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開通目前、圏央道延伸部「相模原八王子トンネル」で多重衝突事故を想定した合同訓練

相模原市消防局、厚木市消防本部、愛川町消防本部、東京消防庁、警視庁、神奈川県警など参加

2014年6月20日実施

訓練が行われた圏央道 外回り 相模原八王子トンネル。ほぼ中央を東京都と神奈川県の境がある。手前が相模原方面、奥が高尾方面

 6月28日15時に開通する圏央道(首都圏中央連絡自動車道) 相模原愛川IC(インターチェンジ)ー高尾IC間14.8kmは「さがみ縦貫道路」とも呼ばれる区間で、東名高速道路と中央自動車道を結ぶ片側2車線の自動車専用道路。これまで都心部を経由するか慢性的な渋滞に悩む国道16号、国道129号によるアクセスのみだった地域を結ぶルートだ。この開通により、関越自動車道とも結ばれるため、時間短縮や近隣国道の渋滞減少はもちろん、どちらかの道路で事故や災害時が起きた際のバイパス路としても活用できるなど、運輸業界のみならず多方面から大きな期待が寄せられている。

 開通を約1週間後に控えた6月20日、NEXCO中日本(中日本高速道路)および開通区間の周辺消防、警察は、開通前の相模原八王子トンネル(外回り、下り線)内において多重衝突事故を想定した事故対策合同訓練を実施した。

 この合同訓練は東京都と神奈川県にまたがる路線ということもあり、管轄の異なる消防、警察による連携の強化を主目的としたもの。また、トンネル内の各種消防防災設備を実際に取り扱うことで、万一の事故発生に備えるという側面も併せ持ったもの。

入口看板。今回の開通区間にはトンネルが4個所設けられているが、相模原八王子トンネルは3.6kmともっとも長い
相模原八王子トンネル内の銘板
入口脇には非常電話がある
入口脇にある消火栓
トンネル内の消火栓

 参加機関は地元となる相模原市消防局をはじめ、東京消防庁、厚木市消防本部、愛川町消防本部、警視庁高速道路交通警察隊、神奈川県警察高速道路交通警察隊、NEXCO中日本。消防関連だけでも人員104名、参加台数18台、さらにヘリコプター2機も参加する大がかりなものとなった。

訓練開始前の参加機関によるミーティング
地元となる相模原市消防局
愛川町消防本部と厚木市消防本部、それに警視庁および神奈川県高速道路交通警察隊
東京消防庁からは航空隊も参加
道路を管轄するNEXCO中日本からも多くの職員が参加した
訓練開始を前に緊張感が高まる

 今回の事故想定は「観光バス及び危険物積載車両を含む車両5台の多重衝突事故により、負傷者が多数発生し、車内に要救助者が数名いる。さらに、危険物積載車両から積載物が落下し可燃性液体が漏洩している」というもの。

 訓練は午前10時過ぎから始まり、事故の一報を受けたNEXCO中日本のパトロールカーによるトンネルの通行規制、相模原消防を中心とした消防機関による事故車両からの救出~ヘリコプターによる救急搬送、火災の鎮火作業の順に進行。途中、逆方向から東京消防庁が救出に加わり、事故現場の南北から協力して負傷者を救出する場面も。管轄違いによる連携の混乱などは特になく、正午前にはすべてのプログラムを終了した。

トンネル入口から200mほどの場所が事故想定地点。バスはトンネル右側面に衝突、前部がつぶれている想定
事故の一報を受け交通警察隊とNEXCO中日本職員がトンネル入口で車両規制を行う
トンネル入口に消防関係車両が続々と到着
NEXCO中日本職員から状況説明を受ける消防隊員
パトカーとNEXCO中日本職員によりトンネルが封鎖される
指揮車の前にテーブルが置かれ指揮本部を設置
パトカーを先頭に消防車がトンネル内に進入
すぐに救助準備がスタート
まず車止めを置きクルマを固定
ドアロックおよびドアが開くかどうかを確認
生存者やけが人をチェックしていく
後方では別の隊員が担架など救助用アイテムを展開
同じ頃、トンネル入口では消火準備が進む
消防車後方から現れたのは自走式のホース運搬車
トンネル横の消火栓にホースを接続
レンチを使って圧力を調整していく
1.75MPaぐらいで安定した模様
トンネル内では変形して開かないドアを想定、油圧カッターを使った作業が進行
ドアが開き救急隊員が運転手の状態を確認
担架に乗せて搬送していく
トンネル内は救急車や消防車で一杯
現場指揮本部では集まる情報をボードなどに書き込み状況を把握、次の策を練っていく
トンネル入口に応急救護所を設置
現場から救出した患者を載せた救急車が到着
応急救護所で隊員が簡単な処置を行う
今回の訓練ではダミー人形が使われた
患者を救出してきた厚木市消防本部の替わりに相模原市消防局の救急車が現場へ。狭いトンネル内での車両数をコントロール
重傷者を搬送するために東京消防庁のヘリコプター、ユーロコプターのドーファンII「かもめ」号が登場
高圧送電線や遮音壁を避けつ重傷者を素早く収容
ホバリングポイントを決めてから要救護者をヘリコプターに収容するまで1分30秒とのこと。確実かつ高速な作業を行っていた
トンネル内では負傷者救出後、車両の下をのぞき込みガソリン漏れなどをチェック
バス前部がトンネル壁にぶつかっているため左側面に回り込めない想定。隊員が窓にラダーをかけて車内へ突入して状況を把握する
その頃、高尾側から東京消防庁の隊員が駆けつけてきた
相模原側からアクセスできなかったトラックの運転手を救出
バスのドアが開かないため油圧カッターが登場
ドアを開け負傷者を救出
救急車に誘導する
バス運転席と助手席の乗員は重傷の模様。車内で応急処置を行う
東京消防庁と相模原市消防局の隊員がバスの中と外から協力して乗員を救出
その直後、車両火災が発生、したという想定で発煙筒がたかれる
トンネル入口の掲示板には火災発生の表示が
車両への放水を実施
トンネル内の消火栓も実際に使用された
消火栓の放水ノズル。新型の軽量タイプが使われている
トンネル内のアスファルト舗装はトンネル外と違い排水性を追求していないため水がたまる
放水中にさらなる爆発が発生、したという想定で再度発煙筒がたかれる
トンネル内が煙に包まれ隊員は待避
トンネル内に設けられているファンを通常とは逆回転させて煙を排出
相模原市が誇る最新鋭の「特別高度工作車」。車両後部の大型ブロアーのほかウォーターカッターも装備
建物内やトンネル内に充満した煙や可燃性ガスなどを大型ブロアーにより排煙、同時にミスト放水により消火も行える
煙がトンネル外に排出されていく
爆発的な火災の鎮火のためトンネル内のスプリンクラーを起動。今回は訓練のため事故現場ではない第2ブロックのみ噴射した
現場最前線を務めた相模原市消防局、田名特別救助隊の車両。投光器で現場を照らす役割も担った
相模原市消防局、高度救助隊の車両
厚木市消防本部の化学消防車
各種メーターやレバーが並ぶ作部
愛川町消防署の車両
前半でも紹介した自走式ホース運搬車
無事に訓練終了。事故は起こらないに越したことはないが、万一の際には今回の訓練が生かされるはずだ

(編集部/安田 剛/Photo:安田 剛)