【ナビレビュー】9型大画面のアルファード専用モデル「VIE-X009-AL」 純正カーナビを超えるフィッティングの仕上がりを誇るアルパインカーナビ |
アルファードに装着されたアルパインの9型大画面モデル「VIE-X009-AL」 |
カーナビの登場から早20年以上。今では自動車メーカーのカタログには「純正ナビ」として多くのモデルが掲載されるようになり、新車装着の比率も大幅にアップしてきた。高価格な商品ということもあって新車と一緒のほうが売る方も買う方も便利な上、クルマの持つ機能との連動やデザイン上の統一感などメリットが大きいからだ。
そんな状況に一石を投じたのがアルパイン。2010年に投入されたBIG X(ビッグ エックス)の愛称で呼ばれるモデルは、一般的な2DINサイズには収まらない8型の液晶ディスプレイを採用するとともに、車種専用に素材感やパネル形状を合わせたフィッティングを用意。大画面による見やすさと迫力、そして純正ナビに勝るとも劣らない装着感を実現した。
BIG Xの人気を受け、アルパインがリリースする2012年の新製品がVIE-X009-AL/VE。トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」専用となる新モデルは、型番からも分かるようになんと9型の液晶ディスプレイを採用。2DINカーナビで一般的な7型とは数字上の違いはわずかに2型ながら、面積比では約1.8倍となる超大画面をインパネにインストールすることを可能にしたのだ。
■7型とは違う異次元の迫力
試乗車として用意されていたのは、8月下旬から発売される「VIE-X009-AL」が装着されたアルファード。最終調整前の試作モデルということでパフォーマンスに関わる部分の評価はできない。そのため、今回は「第一印象」的なレビューとなる。
クルマに乗り込んで驚くのは、やはりその画面の大きさ。約1.8倍という大きさを数字の上では認識していても、実物を目の前にすると存在感は圧倒的だ。それでいて専用パーフェクトフィットパネルによるフィッティングは美しく、後付けであることをまったく感じさせない。8型のパーフェクトフィットパネルでは純正パネルに近い素材感としていたのを、プレミアムモデルということでピアノブラック化したのも高級感を醸し出す要因となっている。
さらにナビ本体下のスイッチパネルと下部のメッキ部分も実は専用パーツ。コンソールとの微妙なカーブも合わせてあり、「まさかそこまで」との思いもあって最初はまったく気づかなかった。試乗車に装着されていたのは試作モデルで塗装の品質やボタンの感触に難アリとのことだったが、運転席に座ってみる限りではまったく違和感を覚えることはなく、「これだけでコストがどのくらい掛かっているんだろう?」なんてヤボなことを考えてしまったほどだ。
液晶ディスプレイの下側フレームはインパネにあわせたカーブを描いている | ナビ本体下の専用スイッチパネル。透過文字の色合いや押した感触にもコダわっていると言う | オープニング画面も専用となるがカスタマイズも可能 |
■ナビとしてのコダワリも
BIG XがHDDを採用していたのに対し本機ではメモリーナビに。プレミアムモデルらしく容量も32GBとタップリ用意されており、うち16GBがナビ用、残りがオーディオ用となる。
ナビ部分は文字サイズや地図色をリファインするなど、従来モデルをブラッシュアップ。画面の9型化にあたっては画面を引き延ばすのではなく、表示範囲が広域化されている。つまり、縮尺自体は変わっておらず、より広い範囲を画面に表示できるようになったワケ。紙の地図でいえば判型が大きくなったのと同じで、見やすさはもちろん実用面でも効果的だ。その逆にメニューなどのボタンや入力用のキーボードなどは大型化により、操作性の向上が図られている。ディスプレイの大型化による恩恵は、多岐にわたっていると言える。
地図データは購入後登録することで、年に1回予定されているメジャーアップデートが3年間無料。加えて、高速道データは約3カ月ごとに年4回の無料配信が予定されている。こちらの更新データは携帯電話を接続して直接ダウンロードできるほか、パソコンでダウンロードしてからSDカードやUSBメモリを利用してナビにコピーすることもできる。
「目的地」ボタンを押した際のメニュー表示 | 100mスケール。一方通行や建物の形が表示されるなど市街地図に準じた情報を網羅。道路も色分けや道幅を反映したかき分けにより見やすい仕上がりだ |
市街地図は10m/25m/50mスケールの3段階 |
200m以上のスケール。メリハリのある色使いで、かなり広域のスケールまでVICS情報が表示される |
3Dタイプの「クルージングマップ」。都市部では高さ情報を元に建物を立体的に、山間部では山の起伏を表現したリアルな描画になる |
画面左のコンパスボタンを押すと地図切り替えメニューになる | 新しい東京の名所、スカイツリーも美しく再現 |
「2画面」では縮尺や向きなどが異なるマップを左右に表示できる |
地図と地デジの2画面表示 | 2画面は左4:右6の比率だが、設定画面でアイコンをフリックするだけでカンタンに入れ替えが可能 |
地図だけでなくエコ情報など多彩な情報を一度に表示できる「ドライブインフォ」 | ルート案内中の交差点では矢印で方向を示すアローガイドを用意。燃費なども刻々と変わり助手席で見ているとなかなか楽しい |
こちらは「マルチゲート」画面。2画面表示と同じようにフリックで表示位置の入れ替えができる |
名称検索でスカイツリーを検索。画面が大きいのでキーボードでの入力がラク | 候補が多い時は地域やジャンルでの絞り込みが可能 | 提携駐車のほか建物の出入り口情報(なんと一般家庭まで!)を収録。目的地までまさにピンポイントで案内してくれる |
駐車場を選ぶとこの位置が入り口となる | ルート探索は推奨をはじめ5ルートまで同時に行える | コンビニや銀行、ガソリンスタンドなどを探すのに便利な「最寄り」検索も用意 |
ルート案内中。右側に出るレーンガイドがとても見やすい | レーン数が増えると次とその次の関連がちょっと分かりづらくなる |
100mスケールでも一方通行が表示される。地図がゴチャゴチャしそうだが意外と見やすい | 通常の交差点拡大図。ランドマークも用意され分かりやすい仕上がり |
一部の交差点には拡大図の視点が変わる「バーチャルジャンクション」表示が用意される |
バーチャルジャンクション表示のパターン。周囲の状況が把握できるので曲がる場所が分かりやすい | 細街路に入ると自動的に25mスケールとの2画面表示に切り替えてくれる |
ルート案内中に到着予想時間の短縮が可能なルートがあるとポップアップで教えてくれる | ポップアップは事前に設定した短縮時間のルートを見つけた時に動作。時間は5~30分で設定できる |
実際の風景を元にした「リアル3D交差点拡大図」を搭載。分かりやすさはもちろん収録場所が多いのも嬉しい |
立体交差などではデフォルメしたイラストを使った案内も | 方面案内看板も用意されている |
複合パターンもある | 都市高速の入り口にはイラストによる案内を用意。テクスチャっぽい表示がリアル | 高速道路では文字情報との2画面表示も可能 |
JCT(ジャンクション)は微妙にデフォルメされたイラストで案内 | 出口も同様の表示。間違えようのない明確な案内だ |
■車種専用ならではの作り込み
オーディオに関しては「車種専用」という部分が効いてくる。普通なら装着したオーナーがクルマに合わせて調整する作業が必要になるが、このモデルならすでに最適な調整が施された状態。いわゆるポン付けでOKとなっており、スピーカーを増設するなどマニアックなユーザーだけチューニングをすればいいのだ。
対応ソースも豊富でCD/DVDはもちろん、フルセグ地デジ、iPod/iPhone、Bluetooth、SDカード/USBメモリと多彩。さらにオプションの専用ケーブルを用意すればソニーのウォークマンも接続できる。
「AV」ボタンを押した際のメニュー表示 | Bluetoothを使ったストリーミング再生にも対応。対応プレイヤーなら楽曲表示も行える |
iPhone/iPodの音楽や映像再生はオプションの接続ケーブルで対応。アートワークが大きく表示されるのもイイ感じだ | 地デジはフル画面のほか各種ボタンを配置したL字表示も。実はこの状態でも7インチモデルより映像部分が大きい |
オーディオは最適な状態にセッティング済み。もちろん、追求したい場合はオリジナルのカスタマイズもできる |
■オプションも車種専用で最適化
ナビのオプションで装着率が高いものといえばバックカメラ。背の高いミニバンには必須といえるアイテムだが、通常、アフターマーケットのアイテムを装着すると装着場所に合わせた調整が必要で、ショップに頼むにしても面倒が残る。だが、こちらも専用のインストールキットを利用することで、ガイド線は大きな調整をしなくてもほぼ最適な状態になる。ステアリングに操作に合わせたガイド表示があるのも安心感が高い。
天井に装着するフリップダウンモニターもミニバンでは装着率が高いアイテム。ナビより早く車種別アイテムを揃えていただけに、サイズや機能など豊富なラインナップが用意されている。最新モデルのPCX-RX3500シリーズにはリアビジョンリンク機能が搭載され、オプションのリモコンを用意すればフリップダウンモニターを見ながら、目的地設定などナビのコントロールが可能。イルミネーションカラーやプラズマクラスターのオン/オフや風量設定も、画面を見ながら行えるなどリンク機能も用意されているのが便利だ。
リアビジョン「PCX-RX3500」を専用フィッティングキットで装着。ナビ本体同様、後付け感のないスマートな装着が可能だ | PCX-RX3500はリアビジョンリンク機能を搭載。ナビ画面でさまざまな設定ができる |
バックカメラにも専用フィッティングキットを用意。アルファードに合わせたガイド線が用意されているため、安全に駐車することができる |
VICS光・電波 ビーコンユニットはオプション。渋滞情報の表示だけでなく、旅行時間情報を元にしたルート探索も可能なる | ETCユニットも接続可能。情報がある料金所なら通過ルートを矢印で案内してくれる |
■対応車種の拡大がカギ!?
とにかく9型の大画面は圧倒的。地図の見やすさやナビの操作性向上、映像ソースの美しさなど、あらゆる部分でよい結果につながっている。
ただ、装着場所のサイズもあるため当然といえば当然だが、装着車種が限られてしまうのが難点。現状、アルファード/ヴェルファイア用だが、今後の予定もミニバン中心とのことで、セダン派やスポーツカー派は指をくわえて眺めているしかない。が、対応車種を広げようとすれば、フィッティングのよさというメリットが失われることにもつながるため、痛し痒しといったところか。
逆に設定があるならラッキーなワケで、ナビの購入を考えるなら第一候補として考えていいだろう。
(安田 剛)
2012年 8月 7日