で表彰台に上がれたのはよかったよ。