DIYでクルマいじり

NAOさんのDIYでクルマいじり

第27回:旧20系オーナー目線で見る、超進化した新型「ヴェルファイア」5つの注目ポイント

新型「ヴェルファイア」爆誕。DIY好き20系オーナー自称代表として、たっぷりと試乗してきた。その進化っぷりはいかに!?

DIY好き20系オーナー目線で「新型」を徹底試乗!

 前略。満を持して登場した新型「ヴェルファイア」。その報道陣向けの試乗会に筆者も参加させてもらうことができた。結論から言うと、新型=30系ヴェルファイアは「あらゆる面で」旧型20系を上回っており、超・正常進化カイゼンっぷりを体感することができた。

 2008年に登場した初代ヴェルファイア(20系)から約7年の歳月を経て、新素材の開発、新技術の投入、そしてエンジニアはじめトヨタ関係各位の努力のたまものとして誕生した新型ヴェルファイア。今回はDIY好き20系オーナー目線で試乗してきた様子を、手短にお伝えしようと思う。

 いつも連載を読んでくれている読者のみなさんにはご存じの通りだが、筆者の愛車である20系ヴェルファイアは、これでもか! と言うほどの防音・静音・制振対策を施しており、電子装備面でも“快適電化リビング”の名に恥じないDIY施工を行っているため、ノーマル状態の20系とは相当違う状態であることを予めお伝えしておきたい。

横浜みなとみらい某所に新型アルファード/ヴェルファイアが勢揃い。各グレードそれぞれに試乗ができる貴重な体験だった
すてきな景色と最高の天気。なにしろ台数が多いので、試乗に撮影に大忙し
どどーーん! ガソリン3.5リッター/2.5リッター、ハイブリッド、ノーマル・本革・エグゼクティブラウンジと、各モデルが勢揃い。全モデルとも正常進化しており、特に内装質感の向上は目を見張るものがあった

新技術「シートレール給電」にビックリ感動!!

 まず真っ先に紹介したいのは、助手席を2列目後部までドドーンと移動できる「助手席スーパーロングスライドシート」。そんなのCar Watchのレビュー記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20150306_691400.html)でとっくに知っているよと言われるかもしれないが、注目すべきはその革新的なメカニズムだ。

 見た目のスライド幅も圧倒的なインパクトなのだが、筆者はまず「シートの配線ハーネスはどこに行ってしまったのだろう!?」という強い疑問を感じた。なにしろ前席、2列目、3列目とすべてのシートを取り外してDIYを楽しんでいる筆者なので、20系では床からニョキっと生えていた配線がどのように処理されているのか気になって気になって仕方がない。

 試乗車なので分解する訳にもいかず(受付の段階で広報さんから「あ、分解はしないでくださいね(にこっ)」っと釘を刺されたのは変態筆者冥利に尽きる(笑))、シートを前後にスライドさせては覗き込むのだが、配線がまったく見当たらないのだ。

 もしかしてレール自体に何らかの電気信号が流れているのかとテスターで電圧や抵抗値を測定しても反応なし。助手席スーパーロングスライドシートは電動パワーシート仕様ではないが、それでもシートベルト着用センサーと、SRSサイドエアバックの配線が必要なはず。しかもしかも、2列目電動パワーシートの下を覗き込んでも配線がまったく見当たらないではないか。これにはいよいよ頭が大混乱。

助手席スーパーロングスライドシート機構を搭載したモデル。この写真を見る限りでは前席も2列目も至って普通なのだが……
見よ! この超ロングスライドっぷりを!! というのはほかの記事に任せるとして、シートから出ているはずのケーブル類がまったく見当たらない
助手席があった場所の床面を見ても配線がない、ない。何にもない。床面には足下用エアコン吹き出し口以外何もない。これはいったい???
助手席ステップ部分を見ると低床設計なのがよく分かる。それはそうと、一歩下がって眺めてみてもシート配線が見つからない
シートの下に頭を突っ込んでみても配線が見つからない。不思議だ、不思議すぎるぞ
シートレールに直接給電しているのでは、という予想は大外れ。「あの人、なにやってるんだ?」という周囲の目など気にしてはいられない
こちらは筆者の愛車である20系の助手席電動パワーシートを取り外したところ。床からはパワーシート用の各種ハーネス、天井埋め込みスピーカー用のネットワーク回路、何かのセンサーボックスが生えている
筆者愛車の運転席電動パワーシートを取り外したところ。どうしてこうなったのかを説明すると長すぎるので、過去記事を参照願いたい(笑)

見ても乗っても分からないことは質問してみよう! のコーナー

 見ても分からない、乗っても分からない、分解はできない。だからといって、ここで諦めてしまっては一生眠れない夜を過ごすハメになるので、トヨタの製品企画本部 ZH主幹 菅沼英雄氏に質問してみた。

 さすが開発担当者、筆者の疑問は一発で解消。これは“隠れた新技術”の「シートレール給電」システムであることが分かった。スライドレールそのものではなく、レールの横に配線を通し、シート移動とともにレールカバーの内部を配線が動き回るという新技術「シートレール給電」。シート配線の自由度を圧倒的に高めるだけでなく、従来は金属製だったレールカバーを樹脂製にして軽量化するなど大変工夫された設計に感動した。

 ハイブリッドモデルはシート下にバッテリーがあるためスーパーロングスライドが不可能だが、近い将来に技術開発がさらに進めば助手席電動パワーシート装着車でもスーパーロングスライドが可能になることを期待したい。

 ちなみにスーパーロングスライドシートの移動距離そのものではなく、「配線がどうなっているのか」から真っ先に質問した筆者は周囲から相当奇異に見えたようだった(笑)。

ハイブリッドモデルのバッテリー搭載位置は20系と変わらずフロントシート下部だが、形状最適化によりセンターコンソールボックスの収納量と実用性は格段に向上していた
カミさんが座る助手席は、どーしても、ぜったい、何が何でも電動パワーシートにしたい筆者。将来、電動&スーパーロングスライド仕様の登場にもぜひ期待したい
20系から変わらず、助手席電動オットマンが装備されている。新型はホイールベース拡大効果で電動シートの前後スライド幅が大きくなり、オットマンを上げた状態でも足下の余裕が増えていた
筆者は基本的に運転手なので3列目に座る機会はめったにないのだが、ここでもドアトリムや木目調パネル加飾など細かな部分の質感向上が好印象だった
20系では最上級仕様だった「エグゼクティブパワーシート」を搭載した新型モデル。パッと見は同じに見えたが、革シートの仕立てや形状など繊細なチューニングを感じ取れた

超快適!ド・ノーマル状態なのにこの静かさは驚異的!

 筆者が異常なまでに「クルマの静音化」にこだわってDIY施工を続けているのはご存じの通りだが、そのため標準状態のクルマに乗ると、つい、「うーん、なんだかウルサイなぁ……」と感じてしまうことが多い。

 20系の「ノーマル状態」と比べれば、新型である30系の方が当然静かに改良されているに決まっているが、「まあ、筆者の愛車と比べてしまうとね~」、などと同行している編集さんに減らず口を叩きつつ、2.5リッター ガソリン仕様車に騒音計とPCをセットして試乗ドライブをスタート。

「……やばい。これは静かだ(笑)」

 筆者はこれまで何度となく「ミニバンとしてはノーマル状態でも十分静かな(20系)ヴェルファイア」という表現を使ってきたが、新型の30系にこの表現は当てはまらない。新型は「高級サルーンとして十分に通用する静かさのヴェルファイア」と言って差し支えないレベル。いや、これには正直驚いた。

 試乗前に、エンジンルームやバルクヘッドなど分解しなくても見える部分をジロジロとのぞき込み、要所要所の静音対策が強化されていることは確認していたものの、それにしても、だ。タイヤハウス部分は軽量化対策の影響なのか、20系に比べて鉄板面積が少なくなっていたし、バルクヘッドも防音性に優れた中空鋼板を採用したと聞いてはいるものの、見た目は従来と変わりなし。

 だが、走り出してみると、ハイブリッドモデル、3.5リッターモデル、2.5リッターモデル、そのいずれもが「極めて静か」なのだ。

 タイヤハウス全体を徹底防音し、“重量級静音施工”といった仕立てではないので砂を巻き上げればシャリシャリという音は聞こえるし、2~3列目も徹底的にレジェトレックス(制振材)やエプトシーラー(防音材)、ニードルフェルト(吸音材)を貼りまくり詰めまくりという訳ではないのでロードノイズも入ってくるし微振動も残っている。だが、しかし「極めて静か」と感じられるチューニングが施されているようだ。軽くて、薄くて、安価に「快適」を実現する、これこそメーカーにしかできない設計レベルでの静音化対策。実に素晴らしい。

 今回は、筆者がいつも騒音測定テストをしているコースとはまったく異なるルートで、かつ日中のため近くを走るクルマの騒音も大いに飛び込んでくる。そのため騒音測定動画の掲載はあえて控え、参考画像2枚のみを掲載したい。

 言うまでもなく、数字も体感も、あっちもこっちも静音対策詰めものだらけの筆者の愛車の方が静かではある。だが、完全ノーマル状態の新型の測定値は、相当な悪条件下にも関わらずそれに近い静かさを表しており、そんじょそこらの高級セダンに勝るとも劣らない。しかも、なによりノーマル状態でこの静かさなのだ。こりゃまいった。新型ヴェルファイアを静音化DIY施工したら、どれだけ静かになるのだろうか……、期待せざるを得ない。

【参考】新型(30系)/17インチ/一般道/日中(環境騒音大)40km/h=54.4dB。筆者愛車の超静音化仕様(20系)/17インチ/別の道路/深夜(エコピア装着時)=54.8dB、ブリザック VRX装着時=50.6dB
【参考】新型/17インチ/首都高速/日中(環境騒音大)60km/h=65.9dB。筆者愛車の超静音化仕様(20系)/17インチ/別の道路/深夜(エコピア装着時)=62.4dB、ブリザック VRX装着時=58.4dB
新型の運転席足下をのぞき込むと、20系に比べて厚めにニードルフェルトが充填されていた。パーキングブレーキペダルもないのでスッキリしている
筆者愛車。詰めものモコモコでより重く、より静かに。愛情たっぷりで施工してあるので、新型ノーマル仕様の静かさを体験してもまったく悔しくなどない……

フロントトレッド幅10mm拡大、ホイールベース50mm拡大、なのに小回り性能向上ですと!?

 新型も20系同様、タイヤサイズは16/17/18インチの3種類から選ぶことができ、試乗車は17インチ仕様と18インチ仕様の2タイプが用意されていた。ステアリングフィールはまるでスタッドレスタイヤを履いているかのような軽さだが、路面からのインフォメーションが足りないということもない絶妙のバランス。

 これを「軽すぎる」という人もいるのだろうが、ヴェルファイアで走行会に出る訳でもなく、制限速度以上でぶっ飛ばすこともなく、峠道でタイヤを鳴らすこともなく、西へ東へ平和に走り続ける筆者に言わせれば「軽くて何がわるいのか」だ。スーパーの駐車場、観光地の路地、会社の裏手にある駐車場での切り返し罰ゲーム、そのどれをとってもステアリング操作は軽いに越したことはない。

 主要諸元を見ると、フロントのトレッド幅は10mm拡大され、ホイールベースも50mm伸びている。さらに全長も80mm伸び、車幅も20mm拡大。これらは室内スペースの快適性向上に大きく寄与している訳だが、普通に考えれば取り回しが悪化することは避けられない。しかし、ここでも新型は常識を覆し、フロントサスペンション周辺の設計を見直してタイヤ切れ角を大きくすることにより、最小回転半径は逆に0.1m小さくなって取り回しが向上しているのだ。「まぁ、なんということでしょう」と思わず口走ってしまったぞ。

 筆者愛車は17インチ仕様をチョイスしているのだが、新型は17インチのみタイヤ幅が10mm拡幅されていた。こちらも理由を担当氏に質問してみると、ハイブリッド エグゼクティブラウンジなど重量が増した仕様にも対応できるようにするため、とのことだった。

 時間の都合で筆者は外から見ているだけだったが、切り返し操作まで支援してくれる「インテリジェントパーキングアシスト2(IPA2)」もトヨタ車として初搭載。ちなみにレクサス車にもまだ導入されていない最新のテクノロジーなのだ。

 今さら言うまでもなく、ヴェルファイアはデカい。かなりデカい。だが、デカいからこそ快適な室内空間が得られている。このデカさは正義、なぜなら、ヴェルファイアの広大な室内空間こそ人類の夢だからだ。

 だがしかし、ヴィッツのオーナーであるカミさんに言わせれば、「こんなに大きなクルマ、細い道とか車庫入れとか無理だから……」という衝撃のコメントが。人は土から離れては生きられないのと同様に、急に大きなクルマは運転できないというのもまた事実。このようなシチュエーションでこそ、IPA2が真価を発揮するのだ。

筆者:「いいからいいから、大丈夫だから、ちょっと運転変わってよ」
愛妻:「え~、だから無理だってば、知ってるでしょ?」
筆者:「今度の新型なら大丈夫。パパを信じて、とにかくステアリングを握ってみてよ」
愛妻:「もぅ……しょうがないなぁ……」
筆者:「スイッチ、ぽちっ!」
愛妻:「えっ!?、ええええっっ、、、!!??!?」
子供たち:「うわぁ、すご~い!!」

 何という家族愛、なんという近未来。この妄想寸劇のためだけでも、新型を買う価値があるのかも知れない。

 筆者を始め、クルマ大好きオッサンであれば、ハイテク装備なんかに頼らなくても免許範囲最大サイズのクルマをサクッと運転駐車できて当たり前。そうではなくて、ゲストの「ここ一番」で役に立つのがハイテク装備なのだ。うん、買い換える際には絶対注文しよう。

新型ヴェルファイアの革新的メカニズムの1つ、リアサス周辺の様子。緻密に組み立てられた設計とパーツ形状は、一晩眺めていても飽きない美しさ
低床フロアにダブルウイッシュボーンサスと、リアハイブリッドモーターまたはガソリン車4WD機構を格納しつつ、ダンパーも寝かさずキッチリ倒立形状で性能を引き出している
パーキングブレーキはコンパクトな電動仕様で各種電子制御との親和性も高い。筆者愛車は足踏み式なので、雪道のクローズドコースでパーキングブレーキターンができるので悔しくない
17インチ、18インチともにホイールデザインも一新。切削面を黒く塗装するなどし、よりスタイリッシュな外観になった
17インチ仕様車は、ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)のブルーアース E51(225/60 R17 99H)を装着。純正装着タイヤながら、筆者が20系の購入当初に感じた舵角の違和感などは皆無だった
18インチ仕様車はトーヨータイヤ(東洋ゴム工業)のトランパス R30(235/50 R18 97V)を装着。トレッドの主溝4本に加えて3本の細い縦溝を設けているためか、17インチから乗り換えても硬すぎず好印象だった

新設計! 2.5リッター「2AR-FEエンジン」に興味津々。排気量アップ、パワーアップ、トルクアップ、さらに燃費性能もアップ

 新型ヴェルファイアで唯一、完全新設計エンジンとなった2.5リッターエンジン「2AR-FE Dual VVT-i」。一部の海外モデルでは7年前から採用されていたそうだが、今回アルヴェル用として専用チューニングをした上で国内モデル初搭載となった。

 トヨタのミドルサイズ車種に幅広く搭載されてきた2.4リッター「2AZ-FE」エンジンの後を引き継ぐ2ARエンジンは、腰上腰下ともに完全新設計で、カム駆動方式も2AZまでのラッシュアジャスター式からロッカーアーム式へと変更。また、排気量+100cc化により最高出力は134kW(182PS)、最大トルクは235Nm(24.0kgm)と、2AZから+12PS/+1.2kgmを実現しながらも、フリクション低減やアイドリングストップ機構によりエンジン単体燃費、車両搭載時燃費(+1.2km/L)の両方を改善している。

 排気量が増えて、出力が向上して、燃費もよくなっている、なんだかよいことずくめの2ARエンジン。とはいえ、いろいろ疑問も沸いてきたので、トヨタテクニカルディベロップメントで2ARエンジンの設計を担当した水口篤氏に質問したみた。

──排気量をアップして、エンジンパワーも増えて、そのうえ燃費がよくなるというのはにわかには信じられないのですが?

水口氏:その信じられない性能を実現するために、チーム一丸となって本当に頑張りました。

──2AZのラッシュアジャスター式から、2ARではロッカーアーム式に変更されていますが、エンジンヘッド部の稼働パーツが増えるとノイズも増えるのでは? と聞きたいところですが、乗ってみたらとても静かでした。一体どんな魔法を使ったのでしょう?

水口氏:魔法ではなくて、技術開発ですね。カム接触面にベアリング機構を採用することで耐摩耗性向上と摺動抵抗低減、そしてノイズも減少させることができました。そのほかにも、センサー系統を増やして従来よりきめ細かく制御するなどしています。

──2AZと比べて、2ARエンジンは縦サイズが大きいように見えました。重量増などの悪影響はないのでしょうか?

水口氏:ロッカーアーム機構をヘッド部分に実装しているため、ご指摘の通りエンジンの高さが拡大しています。パーツ点数も増えるため、実はエンジン単体で10kgほど重量も増えています。ですがエンジン単体でも、車両搭載時でも、燃費性能は向上させています。

 まさに、よいことずくめ。水口さんありがとうございます。

3.5リッターモデルは引き続き2GR-FEエンジンを搭載し、最高出力206kW(280PS)/最大トルク344Nm(35.1kgm)も変更なし。分かりやすいパワフルさと、V6のスムーズさを兼ね備えている
バルクヘッド部分の見た目は20系と大差なし。だが、防音材内部の鉄板に静音性を高める中空鋼板が採用されている
パッと見たところでは、20系と同様、左右に2個所のアースポイントが用意されていた
2.5リッターモデルは国内初採用となる2AR-FEエンジンを搭載。最高出力は134kW(182PS)、最大トルクは235Nm(24.0kgm)。20系の2.4リッター「2AZ-FE」に比べて100cc増となり、9kW(12PS)/11Nm(1.2kgm)増というスペック。排気量もパワーも増えているのに燃費が向上している
2AZから2ARになりエンジンヘッド位置がこぶし1つぶん高くなったが、バルクヘッド部分へのアクセスは引き続き容易だ
アースポイントは3.5リッターモデルと同様
ハイブリッドモデルは引き続き2AR-FXEエンジン/2JMモーター/2FMモーターを搭載した電子式4WDシステムを搭載。エンジンルームはギュウギュウの満杯状態
吸気パイプに張られているザラザラしたシート状のものは、吸気音を静かにするための素材とのこと
ハイブリッドモデルもグロメットの位置はガソリン車と共通だが、パーツてんこ盛りなので手が入れにくかった

 むむむ、何というよいことずくめ。正直いろいろ言われてきた2AZエンジンの弱点をすべて潰した改良版が2ARという解釈で間違いなさそうだ。実際に運転してみるとCVTとのマッチングも素晴らしく、動力性能、静粛性ともに文句なし。あまりの興奮に「アイドリング時の振動も本当にないですね!」と、アイドリングストップ仕様車の試乗中に発言してしまったことは極秘中の極秘だ。筆者が買い換えるならV仕様の2.5リッターで決まりかなぁ……おっと、私は何を言っているのだろう。

 もちろん3.5リッターモデルはV6ならではのなめらかな加速と豊かなトルクが大変魅力的であり、ハイブリッドモデルの先進性とEV走行は近未来を感じさせてくれる。いずれの仕様も本当に素晴らしい完成度なので、ぜひディーラーなどで試乗してみて欲しい。

ガソリン3.5リッター仕様に搭載されるバッテリーは20HR 70Ahタイプ。最近はバッテリー型番表記の仕方が変わったのかな? サイズはD26サイズ
ガソリン2.5リッター仕様も同様に20HR 70AhのD26サイズ、CCA性能値は604A。一見3.5リッターと完全に同じ仕様かと思ったら……
ガソリン2.5リッター仕様のみ、バッテリーと電流センサーの「後に」マイナスターミナルのボルトが追加されている。これはとっても親切、ぜひ全車種に採用してもらいたい
ハイブリッドモデルは、あちらこちらに太いメッシュアース線があるのが印象的。「いじるな」と言わんばかりのギュウギュウっぷり
ヘッドライト付近に20系にはない謎の部品があったので担当者に調べてもらうと、ノイズ消し用のパーツとのことだった。変な質問連発でスミマセン(笑)
エンジンオイルを注入しやすいよう、各モデルともカウルカバーが部分的に取り外せるようになっていた。設計者の細やかな心配りが感じられる

質感・操作性ともにキッチリ改善

 20系の内装も「ミニバン」としては十二分の高級感だったのだが、新型はダッシュボードまわりの質感が大幅に向上されていた。メーターまわりの仕上げは特筆に値する。ほぼ毎日、用があってもなくてもヴェルファイアの運転席に座る筆者だけに、この進化は非常にうらやましい、いや、感銘を受けた。

 20系のダッシュボード部分はシボ加工などで質感を向上させてはいるものの、「樹脂による一体成形」でしかない。クラウンやレクサス車などに乗るたびに「あー、やっぱりダッシュボード部分の仕上げが全然違うなぁ」と思っていたのだが、新型ヴェルファイアでは勝るとも劣らない仕立てになっている。

 素材は例によって木目調プラスチックパネルと合成皮革、要するに人工素材が用いられているのだが、実用性と使い勝手を考えればメリット以外のナニモノでもない。

 革シート車に乗っている方ならご存じだろうが、シートにしてもステアリングにしても、何でもかんでも全部天然素材がよいということは決してない。肌触りが重要な部分には本革を、こすれて痛みやすい部分には人工皮革をといった使い分けは極めて正しく、合理的な判断と言える。ウッド部分も同様で、人工素材でこの質感を実現していることを高く評価するべきだと思う。

 実際、筆者の20系も30系もウッド部分は「プラスチック素材」であることに変わりはないのだが、新型のそれは非常にうまく高級感が演出されている。もちろん天然木とは違い、雨の日や雪の日に多少手荒に扱ったとしてもキノコが生えてくることもなく安心だ。

 グレード、モデルを問わずインテリアの質感が大幅に向上。20系同様、グレードによってデザインや素材が使い分けられている。特にメーター指針などのカラーは自由に選ぶことができないため、購入の際には「ディーラーに頼んで実際に検討しているグレードの試乗車を取り寄せて」確認することをオススメしたい。

ステアリング付近
シフトレバー付近
メーターパネル
前席インテリア

 20系について「ヴェルファイアはトーションビームリアサスペンションだからウンヌン」とトイレに落書きする人が多かったが、新型は「欧州高級車と違って天然木仕立てではないからウンヌン」とでも書かれるのだろうか。

 贅を極めることが最優先で、数千万円のプライスタグが付けられる超高級車クラスであれば当然天然木、当然本革、それも最高級の部位を99%切り落とす勢いで使うのが筋だ。なぜなら、顧客がそれを求めているし、売価を気にする必要も、販売台数を気にする必要も、日ごろの手入れを気にする必要もないからだ。

 だが、今回発売された新型ヴェルファイアはそうではない。日本国内で日常的に使われる乗用車であり、高級ミニバンとして、高級サルーンとしての性能と、品質と、価格と、販売台数と、誰が使っても破綻しない強靱な耐久性を求められ、それらを極めて高い次元で実現しているということは決して忘れてはならない。

 このクオリティのクルマとトヨタディーラーのサービスが、本体価格“たったの”300万円ちょっとから購入できるなど、ほかにどこのメーカーが実現できるだろうか。スーパーカーではなく「乗用車」である以上、「売れる値段」で最大限の製品を完成させる必要があり、今回トヨタはまさに「ベスト」な回答を出してくれたのだと思う。

 もっとよい素材にしたければDIYで交換すればよいし、もっと静かにしたければ静音化施工だっていくらでもできる。そう、DIY快適電化移動リビングとして最高の「ベース車」が誕生してしまった訳だが、筆者の20系には長年の汗と苦労が染み込んでいるので、くやしくなんかないぞ。

筆者が特に気に入ったのがダッシュパネルの仕上げと質感。クラウンは革素材&ステッチが入っているけど、20系ヴェルファイアは「ミニバンだから」樹脂でーす、だったのが、キッチリ高級車仕様に進化した
ドアトリム部分の仕上げも格段によくなっている。グレードによりメッキ加飾や材質などで差別化はされているが、どれも素晴らしい仕立てだ
前席エアコン吹き出し口部分に新しく用意されたスライドカバー付きのカップホルダー。これだけは素直に認めよう、メチャクチャうらやましいぞ!
新型のライトスイッチは、これまでのトヨタ車とは異なり[OFF] - [AUTO] - [SMALL] - [ON]の順番になっていた。筆者が以前に乗っていたNE51エルグランドと同仕様
20系やカミさんのヴィッツを含め、これまでのトヨタ車は[OFF] - [SMALL] - [ON] - [AUTO]の順番だった。基本常時[AUTO」位置なのだが、ちょっと気になったり

ガソリン車のオルタネーターは、引き続き安心の大容量150Aタイプ。Qi対応も

 ガソリン車で快適安心電化生活を楽しむためには、しっかりした発電能力と大容量バッテリーが必須。新型のオルタネーターを確認したところ、20系と同じく発電能力150Aタイプが実装されていて一安心。「Valeo」と書かれた見慣れない赤い型番シールが貼られていたので担当者さんに質問すると、トヨタ車としては初採用とのことだった。

 ハイブリッドバッテリーは20系と同じく前席シート下に設置されているが、形状と搭載位置を最適化することでセンターコンソールボックスの収納力が格段に大きくなっているのは見逃せないポイント。ハイブリッドバッテリーを前席下ではなくほかの場所に設置できないのかと常々思っていたので、こちらも開発担当氏に質問してみた。

 ハイブリッドバッテリーを前席床下ではなく、たとえば以下の場所に設置すれば、スーパーロングスライドとの両立ができるのでは?

──「エンジンルーム内」
開発担当氏:スペースと重量配分的に難しいですね

──「フロントバンパーの内側」
開発担当氏:前面衝突したらアウトですよね

──「フロントタイヤハウスの上の空きスペース」
開発担当氏:衝撃吸収スペースなので無理ですね

──「今の位置から、さらにぐぐっと下げる」
開発担当氏:最低地上高が……

──「3列目収納スペースを潰して入れる」
開発担当氏:スペースユーティリティを考えるともったいないですね

──「じゃあ、3列目収納スペースの片側にギュッと押し込めば」
開発担当氏:片側だけ重くなってしまいます

──「ガソリンタンクの反対側は」
開発担当氏:マフラーの処理、どうしましょうか

──「思いっきり薄く、リチウムポリマーかなんかにしてルーフに内蔵」
開発担当氏:重心が高くなりますし、安全面からも難しいですね

──「なんか超画期的な新素材バッテリーで、なんとか」
開発担当氏:はい、引き続き頑張って開発を続けます(笑)

 筆者のスーパーアイディアはことごとく却下されてしまった訳だが、日進月歩の技術開発、将来が楽しみだ。

 せっかくハイブリッドモデル、それもハイブリッドの「エグゼクティブラウンジ」に乗れるチャンスということで、筆者愛用の電気ケトルと湯飲み茶碗とお盆もバッチリ持参した。

 豪華な室内、豪華なシート、そして熱々のお茶が飲めるというこの幸せ。車載用ワイヤレス 充電規格「Qi」も搭載された。さすがは新型と言いたいところだが、筆者愛車のセンターコンソールにもQiは仕込み済みであり、大容量インバーター搭載で湯沸かしにも対応、さらにはセンターコンソールを全部取っ払って和風喫茶仕様にもできるように改造してあるので負けてはいないぞ(笑)。

オルタネーターは3.5リッター/2.5リッターともに150Aタイプで20系と同容量。日産、スバル、ホンダ、マツダ、三菱自動車、いすゞ、スズキなどで実績のあるValeo製のオルタネーターは、トヨタ車では初採用とのこと
せっかくなので試乗会場に電気ケトルと湯飲み茶碗とお盆を持ち込んでみた。標準状態でAC100V 1500Wの電力を供給できるハイブリッド車はやっぱり便利(ロケ地:神奈川県 みなとみらい)
エグゼクティブラウンジ仕様車なら、2列目のシートそれぞれに電源アウトレットがある。あえてPCやスマホではなく電気ケトルを接続するのがツウというものだ
[20系]こちらは筆者愛車のオルタネーター。発電能力は同じだが、TOYOTA/DENSOのシールが貼られているので筆者好みだ
[20系]大容量バッテリーと大容量DC/ACインバータを搭載すれば、20系ガソリン車でも問題なく電気ケトルなどが利用できることは前々回にご紹介した通り(ロケ地:埼玉県 さいたま)
[20系]難しい施工をしなくても、エンジンルームから直接インバーターに電源供給すればガソリン車でも熱々のカップラーメンが食べられますの図。ちなみに東京都内では一切使用禁止なので要注意(ロケ地:千葉県 南房総)
新型のステアリング右側スイッチ部分。雪道大好きな筆者としては、ステアリングヒーターが魅力的。DIYで後付けできないかな
パーキングアシストや衝突安全防止装置のスイッチが目新しい。できれば目隠しカバーが1つもない状態までフル装備したいところ
20系にも純正後席AVシステムや天井スピーカーは用意されていたが、よりスタイリッシュに、より高音質に進化。起動時に飛行機のような安全メッセージが表示されるのもGOOD
後席用アウトレットとAV入力端子も以前からあったが、HDMI仕様になっているのが大変うらやましい、ではなくて7年分の進化を表している

トヨタの市販車で初採用! 構造用接着剤でボディー強化

 ボディー強化で走りが激変することは前回記事でお伝えした通りだが、新型は(燃料電池車「MIRAI」を除いた)トヨタの市販車として初めて「構造用接着剤」によるボディー強化が施されている。開口部の大きなミニバンはどうしてもボディー剛性が不足しがちになる訳だが、この新技術とスポット溶接個所の追加により、大幅なボディー剛性の強化が実現されている。

 その差は走り出した瞬間に「誰でも体感できるレベル」であり、20系ノーマルとは比較にならないレベル。フロントメンバーブレース補強などでボディー剛性を強化した筆者の愛車と比べてもシッカリしていることは明白だった。

 編集氏に運転してもらい、2列目の乗り味もしっかり観察。20系ノーマルに比べて大柄ボディーの弱点であるフロアの微振動がよく押さえ込まれてはいるのだが、ほかのカイゼンっぷりが素晴らしすぎるだけに「もう一声!」と言いたくなった。筆者愛車ではフロア全体に大量の制振材を施工しており、微振動を強烈に押さえ込める体験をしているだけに、もし新型を購入したらぜひDIYで制振強化を行いたいと思った。

 純正装着タイヤは17インチ仕様、18インチ仕様ともに「嫌な感じのステアリングフィール」はまったく感じられなかった。筆者愛車に純正装着されていた夏タイヤは、残念ながらどーやっても脳内感覚とクルマの挙動が一致しないという困ったちゃんで、ブリヂストン「ECOPIA PRV」に履き替えることで、やっと「ヴェルファイアっていいね」と思えたほどだったので、純正状態でこの乗り味というのは大切なことだ。

[20系]構造用接着剤でのボディー強化はメーカーにしかできないが、各種パーツでの補強ならDIYでも作業可能。これもまた重量増加の原因ではあるが、明らかな効果が体感できるぞ
大型センターコンソールボックスは、Qi(非接触充電)もオプション装着できるようになった。が、筆者はすでにDIYで取り付け済みなので大丈夫
ガソリン車用のノーマル(ウォークスルー対応分離型)センターコンソールボックスは、20系と比べて特に質感が向上した部分の1つ。上品に加飾されている
スライドドアスイッチがやけに大型化していると思ったら、なんとオープン側/クローズ側それぞれが独立スイッチとなり、スライド途中での一時停止も自由自在になっていた。これは便利!
細かな点だが、バックドアと車両本体を接続する蛇腹ハーネスカバーがひとまわり太くなっていた。リアカメラの追加配線を苦労して通したことを思い出す

世界初!高架式シートレールと大型床下収納、騒音侵入は大丈夫かな?

 世界初の高架式シートレールにより、3列目シートのスライド動作と巨大な床下収納スペースが両立されていることは既出の通りだが、筆者が気になるのは収納量でも3列目のスライド量でもなく、あの場所に、あんなに大きな開口部を作ってしまったら、巨大な騒音源になるのではないか? という懸念だ。

 試乗会場に展示されていたカットモデルを見ると、3列目床下収納は新設計のリアサスとリアドライブトレーンのすぐ近くギリギリまでスペースが確保されている。まさに薄皮1枚ならぬ鉄板1枚隔てた外はノイズの渦という状態。カットモデルは「お手を触れないでください」だったので床下収納のカーペットを剥がすことはできなかったが、のぞき込んだ限りでは制振シール材が少々と、部分的にシンサレートと思われる吸音材が入っている程度。どう考えても騒音が進入するだろうなぁ、と勝手に若干ガッカリしつつ3列目に乗り込んで再び試乗スタート。

 試乗車は当然ながら完全ノーマルの状態なので、バックドアの防音施工もノーマルのまま。ギッチギチに重量級防音施工をしている筆者愛車と比べればもちろんノイズは入ってきているのだが、ノーマルの20系とは比較にならないほどの静粛性を実現していることには驚いた。とにかく重く、とにかく隙間なく詰め込むほかに術を持たないDIY施工とは違い、メーカーが設計段階から本気を出すと、ここまで薄く、軽量に、かつコストも抑えた状態で騒音バランスを取ることができるのか。いやはや。ボディー設計チームのみなさんにも、本当に敬意を表したい。

会場に展示されていたハイブリッド エグゼクティブラウンジのカットモデル。低床ボディーに無駄なくギッチリとパーツが詰まっている様子は、デフラグマニア垂涎の光景
20系ではボディー外側にスペアタイヤが取り付けられていた位置だが、高架式シートレールのおかげで巨大な室内収納スペースへと進化
駆動系メカニズムとリアタイヤのノイズがバシバシ入ってくる位置に、鉄板1枚隔てて大きな室内空間がある。どう見ても騒音源になりそうなのだが、乗ってみると……!
エグゼクティブラウンジ仕様の2列目シートは横幅が広く、左右シート間の隙間が狭い。そのため「あめ玉を落としても転がって前に出てくるゴムモール」が、豊田章男社長のアイディアで取り付けられたそうだ

プレミアムサウンドシステムもキッチリ進化、かゆいところに手が届いている!

 純正プレミアムサウンドシステムもさらなる進化を遂げていた。筆者愛車の20系は、純正18スピーカープレミアムサウンドシステムを参考にしつつアフターパーツで構成したオリジナル仕様なのだが、スーパーウーファーの置き場所は最後まで悩んだ末に助手席シート下にワンオフ改造装着とした。20系純正システムでもスーパーウーファーは前席下部に装着されており、あとから機材を埋めようとしたときに邪魔になるのはもちろん、低域が不足しがちな2列目/3列目になるほどウーファーから遠ざかるというジレンマもあった。新型はJBL製の17スピーカープレミアムサウンドシステムとなり、筆者が「かゆいなぁ」と思っていたポイントがことごとく改善されていた。

 まず問題のスーパーウーファーは、バックドア内部に移動。バックドアならエンクロージャースペースも十分に確保できるし、設計段階で外部からの騒音対策と音質確保が同時にできて合理的。

 インパネ、フロントドア、スライドドアスピーカーは20系とほぼ同様だが、1列目ルーフのNXT(平面)スピーカーは8cmミッドレンジスピーカーに、3列目の10cmフルレンジスピーカーは3列目ルーフ8cmミッドレンジに、それぞれ変更されている。20系のNXTスピーカーはほかのスピーカーとの音質合わせが難しく、3列目のフルレンジはフルレンジである故に音像定位が曖昧になりがちだったのがズバッとカイゼンされている。

 そしてスピーカー系で最も大きな変化だと筆者が感じたのは、スライドドアのガラス横部分に設置されていた2列目ツイーターが、10cmほど低いドアトリム部分へと移動されたことだ。普段乗っていない方からすれば大した違いはないだろうと思われるかも知れないが、これは実に重要。

 20系ではスライドドアガラス横に搭載されたツイーターが運転席/助手席の耳元に位置しているため、前席に座っていると高音域が強すぎると感じたり、深夜にドライブしていると(特に筆者愛車は極めて静音化しているため)オーディオを止めていてもアンプから漏れ出る「しー……」という僅かなホワイトノイズが気になり、アンプの主電源スイッチを別途用意していたのだが、この絶妙な搭載位置ならばその必要はない。かつ、2列目乗員にはしっかり高音が届くというのが心憎い。ハッキリ言ってうらやましいが、筆者は2列目ツイーター用のアッテネーターもすでに取り付けてあるのでうらやましくなんかない……。

これまでは「トヨタプレミアムサウンドシステム」だったが、新型では「JBLプレミアムサウンドシステム」とオーディオブランドが冠に付いた
バックドアにウーファーを実装すれば、フロントやスライドドアと同じ理屈できっちりデッドニングを行いつつ、エンクロージャースペースも十分確保できる。目から鱗、実に合理的
20系ではスライドドアのガラス横にあったツイーターが、ドアトリムのハンドル上に移動。1列目乗員の耳元を避けつつ、2列目乗員にしっかり高音を届ける絶妙なセッティング
むむっ!?よく見ると、コーナーセンサーの数がやたらめったら増えているような?
なるほど、インテリジェントパーキングアシスト2などの先進機能に対応するためなのか。細かいところでもイチイチ進化を見せつけられて若干つらくなってきたぞ(笑)

なんという酷な仕事。試乗するんじゃなかった(笑)

 と、言うわけで、思いの丈をギュッと圧縮して新型ヴェルファイアの素晴らしいカイゼンっぷりを簡潔に述べさせてもらった。どの部分を区切って「5つのポイント」なのかは、もはやどうでもよい。

 ユーザーの視点に立って「必要な部分にしっかりとお金を掛けて」、1ミクロン単位で無駄を削りコスト効率も最大限にした上で全体をパッケージングし、性能・質感・あらゆる面において旧型から大幅にカイゼンしながらも価格アップを最小限にとどめていることは高く評価したい。エグゼクティブラウンジにしても、トヨタだからこそハイブリッド仕様でも700万円ちょいで販売することができたのだと思う。

 モノづくりは自己満足であってはならないと思う。金に糸目を付けず、サグラダファミリアのように時間を掛け、どこでもドア並みの性能を持つクルマを作ったとしても、それでは商品として成り立たない。ユーザーが買える価格で、限られた条件の中で、最大限のパッケージングを実現する。だからこそ自動車メーカーは英知を結集して開発を続け、オーナーとなる我々に感動と喜びを与えてくれるのだと思う。

 この性能と品質と満足度を持った新型ヴェルファイアが300万円~700万円という手に入る価格帯で製品化されたことに、改めて、強く、敬意を表したい。

 この新型をベースにして、例によって筆者らしく徹底静音化と快適電化リビング化作業をDIYしたら、どれだけ楽しく、どこまで快適にできるのかと想像しただけでもワクワクする。

 いじる楽しみが十分にあり、かつ最高の素材として誕生した新型ヴェルファイア。今すぐにでも購入したいところだが、筆者にも生活と家庭の都合というものがあり……(笑)。今回は購入を見送って20系2回目の車検を通したところだ。

おまけ

筆者:「ぷるるる……あ、もしもし、ネッツトヨタのTさんですか? いつもどーもー、NAOです。カミさんのヴィッツの点検のついでにちょっと見積もりをですね……」
愛車 20系ヴェルファイアくん:「えっ……!?」
愛車:「そんな……」
愛車:「子供たちともたくさん遊んだし……」
愛車:「雨の日だって……」
愛車:「ドカ雪の無茶なロケだって……」
愛車:「足踏み式パーキングブレーキで楽しめるのに……」
愛車:「10年乗るって言ってたのに……」

筆者:「おいおい、勘違いするなよ、次に取り付けるパーツを注文しただけだってば」
愛車:「ぐすん。いつまでも一緒だからね!!」

つづく(笑)

Photo:安田 剛

NAO