X JAPAN FILM GIG ~鈴鹿の夜~
SUPER GT第6戦鈴鹿にYOSHIKIとTOSHIが登場


18号車 ROCKSTAR 童夢 NSX。ドアのところに大きくROCKST☆R×YOSHIKI、バックミラーと上部のエアインテークの部分にもYOSHIKIの文字が見える

 8月22日、2009 AUTOBACS SUPER GT第6戦「第38回 インターナショナル ポッカ GT サマースペシャル」の予選終了後、「X JAPAN FILM GIG ~鈴鹿の夜~」と題したイベントが開催された。サプライズゲストとして、X JAPANのYOSHIKIとTOSHIがステージに登場し観客を熱狂させた。このイベントの様子を紹介する。

 SUPER GTに参戦する18号車 ROCKSTAR 童夢 NSX(道上龍/小暮卓史)は、今年からX JAPANのYOSHIKIをチーム・プロデューサーとして迎え、YOSHIKIがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるエナジー・ドリンク「ROCKST☆R」もスポンサーとして参加している。

 春に鈴鹿で開催された「ケーヒン 鈴鹿2&4レース」にYOSHIKIが応援に駆け付けるという噂もあったが、実現しなかった。7月末にロサンゼルスで、頸椎椎間板ヘルニアの手術をしたということもあり、今回も鈴鹿には来れないとの噂がささやかれていた。しかし22日、予選日の夜に「X JAPAN FILM GIG ~鈴鹿の夜~」というフィルムコンサートが企画され、ついにYOSHIKIがサーキットに登場した。

 会場では限定グッズとして、うちわ、マフラータオル、Tシャツ(シルバー/ゴールド)が発売され、サーキットには普段は見られない、全身X JAPANに染まった熱狂的なファンが集まっていた。フィルムコンサートが行われたのは鈴鹿サーキットのグランドスタンド。今年改装されたスタンドの下段のV1席がS席(2900円、入場料別)、A席(900円、同)の指定席、上段のV2席は自由席で、サーキット入場料(1600円)だけで入ることが可能だ。もちろん、レース観戦のため場内にいる人はV2席なら無料となる。

開始前の会場の様子。コースとスタンドの間に機材は設置された。真ん中のトランスポーターのウイングは閉じたまま。ピットでは翌日の決勝に向けて作業が行われている

 予選終了後にキッズウォーク、前夜祭、ナイトセッションが行われ、最後のイベントが「X JAPAN FILM GIG ~鈴鹿の夜~」だ。会場に入るとグランドスタンドとコースの間に、コンサート会場を思わせる機材が設置されていた。真ん中にはウイング扉の閉じられたトランスポーター、その左右に移動式の大型ビジョン、さらにその左右に音響装置を搭載したトランスポーター、またその外側に大型ビジョンが設置され、計4台の大型ビジョンがスタンド前に設置されていた。新装された鈴鹿サーキットのピットビルには3台の大型ビジョンが設置されている。合計7台の大型ビジョンを使ってフィルムコンサートが行われた。

 スタンド下段の指定席は明らかに濃いX JAPANのファン、上段の自由席も前のほうはファンが陣取り、後ろのほうはレース観戦のついでに参加といった感じだ。新装されたグランドスタンドの収容人数は1万2830人。スタンド自体が左右に広い構造のため、満席とはならないが、真ん中付近は国内のビッグレース以上の密集状態だ。おそらく数千人は集まっていたと思われる。

 20時、照明が落とされ、1997年12月31日に東京ドームで行われた解散コンサート「THE LAST LIVE~最後の夜~」の映像からTOSHIのMCシーンが流された。その後、今年1月に行われた香港、5月に行われた東京、台湾、1993年12月に行われた東京ドームのライブ、2008年5月の「HIDE MEMORIAL SUMMIT」のなどの映像が流された。場所はサーキットのグランドスタンド、普段はレーシングカーの爆音が響く場所だが、同じくらいの大音量で音と映像が流された。ライブ映像の観衆の声と、目の前のX JAPANファンの歓声が混じり合って、まるでコンサート会場にいるような雰囲気となっていた。

「THE LAST LIVE~最後の夜~」で始まった映像は、香港、台湾の海外ライブや、HIDE MEMORIAL SUMMITのなどが流された
大音響と共に流れる映像は1時間を超えた前方の熱狂的なファンはXジャンプで盛り上がる。左端に写るトランスポーターはまだ閉じたまま

 20時から始まったフィルムコンサートは1時間を超え、熱いファン達がXジャンプを繰り返す中、突然、スタンドの目の前で花火が上がり、会場が騒然となった。さらにスモークがたかれ、気付くと真ん中に設置されていたトランスポーターのウイングが開き、中にはクリスタルピアノが置かれていた。

目の前で花火が上がり、煙が立ちこめる。いつの間にかトランスポーターが開き、クリスタルピアノを乗せたステージに左右のPAからスモークの演出。そしてTOSHIの声が響く

 ついにYOSHIKIの登場かと思われたが、映像の音とは少し違う雰囲気でTOSHIのシャウトする声が会場に響く。なんとサプライズゲストとして登場したのはTOSHIだった。時刻は21時20分を回っていた。総立ちになったファンの歓声が渦巻く中、「やはりYOSHIKIは来られないのか……」という空気が流れた。TOSHIがトランスポーターのステージから挨拶し、もう1曲映像が流れる。TOSHIはステージから去りこれでエンディングかと思われた。

サプライズゲストとして登場したのはTOSHIだったTOSHIの登場で会場は熱狂の渦に

 が、その時、1コーナー側の空にヘリコプターが現れ、左から右へ低空飛行で近付いてくる。時刻は21時26分。スタンド前の大型ビジョンの映像がそのヘリをアップでとらえた。「まさか」。会場がどよめく中、軽く旋回したヘリはピットビル裏、パドックの最終コーナー側のヘリポートに降りた。会場はその様子を映す大型ビジョンに釘付けだ。ヘリのドアが開くと、そこにはYOSHIKIの姿があった。

TOSHIがステージから降り、再び曲が流れるが、突然ヘリが現れ、手前のビジョンにはヘリのアップが映し出されたヘリからYOSHIKIが降りてくる映像が流れる最終コーナー側からオープンカーで近付いてくるYOSHIKI

 YOSHIKIはヘリを降り、オープンカーに乗り、最終コーナー側から近付いてくる。オープンカーは音響機材の前で停止し、ROCKSTAR 童夢のレースクィーンにエスコートされステージへ。時刻は21時30分。健康状態が懸念されていたが、大観衆の目の前で、自らの足でステージに立った。

大型ビジョンにもスタンドに近付くYOSHIKIの映像が映し出されるPAの前で停止、ファンに軽く手を振るYOSHIKIレースクィーンにエスコートされステージに向かう

 ステージに立ったYOSHIKIは、いつものはにかんだ口調で「こんばんは~。来ちゃいました」と第1声。会場の盛り上がりは最高潮に達した。そして「TOSHIも来てるんでしょ?」(ヘリに乗っていたYOSHIKIは会場の様子を知らない)とTOSHIを呼び、2人のトークライブが始まった。

「こんばんは~。来ちゃいました」とYOSHIKI

 YOSHIKIの首のコルセットが痛々しい。ロスから鈴鹿へ来ることを心配していたTOSHIに対しYOSHIKIは「TOSHIにも会いたかったしね」。TOSHIも「俺も会いたかったよ」と。YOSHIKIが会場に集まったファンに「本当にありがとう」と声をかけると「今YOSHIKIは頭下げてるつもり……下向けないから」とTOSHIが突っ込みを入れ、「首が回らないから、横向いたりするのも大変なんだ。ロボットみたい……」とおどけるYOSHIKIに会場も和やかな雰囲気になった。TOSHIは、今日は来る予定じゃなかったんだけど「TOSHIも来てよ」と言われ駆け付けました、と友情出演であることを明かした。

TOSHIをステージに呼び、「TOSHIにも会いたかったしね」とビジョンに映る映像。コルセットが痛々しい「ロボットみたい……」と身体ごと向きを変えて見せる
終始、和やかな感じで2人のトークライブは進行した。横に置かれたピアノを弾くことはなかった

 10月に予定していたパリ公演、年内に予定していた大阪公演がリハビリで中止になったことなどをファンに報告。「じゃぁ名古屋?」(YOSHIKI)「なんだったら鈴鹿でやる」(TOSHI)とリップサービスで会場を沸かせた。

 7月の手術前にはロスと日本で国際電話を終日使いながらレコーディングしたことなども話し、アルバムを作って、ツアーを再開させたいと意気込みを語り、2人はステージを後にした。

 二人が2台のオープンカーに乗り会場を去ると、1コーナー側のコースインフィールドから盛大に花火が打ち上げられ、イベントは終了した。時刻は21時50分になっていた。

会場を後にするYOSHIKIとTOSHI大型ビジョンにはXの文字が映し出された最後は盛大な花火でフィナーレを迎えた

 今回のイベントはYOSHIKI、TOSHIというダブルサプライズゲストの効果もあり大盛況となった。会場で印象に残ったのは、ピットビルに設置された大型ビジョンの画質のよさだ。目の前の移動式ビジョンとはハイビジョン放送とアナログ放送以上の差が感じられた。今後も、この新しい設備を活用した企画に期待したい。

 会場に集まった観衆の中にはX JAPANのファンで初めてレース観戦した人も多いだろう。逆にレース観戦のついでにフィルムコンサートに参加した人もいただろう。その中には、レースに興味を持ったX JAPANファンや、X JAPANが好きになったレースファンもいると思われる。今後もこの様な異文化交流的なコラボ企画が行われ、双方のファン拡大につながることを期待したい。

 

(奥川浩彦)
2009年 8月 26日