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会田肇の「ソウルモーターショー2013」見て歩き
12カ国・約210社が出展した過去最大規模での開催
(2013/9/20 00:00)
12カ国・約210社が出展。新展示場のオープンで来場者は過去最大を記録!
3月28日より4月7日まで11日間に渡って開催されたソウルモーターショー2013は、過去最高となる105万人が来場するという、かつてない盛り上がりを見せて終了した。この来場者数は東京モーターショーの約85万人(2011年)を上回る。出展社数も前回の8カ国・139社を大幅に上回る12カ国・約210社が出展し、自動車メーカーだけでも世界29メーカー(商用車含む)が顔を揃える豪華なショーとなった。
なかでも注目だったのは開催会場だ。建築中だったKINTEX2をモーターショーとして初めて使用し、これまで使用していたKINTEX(KINTEX2のオープンで「KINTEX1」となった)と合わせ展示スペースは前回(2011年)の2倍近くにまで拡大。面積を計10万8483平方メートルとし、これは東京モーターショーが開催されるビッグサイトを超え、イベントホールとしてアジアで5番目の広さになるのだという。
また、日本でこそほとんど見ることがない韓国車だが、多くの人に知られているように韓国車の世界進出は目覚ましい。欧米各国では日本車を凌駕する存在にまで急成長し、なかでも韓国自動車メーカーのトップに位置する現代自動車は世界のトップ5に躍り出ているほど(2012年)。昨年暮れに「燃費水増し表示」が発覚し、年初来のウォン高も重なってその勢いにやや翳りが出て来てはいるものの、それでも世界で韓国車の存在感が年々高まっていることは疑いのない事実だ。ソウルモーターショー2013はまさにそのお膝元で開催されたのだ。
圧倒的存在感のヒュンダイ。次世代クーペモデルをコンセプト出展
さて、韓国で開催されるモーターショーだけに当たり前ではあるが、韓国車の存在感はひたすら大きい。乗用車系で出展した主要な韓国勢は、現代自動車(ヒュンダイ)とその傘下の起亜(キア)自動車、ルノーサムスン、双竜(サンヨン)自動車、韓国GMの5社。いずれも展示スペースは大きく取り、ワールドプレミアも数多く披露する華やかさにあふれていた。
その中でやはり圧倒的存在感を見せたのはヒュンダイだ。ワールドプレミアとして披露したのはスポーツクーペコンセプト「HND-9」。ヒュンダイ・ナムヤン研究所でデザインされた9番目のコンセプトカーであることを意味し、ボディーサイズは現行ジェネシスクーペよりも少し大きい。エンジンは3.3リッターターボ、8速ATを組み合わせる。プレスカンファレンスでは「VANASE(ヴァネス)」という名称も紹介され、ジェネシスクーペの後継モデルとなる公算が強い。
もう一つワールドプレミアとなったのがエルメス社とインテリアをコラボしたコンセプトカー「Equus(エクウス) by Hermes(エルメス)」。同車はヒュンダイの最上級大型サルーンで、このリムジンをベースに高級ブランド「エルメス」の世界観を表現。エルメスの高級バッグに使用する皮革で内装を仕上げ、収納部も設けて豪華さを際立たせた。
Cセグメントセダン「Avante(アバンテ。海外名はElantra)」には新たにスポーティな「Avante Coupe(アバンテクーペ)」が登場。間もなく市販が開始される予定で、セダン同様、高い人気が予想される。また、ヒュンダイはEVやPHVにも熱心で、すでに発売した「Sonata hybrid(ソナタハイブリッド)」や「Avante EV(アバンテEV)」など、環境対策車の出展も目立った。
キア、ルノーサムスンより若者にアピールする新型車が続々と登場
ヒュンダイ傘下のキア。韓国で“軽自動車(日本の規格とは異なる)”と呼ばれるベーシックカーから上級サルーン、SUVまで揃えるが、今回の展示で目を引いたのは若い世代へのアピールだ。その中でワールドプレミアとしたのはドアを観音開きとしたコンセプトカー「CUB(カブ)」である。全長を4m以下としながら運転の楽しさと高い実用性を追求。ボディー表面の段差を少なくし、ドアハンドルもタッチスイッチとするなど、空気抵抗の低減と同時にスタイリッシュさも実現した。
また、昨年のパリ・モーターショーでワールドプレミアされた3列シートのMPV「Carens(カレンス)」を出展した。1999年の発売以来、4世代目の登場となる。プラットフォームはK3と共有し、エンジンは経済性を重視して1.7リッターディーゼル(VGT)と2.0リッターのLPIエンジンを用意する。
ルノーサムスンがワールドプレミアとしたのは小型SUV「QM3」だ。ルノーがジュネーブモーターショー13でワールドプレミアした「CAPTUR(キャプチャー)」のルノーサムスン版で、エンブレムの変更が主な違い。SUVならではのスポーティさと、MPVの快適性、ハッチバックのようなカジュアルな使い方ができることをコンセプトとしている。
超大型モデルを相次いで登場させたサンヨン、パワフルなEVを発売する韓国GM
大型車やSUVをメインとするサンヨンがワールドプレミアしたのは、大型SUVコンセプト「LIV-1」と、大型サルーン「Chairman(チェアマン)」の装備を豪華に徹底追求した「Chairman W Summit」の2車種。LIV-1はスマホ連携をはじめとする先進の通信システムを備え、ドライブ中に楽しめるエンタテイメントの拡張性も大きなポイントとしている。「Chairman W Summit」は、シートに電動レッグ&フットレストを組み込み、オーディオにハーマンカードン、ワイヤレス充電システムなどを採用。天然素材の木目パネルを採用するなど、贅を尽くした造りとなっている。
韓国GMは、ブランドこそGMを名乗るものの、実は韓国の現地法人で韓国内生産を行っている歴とした韓国メーカーだ。生産しているのはシボレー。出展車の中で興味を引いたのは、今夏より米国内で発売することが決定しているコンパクトハッチの「Spark(スパーク)EV」。米国内で開発・生産した電動システムを搭載し、最高出力は110kW、なかでも最大トルクはこのクラスとしては異例に太い542Nmを獲得。時速0~60マイル(時速約96km)までの加速時間も8秒以下で走りきれるという。急速充電方式に「Combined Charging System(コンボ)」を採用していることも見逃せない。
日本メーカーも未発表車種を展示
華やかな韓国車メーカーに比べて、日本車メーカーは出展内容で少々地味な印象を受けた。トヨタはレクサスを、日産もインフィニティを別ブースで展開するなど、以前よりも展示スペースを拡大しているが、出展したのはすでにほかのショーで公開したものばかり。とはいえ、日本では未発表の車種も少なくなく、日本人にとっては興味深いショーであることは間違いない。
トヨタは、韓国で人気が急上昇している「CAMRY(カムリ)V6」を公開したほか、プレミアムセダン「AVALON(アバロン)」や間もなく日本でも導入される予定の「RAV4」なども披露。もちろん、HVやPHVも展示し、トヨタの次世代スモールハイブリッドコンセプトカー「FT-Bh」の出展も行われた。レクサスで目を引いたのは「LF-LC」だ。市販も検討されているとの噂も出ているだけに、その完成度は着実に上がっているようにも見えた。また、ニュージェネレーション「IS」をバンコクモーターショーに続いて出展。日本よりも早い披露となった。
日産が披露したのは、2012年に米国でデビューしているSUV「PATHFINDER(パスファインダー)」と、日本でもおなじみの「JUKE(ジューク)」。日産は、前回のソウルモーターショーで「CUBE」を投入して、とくに若い世代からの支持を集めており、これらの車両の投入をきっかけにラインナップの拡充をしていく考えだ。インフィニティでとくに目立った展示はなかったが、昨年のニューヨークモーターショーに出展した高級EV「LEコンセプト」を出展。ホンダは新型「シビックハイブリッド」を公開したほか、バンコクモーターショーにも出展したニュー「ACCORD(アコード)」を展示した。
欧米の自動車メーカーも新型車を多数展示
欧米勢ではフォルクスワーゲン、ポルシェ、アウディ、メルセデス・ベンツ、ジャガー、ランドローバー、BMW、MINI、プジョー、シトロエン、ボルボ、フォード、マセラティが軒を連ねた。注目は、昨年暮れから今春にかけてワールドプレミアされた新型車を数多く準備していたこと。日本では未発表の車種も多く、その意味でソウルモーターショーは東アジアでもっとも早く欧米の新型車が見られるショーとしても注目できる。
そんな中、欧米勢で最も広い会場を展開したのがメルセデス・ベンツだった。その目玉は2つあり、1つはNEW「A-Class」で、もう1つは今年のデトロイトショーでワールドプレミアとなった「CLA-Class」。「A-Class」は「B-Class」とプラットフォームを共有するだけにインテリアも含め、かなり似ている部分が多い。それでいて身近な価格設定が魅力となる。「CLA-Class」は、A-Classの“4ドアクーペ”として新たにラインナップされた。全長は4600mmを超えるものの、スタイルからも分かるように車内はかなり狭め。それでもスタイリッシュさを求める、とくに若い世代に対してアピールすることにしている。
BMWで目を引いたのは未発売のコンセプトモデル。ハイブリッドスポーツカー「i8 concept」は2011年のフランクフルトショーで初登場し、同じ年の東京モーターショーにも出展されたコンセプトカー。しかし、2014年にも市販が予定されるという。より市販車に近いコンセプトカー「4series coupe concept」も出展された。
フォルクスワーゲンでは日本よりも早く7代目となる「Golf」が披露された。出展車は1.4リッターのTSIモデルだが、韓国では需要の高いディーゼル車の投入も決定している。韓国では初披露となったNEW「POLO」にも注目が集まった。
ポルシェで存在感が高かったのが昨年LAオートショーで発表された「Cayman(ケイマン)S」。そのほか、ジャガーの「タイプF」、リンカーンの「MKZ」、シトロエンの「DS3カブリオレ」、プジョーの「208GTi」などが新しい。
ショー全体を通して感じた印象は、コンパクトカー偏重が進んでいる日本とは違って、中大型車志向がとても強いことだ。街で見かける車両もどれも大きく豪華。とくに“リムジン”に匹敵するようなサルーンカーを用意したり、多人数を載せるMPVにしても内装はやたら贅を極めている。この辺りは日本ではほとんど見られない傾向だ。ただ、コンパクトカーである“軽自動車”への関心はセカンドカー需要などで徐々に高まってきつつあるという。それと、韓国ではもともと経済性を重視してディーゼル車の普及が進んでおり、日本に比べるとHVの普及率は低い。PHVやEVもまさにこれからという状態だ。
一方で、韓国内では販売価格の引き下げ合戦も始まっているとの報道もある(中央日報2013年4月1日)。背景にあるのが輸入車の躍進だ。韓国が結んだ自由貿易協定(FTA)に基づく段階的関税引き下げに加え、円安・ウォン高はライバルである日本車に追い風になっている。今や輸入車にとって有利な状況が着実に形成されつつあるのだ。韓国内の新規車両登録台数は年間150万台ほど。日本と同様、若者のクルマ離れは深刻になりつつもある。それほど大きくない市場で、輸入車を交えた激しいシェア争いが今後も続きそうだ。