まるも亜希子の「寄り道日和」

2025年に印象的だったモデル

2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考会は、横浜のボッシュホールで開催されました。会場内には、10ベストに選出されたモデルがズラリ。受賞後の記念撮影も盛り上がっていました

 残りわずかとなった2025年を象徴する漢字に「熊」が選ばれましたね。自動車業界ではやはり、僅差で次点だったという「米」の方がしっくりくるかもしれません。米国のトランプ大統領の関税引き上げに大きく振り回された1年だったように思います。

 2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、最後まで大接戦の末に、ホンダ「プレリュード」の猛追をかわしたスバル「フォレスター」がイヤーカーに輝きました。スバルは全体の販売台数の約7割を占めるほど米国で支持されていて、中でもフォレスターは「アウトバック」と並んで米国で存在感を示しているモデルです。スバルブランドの強みは安全性と信頼性ということで、日本のユーザーが感じるのとあまり変わらないブランドイメージが米国でも確立されているのですね。

 対してアメリカ車の日本でのイメージは、ここ何十年もあまりアップデートされていないように感じます。かっこいいけどデカイ、燃費がわるい、壊れる……。私は学生時代に「デイトナ」というアメ車雑誌を愛読していたくらい、古いアメリカ車が好きだったのですが、クルマ業界に入ってみると先輩たちのドイツ車信奉が厚く、どうしてもアメリカ車の記事では欧州車と比較して伝えることが多かったように思います。私はこれまで、アメリカ車の魅力や進化をしっかり伝えてきただろうかと、振り返ると反省点もあるのが正直なところ。

ずっと楽しみにしていたキャデラック「リリック」に試乗することができました。新時代のアメリカンラグジュアリーの大本命になりそうな内外装です

 でも2025年は、すごく楽しみにしていたアメリカ車にようやく出会い、試乗することが叶いました。それが、キャデラック「リリック」。長らく開発中であることが伝えられていたBEVです。ひと目見て、新時代のアメリカンラグジュアリーが具現化されたようだと感じました。

 SUVというには低めの全高に流れるようなルーフライン、3m超えのホイールベース。これは今までにない、SUVとリムジンのクロスオーバーといったスタイリングではないでしょうか。インテリアもモダンで、ホワイトハウスの応接室はこんな感じかしら? なんて思うようなラグジュアリーな仕上がりとなっており、フォーマルなシーンにも似合います。

 サイズ的には、やはり日本の市街地にはちょっと大柄ではあるものの、幹線道路や高速道路を走る安心感、静かさは極上。とくに、新世代のノイズキャンセルシステムを採用したり、ドア開口部には3重にもなるシールを施したりと、その静粛性はBEVの中でもトップクラスではないかと思います。キャデラックというブランドは、業界初のセルフスターターの開発や、世界初の電動パワーステアリング採用など、常にチャレンジを続けて自動車の未来を切り拓いてきた印象がありますが、リリックはそんなキャデラックがつくったBEVとして、さすがだなと納得した1台でした。2025年に印象的だったモデルとして、しっかりと心に刻みたいと思います。

まるで「ハリウッド映画が始まる?」かと思うように美しい、リリックの大きなディスプレイに表れるオープニング画面です
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。