インプレッション

ボルボ「V60 ポールスター」

ボルボと密接なかかわり合いを持つポールスター

 1966年に設立されて以来、850やS40/S60、さらにはC30など、さまざまなボルボ車をベースにチューニングを行い、BTCC(英国ツーリングカー選手権)やWTCC(世界ツーリングカー選手権)といったツーリングカー・レースをメインに活動してきたというポールスター。

 ボルボと同様スウェーデンに拠を構え、2009年からは風洞やエンジンラボ、さらにはテストコースなど、ボルボが保有するさまざまなファシリティを利用してのロードモデルの開発も行うことができる“オフィシャル・パフォーマンスパートナー”となっており、この立場を活かして生み出された初のコンプリート・モデルと紹介されるのが、世界で限定750台が発売される「S60/V60 ポールスター」だ。

 実は、ボルボとポールスターの係わり合いは、単に自動車メーカーとその作品をベースとしたチューニング・メーカーという関係に留まっていない。その密接な付き合いはすでに18年にも及び、その間には昨今量販モデルに搭載されて陽の目を見始めた新世代4気筒エンジン“ドライブE”のプロトタイプ・ユニットの開発などまでを手掛けてきたというからだ。

 それゆえ、今回のコンプリート・モデルの開発は、ボルボがポールスターに対して全面的な信頼を置いたからこそ実現したことが想像に難くない。実際、ポールスター・バージョンの生産はボルボの主力プラントであるトースランダ工場で、他のボルボ車と同じ生産ラインを用いて行われるという。もちろん、新車登録から3年間、距離無制限の一般保証や、任意で加入が可能な有償の新車保証延長制度も、通常のボルボ車同様にそのまま適用される。

撮影車は60台限定の「V60 ポールスター」(819万円)。ボディーサイズは4635×1865×1480mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2775mmと、ベースのV60より全幅が20mm広くなるスペック。車両重量は1810kg。このほか30台限定の「S60 ポールスター」も用意される
ベース車からエアロダイナミクスの改善が図られ、専用フロントスポイラーによって車体下部の空気の流れを最適化する
ポールスター専用デザインの20インチアルミホイール(8.0J×20。タイヤサイズ:245/35 R20)。足まわりではオーリンズのショックアブソーバーを採用するとともに、スプリングレートはT6 R-DESIGNで採用するスポーツサスペンションから80%高められている
フロントにブレンボ製の6ピストンキャリパーと371mmの大径ベンチレーテッドディスクを装備してストッピングパワーを高めている
ブラックカラーのドアミラーカバー、グロッシーブラック仕上げのウインドーフレームも専用装備となる
歩行者・サイクリスト検知機能付き追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム「ヒューマン・セーフティ」や、低速用追突回避・軽減オートブレーキ・システム「シティ・セーフティ」などをセットにした「セーフティ・パッケージ」を標準装備して安全性も高められている
テールゲート右側にポールスターのエンブレムがつく
ルーフ・スポイラーも専用品
迫力のサウンドを奏でるエンドパイプ・ダブルとともに、リアディフューザーも専用装備
ブラックを基調とするインテリア。本革とヌバックを組み合わせた専用のコンビネーションシートを装備するほか、専用カーボンファイバー・パネルなどによってスポーティ感が高められている
シフトノブ内部にもポールスターロゴがあしらわれる
メーターまわり
専用装備のスポーツペダル
ポールスターロゴ入りキッキングプレート
チルトアップ機構付電動ガラスサンルーフも標準装備される
リアシートは40:20:40の3分割可倒式を採用する

“スーパースポーツカー級”の速さ

 テストドライブを行ったのは、割り当て90台のうち60台を占めるというV60。ちなみに、そんな日本への割り当て台数はオーストラリアの140台、イギリスの125台、アメリカの120台、スイスの100台に続き世界の市場で5番目の多さだという。ボディーカラーにはホワイト、そしてブラック・メタリックと選択肢があるものの、今回のテスト車である目にも鮮やかなブルーこそが、ポールスター・バージョンのイメージカラー。そもそも、ポールスターのブランドロゴもこの色がベース。それは「スウェーデン国旗をモチーフとしたもの」でもあるという。

 そうした派手なボディーカラーに加え、ベースモデルに対して30%増しのダウンフォースを生み出すという専用エアロキットや、リアのディフューザー左右端から顔を覗かせる太めのテールパイプ、さらには20インチのシューズなどから、一見して「ただ者ではない」迫力を滲ませるのがこのモデルのエクステリア。

 一方のインテリアは、エクステリアの大胆なイメージチェンジぶりに比べればやや大人しい印象。各部に入るブルーのステッチは、スポーティでありつつもクールなイメージをアピール。欲を言えば、これでもう少しスポーティな専用造形のステアリング・ホイールなどが採用されれば、全体なイメージはさらにグンと精悍になりそうだ。

 ベースとされたT6グレード用の304PS/440Nmという値に対して、ターボやインタークーラー、エキゾースト・システムなどに専用チューニングが施され、46PS/60Nmのパワーとトルクが上乗せされた直列6気筒3.0リッターターボエンジンに火を入れると、誰もがまず驚くであろうは、到底「ボルボ車のそれ」とは思えないほどに迫力あるサウンドだ。

直列6気筒DOHC 3.0リッター「B6304T」エンジンに新開発のツインスクロールターボとインタークーラーを装着。さらに専用コンピュータプログラムを採用し、最高出力258kW(350HP)/5250rpm、最大トルク500Nm(51.0kgm)/3000-4750rpmを発生。JC08モード燃費はS60/V60 ポールスターともに9.6km/L。本国仕様の0-100km/h加速は4.9秒、0-200km/h加速は17.7秒、80-120km/h加速は4.7秒と公表されている

 そして、それが決して“伊達”などではないことはDレンジを選択してアクセルペダルを踏み込んでみれば、すぐに納得ができる。4WDシステムを備えることもあり、1.8t超と軽いとは言えない重量の持ち主にもかかわらず、独自のドレスアップが図られたこのV60のボディーは瞬く間に予想以上の勢いで速度を高めていく。スタートの瞬間のトラクションの高さもあり、静止状態から5秒を切る勢いで100km/hに達してしまうというのだから、その速さはもはや“スーパースポーツカー級”だ。加えて前述のように「迫力のサウンド」も耳に届くのだから、スポーツ派ドライバーにとっても満足度は高いのである。

 一方のフットワークも、なるほどこれは“その筋のスペシャリスト”が手掛けたものというだけあって本格的な仕上がりだった。少々路面の荒れた街乗りシーンでは、正直「ちょっとばかり揺すられ感が強いかな」というテイストでもある。特許技術のデュアル・フローバルブを採用したオーリンズとの共同開発によるダンパーでは、「T6 R-DESIGN比で80%高めたスプリングレートや、15%強化されたスタビライザーを組み合わせた」と報告されるが、さらなる快適性との融合には、今後は電子制御式ダンパーの採用なども課題となってきそうだ。

 一方で、ワインディング・ロードでのアップテンポな走りでは、いかにもサスペンションの横剛性が高そうな、安定感に富んだスポーティなコーナリング感覚が心地よい。そこには、ミシュラン製のフラグシップ・タイヤ「パイロットスーパースポーツ」を採用したり、後輪側へのトルク配分バイアスを増したという4WDシステムの専用チューニングなども当然貢献をしていそう。いずれにしてもロールが抑制され、地を這うような走りのテイストは、こちらも「よくもわるくもボルボ車らしくないもの」と報告できる。

 前述のような重量の持ち主であることを考えれば、ブレーキのタフネスぶりもなかなかだった。ただし、そのペダルタッチにサスペンションのような剛性感の高まりが特に感じられない点は、フロント側にブレンボユニットが奢られたことを思うとちょっと残念でもある。

 かくして、総合的に手が加えられたコンプリート・モデルらしい走りのバランスのよさが光るこのモデルで最後に気になる点はといえば、実のところ、やはり800万円を大きく超えるというその価格に集約をされるのではないだろうか。

「近い将来には第2弾、第3弾となるコンプリート・モデルも手掛けたい」というのが、日本でのローンチに合わせて来日したポールスターのPRマンによるコメント。果たしてこのブランドが“AMG”や“M”のような知名度を持つ存在へと育って行くのか否かは、これからの作品の内容にもかかっていそうだ。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は、2013年8月末納?の981型ケイマンSに、オリジナル・モデルから乗り換えた2009年式2代目スマート、2001年式にして先日”レストア”済みの、10万kmを突破したルポGTI。「きっと“ピエヒの夢”に違いないこんな採算度外視? の拘りのスモールカーは、もう永遠に生まれ得ないだろう……」と手放せなくなった“ルポ蔵”ことルポGTIは、ドイツ・フランクフルト空港近くの地下パーキングに置き去り中。

http://blog.livedoor.jp/karmin2/

Photo:高橋 学