日産リーフを1カ月間借りて使ってみた(中編) 10時間掛けて435km走破、結構遠いぞ郡上八幡までの道 |
日産リーフで片道約500km走って世界遺産の白川郷に訪れてみた |
日産リーフを借りての1カ月生活。前編ではEVの充電インフラにはまだまだ不満があること、そしてリーフがお買い物車としてはなかなか優れものであることを述べたが、中編と後編では苦手だと思われる長距離運転について。自宅のある横浜から岐阜県にある郡上八幡、そして世界遺産にもなった白川郷に2泊3日で行ってみたので、その模様をお伝えする。
旅行に行ったのはお盆の後半、8月15日~17日。奧さんを連れての旅行となった。旅行先は単にキヤノンのCMを見ていて白川郷に行ってみたくなったというのもあるが、実は高速道路上には東名、新東名以外だとほぼ急速充電施設がなく、必然的にEVでの遠出は東名沿いに限られてしまったという理由もある。早いところ東名以外でも急速充電設備を充実させていただきたい。
長距離を走る場合、当然途中で何度も充電する必要がある。急速充電では80%までしか充電できないため、1回の充電で100km走れたとして走行時間が1時間+充電時間30分。つまり100km走るのに1時間30分必要という計算になる。郡上八幡まで400km超、6時間以上は掛かる計算だ。
しかし実際にはそんなに簡単にはいかない。というのも、高速道路上には、大体60km程の間隔で充電器があるのだ。つまり1つ飛ばすと120kmで急速充電1回の走行距離では届かない。つまり半ば強制的に充電器のあるすべてのSA(サービスエリア)に立ち寄らなければならないわけだ。60kmといえばどんなに悪条件でも届く距離ではある。インフラの第一歩としては実に無難な配置ではあるが、使う側にしてみると実に自由度のない配置でもある。
ただし唯一充電回数を減らせる可能性があるのが、満充電からスタートできる初めの1回だ。満充電からならばエアコンを使いながらでも120kmくらいは届くハズだ。
調べてみると、筆者宅の最寄りの横浜青葉IC(インターチェンジ)から東名に乗って最初の充電設備が海老名SA、ここはさすがに近すぎるので素通り。次が足柄SAでその先新東名と東名に別れる。距離で行くと新東名の駿河湾沼津SAが近く、約100kmとおそらく確実に届く範囲。
東名の方だと富士川SAが次で横浜青葉ICからの距離は約120km。満充電でスタート時点の走行可能距離は147kmの表示。これならばこちらも問題なく届くハズ。
では新東名を使うか東名を使うかが問題だ。普通に考えれば距離も短く、勾配の少なさゆえ電費的にも期待ができる新東名を使いたい。駿河湾沼津SAならば横浜青葉ICから充電せずにたどり着けることは確実で、そうなれば充電回数を1回減らし、その分時間も短縮できる。
しかし新東名で懸念されるのが混雑でSAに入れないことだ。新東名はSAが満車になることは珍しくない。さらに入れたとして他のリーフが充電していたらそれだけで数十分の時間ロスになる。さらに最悪の場合、その後の充電ポイントでも同じクルマに先を越され続けることになってしまう。ならば、おそらく一般の利用者にもリーフユーザーにも人気の少ないであろう東名を選んだほうが無駄な待ち時間を減らせる可能性が高い。
とは言え、新東名でもっとも混雑するのは最初の駿河湾沼津SA。出発したのは早朝の4時過ぎだから、混雑する前に駿河湾沼津SAにたどり着けてしまえば後はとんとん拍子にいくかもしれない、などと、とにかく頭を悩ませながらクルマを出発させた。
近所のサンクスで満充電にして出発に備えたリーフ | 満充電の状態で航続可能距離は145kmの表示 | 新東名を使うか東名か、最後まで悩みながら横浜青葉ICを出発 |
走り始めて気がついたのだが、リーフのナビはよくできていて、なんとSAの混雑状況を確認することができるのだ。それで確認してみると5時前の時点ですでに駿河湾沼津SAは混雑の文字。やはりお盆の新東名は危険か?
混雑しているとなれば他のリーフが充電をしている可能性も高い。1台ならまだよいが2台並んでいたら1時間近く待つことになる。そう考えると、とてもじゃないが新東名を走る気はなくなった。まぁ省電費運転で走れば富士川SAでも届くだろう。
■足柄の山がリーフの電力を奪う
東名を走るルートは決まった。次の課題は足柄SAでの充電をしないで富士川SAまでたどり着くことだ。充電を1回減らせれば30分短縮することができる。
リーフはEVなので、高速道路だから燃費がよくなるようなことはない。スピードを出しすぎると空気抵抗で電費が悪化する。むしろ渋滞でとろとろ走っている方が航続可能距離が伸びることさえある。なので80km/hで巡航する。
しかし大井松田あたりにくると、いくらゆっくり走っていても航続可能距離が目に見えて減り始める。オドメーターが進むより速いテンポで航続可能距離が減るのだ。
原因は上り坂だ。東名高速でもっとも標高が高いのが足柄SA付近。つまりさっきからずっと坂を上り続けているのである。
この時点でナビの目的地設定は富士川SAにしていたのだが、足柄SAの8km手前でナビが「このままでは目的地にたどり着けない可能性があります」と警告を始めた。
EVにとって高速走行はあまり得意ではない。なのでトラックをペースメーカーにしてゆっくり走る | 富士川SAを目的地に設定したナビが足柄SA手前で目的地に到達できない可能性があると警告してきた | この警告が出ると、現在地周辺から充電スポットを検索してくれる |
これにはかなりあせった。足柄SAを過ぎればその先は下りになるはず。しかし富士川SAまでずっと下りというわけでもないし、下りでどれだけ電費が回復するかも未知数だ。旅行の滑り出しで電欠なんていう事態は絶対に避けなければならないので、万全を期して足柄SAで充電することにした。
実はこの後確信したのだが、リーフの航続可能距離は直近の電費に合わせてリニアに変化させている。つまり上り坂(電費のわるい状態)がしばらく続いたので、その状態が今後もずっと続いた想定として、かなり厳しい数字を出していたのだ。
というのも足柄SAに到着した時点でバッテリーの目盛りが残り4で到達可能距離が30km。通常だと残り4目盛りなら到達可能距離は40~50kmは残っている。さらに急速充電後も残り10目盛り(12目盛り中)で航続可能距離が73km。いつもなら110~120km程度を表示するはずだ。
さらに足柄SAを出発すると、やはり長い下り坂が続くのだが、走り始めるとみるみるうちに航続可能距離が増え始める。決して回生してバッテリー残量が増えている訳ではない。足柄SAから16km走ったところ、電池残量は1目盛り減ったが航続可能距離は131kmまで伸びた。つまり下り坂で電費のよい状態が続いたためだ。
■急速充電なのにほぼ満充電のなぞ!?
続いて寄ったのが富士川SA。足柄SAから富士川SAまではオドメーターで47.7kmでバッテリーメーターで3目盛りを消費した。つまり、絶対とは言えないが、やはり足柄SAに寄らなくても富士川SAまでは辿り着けたのではないかと思う。
ちなみにこの時点での航続可能距離は77kmで、次の牧之原SAまではナビの案内では66km。この数字だけ信じれば富士川SAは寄らなくても平気そうだが、足柄SAの時とは逆で下りが多く電費もよさそうなので、この77kmを鵜呑みにしてしまうのは怖そうだ。
ところでNEXCO中日本の管理する東名上の急速充電器は、事前に登録しておくことで1回100円で利用することができる。1回の最大充電時間は30分で、急速充電の場合、安全性を考えて80%までしか充電できないことになっている。実際には完全に空になってから充電するわけではないので、30分も掛からず満タン(80%充電)になる。
しかし富士川SAでは不思議なことが起きた。足柄SAから富士川SAまでで減った電気はたった3目盛り。なので15分も掛からずに80%まで充電が終わるだろうと思っていた。しかし、なぜかきっかり30分充電が続き、いつもなら9~10目盛りまでしか充電されない急速充電で11目盛りまで充電でき、航続可能距離も136kmという頼もしい数字になった。
富士川SAから次の充電ポイントの牧之原SAまでは66km、さらに次の浜名湖SAまでは120km。もしかしたら牧之原SAをスキップできるかもしれない。牧之原SAの時点でどうするか決めることにした。
■航続可能距離、小なり、目的地までの距離
ガソリン車で走っているとあまり気にならないが、EVで走っているとアップダウンにナーバスになる。今まであまり気にしていなかったが牧之原SAも比較的標高の高いところにあるようで、牧之原SAの手前も登坂車線があるほどの坂になっている。
その結果やはり航続可能距離がバッテリーの目盛りのワリに減っていて、牧之原SA付近で残りの航続可能距離は47km、ナビで浜名湖SAまでの距離は50km。もちろんナビは充電をするようにと催促してくるが、浜名湖SAは浜名湖のすぐ横にあるSAで標高は決して高くない。ここから下りが続くとなればいけるハズだと賭けに出た。
牧之原SAの手前は登坂車線があるほどの上り坂が続く | 牧之原から浜名湖SAまでは約50kmで航続可能距離は47kmの表示だが、おそらく上り坂で電費が悪化した結果。浜名湖SAは標高が低いのでいけると踏んだ |
結果は見事浜名湖SA到着!! しかし残りバッテリー1目盛り、航続可能距離わずか9kmという状態で、メーターと言い、ナビと言い、あらゆるところにバッテリー残量警告が出ている状態だった。
しかしリーフの航続可能距離は、バッテリー残量が減ってくるほど誤差も減る。なので、慣れてくると心理的には余裕ができてくる。
浜名湖SAに到着したのは丁度8時30分。浜名湖SAの朝食バイキングで朝ご飯を済ませる。充電の30分をどのように過ごすかも、リーフで長距離ドライブをするときは重要だ。その点、御殿場SA、富士川SAとも富士山が見えるし設備も充実していて同乗者にも飽きさせなくてありがたい。
浜名湖SAの次は上郷SAだが問題はそこから先にある。目的地の郡上八幡は東海北陸道沿い。しかし東名から外れた時点で高速道路上に充電施設がなくなってしまう。郡上八幡には、急速充電ができる日産ディーラーがあるが、そこまでは120km程度あるのでわずかに届かない。しかもおそらく後半は上り坂が続くことを考えると、できるだけ余裕を持っておきたい。
そのため岐阜各務原ICで降りて「岐阜日産 にっさんパーク金園通り店に立ち寄ることにした。丁度旅行初日は日産ディーラーがお盆でお休み中。お盆中の日産は急速充電器を24時間開放しているのだ。
途中で高速道路を降りるのでちょっと高速代は増えてしまうが、燃料代がほとんど掛かっていないのでこれくらいの出費はまったく問題ない。
にっさんパーク金園通り店はお盆中もスタッフが常駐していて対応してくれた。さらに法人会員なので525円を払おうとしたが、お盆中なのでとサービスしてくれた。ありがとうございます。
■夜通し踊り続ける街、郡上八幡に到着
そしていよいよ初日の目的地、郡上八幡に到着。郡上八幡のディーラーはスタッフはいなかったが、こちらも急速充電器が開放されていて、セルフではあるが自由に充電することができた。スタートから約435km、時刻は14時15分なので約10時間の道のりとなった。
いよいよ郡上八幡ICだ。ここからは下呂温泉も近いのだが、充電施設がないので断念した | ICのそばに日産郡上店はある。お盆中はだれもいないがセルフで無料充電が可能だった | 岐阜から57.3km走って残り52km |
郡上八幡は郡上八幡城の城下町。決して大きな街ではないが、お城の麓の街には古い建物や景色が広がり、小京都の情緒を楽しむことができる。
街中を少しリーフで走ってみたが、やはり走行音がほとんどしないため、通行人に気づいてもらえないこともしばしばあった。しかしリーフに乗っているとあまり急ぐような気分にはならないので、ゆっくりと観光を楽しむことができる。また、ゆっくり走っていると、「あれ、電気で走るクルマよ」なんて指さされることもあった。
郡上八幡に来た一番の目的は郡上おどりだ。郡上おどりは日本三大盆踊りの1つ。7月中旬から9月上旬まで33夜に渡って開催される日本一長い盆踊りで、ちょうどお盆の8月13日~16日は朝まで踊り続ける徹夜踊りとなる。
宿は市街からは離れた場所になったが、宿から送迎のバスが出て、2時間程度ではあったが踊りに参加してきた。期間中の述べ来場者数が25万5000人とのことなので、おそらく1万人程度はいるであろう群衆が路地を埋め尽くし、全10種類の踊りを舞う姿は圧巻。見よう見まねで踊りの輪に入ってみると、時間が長いのでだんだん踊れるようになってきて、初参加でも楽しむことができた。見ていると毎年参加しているような常連客も多く、確かに日本の夏祭りを存分に満喫できた。
また、郡上八幡は食品サンプルの生産でも有名な地で、日中は食品サンプルの体験などもすることができた。
と、ずいぶん長くなってしまったので、中編はここまで。いよいよ次回は世界遺産の白川郷に向かう。
(瀬戸 学)
2012年 10月 1日