まるも亜希子の「寄り道日和」
シビック e:HEVの進化を確認する2時間耐久「ミニJoy耐」
2026年7月9日 00:00
梅雨だから雨が降るのは仕方がないとは思うんですけどね、台風まで来なくたっていいじゃないですか? しかもダブルで。なーんて天気予報とにらめっこしながらブツブツ愚痴っていたのは、週末にモビリティリゾートもてぎの2時間耐久レース「ミニJoy耐」を控えている時でした。おかげで土曜日の公式練習はキャンセルになってしまったんですが、なんとか開催中止はまぬがれ、日曜日の早朝から車検、公式練習、予選、決勝レースと長丁場の1日になりました。
ホンダ若手エンジニアとモータージャーナリストがタッグを組み、2モーターハイブリッド「e:HEV」の走りを鍛えるプロジェクトは、第一弾のフィットe:HEVで「RS」の量産車復活という成果につながり、2024年からマシンをシビック e:HEVに交代してからは「プレリュード」や「シビックe:HEV RS」にもここで得た知見がフィードバックされたとか。3年目となる今年はさらに、レースでも日常でも走って楽しいクルマづくりを目指して試行錯誤してきました。
マシン側では、熱に弱いバッテリの熱マネジメント、欲しいところでしっかりと速さが出せるパワーマネジメント、耐久性やドライバーへの優しさなどが2年かけてググッと進化。タイムが上がるにつれて増してくる、ボディや足まわりへの負担をしっかり受け止める対応も重要で、このプロジェクトに協力してくださっているクスコさん、トラストさん、エンドレスさんにもその都度、一緒に考えてもらいながら進めてきたんです。そしてドライバーも、マシンの進化に合わせて走り方を何通りも試してベストなところを探り、ヨコハマタイヤの協力のもと、地道なテストを繰り返して3年目に突入しました。いよいよ、集大成となる最初のレースがこのミニJoy耐です。
シビック e:HEVはなぜかこのミニJoy耐とは相性がよいようで、運が味方したところも多々ありつつですが、なんと現在2連覇中。今回、3連覇がかかっていたんです。それもあってちょっと力が入っていたのか……。早朝の車検を無事終えて、50分間の公式練習も予定通りのメニューでスタート。石井昌道、桂伸一、橋本洋平と交代して走っていたのですが、チェッカーまであと少しというところで加速しなくなってしまったと連絡が! ピットは凍りつきましたね……。まずはピットまで自力で戻ってきてくれることを祈り、重大なトラブルではないことを祈り……。
と、それが通じたのかマシンは自力でピットに戻り、すぐにエンジニアたちがチェックを始めます。心配しながら見守る中、幸いすぐに直せるトラブルだったようでホッ。いや〜、肝を冷やしました。しかし予定通りにいかなかったことが一つだけ。実は今回、猛暑を懸念してドライバー全員にクーリングベストを新調したんです。レーシングスーツの内側に着るベストのようなもので、水を循環させる管が張り巡らされていても薄くて伸縮性がいいため運転の動きを妨げないし、お値段も良心的な「BOGU(ボーグ)」というメーカーの製品です。どのくらい冷えるのか、真夏の7時間耐久レースに向けてのテストのつもりでしたが、この日は上着が必要なくらい気温が低くて、威力を実感できず(笑)。とはいえ、車両側に水を循環させるための小さな箱のような機器を設置して、運転席に座ってからドライバー側のホースを機器と接続する作業が発生するので、ドライバーチェンジの手順などが練習できたのはよかったです。
さ、そうこうしているうちに、予選アタックの時間です。当初の天気予報ではこのくらいから雨がやむはずだったのですが……。めっちゃ降ってるし。Aドライバー・橋本洋平はまたしても川のようなコースに出ていき、果敢にアタックしましたが2分31秒039でチームベスト更新はならず。でも9台中4番手というポジションを獲得しました。トップは「#150 青山学院大学自動車部Z」のフェアレディZで、2分24秒184。2番手が「#986 TOYOTA自動車部 AE86」、3番手が「#20 M-Racing S2000」。決勝ではこの速さ自慢の3台をはじめ、5番手につけている「#13 ENDLESS 13MASレビン」や、軽さと速さのバランスがいいフィット3の2台も手強い相手になると予想されます。
ランチタイムをはさみ、15時30分の決勝レーススタートまでにはさすがに雨はやむでしょうと思っていた私たち。それが、なぜかず〜っと降ってまして。弱まるのか、強まるのか? それによってタイヤ選択なども変わってくるので、スタート直前までみんなでヤキモキしていました。でももう、グリッドに並んでしまったら覚悟を決めるのみ。スタートドライバーの橋本をみんなで見守ります。いつもなら、フォーメーションラップからのローリングスタートで、前のマシンを何台かパスすることもあるのですが、さすがに今回の前3台は強いマシンばかり。4番手のまま、周回を重ねていきます。
でも雨はどんどん強くなり、路面コンディションは難しくなってスピンするマシンや止まりきれずにコース外走行をしてしまうマシンがちらほら。確かなドライビングテクニックが求められるレースになってきました。さらに、路面抵抗も高まってしまうので燃費にも悪条件。わがチームTOKYO NEXT SPEEDの「#29 TNS CIVIC e:HEV」は2時間を無給油で走り切る作戦のため、徹底的に燃料の無駄遣いをなくして走らなければなりません。そのあたりは、百戦錬磨のドライバー3人が揃うわがチームだけに、どんな路面だろうと安心して見ていられる確かなドライビングをしてくれるのがいいところ。この2時間は夏に向けてのデータ取りという意味合いもあるので、完走することも大きな目的なんです。
レース展開に異変が起こり始めたのは7ラップめからで、まず2番手だった「#20 M-Racing S2000」が3番手に下がり、10ラップめにわがチームが「#986 TOYOTA自動車部 AE86」を抜いて3番手にアップ。13ラップめにトップを走っていた「#150 青山学院大学自動車部Z」が給油に入り、「#20 」がトップに立つも、20ラップめにはついに! わがチームががトップに躍り出ました。
ミニJoy耐のレギュレーションでは、クラスごとに義務ピットイン回数が決められていて、滞在時間が6分〜11分となる最低滞在時間があるものと、滞在時間指定なしのものがあります。私たちは滞在時間指定ありの義務は0回、滞在時間指定なしの義務が3回。なのでまず19ラップめに橋本から桂にチェンジ。相変わらず雨が降る中、桂も安定したドライビングで周回を重ね、トップを守り続けます。が、やはり#150のZは速い! ひたひたと背後に迫り、26ラップめには2位にピタリとつかれてしまいます。そしていつの間にかじわじわと上がってきたのは、6番手からスタートしていた「#96 KAMSP DXL AZ FIT」。「#20」もまたまた4位につけてきました。
34ラップめ、桂から最終ドライバーの石井にチェンジ。この時、2位は「#96」ですがすでに3ラップの差をつけていたため、わがチームはトップをキープ。でもそこからまた、猛スピードで追い上げてくるのが「#150」のZです。ラップタイムにして20秒以上も速いので、これはもしかすると抜かれてしまうのでは……とヒヤヒヤ。しかもわがチームは、あと1回のピットイン義務をこなさなければならないんです。レースが残り10分となったところで、石井がピットロードに入り、ピットの前で停止してまたコースへ戻っていき、義務クリア。2位の#150、3位の#96との差を見守りながらあとは祈るのみ。
と、その時でした。なんと2位を走っていた#150が突如ピットインしてくるではないですか。みんなで「え〜〜っ、なんで?」とビックリ。あとで聞いたら、燃費計算が合わなくて足りなくなってしまったとのこと……辛いですね。どのチームもカツカツで走っているのでウチは大丈夫かとまたまた心配しましたが、#29は48ラップで無事にトップチェッカーを受けたのでした。夢にまで見た、3連覇達成。なんだか現場ではあまり実感がわかず、どこかふわふわした気持ちで表彰式を見ていたのですが、今ごろになって嬉しさが込み上げてきます。
2004年に初代シビック・ハイブリッドでJoy耐に初参戦したときは、全チームに何度も抜かれるほど遅く、バッテリは最初の5コーナーまでしかもたず、ハイブリッドでレースに勝つ日なんて本当にくるのかと信じられない状況でした。それからちょうど20年の節目にミニJoy耐で初勝利をあげ、ついにここまできたのかと長い道のりを振り返ったところでした。さらにこの3連覇という形で、決して運が味方しただけではないことを見せてもらえた気がします。
チームとしても、ホンダ若手エンジニアがメキメキと力をつけてきたことを実感。トラブルへの対応力、予測不能なレースにできる限りのシミュレーションで準備をする経験値、そして自分の担当以外の部署とも連携して立ち向かう結束力。レース現場だけでなく、データ解析やマシンづくりに関しても腕を上げていて、本当に素晴らしいチームになってきたと感じています。あとは……、まだ成し遂げていない真夏の7時間耐久レース「Joy耐」勝利に向かうのみ。過酷な暑さの中での闘いになりそうですが、しっかり準備をして臨みたいと思います。





