インプレッション

トヨタ「ハリアー」(2017年マイナーチェンジ/2.0リッター直噴ターボ)

2.0リッターターボをラインアップに追加

 トヨタ自動車「ハリアー」はクロスオーバーを日本に普及させた象徴的なモデルだ。それまでオフロードのイメージが強かったSUVカテゴリーだが、1997年にハリアーが登場して以降、クロスオーバーという都市部の使用を中心としてアウトドアまでカバーするワイドレンジなSUVが一気にユーザーの共感を呼んだ。

 今回のハリアーは、2013年にフルモデルチェンジされた3代目のビッグマイナー版だ。20年にわたるハリアーの歴史の中で初めて2.0リッターターボを搭載モデルに加え、好調なハイブリッドとともにラインアップが強化された。これによりラインアップは自然吸気の2.0リッター、2.0リッターターボ、ハイブリッドという3本立てになった。

 ここでは新規投入の直列4気筒2.0リッター直噴ターボエンジン「8AR-FTS」搭載モデルに焦点をあてて試乗レポートをしていく。

ハリアーは6月のマイナーチェンジに伴い、2.0リッター直噴ターボエンジン搭載モデルをラインアップに追加。写真は同エンジンを搭載する「PROGRESS」(2WD)で、価格は405万円。ボディサイズは4725×1835×1690mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2660mm。ボディカラーはダークレッドマイカメタリック

大排気量の自然吸気エンジンのような加速フィール

直列4気筒2.0リッター直噴ターボエンジン「8AR-FTS」エンジンは最高出力170kW(231PS)/5200-5600rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/1650-4000rpmを発生。JC08モード燃費は13.0km/L

 8AR-FTSは、ターボによるパフォーマンス向上よりも燃費志向に振った新世代ターボだ。とはいえ、ターボ特有のトルクの豊かさと自然吸気エンジンに近いドライブフィールは、トヨタがターボに何を求めているかが分かる。

 8AR-FTSはレクサス「NX」で登場以来、順次搭載車種を拡大しているが、231PS/350Nmの出力は2.0リッターターボとしては不足ないパフォーマンスだ。このエンジンは微低速回転域のレスポンスが優れており、トルクの盛り上がりも唐突ではなく、あたかも大排気量の自然吸気エンジンのような滑らかさだ。

 メカニズム的には、エキゾーストマニホールドをシリンダーヘッド一体型として排出ガスの温度を下げ、燃費を向上させる新世代のヘッドや、レスポンスを向上させるツインスクロールターボ、直噴/間接のターボ用「D-4ST」、エンジンに直付けされた水冷式インタークーラーなどで、日常的な使用でのドライバビリティと高燃費を出せるエンジンに仕上がっている。その半面、強烈なパンチのある加速フィールはあまり期待できない。あくまでも大排気量の自然吸気エンジンのような滑らかな加速フィールがポイントだ。

 微細に見るとアクセルの踏みはじめの一瞬では反応が途切れるが、それもすぐに伸びやかな加速につながる。また、低中速域のトルクがあるのでどの回転からもレスポンスよく加速し、典型的なターボエンジンの息つき感はほぼ感じられない。わずかなアクセル開度でユッタリとした伸びやかな加速につながって非常に使いやすいエンジンだ。組み合わされるトランスミッションは電子制御トルコン6速で、滑らかな変速とシャープな加速のコンビネーションを得ている。100km/h走行時のエンジン回転数は1800rpm程度なので、高速巡行では燃費のよさがいかんなく発揮される。

 プラットフォームは従来型の踏襲だが、ターボモデルには前後サイドメンバーにパフォーマンスダンパーを装着し、微小な振動を吸収してボディ剛性アップに貢献。ハンドリングでは、ハリアーのハンドル応答性がさらにスーと切れるイメージでグイグイと曲がっていく。背の高いSUVだがロールはよく抑えられており、コーナーでの不安感はなく、旋回力の高い安定性が持ち味だ。

ターボモデルは専用の切削光輝&ダークグレーメタリック塗装の18インチアルミホイールを装着(タイヤサイズ:235/55 R18)。また、フロントとリアにパフォーマンスダンパーを専用装備し、直進安定性や操縦安定性を高めているのもトピックの1つ

 もう少し詳しく見てみると、ステアリングの操舵力は重め。しかしハンドル操作に対しては素直で、急操舵が必要な場面でも姿勢安定性は高く、ハリアーはきちんとドライバーの意思を反映してくれる。

 乗り心地は悪路も走ることを想定して若干硬めに設定されているが、大きなうねりに対してはフラットな乗り心地で、このクラスのSUVとして長距離でも疲労の少ない乗り心地になっている。ただ、鋭角的な段差乗り越しに際しては正直な突き上げがあり、細かい振動も残り、ソフトではないがしっかりした印象を得ている。もちろん不快感はない。

 パッケージングに変更はないので、前後席の相対位置関係などの広さは保たれている。もともと余裕のあるキャビンで、包まれ感のある空間はそのままだ。さらにマイナーチェンジでインテリアの質感はガラリと趣を変え、メタルとレザーをうまくバランスさせたうえ、ステッチの巧みな配置などでスポーティで高級感のあるものになっている。

 また、ダッシュボードのSDナビゲーションディスプレイは8インチから9.2インチに拡大され、この面でも新しさを出して、見やすくなっている。同時にメーターの視認性ではオプティトロンメーターに変更され、クッキリとしたメリハリは格段に向上した。

「PROGRESS」のインテリア。シート表皮はウルトラスエードと合成皮革(ブラック×レッド)のコンビネーションを採用する。装備面ではメタルカーボンのシフトパネル、レッドステッチ×ディンプル加工が施された本革巻き3本スポークステアリングホイールなどが与えられる。そのほかターボモデルでは、走行制御モードスイッチにスポーツモードが追加された
ターボモデルではスモーク調メッキ加飾のLEDヘッドライトを専用装備

 視角で言えば、ヘッドライト内にLEDシーケンシャルターンランプを配置し、ステアリングと連動してコーナリングライトが点灯する。また、夜間乗降時にドアミラーに配置された足下の照明灯がハリアーのエンブレム付きで点灯するのも新しい。

 安全対応では、「Toyota Safety Sense P」が標準装備された。プリクラッシュブレーキシステム、アダプティブハイビーム、レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付)、全車速追従クルーズコントロールに加えて、シフトレバーと連動した電動パーキングブレーキが標準装備となり、HOLDボタンをONにすることで自動パーキングが機能する。また、インテリジェントクリアランスソナーの超音波センサーを8個に増やしたことで、衝突の危険性が大きく減少しているのも良心的で嬉しい装備だ。

 ハリアーのマイナーチェンジは、ラインアップの整理だけでなく走り、質感とも向上して商品力が大きく向上した。国内のSUVバトルはますます激しくなりそうだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学