まるも亜希子の「寄り道日和」

モーターランド三河で開催されたリアルとバーチャルのダブルレーサー体験会

D1グランプリやフォーミュラドリフトに参戦中の山中真生選手が駆るスープラは、見た目の迫力とダイナミックな走りで参加者を魅了。一瞬にしてサーキットが真っ白に煙っていたほどでした

 深夜に天井から響いてくる、ドンドンドン、カッカッカッという振動。なにも知らずに初めて聞いたら「なんだ、ネズミか? 泥棒か?」なんて怖くなりそうですが、私と娘は「あぁ、またやってる。がんばれ〜」などと思いながら眠りにつくのが日課です。わが家は寝室が1階でリビングが2階なのですが、ちょうどベッドの真上のあたりに夫のレーシングシミュレーターが置いてあり、クラッチペダルを踏む音やマニュアルシフトを操作する音が、振動となって階下に響いてくるのです。なぜか私たちが寝静まる頃になるとやる気になるらしく、もうちょっと早めにしてほしいところではあるのですが(笑)、私は隣でイビキをかいている人がいても気にせず熟睡できるタイプなので、まぁよかったです。

 さて、そんなシミュレーター導入のきっかけをくれたビッグローブさんが主催する「リアルとバーチャルのダブルレーサー体験会」というイベントがありまして、サーキットを実際に走行するリアルと、シミュレーターで走行するバーチャルを同時に楽しめる、今までにない内容。第1回は富士スピードウェイで行なわれ、夫の橋本洋平がゲストドライバーの1人として参加したんです。そのイベントが好評だったそうで、11月29日に第2回がモーターランド三河で開催され、今回は私もトークショーのMCとして参加させていただいちゃいました。

 前回同様、ゲストドライバーがとっても豪華。北海道出身のラリードライバー、長尾綱也選手に、ミスユニバースジャパン準優勝で現役の歯医者さんという異色の及川紗利亜選手。そしてD1グランプリにも出場中の山中真生選手、フォーミュラドリフト参戦中の深田一希選手。唯一のジャーナリストドライバーとして夫の橋本洋平という顔ぶれで、それぞれのプロドライバーの運転を間近で体感できる、同乗試乗も行なわれました。

 参加者はグリップ走行の時間とドリフト走行の時間が分かれていて、1日たっぷり走ることができ、空いている時間はステージトラックに設置されたシミュレーターで走ったり、KDDIテクノロジーの社員の方が作成したという、モーターランド三河のリアルなシミュレーターを体験するブースや、3Dスキャン体験コーナーも。さらに今回、事前予約なしでも参加OKの子ども向けコンテンツとして、インターネット講座やキッズEVカートもあって盛りだくさんだったんです。

KDDIテクノロジーの社員が実際に歩いてモーターランド三河のコースを3Dスキャンし、作成したというシミュレーターは本物ソックリのコースにびっくり! これなら初めて走る人のいい練習になるのも納得です
トムスが用意したキッズEVカートは特設コースで試乗でき、楽しそうに乗っている子どもたちの笑顔がありました

 同乗走行では、ひときわ濃いスモークと爆音を振りまいて走っていた山中選手のスープラに、みんな釘付け。長尾選手のGRヤリスはちょっと普段とは違うチューニングをしてきたらしく、ところどころオシリを振って走っているのを目撃。及川選手と深田選手のダイナミックな走りもさすがです。橋本は、発売されたばかりのホンダ・プレリュードを駆り、新世代ハイブリッドならではのしなやかな走りを披露していました。

思えば新型プレリュードがサーキットを走る姿を初めて見ましたが、かっこいいですね! 音が静かなのに、しなやかにコーナーを攻めていくのが印象的でした

 そしてランチタイムに行なったトークショーでは、及川選手が急遽、翌日に参戦するラリーのレッキのため不参加となってしまったのが残念だったんですが、それでもドライバーは4人! それぞれの話をどうやってまとめようか? と私は前日から悩んでおりました。しかも、長尾さんとは前夜の食事会でご挨拶できたものの、山中選手と深田選手は初対面だったので、お二人の魅力を引き出せるかどうか緊張していたんです。

 でもそれはまったくの杞憂に終わり、皆さんすごくわかりやすく、ところどころ笑いを誘いながら面白いエピソードをたくさん話してくださって、私自身も楽しませていただきました。長尾選手がコツコツと制作中のモンスターマシンの話や、競技以外ではまったくクルマを運転せず、ほぼシミュレーターのみで練習するという山中選手の話にビックリしたり、深田選手が「ドリフトって荒っぽい運転をしていると思っている人がいるのですが、実際に見てみるとけっこう静かに操作してるんだなと感じると思います」というお話に納得したり。また、「サーキットを走り始めて30年以上が経過したオッサンで、運転もそれなりにできていると思っていたのですが、シミュレーターでチェックするとまだまだなポイントがいっぱい。あらためてドライビングを見直さなければならないと思う今日この頃で、シミュレーターは自分を見つめ直すドライビング診断マシンなんです」という橋本のコメントには、4人全員が「うんうん」とうなずいておりました。

 プロドライバーも積極的にシミュレーターでの練習を取り入れてきていることは知っていたものの、今回聞いてみると山中選手みたいな人もいるし、そうでなくても1日4〜5時間シミュレーターで走ることもあるという人が多く、あらためてバーチャルの重要性や使い方のコツを皆さんに教えていただき、それがリアルにもしっかり活かされていると実感した貴重な1日になったと思います。こうして「リアルとバーチャルのダブルレーサー体験会 Vol.2 powered by BIGLOBE」は無事閉幕。第3回があるかも? とのことなので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。