まるも亜希子の「寄り道日和」
「モビリティのテストコース」を見てきました
2026年1月1日 00:00
2026年こんにちは! いよいよスタートしましたね。当コラムを本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2000年代に入った頃から、2025年というのがさまざまに描かれた「近未来」の1つの節目となっていた気がしていましたが、それを超えた今、次は2030年に向かってここからますます近未来感が加速していくような気がしています。今まではなんとなくぼんやりとした輪郭だった近未来が、少しずつクッキリとしてくると思うのです。
とくに私たちの暮らしがどのように変わっていくのか、その道筋を垣間見せてくれたのが、トヨタが静岡県裾野市の東富士工場跡地に建設している「ウーブン・シティ」。厳重なセキュリティゲートを通過し、その中を歩いて取材させていただきました。ここは「実証実験の街」とされていて、さまざまな新しいサービスやシステム、プロダクトを発明・開発・検証する企業や団体、個人のことを「インベンターズ」と呼び、それを自由に試したり実証実験に参加する人たちのことを「ウィーバーズ」と呼んでいます。
現在、居住者はまだ数世帯とのことですが、将来的には2000人を予定しており、加えて私のようにここを訪れた人も、たとえば何かモノを買ったり、試したり、乗ったりしてアンケートに答えたり感想を伝えたりすることで、インベンターズと一緒に未来につながる発明に参加することが可能。もしかすると、自分のひと言が未来をよくするキッカケになるかもしれないと、ちょっとワクワクしたのでした。
モダンでおしゃれな集合住宅や広場、カフェやコンビニといった施設が集まる「住居エリア」の周りをぐるっと400mほど道路が整備されており、気になったのは常に歩行者側の信号が「青」になっているところ。というのも、居住者のために運行している乗り合いバスの「e-Palette」が近づいてくると、信号に合図を送ることで車両側の信号が「青」に変わるという、新しいインフラの実証実験中なんです。道路では3輪のパーソナルモビリティである「スウェイク」も走っていたのですが、それは信号機がカメラで接近を検知して青信号に変えるそう。ということはウーブン・シティ内では車両側の「信号待ち」がない世界が実現しているんですね。交通量の多いところでは難しいかもしれませんが、確かにこのシステムの方が理にかなっている交差点は日本中にたくさんあるのではないでしょうか。
そしてもう1つ、面白いなと思ったのはカーシェア車両を自宅前など指定した場所まで「連れてきて」くれる自律走行ロボット「ガイドモビ」。ロープでつながない牽引のようなイメージでしょうか。連れてくるシェアカーには自動運転の装備は不要で、Toyota Safety Senseが搭載されていて、かつ小型の通信機を後付けで装備することができれば、どんな車両でも無人で利用OKとのこと。ガイドモビがあれば、専用のシェアカーを新たに開発する必要がなく、取り入れやすいところがメリットです。
現在は、居住者がアプリで呼ぶと10〜15分ほどで来てくれて、帰りも返却リクエストをすると指定した場所まで連れて帰ってくれるとのこと。これは便利ですよね。現在は、万が一のためにスタッフがシェアカー側に乗車しているそうですが、ゆくゆくは無人で、数台を一度に連れていくようなことを想定しているそうです。シェアカーだけでなく、いろんなシーンで使えそうな気がしました。
さらに、コーヒー大好きな私がとても興味深かったのは、国内シェアNo.1を誇るUCCがウーブン・シティ内で行っている実証実験。これは事前に希望した人がカフェに来店すると、天井に埋め込まれた4つのカメラで店内で過ごす様子を観察し、ビジョンAIの技術でデータ化するというもの。コーヒーの味や香りの変化、また何口飲んだらどんな変化が起こったか、といったデータを集めていくのだそう。中世ヨーロッパの時代から、コーヒーには対話を促進させたり、生産性を加速させたり、共創を加速させるといった効果が伝えられていますが、それについても研究しつつ、新たな可能性を検証して今後の事業に活かすのだそうです。ウーブン・シティによってコーヒーの近未来にどんな変化がもたらされるのか……楽しみで仕方ないですね。
このほか、宅配便などの荷物が地下通路を通って各家庭にダイレクトに届けられるサービスを検討していたり、「あったらいいな」「でも大変そうだな」と二の足を踏みそうな大胆なシステム転換にもトライしていて興味津々。これまでの常識にとらわれず、面白そう、よさそうと思ったことはとりあえずやってみる。そんな、ポジティブの渦のようなウーブン・シティにならい、私たちも2026年を活性化させていきたいですね。




