まるも亜希子の「寄り道日和」

新しい“交通安全運動”様式を考えました

日産自動車のグローバル本社ギャラリーからYouTube生配信でお届けした、「TRY-LIGHT ONLINEフォーラム 新しい“交通安全運動”様式を考えよう!」。皆さんと直接お会いできなかったのは残念でしたが、リモートでいろんなお話ができ、とにかく「楽しんで」活動していることが何より嬉しく感じました。楽しんでやることが、交通安全につながるって、理想的ですよね

 コロナに翻弄された2020年が、もうすぐ終わろうとしていますね。いろんなことをガマンして、諦めて、当たり前だったやり方を変えたり、便利さを手放したり。それでもなんとか、限られた条件の中で少しでも楽しいことを見つけて。この1年は、そんな風に過ごしてきた気がします。皆さんは、どんな1年でしたでしょうか?

 まだまだ先の見通しが立たない世の中だけど、私のまわりには「落ち込んでばかりいられない」って、前を向いて踏ん張る人たちが多くて救われている気がします。今回、参加させていただいたオンラインイベントも、そんな前向きなテーマでした。

 自分が見るためだけでなく、見られるためにヘッドライトを早めに点灯して、交通事故をなくそう、という「おもいやりライト運動」。その活動がスタートして10年を迎えたそうですが、皆さんはご存知ですか? 日の入りの30分前を「おもいやりライトタイム」と名付けて、沿道からドライバーにライト点灯を呼びかける活動は、たくさんの人たちの賛同を得て、今では全国に広がっているんです。

 そして毎年11月10日を「いい点灯の日」として、その前後には事務局と全国の活動メンバーたちが集い、活動報告をしたり意見交換をしたりする「TRY-LIGHT LIVE」を開催してきたんですね。でも今年はコロナのためにリアルイベントは見送り、その代わりにオンラインでメンバーとつながり、これからの時代、新しい生活様式に見合った形で、おもいやりライト運動らしく安全に楽しく行える活動とは? をみんなで考えよう! となったわけなんです。

 そんな「TRY-LIGHT ONLINEフォーラム~新しい“交通安全運動”様式を考えよう!」が12月18日に開催され、おもいやりライト運動事務局長の長谷川哲男さん、ソーシャルデザインプロデューサーの山名清隆さんと共に、私もコメンテーターとして参加させていただきました。

TRY-LIGHT ONLINE フォーラム 新しい“交通安全運動”様式を考えよう

 フォーラムは主に3つのテーマで進み、テーマ1ではコロナ禍で道路状況がどう変わったか、交通安全運動はどんな状況だったか、などを振り返り、テーマ2では全国のおもいやりライト運動「ヘッドライト点灯アクション」の活動チームから、今年の実地報告を。北海道、山形、新潟、福井、富山、相模原、高松、室戸、長崎、松浦、鹿児島と、それぞれの代表者がリモートで出演してくださり、写真とともにどんな風に活動したのか、わかりやすく語ってくださいました。

北海道から九州まで、全国の活動チーム代表者がオンラインで参加。コロナ禍でもいろんな感染予防対策をしながら、できる範囲で活動を続けたこと、新しい発見があったことなど、アットホームな雰囲気で報告してくれました。次回はまた、全国の活動メンバーが集まって交流できたらいいなと思います

 保育園の園児たちや大学生といった若い世代の参加者も多く、「ライト点灯」と書かれた黄色いボードを持って道路脇に立ち、ドライバーに直接訴えかけているんですが、みんなとっても楽しそうなのが印象的。中には「点灯してけろ~」って方言のボードもあって可愛かったです。

 山名さんによれば、最初はみんなすごく恥ずかしがっているのですが、1人、2人とライトをつけてくれるドライバーが増えてくると、嬉しくなってもっとやりたくなるんだとか。最後はもう、「学生とドライバーの闘いみたいになって、アクションもどんどんジャンプしたりオーバーになってました(笑)」なんて報告も。感染防止対策として、2mずつ間をあけて沿道に並んだため、数百mに渡る列になって点灯アクションをしている報告もあって、コロナに負けず活動する皆さんの気持ちの強さに、見ているだけで胸がいっぱいになりました。

 また、クルマのライトは右側の光軸が少し下がっているので、横断歩道を右から渡ってくる人の方が発見が遅れることが多く、交通事故も多い、という報告があったことにも感心しました。確かに、対向車を幻惑しないよう、そうした設定になっていることが多いそうですが、なかなかそれを自動車メーカーが自ら公表することはないので、おもいやりライト運動によってそうした注意点が知られていくことは、素晴らしいことだなと思いました。

 これらを踏まえ、テーマ3は新しい“交通安全運動”様式を考えよう! ということで、いろんなアイディアがたくさん飛び出して盛り上がりました。私からは、2020年4月に乗用車の新規車種にはオートライトの装着が義務化されたこと、2021年10月からは継続販売車種の新車にも義務化となることから、それに関する意見を。暗くなれば自動的にライトがつくため、トンネル内などでも無灯火のクルマが減るので、義務化そのものはとても喜ばしいことなのですが、だんだんドライバーが自分で判断して「ライトを点灯する」という動作を忘れるようになってしまう可能性があると思うんです。実際に私も、オートライトが装着されたクルマに乗って10年以上になりますが、雨の日の昼間などちょっと暗いな、という時に以前ならちゃんと自分で意識してライトを点灯していたのに、ほかのことに気を取られていたりすると忘れていることがあり、ハッとします。

 なので、オートライトがあっても油断することなく、「ライト点灯によって交通事故が減らせるんだ」という意識を持ってもらえるように、これからも地道に呼びかけていくことが大事だなと思いました。

 また、長谷川さんからは、マスクをしているとドライバーと歩行者とのコミュニケーションが取りにくいという指摘が。確かにそうなんですよね。手を振ったり、昔の横断歩道のように黄色い旗を設置したり、リフレクターの重要性もさらに高まっていきそうです。

 そして山名さんが紹介してくれた、「やがてくる新交通安全社会の解釈ポイント5」がとても面白かったので、ぜひ皆さんにも見て欲しいと思います。YouTubeのチャット欄にも、たくさんのコメントをいただき、和やかな雰囲気で終了したオンラインフォーラム。私も来年はぜひ、沿道でドライバーの皆さんに「点灯してね」と呼びかけたいと思います。

ソーシャルデザインプロデューサーの山名清隆さんが発表してくれた、「やがてくる新交通安全社会の解釈ポイント5」がこちら。超小型モビリティなどの登場で、道路空間だけでなく街全体も変わっていく中、交通事故の危険性や発生状況も今とは変わっていく可能性が高いですよね。それらに対応しながら、みんながしあわせなクルマ社会にしていきたいなと思いました

 それでは皆さま、1年間このコラムをお読みいただきありがとうございました! どうかよいお年をお迎えくださいね。また新年も、よろしくお願いいたします!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。