まるも亜希子の「寄り道日和」

幸運の10名を決定する「シビック TYPE R Limited Edition 抽選会」に参加しました

TYPE R開発責任者の柿沼秀樹さん(中央)と、今季は64号車 Modulo Nakajima RacingよりSUPER GTに参戦中の伊沢拓也さん(右)。こだわりの黄色いボディカラーに合わせ、開発メンバーお手製という黄色いマスクをいただき、お揃いでつけさせていただきました

 この仕事をしていて「よかったな」と思う瞬間はたくさんありますが、そのクルマを作った人に直接、熱い想いを聞くことができ、心を動かされたときに、ものすごく「よかったな」と思うんです。

 この夜もまさに、そんなひと時でした。ホンダ純血の最新にして最高のFFスポーツモデル「シビック TYPE R Limited Edition」は、国内限定200台のうち、シリアルナンバー011~200、つまり190台は10月9日の受注スタートと同時に、瞬時に販売終了してしまったという幻のスポーツモデル。

 でも、なんとシリアルナンバー001~010の10台は、公式サイトで購入希望者を受け付け、抽選で商談権を手にすることができる、ということになっていたんです。そしてその抽選会が、11月23日の19時から、本田技研工業の公式YouTubeチャンネルにて生配信され、シビック TYPE R Limited Editionの開発責任者を務めた柿沼秀樹さんと、開発に携わり、鈴鹿サーキットのタイムアタックで見事にFF最速タイムを叩き出したレーシングドライバー、伊沢拓也選手の2人がその抽選を行なうことに。

 で、せっかくなので柿沼さんと伊沢さんに、シビック TYPE R Limited Editionの開発秘話、タイムアタックの裏話などを存分に語っていただこうと、トークセッションも行なわれまして、私は光栄にもそのナビゲーターを務めさせていただきました。

 いや、これはもうホントに裏話もいいところなんですが、事前に主催者から、このトークセッションには一応、台本というものがあると聞いていたんですね。でも待てど暮らせど、なかなか台本が送られてこない。どうしたのかなぁと思っていたら、なんと柿沼さんの熱い想いがあふれすぎて、台本に入りきらないので何度も削ってもらって大変だったそうなんです(笑)。

 でもそれを聞いて、私はすごくワクワクして、本番を迎えるのがとっても楽しみになりました。これまでの経験からも、開発者に言いたいことがあればあるほど、すごく面白くていいクルマに仕上がっていることが多いからです。トークセッションは40分という短い時間なんですが、しぶしぶ台本から削った想いまでも、伝えてもらえたらいいなと、そんな気持ちで本番に臨みました。

トークセッションおよび抽選会は、無観客でYouTube配信のみで行ない、ステージ上でもアクリル板で仕切って感染対策をしっかりと。最後には、視聴者から事前に募集していた、柿沼さんと伊沢さんへのTYPE Rにまつわる質問コーナーもあったのですが、「今回のLimited Editionは伊沢さんにとって、10点満点中、何点ですか?」と、なかなか面白い質問が飛び出して盛り上がりました。答えは、ぜひYouTubeのアーカイブでチェックしてみてくださいね

 そして伊沢さんは一見クールなんですが、話はとても上手でユーモアもある方なので、柿沼さんの話にちょいちょいツッコミを入れてくれたり、台本にはなかった裏話をたくさん話していただいて、さすがだなぁと思いました。

 とくに私が印象深かったのは、柿沼さんは入社直後から初代「NSX-R」をはじめ、歴代TYPE-Rの開発を間近で見てこられて、「S2000」から本格的にスポーツモデルの開発に携わってきた、ホンダスポーツの生き字引みたいな方。でも2017年にFK8のシビック TYPE Rを出してから、その後はあまり進化させられていなかったことに疑問を感じていたそうなんですね。

 そこで、「生んだからには、育てたい!」という強い想いから、市販車の開発にレーシングドライバーを引き込み、F1を筆頭とするレーシングカーの開発を行なっているHRD Sakuraのシミュレーターを使って開発をする、という決断に至ったそうなんです。

 でも「なぜ、伊沢さんだったんですか?」と質問してみると、かなり前に鷹栖のテストコースなどで一緒に仕事をしたあと、夜にお酒を飲みながら話をしたり、ホンダのトップドライバーたちと交流を持ったそうなんです。その時に、柿沼さんをはじめとする開発メンバーに、量産車に対するフィードバックをいちばんしてくれたのが、伊沢さんだったと。

 で、伊沢さんに「そんな夜があったことは覚えてますか?」と聞くと、「覚えてます。僕もホンダに育ててもらったという気持ちがあるので、そこで得た技術を何かホンダ車のために活かせたらと思って、けっこうクビを覚悟でいろいろ言ったと思います(笑)」。

 柿沼さんは、「いちばん生意気だったんですよ」と笑いながらも、伊沢さんは量産開発者の視点に近いものを持っているなと、いつか開発チームに加わってもらいたいなと、そのあたりから感じていたということでした。

 やっぱり、ホンダには昔から「ワイガヤ」という文化があって、雑談のような雰囲気でみんなが腹を割って話し、そこからいろんな可能性やアイディアを見つけていく、というのがあるんですが、柿沼さんと伊沢さんの馴れ初めの話には、ちょっとそれに通じるところがあるなぁと、嬉しく思いながら聞いていました。

 そしてもう1つ、今回初めて、HRD Sakuraのシミュレーターで量産車の開発をしたこと、しっかり結果を出せたこと。これが実は、いちばんすごいことなんだと。今回だけじゃなく、今後のホンダ量産スポーツモデルにも生かしていけば、もっともっといいクルマが作れるはず、というお話も興味深かったです。

 さらに、鈴鹿サーキットでFF最速タイムを叩き出した映像を見ながら、伊沢さん本人に生解説をしてもらうという、とっても贅沢な場面もありつつ、トークは盛り上がりすぎて時間オーバー(笑)。抽選会がちょっと急ぎ足になってしまって、申し訳なかったです。8000件以上の応募の中から、たった10名の当選者を選ぶというドキドキの瞬間だったんで、本当はもう少し、余裕を持って抽選したかったなぁと反省しています。

シリアルナンバー001~010という映えある10台の商談権をめがけ、応募は8000件以上! 運命の抽選を任されたお2人も、抽選箱のボリュームに驚いていました

 でも抽選会でも、埼玉、東京、神奈川と関東圏の当選者が続いたところで、伊沢さんが「次あたり、九州の方を当てます!」と宣言して本当に福岡県の方を引くというミラクル! なんか持ってますよね~(笑)。

 そんなこんなで、こんなに貴重な開発秘話を聞くと、なんで私も応募しなかったんだろう~とすごく後悔しちゃいました。当選された幸運な10名の皆さま、すでに手にされた190名の皆さま、マジで羨ましいですっっ。全国にたった200台の黄色いシビック TYPE R Limited Edition。見かけたら、その幸運をおすそ分けしてもらいましょう!

Honda CIVIC TYPE R・Limited Edition 商談権抽選イベント

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。