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三菱電機、クルマの“次の動き”を車外に知らせる「路面ライティング」技術説明会

東京モーターショー2015に出展する次世代運転支援技術車「EMIRAI3 xDAS」にも搭載

三菱電機が新技術の「路面ライティング」を公開

 三菱電機は10月23日、道路上に光を投影することで周囲から動きを察知されやすくする自動車向けの「路面ライティング」コンセプト技術を発表。都内で記者説明会を開催した。

 この「路面ライティング」コンセプト技術では、「ドアオープン」「前進」「後退」といった状況で、車両に搭載する光源を使って路面を照らし、動き出すことを事前に周囲に意思表示。衝突防止などの安全性向上を図る。歩行者が関わる交通事故の7割が夜間に発生していることから、その問題解決を第1に、法規制のクリアと合わせて2020年以降の事業化を目指す。

 なお、10月29日~11月8日に東京ビッグサイトで開催される「第44回東京モーターショー2015」の会場で展示を予定している、次世代の運転支援技術を搭載するコンセプトカー「EMIRAI3 xDAS」にこの路面ライティングの装置を搭載するとしている。

三菱電機、次世代の運転支援技術を紹介する「EMIRAI3 xDAS」を東京モーターショー2015で公開

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151008_724800.html

路面ライティング技術について、「ユーザーエクスペリエンスデザインの視点で発想した」と語る三菱電機 デザイン研究所長 杉浦博明氏
東京モーターショー2015で次世代の運転支援技術を紹介するコンセプトカー「EMIRAI3 xDAS」に路面ライティングの装置を搭載

光のアニメーション表示で注意を促す

「ドアが開く前」「前進」「後退」するといったシーンで路面にグラフィック表示

 今回発表された路面ライティング技術は、通常のヘッドライトなどとは別に設置する光源を用い、車両周囲の路面上にラインアートのようなグラフィックをアニメーション表示するもの。記者説明会でデモンストレーションを行ったのは3種類で、1つ目はドライバーが車両に近づいたり、車内から人が出ようとしたとき(ドアノブに手をかけたとき)に、ドアが開くことを示す青い扇状のグラフィックを表示するパターン。

ドアがオープンする直前のアニメーション表示

 2つ目は、車内でギヤ操作をして前進しようとした場合(ヘッドライト点灯前)に、車両側面から前方に向かって2本の光の矢が伸び、そのあとに進行方向を示す矢印状の白っぽい光の帯を車両前方に表示するパターン。最後の3つ目は、前進時と似た動きで、後退時に車両側面から後方に2本の光の矢が伸び、進行方向を示す円弧状の赤い光の帯を車両後方に表示するパターンとなっている。

発進時のアニメーション
発進時のアニメーションを別の角度から
後退時のアニメーション

 このような路面ライティングを行うことで、周囲の歩行者や車両がそのクルマがどの方向に進もうとしているのか、どのような動きをするつもりなのかなどにいち早く気付くことができ、衝突防止や被害軽減など、円滑な交通が実現できるという。

デモ機では、車両側面にある黒いスリット状に見える部分の奥からプロジェクターで照らしているとのこと
三菱電機 デザイン研究所 インターフェースデザイン部長 堀武幸氏

 三菱電機 デザイン研究所の堀氏は、EV(電気自動車)のように走行ノイズが少なく、周囲にいる人などが接近したことに気が付きにくいタイプの車両に適した装備だと訴えるとともに、自動運転車の実用化時には前方を注視することが減ってくることも考えられるため、将来的により有効に活用されることになるだろうと述べた。

夜間の事故削減に向けて推進。将来的にはウインカーや急ブレーキの表示も

 ただし、現在のところ日本国内では路面に図形を描くような装置は法律によって認められていないこと、安全性向上には有効と考えられるもののユーザーニーズが存在するか未知数であること、荒れた路面や日中の使用には向かないことなどが課題として挙げられている。

 これらの課題について、安全性の向上を根拠に法規制の緩和を求めていくだけでなく、国内外のユーザーニーズ調査などにより、さらに適切な表示方法や機能を検討する方針。凹凸が多かったり波打っている路面などに対しては、路面状況に合わせて照射方法を細かく変えるのではなく、照射時に歪みが目立ちにくいグラフィック表現を考えたいとしている。

自動車ライトの市場規模は、2022年に2013年の1.6倍になると予想されている
クルマの動きや意図を素早く察知できるようになり、安全で円滑な交通を実現
2020年以降の事業化を目指す

 歩行者の交通死亡事故の多くが夜間に発生していることから、まずは夜間における表示を優先的に進める。その次のステップとして日中でも視認できる方法を検討するとしたが、太陽光の下では路面に表示しても目立たないことが想定されるため、現在、主に欧州で義務化されているデイライト(日中でも常にライトをONにしなければならない法規制)の使い方も参考にしていくと堀氏は述べた。

 今後考えられるほかのパターンとしては、方向指示器の見せ方を工夫することで、すり抜けをしている2輪車などに注意を促せるようなもの、あるいは霧が多い海外で特に顕著な急ブレーキや追突事故を防ぐ表示の仕方などを検討していくとのこと。採用する光源もLEDやレーザー、プロジェクターも含めて、どのような方式にするのかまだ決定していない。事業化にあたっては光源のコントロールユニットのみを扱うか、光源そのものから開発するかなどについても検討段階にあるとしている。

(日沼諭史)