まるも亜希子の「寄り道日和」

上野の「パンダ」とフィアット「パンダ」

クルマ業界のパンダといえば、フィアット・パンダですね。これは2020年に限定150台のフィアット・パンダクロス4×4が出たということで、ディーラーに見にいった時にパチリ。このイエローがまたポップで可愛くて、陽気なキャラに合ってるんですよね。直列2気筒 0.9リッターターボとは思えない、元気いっぱいの走りを6速MTで四駆で楽しめるという希少な1台です

 ず〜っと見ていても飽きない、あの愛くるしい姿! 幼いころから何度、パンダに癒されてきたことでしょう。上野動物園のアイドル、ジャイアントパンダのシャンシャンが、ついに2月21日に中国に返還されるということで、パンダ大好きの娘に「最後にひと目会いたい」とせがまれ、観覧希望の抽選に応募。幸運にも当選して、行ってきましたシャンシャンとのお別れに。朝から張り切って準備した娘は、遊んでるところかな、笹を食べているところかな、なんて、元気なシャンシャンに会えるのを心底楽しみにしていました。

 ところがところが。観覧の日時が指定された抽選に当たってるんだから、行けばすぐ会えるんだとばっかり思っていたら、「当たった人こんなにいるの?」とゲンナリするくらいの行列が。指定の時間に行ったのに、そこから順番が来るまで1時間以上待つことに。でも、シャンシャンに会えるんだからと思って、じっと耐えて耐えて、ようやく順番がきた!

あんなに楽しみにしていた、最初で最後のシャンシャンとの対面となるはずだったのに……。数時間前からこの状態だったらしく、わが家を含め、その間に観覧時間となったファンはガッカリ。せめて、寝顔だけでも見えたらよかったのに、それさえ笹に隠れて見えないという(笑)。でも、それも含めていい体験になったと思うことにします!

 と思ったら、なんと観覧時間はたったの1分間! しかも、シャンシャン……ガン寝……。よりによって、笹の束を抱えてガン寝……。あの愛くるしい顔はどこなの? 腹と足しか見えないって、そんなのヒドイよ〜っ。お願いだから起きてくれ〜、と願い続けた1分間は無情にもあっという間に終わりを告げ、ハイサヨウナラ。ガックリと肩を落とす娘に、かける言葉もないパパとママでした。

 でも、上野動物園のあちこちに、シャンシャンだけでなくこれまでに飼育されたパンダの歴史や、たくさんの写真がパネルで展示されていて、親世代が子どものころに大フィーバーとなったランラン、カンカン、ホァンホァンやフェイフェイなどの懐かしい姿に思わずジーン。中国のパンダ保護研究センターと協力しながら、上野動物園が取り組んできた保全活動のことも、今さらながら地道で素晴らしい活動だなと理解でき、とても有意義な1日となりました。

シャンシャンに会えなかった悔しさを埋めるかのように、パンダの本をむさぼるように読んでいる娘。今度はパンダを20頭以上も飼育してきたという、和歌山県にあるアドベンチャーワールドに行きたいと言っています。「パンダ自身」は大人のファン向けだったようで、漢字が多くて読めなかったそうです(笑)

 さて、お察しの方も多いと思いますが(笑)、クルマ業界でパンダといえば、そうです、フィアット・パンダですね。フィアットが初めて実用モデルの設計を社外=ジウジアーロに委託し、1980年に誕生した初代パンダは、どこにでもありそうで、どこにもないベーシック・カーとして、忘れてはいけない存在だと思っています。4mにも満たないボディはありふれた2ボックスのようでいて、フロントガラスを含めてすべてが平面で構成されていたり、インパネはダッシュボードの代わりに全体がポケットになっていたり。乗れば乗るほど味が出てくるのがパンダの魅力でしたが、20世紀の終わりとともに惜しまれながら生産終了となりました。

 21世紀に入ると、パンダはちょっとモダンに、よりキュートに、中身は先進的になって、再び日本にやってきました。初代からのベーシック・カーという役割は受け継ぎながらも、見るからに陽気で元気いっぱい。デザインは全体的に丸みを帯びていながら、オール平面だった初代の面影をどことなく感じさせ、サイドや前後バンパーのプロテクト・ストリップで実用車っぽさを演出しています。インテリアには、現代に必要なインターフェースを収めつつ、伝統のオープンポケットもちゃんと備わり、メーターやスイッチ類のデザインも四角をモチーフにしていて、初代を知っている人が見たらちょっと嬉しくなりそうなところがセンスいいですよね。

 そんなパンダには、冬にドライブしたくなる四駆、4×4があるんです。日本では台数限定で販売されてきたので、あまり街中では見かけないかもしれませんが、最新のパンダクロス4×4はなんと、6速MTのみというマニアックなモデルです。ダイヤル式のドライブモードセレクターでオート、オフロード、ヒルディセントコントロールが選べるようになっていて、なかなかによく走るのです。一時期、欲しいな、買っちゃおうかな、と悩んでいたのですが、娘がパンダパンダと騒ぐもので、また欲しい熱が再燃してきて、中古車情報をチェックしている今日このごろ。親も子も、パンダには弱いのかもしれないですね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。