まるも亜希子の「寄り道日和」
2025年に印象的だったモデル
2025年12月18日 00:00
残りわずかとなった2025年を象徴する漢字に「熊」が選ばれましたね。自動車業界ではやはり、僅差で次点だったという「米」の方がしっくりくるかもしれません。米国のトランプ大統領の関税引き上げに大きく振り回された1年だったように思います。
2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、最後まで大接戦の末に、ホンダ「プレリュード」の猛追をかわしたスバル「フォレスター」がイヤーカーに輝きました。スバルは全体の販売台数の約7割を占めるほど米国で支持されていて、中でもフォレスターは「アウトバック」と並んで米国で存在感を示しているモデルです。スバルブランドの強みは安全性と信頼性ということで、日本のユーザーが感じるのとあまり変わらないブランドイメージが米国でも確立されているのですね。
対してアメリカ車の日本でのイメージは、ここ何十年もあまりアップデートされていないように感じます。かっこいいけどデカイ、燃費がわるい、壊れる……。私は学生時代に「デイトナ」というアメ車雑誌を愛読していたくらい、古いアメリカ車が好きだったのですが、クルマ業界に入ってみると先輩たちのドイツ車信奉が厚く、どうしてもアメリカ車の記事では欧州車と比較して伝えることが多かったように思います。私はこれまで、アメリカ車の魅力や進化をしっかり伝えてきただろうかと、振り返ると反省点もあるのが正直なところ。
でも2025年は、すごく楽しみにしていたアメリカ車にようやく出会い、試乗することが叶いました。それが、キャデラック「リリック」。長らく開発中であることが伝えられていたBEVです。ひと目見て、新時代のアメリカンラグジュアリーが具現化されたようだと感じました。
SUVというには低めの全高に流れるようなルーフライン、3m超えのホイールベース。これは今までにない、SUVとリムジンのクロスオーバーといったスタイリングではないでしょうか。インテリアもモダンで、ホワイトハウスの応接室はこんな感じかしら? なんて思うようなラグジュアリーな仕上がりとなっており、フォーマルなシーンにも似合います。
サイズ的には、やはり日本の市街地にはちょっと大柄ではあるものの、幹線道路や高速道路を走る安心感、静かさは極上。とくに、新世代のノイズキャンセルシステムを採用したり、ドア開口部には3重にもなるシールを施したりと、その静粛性はBEVの中でもトップクラスではないかと思います。キャデラックというブランドは、業界初のセルフスターターの開発や、世界初の電動パワーステアリング採用など、常にチャレンジを続けて自動車の未来を切り拓いてきた印象がありますが、リリックはそんなキャデラックがつくったBEVとして、さすがだなと納得した1台でした。2025年に印象的だったモデルとして、しっかりと心に刻みたいと思います。



