日産、第3のグローバルブランド「ダットサン」説明会
ブランド導入から1年以内に2モデルを投入し、3年以内にラインアップを強化

およそ30年ぶりに復活するダットサンブランドの新ロゴ

2012年3月21日開催



 日産自動車は3月20日、インドネシアでの生産能力を2014年までに25万台に引き上げるとともに、従業員数を3300名に増強するなど、投資を拡大することを明らかにするとともに、1981年に「ニッサン」ブランドに統合した「ダットサン」ブランドを復活させると発表した。ダットサンブランドは、ニッサンおよびインフィニティに続く第3のブランドに位置づけられ、新しいダットサンブランドのモデルは、2014年からインド、インドネシア、ロシアを皮切りに販売を開始する予定。

 このダットサンブランドについての説明会を、3月21日に同社グローバル本社で開催した。説明会には、副社長の片桐隆夫氏、執行役員のヴァンサン・コベ氏、常務執行役員・チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏、カルロス・ゴーン会長兼CEOが出席した。

カルロス・ゴーン会長兼CEO片桐隆夫副社長
ヴァンサン・コベ執行役員中村史郎常務執行役員・チーフクリエイティブオフィサー

 今回のダットサンブランドの復活は、2016年に世界市場シェア8%、営業利益率8%という目標を掲げる中期経営計画「日産パワー88」を達成するための手段の1つに位置づけられている。新しいブランドロゴは、信頼性や力強さをモダンな形状で表現したものとなっており、ブランドカラーにブルーを採用。ニッサンブランドはレッド、インフィニティブランドはパープルを基調とするが、信頼性を感じさせるブルーを採用したと言う。

 片桐氏は冒頭、2011年度の同社の主な実績を振り返り、BセグメントのFF車用プラットフォーム「Vプラットフォーム」を採用したセダンをメキシコ、ブラジル、中国、インド、タイといった成長市場に投入したことを説明。このVプラットフォームセダンは、2011年度にグローバルで28万4000台を販売しており、ここで挙げた5市場が84%を占めると言う。

 また、販売網についてもブラジル、ロシア、中国、インド、インドネシアの5カ国で2011年度は店舗数を26%増加(店舗数で200店舗。2010年度末比)させるとともに、販売台数は30%増を見込んでいる。さらにメキシコ、ブラジル、インドネシア、中国、インドにおける向上の生産能力を増強させることを紹介し、「商品、販売ネットワーク、そして生産能力について、日産パワー88の目標に向かって2011年度は着々と手を打ってきた」(片桐氏)と説明。

 こうした成長市場は人口は多いものの、自動車普及率が低いため、新規の自動車需要拡大の可能性が多分にある。例えば中国では75%が、インド、インドネシアでも7割弱が1台目需要になることから、「我々が商品を提供する、あるいは販売網を構築する上でも、1台目需要のニーズに合った戦略を取ることが重要」(片桐氏)となる。

 成長市場における同社のターゲットは、「経済発展とともに年々生活水準が向上する新進気鋭のお客様」であり、「こうしたユーザーの1台目のクルマ購入には大変大きな期待と憧れがある一方、納得のいく価値、それと価格の両立が重要になる」。そこで登場するのがダットサンブランドであり、片桐氏は「(ダットサンは)日産のDNAであり、グローバルメーカーとしての技術・経験を活用する一方、成長市場のお客様のニーズとプライオリティを深く理解し、ローカルプロダクトあるいはローカルサービスを提供する」と述べた。

中期経営計画「日産パワー88」で掲げるグローバル市場占有率8%に向け、順調に推移していると言うダットサンブランドの復活は日産パワー88における6つの柱のうち、第2の柱である「セールスパワー」と、第5の柱である「事業の拡大」にあたる成長市場におけるVプラットフォームセダンの2011年度の販売台数。成長市場ではインドで8000台、タイで1万2000台、中国で18万5000台、メキシコで2万7000台、ブラジルで6000台を販売。グローバルで合計28万4000台を販売したと言う
販売網についてもブラジル、ロシア、中国、インド、インドネシアの5カ国で2011年度は店舗数を26%増加させた生産能力も増強した成長市場は人口は多いものの、自動車普及率が低い
新規需要のユーザーニーズに対応した商品、販売・マーケティング、サービスが必要成長市場での新規需要のユーザーにとって納得のいく価値と価格、手ごろな維持費とすることが重要と言う

 ダットサンブランドの具体的な戦略についてはコベ氏が説明を行った。ダットサンブランドでは、「明るい未来観」「上昇志向」「クルマへの強い憧れ」「高い要求水準」を持つユーザーをターゲットとし、具体的には「運転することが楽しい」「安心して所有できる」「敷居が低い」の3点が商品特徴と言う。

 コベ氏によれば、それぞれの市場に適したモデルを導入することで、市場のニーズに応えること、また現地の技術や部品を採用し、現地で生産を行うと言う。

ダットサンブランドの車両で採用するフロントグリル

 また、今後の目標として2014年からインド、インドネシア、ロシアに商品を投入するとともに、市場ごとにブランド導入から1年以内に2モデルを投入し、3年以内にラインアップを強化する。さらに日産パワー88の最終年にあたる2016年までに「インド、インドネシア、ロシアにおいて、ダットサンブランドが日産自動車の販売台数の1/3~1/2を占めることを目標に掲げている」と、コベ氏から今後の目標について語られた。

 なお、ダットサンブランドの具体的な車種や搭載エンジンといった詳細は今回の説明会では明らかにならなかったものの、「六角形のグリルを中心として、非常に自信に満ちた、また力強さ、あるいは質感といったものを表現する表情にしている」と、中村氏は説明している。

2016年にはインドで50%、インドネシアで40%、ロシアで30%(いずれも2010年比)のダットサンの需要が増加すると予測
「明るい未来観」「上昇志向」「クルマへの強い憧れ」「高い要求水準」を持つユーザーをターゲットとするダットサンの提供する価値ダットサンの商品特徴は「運転することが楽しい」「安心して所有できる」「敷居が低い」こと
「運転することが楽しい」には「最新のデザイン(誇れるデザイン)」「軽量(燃費がよく、キビキビ走る)」「拡張性(自分好みのクルマに仕上げられる)」が含まれる「安心して所有できる」には「優れた耐久性と信頼性(グローバルな日本の自動車メーカーの知識と経験に裏付けられた現地技術の採用)」「実用的で使いやすい(各市場の最量販セグメントに特化した商品)」「行き届いたさまざまなサービス」が含まれる「敷居が低い」には「納得のいく価格」「競争力の高い保有・維持費」「魅力的なセールス・サービス体験」が含まれる
ダットサンの商品特徴を実現できる理由ビジネスモデルビジネス目標

(編集部:小林 隆)
2012年 3月 22日