まるも亜希子の「寄り道日和」
70年以上前に誕生した「たま」電気自動車に対面しました
2022年5月26日 00:00
電気自動車は、未来のクルマ? ここ何年かで進化してきた新しいクルマ? 若い世代の中には、そう捉えている人も多いかもしれないですね。でも実は70年以上前に、ここ日本でも複数の電気自動車メーカーがあって、タクシー需要などで活躍していたことは、若い世代じゃなくてもけっこう驚くべき事実なのではないでしょうか。うちの両親は地方出身者だからなのか、子供のころに身近に電気自動車が走っていた記憶はないようですが、きっと都心部では見かけることもあったのだと思います。
そんな、戦後まもない日本を走っていた電気自動車のひとつ、「たま」電気自動車に思いがけず対面することができました! これは日産「アリア」の試乗会場にサプライズ的に展示されていて、こんなに近くで実物を見るのは初めて。思わず「わ〜〜、かわいい!」と叫んでしまいました。なぜ日産がこれを展示したのかというと、「たま」を作ったのは戦前の立川飛行機から派生した「東京電気自動車」というメーカーで、これがのちにプリンス自動車工業へと発展していくというつながりから。「たま」が発売された1947年は、GHQの軍需物資統制で石油不足が深刻化し、反対に水力発電による電力は余剰がある状況だったそうです。そのため国はEVの製造を奨励し、戦後の復興に一役買っていたといいます。小さな丸いヘッドライトに、鼻のように突き出たグリル。前から後ろに開くヒンジドアに、がらんとしてシンプルな室内。「薄いベージュ」と表現するのが最も近いボディカラーも、時代を感じさせますね。
ボディサイズは全長3035mm、全幅1230mm、全高1618mmという、現在の軽自動車よりひとまわり小さなサイズです。ただ、ドアを開けてみて驚くのはフロアの異様なまでの高さ。お許しをいただき、階段を2段跳びくらいする感覚で乗り込むと、フロアから座面までが近く、ハンドルの隙間もかなり狭いので、体育座りをするような体勢になっちゃいました。この「たま」は日産社内の有志で結成された「名車再生クラブ」が整備し、発売当時の正しい仕様と動態に戻したそうですが、そのご担当をされた方にお聞きしたところ、長身の男性だと足を折りたたむように座らなければならず、かなり運転しにくいとのこと。この日は残念ながら走らせることはできなかったのですが、「スピードは30km/hくらいしか出ない」そうで、ウインカーも今ではなかなか見られない矢羽式。のちにアポロウインカーと呼ばれたもので、ライトではなくて棒のようなアームがシュッと飛び出してくる、レトロなところがいい味を出してます。
そして、バッテリは床下に鉛バッテリが20個積んであり、最高出力は3.3kW(4.5PS)。1充電あたりの航続距離は約65kmとなっています。先日、日産と三菱自動車から発表された最新の軽EVの航続距離は約180km(WLTCモード)。室内は広く、運転しやすくパワフルな加速で、ものすごい進化を遂げていることがわかりますね。70年以上の時を経て、日本に小さなEVの旋風が吹き荒れるのかどうか。ちょっと楽しみになっています。