まるも亜希子の「寄り道日和」

新型フィット e:HEVでミニJoy耐に参加しました

4代目となった新型フィットの登場と同時にスタートした、このプロジェクト。これまで初代から3代目までの全モデルでJoy耐に参戦し、好成績を納めてきたわがチームだからこそ、この新型への興味と期待はとても大きく、速さはもちろん「走って楽しい」レースカーにしたいと試行錯誤してきました。このミニJoy耐で、ここまでの成果が出せるかどうか、チーム全員がドキドキして迎えたレース当日でした

「心地いいクルマ」というコンセプトを前面に出して登場した新しい「フィット」だけど、本当はスポーティな走りも得意なのよ、サーキットだって楽しめちゃうのよ。というのを証明して見せようじゃないかと、立ち上がった「新型フィットe:HEVで耐久レースに出よう」プロジェクト。本来は6月末に開催されるはずだった、ツインリンクもてぎの7時間耐久レース「Joy耐」を目指してテストを続けてきたのに、コロナの影響で中止になってしまって(涙)。

 悔しいので、11月末に開催される「ミニJoy耐」には必ず出ようと、準備を重ねてきたわがチーム、TOKYO NEXT SPEED。と言っても、ミニというだけあって2時間耐久レースとかなり走る時間が短くなり、どちらかというと速さよりも低燃費が武器となるハイブリッド車には、ちょっと不利な条件でのレースデビューとなってしまうんですね。

 でも、それじゃあできる限り、ラップタイムを縮める努力をしましょうと、フィットの開発チームと一致団結して、最初にテストした時よりも、なんと10秒近く速くなることに成功!

 ぶっちゃけ、最初は「これじゃまったく勝負にならないかも?」と誰もがガクゼンとしていたらしいのですが(笑)、なんとか本番までに、いい闘いができるかも、というレベルの速さになってホッとひと安心でした。

 そしてわが家では、今年は夫の86レースがなかったので、娘を連れてサーキットに行くのは1年ぶりくらい。5歳になって、かなり自我ができてきた娘は、「もてぎ」と聞いてサーキットよりも遊園地(モビパーク)に行けると大喜び。0歳からあれだけ頻繁にサーキットを連れ回したにもかかわらず、普通の感覚の子に育っていてよかった!?(笑) 大荷物を積んで、いざ出発です。

 11月29日のミニJoy耐当日は、とてもいいお天気に恵まれました。午前中に予選アタックがあり、決勝は14時スタート。まずは予選に備えて、朝8時にはピットに集合です。私はチーム代表兼監督という名の雑用係なので、参加受付に必要な書類を集めたり、ピット内のゴミの管理やドリンクを冷やす氷の調達、お弁当の配布など、やることがいっぱい。ドライバーもメカニックもみんなドタバタしているので、その間、娘をどうしようかなと思ってたんですが、そんな心配をよそに、ピットの片隅に折り紙やスケッチブックを広げ、一心に創作活動にいそしんでくれて助かりました。

昨年までは、サーキットに来てもずっと私のそばにいないと不安そうだった娘なのに、5歳になった今回は自由そのもの(笑)。ピットの一角を陣取って絵を描いたり折り紙をしたり、創作活動に没頭していました。これはそのうちの1作品。ちょうどこの前日、わが家に新型レヴォーグが納車されたので、さっそく描いてくれました。

 予選アタックは橋本洋平。「パパが走るから応援しようね」と言っても上の空な感じで(笑)、それはちょっと寂しかったんですが、こんなところでも娘の成長を感じますね。そんな中でも、きっちりとベストタイムを更新してくれた夫はさすがでした。本人的には、あと少しイケたかもというところらしいですが、32台中25番手という予想以上のグリッドを獲得。ピット内は「ビリじゃなくてよかった~」と喜びの声が湧きました(笑)。

 そしてこの日はミニJoy耐だけじゃなく、ロータスエリーゼカップなどいろんなレースが併催されていたので、そこから私たちはちょっと長めの休息時間に入ります。娘と私はここがチャンスとばかり、モビパークへ。本来、ピットからモビパークへは、地下通路を通っていけば歩いてすぐの距離なんですが、現在はコロナの影響で封鎖されていたので、クルマで送ってもらいました。

 まずは、娘の念願だった立体迷路「迷宮森殿ITADAKI」を楽しみ、可愛いミツバチやでんでん虫の乗り物に乗り、わーいとテンション上がりっぱなしの娘。すると、これまで何度か来た時にはまったく見向きもしなかった、ミニバイクに乗りたいと突進して行くではないですか。「モーターサイクルトレーニング」と言って、補助輪なしで自転車に乗れる3歳以上の子供なら、トライできるアトラクションがあるんです。私は内心、大丈夫かなと思いつつも、せっかくなので見守ることに。

ツインリンクもてぎの遊園地「モビパーク」で、バイク初体験を果たした娘。まだフラついたり失速したり、ちょっとおぼつかない感じではあったものの、ひとりで走っている姿に感動してしまいました。パパのレースについて来たファミリーも、まったく退屈知らずでこんな成長した姿も見られるなんて、ほんとにいいところですね

 親は中に入れないので、ここからは完全に娘だけです。ヘルメットなどの装備品はスタッフがつけてくれて、バイクに乗るためのレクチャーも子供にわかりやすく教えてくれている模様。右手はアクセル、左手はブレーキ、と何度も確認しているのが見えました。娘はちょっと緊張した面持ちながら、目がキラキラしていて、初めての乗り物に乗るワクワクでいっぱいな様子。最初はスタッフに後ろを押さえてもらいながら、おっかなビックリ走り出しました。フラフラしてるけど、ちゃんとカーブは曲がれているみたいですね。転びそうになっても、足でバランスをとっているのでひと安心。どうも、アクセルを開け続けるのがまだうまくできないようで、すぐに失速してしまうのが課題のようですが、大きいコースに移動して走ってみても一応はひとりで回ってこれて、娘もとっても楽しかったみたいです。思いがけず、娘のバイク初体験ができていい思い出になりました。こういうところが、ツインリンクもてぎの魅力ですよね。

もう4年くらい一緒にJoy耐に参戦している、レーシングドライバー/モータージャーナリストの桂伸一さんが応援にかけつけてくれて、今回のドライバーである石井昌道、橋本洋平も恐縮しきり(笑)。大先輩ですからね。そしてピットにはデータ解析のためのパソコンがズラリと並び、かなり先進的な感じになっているのもわがチームでは初めての光景でした。(撮影・宮門秀行)

 さてさて、そんなこんなでついに決勝レースのスタートです! 今回、7時間耐久だったら一緒にドライバーとして乗るはずだった、桂伸一さんが応援にかけつけてくれたり、フィットの開発責任者である田中さんをはじめ、たくさんの開発チームの方々が応援してくれているので、なんとか上位を狙いたいところ。ということで、わがチームはかなりハイリスクな「無給油作戦」を決行することに! もう、ガス欠も辞さない覚悟で行こうと、みんなで腹を括ったわけです。まぁ、ヒヤヒヤでしたけどね。

 さあ、この作戦が吉と出たか、凶と出たのか!? 結果を含め、詳しいレポートは橋本が近日アップしてくれるようなので、それまでのお楽しみ、とさせてくださいっ。1つ言えることは、みんな笑顔だったけど、ますます闘志に火がついた、というところでしょうか。新型フィットハイブリッドで耐久レースチャレンジは、まだまだ続きます。

初めてもてぎを走った時は、ドライバーもメカニックもフィット開発チームの皆さんも、「えっ、こんなに遅いの?」とガクゼンとしていたフィットが(笑)、本番では速さを身につけ、カラーリングもバシッと決めてもらい、走る姿もこんなにカッコよくなりました。これからまだまだ、磨いていく予定です。(撮影・宮門秀行)

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。