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日産、サウジアラビア市場のシェア倍増など“AMI地域”の取り組みをペイマン・カーガー専務が発表
競争が少なく将来性のあるパキスタンなどを“フロンティア”と位置付け
2018年6月13日 20:19
- 2018年6月13日 開催
日産自動車は6月13日、2022年までの中期計画「Nissan M.O.V.E.to 2022」の一環となるAMI(アフリカ、中近東、インド)地域における取り組みを発表。同日に神奈川県横浜市にあるグローバル本社で記者発表会を開催した。
発表会では、このAMI地域を担当する専務執行役員のペイマン・カーガー氏が登壇。2022年度までの将来予測や各地域での取り組み内容などについて解説。カーガー氏はAMI地域について、現在でも日産のプレゼンスが強い地域であるとしつつ、今後はさらに拡大する高いポテンシャルを持っており、地域内における日産の事業を最大化するために新たな5カ年の計画を立案したと説明した。
AMI地域の現状としては、グローバル全体需要の10%にあたる880万台の年間販売台数があり、世界の人口で44%がこの地域に住んでいることに加え、この人口の60%が30歳未満という人口構成になっているなど強い成長が続くと予測。この若いユーザーは「貧弱だが安い」といった製品やサービスを求めておらず、夢や希望のある製品に対する欲求を日産が満たしていくとカーガー氏は説明。また、83カ国で構成されるこの地域は多様性に富み、積極的にダイバーシティの取り組みを推進している日産こそ計画が実現できるとした。
市場全体で年間販売台数は880万台(2017年)から1200万台(2022年)に約40%の成長を果たすと想定。ニーズが大きく高まりを見せている成長市場であり、これに合わせて5カ年の計画は野心的なプランにしているという。
AMI地域全体としての中期計画では、市場占有率を高めつつ2桁以上の高い利益率を最大の目標として設定。この高いハードルをクリアするために、「未開拓市場への拡大」「エクセレンス(オペレーションの強化)」「現地生産の拡大」「品質とサービス」「ニッサン インテリジェント モビリティ」「ダットサンブランドの拡大」という6つの柱が重要になるとカーガー氏は語り、未開拓市場については83カ国の国の中では日産が進出していない大国が複数あり、典型的な例として数カ月前にダットサンブランドを市場導入することを発表したパキスタンがあり、中期計画では今後も展開を続けていくとした。
また、日産はAMI地域に多くの工場を持っているが、現状ではフル稼働には至っておらず、新型モデルの投入などを契機にして稼働率を向上させて競争力を高めていく。また、自動車に高い関税を設定している国も多く、そうした国での現地生産と輸出のバランスを最適化することが必要になるとカーガー氏は解説した。
ダットサンブランドについてはすでにAMI地域が高いプレゼンスを持っており、ダットサンの年間販売でインドが半数となる50%を占めているが、ほかの国でもブランド戦略の強化を実施。前出のパキスタンでの展開のように新規進出によるブレークスルーを目指すとした。
具体的な戦略では、未開拓市場の参入についてパキスタンでの事例を紹介。パキスタンは世界第6位となる2億人以上の人口を擁し、半面で自動車保有は1000人あたり18台に止まっていることで高いポテンシャルがあると分析。さらに乗用車市場では日本メーカーのスズキ、トヨタ自動車、本田技研工業が乗用車市場の90%を確保する「日本マーケット」となっており、2023年~2024年には新車販売が現状から50%増の33万台になると想定している。
日産では3月に現地パートナーとなる「ガンダーラ日産」とライセンス契約を締結し、現地の生産設備をアップグレード。生産能力を増強したほか、日産が要求する品質をクリアするべく取り組んでおり、ダットサンブランドの新規投入によって、まだ販売モデルが限定的なパキスタン市場で新しい選択肢を求めるニーズに対応。カーガー氏は「日産は全てのツールがそろっており、このマーケットで必ずや成功すると確信している」と語った。
市場ごとの戦略としては、まず進出から長い歴史を持つ南アフリカについて説明。日産は市場シェアを2016年の8.0%から2017年には10.1%に向上させるなど高いブランド力を持ち、プレトリアのロスリン工場にはこれまでに大きな投資を行なって生産能力を高めているが、現時点ではまだまだ稼働率をフル活用できていないという。販売割合では70%がピックアップトラックとなっており、2022年までに乗用車の販売台数を増加させることで市場占有率を15%以上に高めることを計画しているという。
すでに大きな市場となっているインドでは変革を推し進め、「現在は2社しか利益を上げていない」という難しい市場で今後の成功を目指していく。また、インドにはアライアンスの研究開発センターを南インドのチェンナイにオープンしており、同じチェンナイにはこれまでに累計で72万台以上を海外輸出した生産工場もあるなど大きく投資を行なっているという。
車種ではコンパクトクロスオーバーの「redi-GO」が大きく販売を伸ばしているものの、車種ミックスでは辛酸をなめることになったモデルもあるなど慎重な見極めが必要だとカーガー氏は述べ、詳細の発表は先になるものの、これからの数カ月で新たな展開を予定しているという。
中期計画では日産とダットサンの両ブランドで新型モデルを投入して競争力を強化。この新型モデルでは「ニッサン インテリジェント モビリティの要素を多数備えた車種として展開したい」とカーガー氏は解説。また、インド政府が打ち出している「2030年までに全てのクルマを電動化する」という政策を、“日産らしいいくつかの回答”によってサポートしていくとした。
中近東のGCC(湾岸協力理事会)と呼ばれる国々は将来性が高く、「あらゆるイノベーションのショーケースに位置付けられる実験場になる」とカーガー氏は語り、高度なデジタル化が行なわれた製品やサービスがユーザーに提供されていくと予想。しかし、さまざまな力強い競合各社が進出している難しい市場だと分析した。
その難しい市場でも、日産は19車種を展開し、ブランドランキングではUAEで2位、サウジアラビアで3位となっており、GCCで2017年度は過去最高の16.1%のマーケットシェアを実現。非常に強固なプレゼンスを確保しているとカーガー氏はアピールした。
2022年に向けた中期計画では、「プレゼンスの強化」「高い収益性のさらなる向上」の2つを大きな目標として設定。この実現に向けた4つの柱として「サウジアラビアでの事業の強化」「湾岸諸国エクセレンスの推進」「他の湾岸諸国での加速」「ニッサン インテリジェント モビリティの投入」を用意して成長を目指すという。また、数値としての目標としては、サウジアラビア市場のシェアを2017年の7%から2022年には14%以上に高め、10万台以上を販売。これに加えてクウェートでもシェア倍増を実現して、GCCにおけるマーケットシェアを現状から4%増の20%に引き上げるとしている。
プレゼンテーションの終盤にカーガー氏は、Nissan M.O.V.E.to 2022の成功にAMI地域での成功は欠かせないもので、すでに日産は、2017年の成長率でGCC地域がトップ、続いて南アフリカが2位となるなどAMI地域で大きな成功を収めているが、今後も現地生産などのさらなる拡大を目指すとコメント。AMI地域が備える大きなポテンシャルを強力な中期計画で活用し、収益性と市場シェアのさらなる成長と変革を実現。既存マーケットでの成長に加えて新たな市場に進出して販売を拡大していくと語った。