ニュース

日産の先進安全技術を体験してきた

それぞれの機能を体験してADASに関する正しい知識を周知

 日産自動車の先進安全技術を体感するイベントが、神奈川県横須賀市の日産追浜工場内に設けられたテストコース「グランドライブ」で報道陣向けに開催された。これは、日産車に搭載されているエマージェンシーブレーキなどの先進安全技術(ADAS)の現状を報告するもの。

 日産では、「Vision ZERO」として2020年までに日産車の関わる死亡・重傷者数を1995年の25%にまで減らし、事故ゼロ社会を目指すことを目的としている。さらに開発陣は「人間(ドライバー)がまずクルマの操作に責任を持つべき」としながら、その上で“クルマがひとを守る”をキーワードにした「セーフティ・シールドコンセプト」をコンセプトにしながら安全技術の開発に取り組んでいる。

単眼カメラとミリ波レーダーによるエマージェンシーブレーキ

 まずは「衝突被害軽減ブレーキ」である単眼カメラ方式のエマージェンシーブレーキをエクストレイルで体験する。単眼カメラ方式のエマージェンシーブレーキは物体だけでなく人物の検知も可能で、稼働速度域は10km/h~80km/hと幅広い(10km/h以下と80km/h以上では作動しない)。このうち、停止している物体と歩行者に対しては60km/h以下で作動する。今回のテストはターゲットとなる停止した目標物に向かって20km/hで走り、「衝突被害軽減ブレーキ」の最終段階である自律自動ブレーキによって車両が停止するかどうかをテストした。

 NASVA(自動車事故対策機構)と国土交通省が行っている「予防安全性能アセスメント」での結果が示しているように、20km/hでは余裕をもって自律自動ブレーキのみで停止することができた。ダミー人形に対するテストは同乗試乗のみだったが、こちらも連続する3回のテストでも衝突を回避することができた。

設置状態のターゲットに、20km/hで接近して「衝突被害軽減ブレーキ」の作動をチェック
十分に余裕を持って停車した
ターゲットは単純にぶつかっても衝撃が少ないスポンジ素材だけでなく、内部に実際のクルマと同じようにレーダーが感知できる部材が仕込まれているという
エクストレイルではフロントウインドー内側の単眼カメラで障害物などを認識
続いてダミー人形に対する「衝突被害軽減ブレーキ」の作動チェック
3回連続でダミー人形との衝突を回避できた。短い時間で3回「衝突被害軽減ブレーキ」が作動すると、次からはシステムの異常の可能性を車両が疑うようになるという。その場合にはフェイルセーフのモードになってテストができなくなるので、1回エンジンを止めてリセットをかける
スカイラインでのミリ波レーダー方式のエマージェンシーブレーキ体験

 日産は単眼カメラ方式だけでなくミリ波レーダー方式のエマージェンシーブレーキもフーガ、スカイラインに用意する。両車に搭載されるエマージェンシーブレーキは約5km/h以上で前方の車両に作動するもので、60km/h以下であれば衝突回避できる可能性が高いとしており、停止している車両に対しては約70km/h以上では作動しない設計だ。ただし、人間や壁などのような車両以外の障害物に対する衝突被害軽減ブレーキ機能は持ち合わせていない。ルームミラー部分に搭載された単眼カメラは、車線逸脱防止システムである「LDP/車線逸脱防止支援システム」や直進安定性を高める「アクティブレーンコントロール」などのセンサーとして車線認識のみに使われている。

 フーガとスカイラインが搭載するミリ波レーダー方式のエマージェンシーブレーキには、「PFCW/前方衝突予測警報」という世界初の機能が搭載された。これは一般的な衝突被害軽減ブレーキがすぐ前の車両のみを限定してモニタリングしているのに対し、PFCWは自車から2台前の車両の動きも認識可能なミリ波レーダー技術を採用している。

 仮に走行しているとき自車の2台前の車両が急減速したとする。通常であれば、前走車がブレーキを踏むまでは2台前の減速は把握することができないが、PFCWではその時点で衝突の危険性が高まったと判断した場合には警報音が鳴り、ドライバーにブレーキ操作を要求する。この警報に対して何らかの理由でドライバーが反応することができず、衝突の危険性がさらに高まると次の段階として警報ブレーキが働く。それでもドライバーが反応できない場合は、最終手段として制動力を伴った強い自動ブレーキが作動する。

単眼カメラ方式より高速な60km/h巡航状態で自律自動ブレーキによる制動を体感。この速度域でも、「被害軽減」ではなく「衝突回避」が可能
スカイラインの「衝突被害軽減ブレーキテスト」(24秒)

丁寧なブレーキ操作が印象的なインテリジェントペダル

フーガ 370GT タイプSのペダルまわり

 フーガでは「インテリジェントペダル(ディスタンスコントロールアシスト)」の体感試乗も行った。インテリジェントペダルは、2007年12月に行われた初代フーガのマイナーチェンジで搭載された技術で、前走車との車間距離を維持する操作を支援することで運転負荷を軽減する。実際、前走車に追従して走行してみると、速度に応じた車間距離が一定以下に縮まるとアクセルペダルにアクチュエーターが反力(ペダルを戻そうとする力)を発生させ、アクセルペダルから足を離すように促して安全な車間距離を生み出す。また、アクセルペダルを戻すだけでは間に合わず、さらなる減速が必要な場合には自動的に緩いブレーキを掛けて安全な車間距離を保つような制御も行われる。フーガやスカイラインなどに搭載された最新版のインテリジェントペダルが行うブレーキ操作はじつに丁寧で、ブレーキ圧力が急激に高まったり下がったりしないため乗り心地は非常に快適。あたかもベテランドライバーによるブレーキ操作のような錯覚にとらわれるほどだった。

インテリジェントペダルの機能の1つである「ディスタンスコントロールアシスト」(DCA)の体感試乗。このシチュエーションでは70km/hで走行する先行車が50km/hまで減速
車間距離が短くなると、アクセルペダルを前方から押し戻すような力がペダルから伝わってくる。また、メーターパネル内のマルチインフォメーションディスプレイに「DCA」の作動を示す警告が表示される
フーガでは、リアバンパーの内側に内蔵したセンサーで後側方を監視する後側方車両検知警報(BSW)や後側方衝突防止支援システム(BSI)も体感。隣接する車線にクルマがいる場合にドアミラー内側のランプが点灯。危険があることを知らせるとともに、ウインカーを操作して車線変更しようとした場合には、元のレーンにとどまるようステアリング支援を行う

アクセルとブレーキの踏み間違いを防止

 このほかにも、超音波ソナーを使った「踏み間違い衝突防止アシスト」を体感した。車両前後の4個所に合計8つの超音波ソナーを設置して障害物を検知する機能に、車両挙動安定装置である「VDC」の機能を組み合わせてブレーキを自動的にかけるものだ。この踏み間違い衝突防止アシストは、後退しようとRレンジに入れたつもりが間違ってDレンジに入っていて、それに気付かずに意図せず前進したことに驚き、ブレーキを踏まなければならない状況でアクセルを思いっきり踏み込んでしまったようなときに効果がある。

 踏み間違い衝突防止アシストの稼働速度はCVTが疑似的に作り出すクリープ速度に近い約8km/hが上限で、後退時も約8km/h以内であれば作動する。その上の速度域では、前進時に限り単眼カメラ方式のエマージェンシーブレーキが作動することもある。

超音波ソナーは前後バンパーにそれぞれ4個、計8個を設定。それぞれ単独で機能するだけでなく、隣接するソナーから出された超音波の反射波も相互に利用して、より正確に障害物を認識する
最初は前進で「踏み間違い衝突防止アシスト」を体感。開始前に、車内で作動原理や確認するポイントなどの説明を受ける
超音波ソナーが前方に障害物があることを認識しているので、アクセルを踏み込んでも加速せず、ゆるゆると前進したのち、衝突寸前で自律自動ブレーキが作動
もともとの走行スピードがゆっくりしているので、ブレーキはギリギリまで作動していない
体験後、車外で再度システムの仕組みを解説
車内から見た「踏み間違い衝突防止アシスト」の作動シーン。危険を検知すると純正カーナビの画面も自動的にアラウンドビューモニターに切り替わり、文字とアイコンで注意喚起する
バックでも前進同様に徐行速度で動き、障害物の直前で停止。警告音が鳴ってゆっくりと動くので、ドライバーが自分でブレーキを踏み直す時間も十分にある

 今回は、日産が市販車に導入しているADASを安全なテストコースで体感することができたが、自律自動ブレーキによる相対速度60km/h分の減速や、人にも機能する単眼カメラ式のエマージェンシーブレーキなどの体感ができればさらに理解度が深まったと思う。高い速度域からの停止を体感することにも意義はあるが、それ以上にドライバーは迫り来る危険に対してどんな対応をとるのが最善なのかを知るよい機会になると考えたからだ。また、自律自動ブレーキではなく、警報段階でドライバー自らがブレーキ操作を行った場合、どれだけ安全マージンをもって車両が停止するのかなど、そのほかの点でも興味はつきない。

 そもそも自律自動ブレーキは「衝突被害軽減ブレーキ」のうち、衝突が避けられないとシステムが判断した際に初めて働く機能だ。その周知徹底が緩いままに「衝突被害軽減ブレーキ搭載車」のモデル数を増やすことばかりを主眼とするセールス手法には疑問が残る。しかしながら、この傾向は日産だけではなく他メーカーにも当てはまる部分は多い。今後は、こうした正しい知識が得られる機会を1人でも多くのユーザーに体感してもらうために、メーカーと販売会社が協力して行う「ADAS体験会」といったものの開催回数も増えてくるだろうから、みなさんも機会があれば、是非こうした場に足を運んでいただきたい。

(西村直人:NAC)