まるも亜希子の「寄り道日和」

社会問題を反映するアイディアが集まった「子どもアイディアコンテスト」

低学年の部で最優秀賞を獲得したのが、神奈川県の小学2年生・中嶋みなみちゃんの作品「ゴミをたべるロボ キラキラカラスくん」。街でゴミを荒らして嫌われているカラスを見て、なんとか人の役に立つ鳥にしてあげられないかな? と考えたのがきっかけで生まれたアイディアだそう。そんな優しい気持ちも、アイディアの種になるんですね

 学校が休校になって友達に会えなかったり、遠足や運動会など二度と同じ年齢では経験できない、いろんなイベントが中止になったり。子供たちは、大人である私たち以上に、心理的なコロナ禍の影響を大きく受けているのでは、と思われますよね。

 毎年恒例となっているHonda主催のイベントで、小学校1年生~6年生の子どもたちの柔軟な頭と感性で、私たちの未来を明るくするアイディアを募集し、実際に作品にしてモノづくりの大切さ、楽しさを知ってもらい、最後はそのアイディアのいいところを、みんなの前でプレゼンテーションするという「子どもアイディアコンテスト」も、2020年の開催を見送るべきかどうか、当初はかなり悩んだそうです。

 でも、こんな時だからこそ、やろう! 「今」を変えたいと願うところから、夢や挑戦はスタートするのだから。そう考えて開催を決定。すると、おうち時間が長かったことなどもあって、過去2番目に多い7700件以上の応募があったんだそうです。

 その中から、低学年の部・高学年の部、各10作品が最終選考会へと進み、私も再び審査員として参加させていただきました。

 例年だと、最終選考会に選ばれたファイナリストの子どもたちは、東京・青山のHondaウエルカムプラザ青山に集合し、ステージの上でプレゼンテーションを行なうのですが、2020年は初のリモート開催。子どもたちの自宅と会場をつないで、審査会場とコミュニケーションが取れるようにして進行しました。

第18回を迎えた「子どもアイディアコンテスト」の最終審査会は、例年なら子どもたちが作品とともに登壇してプレゼンテーションを行なう、Hondaウエルカムプラザ青山のステージ上のスクリーンと、子どもたちの自宅をつないで、リモートで開催されました。みんな、いつもよりリラックスした雰囲気で大人顔負けのプレゼンを披露していたのが印象的。質問タイムでは子どもらしい素の表情が垣間見えて、そのギャップが可愛らしかったです

 作品の実物も子どもたちの手元にあるので、実際に見られないのが残念だったんですが、いつもはプレゼン前ですごく緊張していて、なかなか言葉をかわせない雰囲気だったのが、今回はみんな自宅からということで、すごくリラックスした表情なので見ているこちらまで和みました。

 また、プレゼンも本番一発勝負ではなく、事前の録画なのでかなり練習したのでしょうか、今回はどの子どもたちも、身振り手振り、演技まで入って大人顔負けのプレゼンにびっくり。審査委員長を務める脳科学者の茂木健一郎さんも、「君は主演女優賞ですね」なんて大絶賛していたのでした。

審査委員長を務める、脳科学者の茂木健一郎さん。子どもたち1人ひとりの個性と才能を引き出すコミュニケーションに、毎回さすがと感心させられます

 さて、作品のアイディアには毎年、その年にニュースなどで話題となった社会問題が色濃く表れるのですが、やはり2020年はコロナの影響と思われるものがたくさん。

「大好きなおじいちゃん、おばあちゃんに会えないのが寂しいので、夢の中で会えて、眠っている間に心の健康も回復できる」というアイディア、「さみしい気持ちがふっとんだ!」(大阪府の小学2年生・早坂悠希くん)や、楽しい時間は短く、退屈な時間は長く感じることに気づき、それを逆転してしまおうというアイディア、「ハッピータイム ましましアプリ」(沖縄県の小学4年生・古堅琉美花ちゃん/1年生・古堅晴琉空ちゃん姉妹)は、このご時世だからこそ生まれた作品だと思います。

 また、不要不急の外出を自粛せざるを得なくなって、買い物も3日に一度に減らすよう要請があったりしましたが、埼玉県の小学3年生・米沢心音ちゃんの作品「風船エコバック」はまさに、買い物の帰りに大量の荷物を抱えるお母さんをなんとかラクにしてあげたいと、考えついたアイディアだそう。

 膨らんだ風船に荷物を詰め込んで、自分の上を浮かびながらついて来てくれるエコバッグだそうですが、これがクルマのスピードにもついてきてくれるならば、車内の荷物を浮かばせることで、ラゲッジに入らないような大きな荷物を運んだり、燃費アップにも貢献できるかな~、なんて勝手に妄想してしまいました(笑)。いつか、実現したらいいですよね。

 さらに、撲滅するために手を尽くしているものの、まだまだ0にはならないのが「いじめ問題」と「交通事故」。今回もそれをなくすためのアイディアとして、人を傷つける言葉を優しい言葉に変換してくれる「ちくちくを無くす、ふわふわ君」(千葉県・小学6年生・臼井龍之介くん)や、人・乗り物・エネルギーを3層に分けて暮らす世界という「サード☆ワールド」(栃木県・小学5年生・岩佐葵ちゃん)のアイディアに感心。とくに「サード☆ワールド」は、細かな人や建物、乗り物などの造作物も1つひとつ丁寧に作られていて、交通安全だけでなく環境問題やエネルギー問題など、いろんな知識を総合したアイディア。ものづくりの視点からも創造性の面からも高い評価を得て、見事、高学年の部の最優秀賞に輝きました。

 今回も、子どもたちならではの身近な疑問、問題を捉えた視点から生まれた自由な発想と、それを形にしようと試行錯誤する努力、そして最大限に魅力を伝えるための一生懸命な姿に、感動で胸がいっぱいになった最終選考会。自分のためだけじゃなくて、誰かのため、日本のため、世界のため。そう想う気持ちが、アイディアの種になるんだなと、あらためて気付かされたのでした。

 賞を受賞した作品は、子どもアイディアコンテストの公式サイトで見ることができますので、ぜひチェックしてもらえたらうれしいです。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。