まるも亜希子の「寄り道日和」

冬でも快適、2台の最新ラグジュアリー・オープンカー

クーペの登場から遅れること3年。ようやっと2020年7月に登場したレクサスLC500コンバーチブルです。このロングホイールベースのドラマティックなデザイン、幌を開けた瞬間に広がるオールレザーの贅沢なインテリア! 久々に惚れ惚れした日本車でした。サウンドさえドライブのスパイスにする大排気量エンジン搭載、鍛え上げたボディや走り。価格は1500万円とややお高めですが、満足度はかなりのものではないでしょうか

 1年で最も寒さが厳しいとされる1月20日、大寒は過ぎたものの、東京でも雪の予報が出ることが多くなりました。今のところ、私の自宅周辺はまったく白いモノは降らず、肩透かしを食ってばかりの状態ですが、みなさんのところはいかがですか?

 一応、予報を信じてスタッドレスタイヤを履かせたので、せっかくなら一度くらいは雪道を走りたいなぁ、という気持ちもあるのが職業柄の天邪鬼なところですよね(笑)。

 でもそんな中、この冬はたまたま、私が憧れる2台のラグジュアリー・オープンカーを立て続けに試乗する機会に恵まれました!

 大学時代は、1970年代のクラシックな(オンボロとも言う)イタリアン・オープンカー1台で暮らしていたもので、当然、真冬だってどこでもオープンで走り回っていた私。幌のリアウインドウにあたる部分の透明なアクリルスクリーンが、もうすっかり劣化して白く濁っていて、幌を閉めると後方視界が確保できなかった、ってのもあるので、かなり痩せ我慢でしたけどね。

 だから冬のオープンカーに乗る時のファッションと言えば、耳まで隠れるニット帽を被り、手袋をして、スポーツ選手がベンチで着てるみたいな足先まであるダウンコートを着るのがポイント。こうすると、足元から出るヒーターを首まで充満させられるという、アナログな全身ホカホカ作戦(笑)。この作戦は、私のよりもっとハードなオープンカー、ケーターハム・スーパーセヴンを愛車としていた、人気声優の三木眞一郎さんから伝授された技でした。三木さんと言えば「頭文字D」の主人公・藤原拓海役として有名ですが、プライベートでもすごくクルマ好きで、私は「ティーポ」の編集者時代に三木さんの連載コラムを担当していたほどでした。三木さん、元気かな?

 と、話が脱線しましたが、この冬に試乗できたラグジュアリー・オープンカー、1台目はお値段な~んと1500万円、レクサスLC500コンバーチブル。幌を閉じていればスポーティかつエレガント、幌を開ければキャメルカラーの上質なレザーがこれでもかと使われていて、圧倒的なセレブ感がムンムン。もう、外観だけでここまでキュンキュンさせられるオープンカーは、今まで日本車ではなかったかもしれないなぁと、惚れ惚れしちゃいました。

 そして心臓部に収まるのは、今や絶滅危惧種とも言える大排気量、5.0リッターのV8エンジンです。クーペと違って、ハイブリッドはナシ。割り切ってますね。スタートボタンを押すと、そのエンジンサウンドは幌を閉めていても大きめに響いてくるし、開けていればオーケストラを独り占めしているような感覚。このゾクゾクする感じは、確かにハイブリッドじゃ味わえないんです。

 オープン化にともなうボディ補強の方も、入念に広範囲に施されているというだけあって、低速から高速域まで一体感がしっかりあるなぁと感心。どこまでも余裕のあるV8エンジンのフィーリングと相まって、最高に優雅な時間が楽しめました。

130年を超えるメルセデス・ベンツの歴史が磨き上げてきた「美しさ」の最新作がこのEクラス・カブリオレと言えるでしょう。個人的にはもうちょっと古典的なコンバーチブルスタイルが好みなので、リアホイールハウスあたりが張り出している方が好きだったんですが、このスポーティかつモダンな洗練されたスタイルも確かに美しいですよね。しかも、価格が871万円~ということで、アレ? レクサスと比べるとなんだかお買い得!? なんて急にソワソワしてきてしまう人もいるかもしれませんね(笑) 最上級のAMG E 53 4MATIC+カブリオレでも、1364万円ですよ~

 そして次に試乗したラグジュアリー・オープンカーは、もうキング・オブ・ラグジュアリー・オープンカーと言ってもいいくらい、王道のメルセデス・ベンツ Eクラスのカブリオレ、E 300 カブリオレ・スポーツ。デザインは以前の方がもうちょっと流麗なボディラインが強調されていて好きだったんですが、最新モデルもスポーティかつモダンで、インテリアはブラックとホワイトのツートーンがレーシーな雰囲気。これがブラックとレッドのツートーンもあって、男女ともに似合いそうですね。

 LCコンバーチブルと違うのは、こちらはエンジンのダウンサイジングと電動化をグイグイと推し進めてきたということ。試乗車には2.0リッターの直4ターボチャージャー付きエンジンが搭載されているし、1.5リッター直4ターボにモーター兼発電機のBSGを搭載しているE 200 カブリオレ・スポーツ、3.0リッター直6ターボにモーター・ジェネレーターのISGを搭載しているE 450 4MATICカブリオレ・スポーツがあって、ハイパフォーマンス仕様のAMG E 53 4MATICカブリオレでさえ、3.0リッター+ISGなんです。

 走り出してみると、発進からとても軽やか。以前のモデルのような重厚さはやや薄れているものの、ハンドルの操作感やカーブなどでの挙動は、しっとり感もあってエレガントな雰囲気で包んでくれます。

 そして外気温7度の中、フルオープンでコートも着ずに走っているというのに、なんなんでしょうか、この快適さは! レクサスのフロントシートにもありましたが、首の後ろからヒーターが出て温めてくれる「ネックヒーター」もあるし、なによりサイドウインドウをあげていれば、高速道路でも風の巻き込みはほとんどなく、たまにそよそよ~と前髪を撫でていくくらいなんです。あんなに完全防備で部活中みたいな出で立ちで乗っていた、エレガントとはほぼ遠い私の青春時代はなんだったんでしょうか(笑)。同じオープンカーとは思えないくらい、快適すぎてビックリした最新のラグジュアリー・オープンカーでした。

Eクラス・カブリオレの幌を開けると、こんなインテリアが披露されます。後席にも座ってみたら、私の運転ポジションだと膝まわりには拳2.5個分ものゆとりがあって、余裕で座れることが分かりました。チャイルドシートを簡単確実に取り付けられるISOFIXもあるので、これなら子供がいても乗りこなせます。いや~、こんなラグジュアリー・オープンカーを普段のアシにできるような生活は私にはとても難しいですが、いつか、孫ができるころまでの目標にしたいと思います

 ちなみに、どちらも幌はスイッチ1つの電動開閉なのですが、いったい何秒で開けられるのか? 気になりませんか~? そこで私、手計測ながら測ってみましたよ。結果はレクサスLCコンバーチブルが、約16秒。メルセデス・ベンツ E 300 カブリオレ・スポーツが約17秒。ということで、レクサスが僅差で速かったです。まぁ、どちらのメーカーもそこは競ってないと思うし、オーナーさんもそこを自慢するような人はいないとは思うんですけれども。

 先日、テレビ番組のロケにフォルクスワーゲン ビートルのカブリオレが使われているのを見たのですが、確かにこんなご時世なので、クルマ移動での密を回避するためにも、オープンカーはいいかもしれないですね。昔からクルマ好きの間では「冬こそオープンカー」説が囁かれてきましたが、さらに説得力を増しそうな気配です。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。