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最後の「SUZUKA 1000km」で有終の美を飾るのは誰か? 8月26日~27日開催
鈴鹿サーキットの歴史を目撃せよ
2017年8月23日 00:00
- 2017年8月26日~27日 開催
夏休み最後の土日となる今週末の8月26日~27日、鈴鹿サーキットで注目の「2017 AUTOBACS SUPER GT Round 6 第46回 インターナショナル“SUZUKA 1000km THE FINAL”(以下SUZUKA 1000km)」が開催される。
このレースはSUZUKA 1000kmとして開催される最後のレースとして注目されている。2018年からは世界のGT3カーが争う「サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース(SUZUKA 10h)」が新たに開催され、SUPER GTとして開催されるのはこのレースが最後となる。注目されるもう1つの理由はF1ドライバーのジェンソン・バトン、小林可夢偉の参戦だ。
THE FINALと銘打たれた歴史の1ページに刻まれるこのレースを直前に控え、SUZUKA 1000kmの歴史、今年のSUZUKA 1000kmの見どころなどをお伝えしよう。
伝統のSUZUKA 1000kmを振り返る
SUZUKA 1000kmは今年で46回目の開催となる。F1日本グランプリの30回、鈴鹿8耐の40回を上まわる歴史と伝統を刻んできたレースだ。過去45回の歴史は鈴鹿サーキットのWebサイトにある「SUZUKA 1000kmの歴史」に詳しく紹介されているので、ここではかいつまんでSUZUKA 1000kmの歴史を振り返ってみたい。
第1回のSUZUKA 1000kmは1966年に開催された。鈴鹿サーキットのオープンが1962年なので開場から4年後、今から51年前だ。オイルショックにより1974年から1979年まで中止され、今年のSUZUKA 1000kmは第46回大会となる。
時代を振り返ってみよう。1966年は日産自動車がプリンス自動車工業を吸収合併した年で、日産はサニーを、トヨタ自動車はカローラを、本田技研工業はS800を発売している。富士スピードウェイがオープンしたのもこの年だ。名神高速の全線開通が前年の1965年、東名高速の全線開通は3年後の1969年だ。この時代、日本はモータリゼーションの真っ只中にいた。
当時の世の中に目を移すと、ビートルズの来日、週刊プレイボーイの創刊、少年マガジンで「巨人の星」の連載開始、初代ウルトラマンの放送開始もこの1966年で、サッポロ一番、チャルメラ、ポッキーが発売された年でもある。
話を戻そう。第1回のSUZUKA 1000kmの優勝はトヨタ2000GT(福沢幸雄/津々見友彦)。記念すべき第1回大会で優勝した福沢幸雄は福沢諭吉(1万円札の肖像の人、慶應義塾の創設者)のひ孫で、ギリシャ人の母を持つ超イケメンレーサーでありファッションモデルでもあり、テレビCMにも登場するアイドルだった。
トヨタ2000GTはSUZUKA 1000kmの直前に開催された第3回日本グランプリでレースデビューしプリンスR380に続く3位を獲得。デビュー2戦目となるSUZUKA 1000kmで優勝。これがトヨタ2000GTにとっての初優勝となった。トヨタ2000GTは翌1967年に市販され3年間に337台が生産された。
トヨタ2000GTの優勝タイムは8時間2分(167周)。当時はシケインもなくデグナーやスプーンも現在のコースレイアウトとは異なるため比較する意味はないが、2016年に優勝したZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)の5時間45分(173周)と比べると40%ほど差があったことになる。
第1回大会でフェアレディを駆り3位に入ったのは高橋国光氏と北野元氏。北野氏は鈴鹿サーキットファン感謝デーではお馴染みの顔だ。両氏は1960年に2輪ライダーとしてホンダワークスに入り世界への挑戦を開始。北野氏は1961年のUSグランプリ(デイトナ)で優勝、高橋氏も同じ年に西ドイツGPで優勝している。
現在チームクニミツ(100号車 RAYBRIG NSX-GT)の総監督を務めている高橋国光氏のSUZUKA 1000km初優勝は1973年の第8回大会。マシンは日産 フェアレディ240Z-R(高橋国光/都平健二)だ。1984年の第13回大会はポルシェ 956(高橋国光/高橋健二/ジェフ・リース)、1985年の第14回大会はポルシェ 962C(高橋国光/高橋健二)で連勝を飾り、1989年の第18回大会もポルシェ 962C(高橋国光/スタンリー・ディケンズ)で優勝し通算4勝を挙げている。
SUZUKA 1000kmはカテゴリーの変遷をしながら歴史を刻んできたレースだ。初期は単独レースとして開催され様々なマシンがサーキットを疾走した。10回大会までの優勝はポルシェが4回、トヨタが3回、日産が2回とポルシェ対国産マシンという構図だった。
1983年から1986年は全日本耐久選手権、1987年から1991年は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権として開催された。ザックリ言うと1980年代はル・マン24時間と同じグループCカーで争われていた。
1980年代のグループCカーを代表するマシンがポルシェ 956とマイナーチェンジした962Cだ。956/962Cは大量に販売され日本でも多くのプライベートチームが956/962Cでレースに参戦した。956/962Cはル・マン24時間で1982年から1987年まで6連勝、SUZUKA 1000kmでも1983年から1989年の7年間で6勝している。
高橋国光氏が乗ったADVAN ALPHAポルシェをはじめ、フロムエー・ポルシェ、日石トラスト ポルシェ、ISEKIポルシェ、レイトンハウス ポルシェなどが日本のサーキットを席巻した時代だった。ポルシェに対抗する国産勢は1987年にミノルタ トヨタ87C(G.リース/関谷正徳/小河等)、1990年にカルソニック ニッサン R90CP(星野一義/鈴木利男)、1991年にデンソー トヨタ 91C-V(R.ラッツェンバーガー/P-H.ラファネル/長坂尚樹)がSUZUKA 1000kmの勝者となっている。いつの時代もスポーツカーレースにおけるポルシェの存在は大きい。
2006年からSUZUKA 1000kmはSUPER GTのシリーズ戦の1戦として開催されている。だが実際には1999年に優勝した無限×童夢NSX(中子修/道上龍/金石勝智)はGT500クラスとして参戦しているので、シリーズ戦ではないが過去18年間のSUZUKA 1000kmはSUPER GTによる争いと言える。
2000年のSUZUKA 1000kmで優勝したTAKATA無限×童夢NSXのドライバーは脇阪寿一、金石勝智、伊藤大輔。同じステアリングを握った3人が17年の時を経て、6号車 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ)、17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史)、36号車 au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)の監督として最後のSUZUKA 1000kmを争うこととなる。
1999年から2016年の18年間の優勝回数は、トヨタ・レクサスが8回、ホンダが7回、日産が3回。レクサスが9回目の優勝をするか、ホンダが8回目の優勝をして並ぶか、日産が有終の美を飾るか。THE FINALとなった今年のSUZUKA 1000kmをどのメーカーが制するのか注目したい。
SUZUKA 1000kmはチャンピオン争いの重要な1戦
全8戦で争われるSUPER GTの第6戦にあたるSUZUKA 1000kmは、チャンピオン争いを左右する重要な1戦となる。SUPER GTは獲得ポイントによってウェイトハンデが課せられ、第6戦までは獲得ポイントの2倍、第7戦は1倍、最終戦はウェイトハンデなしとなっている。仮に30ポイントを獲得していれば、第6戦なら60kg、第7戦は30kgのウェイトを積んで争うこととなる(GT500クラスで51kg以上の場合は、ウェイトと燃料流量制限を組み合わせる)。
マシンの重量が増すと加速、減速、コーナリングで不利となるだけでなく、タイヤへの負担も大きくなる。シリーズポイント上位のマシンは不利となり、ウェイトハンデが少ない下位のマシンは有利となる。その影響がもっとも大きいのが第6戦であるSUZUKA 1000kmだ。
ポイント面でもSUZUKA 1000kmは特別なレースとなる。SUZUKA 1000km以外のレースのポイントは1位が20ポイントで以下15、11、8と減り10位で1ポイントとなっている。700km以上のレース(=SUZUKA 1000kmのみ)では1位が25ポイントで以下18、13、10と通常のレースよりも多くのポイントを獲得することができる。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通常ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
SUZUKA 1000km | 25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
ウェイトハンデとポイント加算を考慮すると、SUZUKA 1000kmに優勝することが上位チームはライバルを突き放すチャンスであり、シーズン前半で出遅れたチームにとってはチャンピオン争いに生き残る最後のチャンスだ
接戦が展開されるGT500クラス
実際にGT500クラスの第5戦までのドライバーズポイントを確認してみよう。シーズン前半はレクサス勢の強さが際立ち、開幕戦は37号車 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)、第2戦は38号車 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)、第3戦は36号車 au TOM'S LC500(中嶋 一貴/ジェームス・ロシター)、第4戦は1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)とレクサス1人勝ちの展開となった。第5戦で8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志)が優勝し、2位に23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が入り反撃ののろしを上げた様相だ。
順位 | 車番 | ドライバー | ポイント | ウェイトハンデ |
---|---|---|---|---|
1 | 36 | ジェームス・ロシター | 44 | 88 |
2 | 6 | 大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ | 43 | 86 |
3 | 37 | 平川亮/ニック・キャシディ | 42 | 84 |
4 | 38 | 立川祐路/石浦宏明 | 41 | 82 |
5 | 23 | 松田次生/ロニー・クインタレッリ | 41 | 82 |
6 | 36 | 中嶋一貴 | 38 | 88 |
7 | 1 | ヘイキ・コバライネン/平手晃平 | 36 | 72 |
8 | 8 | 野尻智紀/小林崇志 | 31 | 62 |
9 | 46 | 本山哲/千代勝正 | 23 | 46 |
10 | 100 | 山本尚貴/伊沢拓也 | 22 | 44 |
11 | 17 | 塚越広大/小暮卓史 | 18 | 36 |
12 | 12 | 安田裕信/ヤン・マーデンボロー | 13 | 26 |
13 | 19 | 関口雄飛 | 13 | 26 |
14 | 19 | 国本雄資 | 12 | 26 |
15 | 16 | 武藤英紀/中嶋大祐 | 7 | 14 |
16 | 36 | 伊藤大輔 | 6 | 88 |
17 | 64 | ベルトラン・バゲット/松浦孝亮 | 3 | 6 |
18 | 24 | 佐々木大樹/JP・デ・オリベイラ | 3 | 6 |
19 | 19 | 山下健太 | 1 | 26 |
レクサス勢4連勝の前半戦だったが、4チームに優勝が分散されたこともあり上位チームのポイント差はわずかだ。5位の23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が3ポイント差、8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志)が13ポイント差とチャンピオンが狙える位置をキープしている。
シーズン前半で出遅れたチームは巻き返しの最後のチャンスだ。64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮)、24号車 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R(佐々木大樹/J.P.デ・オリベイラ)は3ポイントでウェイトハンデは6kg。上位チームとは80kgほどウェイト差があり、1000kmという長丁場ゆえに飛躍するチャンスとなる。
SUZUKA 1000kmはレースディスタンスが長いため第3ドライバーを起用するチームがある。注目は16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐)の第3ドライバーとして参戦するジェンソン・バトンだ。昨シーズンまでF1に参戦し、今シーズンもモナコグランプリでマクラーレン・ホンダをドライブしている。もう1人が19号車 WedsSport ADVAN LC500(関口雄飛/国本雄資)の第3ドライバーとして参戦する小林可夢偉。2人がSUPER GTマシンでどんな走りをするか目が離せない。
GT300クラスは
GT300クラスのランキングトップは4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)の50ポイント。ランキング5位の51号車 JMS P.MU LMcorsa RC F GT3(中山雄一/坪井翔)は30ポイント。昨年のSUZUKA 1000kmを制した61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)も25ポイント差の7位にランキングされており、GT300クラスもSUZUKA 1000kmがチャンピオン争いの重要な1戦となる。
順位 | 車番 | ドライバー | ポイント | ウェイトハンデ |
---|---|---|---|---|
1 | 4 | 谷口信輝/片岡龍也 | 50 | 100 |
2 | 25 | 松井孝允/山下健太 | 41 | 82 |
3 | 55 | 高木真一/ショーン・ウォーキンショー | 38 | 76 |
4 | 11 | 平中克幸/ビヨン・ビルドハイム | 35 | 70 |
5 | 51 | 中山雄一/坪井翔 | 30 | 60 |
6 | 65 | 黒澤治樹/蒲生尚弥 | 27 | 54 |
7 | 61 | 井口卓人/山内英輝 | 25 | 50 |
8 | 33 | 藤井誠暢 | 20 | 40 |
9 | 9 | ジョノ・レスター/峰尾恭輔 | 19 | 38 |
10 | 31 | 嵯峨宏紀/久保凜太郎 | 17 | 34 |
SUZUKA 1000kmの観戦情報を事前にチェックしよう
歴史の1ページとなるSUZUKA 1000kmは8月26日~27日に開催される。土曜の走行は9時20分から、日曜の決勝は12時30分からだ。サポートレースやピットウォークなどの詳細はタイムスケジュールで確認しよう。
SUZUKA 1000km THE FINALとあって例年以上に人気は高く、チケットの案内を見ると通常の観戦券(大人5700円)以外のパドックパス、ピットウォーク、ファンシート、ファミリーラウンジ、駐車場などはほぼ完売状態だ。
とはいえ、指定席、エリア指定席となっているのはグランドスタンド(V1/V2)、2コーナースタンド(B1/B2)、シケインスタンド(Q1/Q2)だけなので東コースなら2コーナー、S字、逆バンク、最終コーナー、西コースのヘアピンやスプーンカーブは自由に観戦できるので、通常の観戦券で約6時間の決勝レースを堪能することは可能だ。駐車場も鈴鹿サーキット周辺は民間の駐車場が充実しているので困ることはない。
電車を利用して観戦する場合は近畿鉄道の白子駅か伊勢鉄道の鈴鹿サーキット稲生駅を利用しよう。白子駅~サーキット間はシャトルバスが運行される。伊勢鉄道ではSUZUKA 1000kmの決勝日に臨時列車を用意しているので、名古屋駅から鈴鹿サーキットへ行く方はWebサイトをチェックしよう。
長いレースなので、飲み物、暑さ対策グッズ、雨具を忘れずに持って行こう。レースを楽しむならFMラジオは必須だ。鈴鹿ヴォイスFM(78.3MHz)を利用すれば、サーキットのどこにいても実況を聞くことができるので、レース展開を見失うことなく1000kmのバトルを楽しめる。そして最後に花火を見てサーキットに集まったすべての人と感動を分かち合ってほしい。
2018年から始まるサマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース
鈴鹿サーキットの2輪レースの夏の祭典と言えば7月末に開催される鈴鹿8耐、4輪レースの夏の祭典と言えば8月末に開催されるSUZUKA 1000kmと、長きにわたりモータースポーツファンに愛されてきた。特にここ十数年は人気の高いSUPER GTシリーズの1戦として行なわれてきたので惜しむファンも少なくない。
だが、4輪レースの夏の祭典が終わるわけではない。2018年の夏からは、新たに「第47回 サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース」が開催される。世界のGT3マシンが激突するレースは新たな歴史を刻むこととなる。
実際に夏の耐久レースを観戦した方は実感していると思うが、約6時間のSUZUKA 1000kmは長い。鈴鹿8耐はもっと長い。そして暑い。炎天下で「なぜ自分はクソ暑い中レースを見ているんだ」と疑問を感じた方もいるだろう。それでも太陽が西に傾き、サーキットが暗闇に包まれ、ゴールの後の花火を見て「来年も来よう」と思った方には、6時間、8時間を上まわる10時間の耐久レースはきっともの凄く長くて、暑くて、熱いレースになるだろう。
提供:株式会社モビリティランド