まるも亜希子の「寄り道日和」

新型「プリウス」のこだわりポイントあれこれ

未来的な薄型ヘッドライトに、クーペのような流麗なスタイリングとなって誕生した、新型プリウス。写真で見るよりも実車の方がより迫力があって、試乗中もたくさんの人が振り返ったり注目してくれました

 当初はもう、「タクシー専用車にしてもいいんじゃないか?」という議論まで出たという、新型プリウス。世界に先駆けて登場し、ハイブリッドをここまで普及させた立役者として、これからも普及最優先にするという考え方で、それはそれで一理あるかもしれないですね。でも、「やっぱりお客さまに“愛車”として選ばれるクルマでありたい」という開発チームの強い想いによって、新時代のプリウスが誕生したというわけです。知人がディーラーに見にいったところ、すでに受注は2年半待ち? という話も聞こえてくるほどの人気で、開発チームの皆さんもきっと喜んでいるでしょうね。

 そんな新型プリウスの概要や試乗インプレッションについては、すでにたくさん記事が出ているのでここでは割愛させていただくとして、私が取材した時に「そこまでするか!」というくらい、心に響いた開発チームのこだわりポイントをご紹介したいと思います。

Zグレードにオプションで用意されているパノラマルーフ(手動サンシェード付)を装着したモデルは、シャークフィンアンテナがルーフ一体成形になっているという、このこだわり。デザインをよくしたいという想いが伝わってきました

 1つ目は、“愛車”として選ばれるにはまず「乗りたい」と思わせることが大事だということで、デザインへのこだわりがものすごいのですが、中でも驚いたのは、パノラマルーフが装着されているモデルに関してのみ、なんとその中央についているシャークフィンアンテナが、ルーフ一体成形になっているというではないですか。つい、「その方が都合がいいんですか?」なんて聞いてしまうと、「いえ、単にその方が見栄えが良くなるので、こだわりました」とのお答え。確かに、パノラマルーフではない通常のルーフのモデルのアンテナは後付け感がちょっとわかるので、並べて見比べると一体成形の方が高級感がアップしています。そこまでするか……ですよね?

新型プリウスのバックドアは、2ドアクーペにも見えるようなスタイリングに馴染むよう、ドアパネルよりも上に配置されています。トヨタとしては初めてスイッチ式のドアノブを採用して、使い勝手を向上したということでした

 2つ目は、同じくデザインへのこだわりの中で、リアのドアノブをCピラー近くにブラックアウトして配置しているんですが、最初は「ああ、C-HRと同じやつね」と思ったのです。でもよくよく聞けば、縦型のドアノブは開けにくいというお客さまの声があるということで、バックドアと同じようなカチッと一発で開けられるスイッチ式を採用しているというのです。確かに、指先に力を入れなくてもすぐに開けられて、すごく便利。これにも感心してしまいました。

開発チームの強い想いがあふれる、HYBRID REBORNの刻印がさりげなく入っています。「何がなんでも燃費、ということはしなかった」と言いつつ、1.8リッターモデルでは32.6km/L、2.0リッターモデルでは28.6km/L(WLTCモード)の低燃費。これでこそプリウスですよね

 そして3つ目。これはバックドアを開けた時に、ふと目に入ると思うのですが、新型プリウスを開発するにあたっての強い想い、「ハイブリッドをもう一度生まれ変わらせる」を意味する言葉、「HYBRID REBORN」のロゴが、ちょうどテールランプの横、バックドアで隠れる部分に刻まれていました。最近なかなか、こうしたメッセージ的な文字が車体に刻まれているのを見た記憶がないので、よけいに心に響いてしまいました。

 そんなわけで、こういう開発者の想いが見えるようなポイントを知ると、より一層そのクルマが好きになりますよね。街中ではまだリースかレンタカーかな? というような白い新型プリウスを2台ほど見かけたくらいですが、これから徐々に、愛車として生きる姿を見るようになるのが楽しみなクルマです。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。