人とくるまのテクノロジー展 2019

未来の自動車は木になる!? 旭化成の考える20xx年

自然との調和と、五感で快適さを追求する卵形の自動運転車コンセプト

2019年5月22日~24日 開催

入場無料

クルマの未来像をイメージした旭化成のコンセプト展示

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日まで。登録が必要だが入場は無料。

 旭化成は2030年以降の未来の自動運転車をイメージしたコンセプト展示を実施しており、注目を集めている。近い未来の自動車に採用されることが考えられるマテリアルと、少し遠い未来の自動車という2本立てで、同社ならではの素材技術をアピールしている。

旭化成のブース

 旭化成のブースでひときわ目を引く、まるでアート作品のような卵形オブジェは、自動運転車のイメージを同社なりにふくらませた「AKXY POD」と呼ばれるもの。2030年以降の自動運転車の未来像を、同社の素材技術を駆使して形にしたものだという。

後方斜めから見たAKXY POD

 これまで目にすることの多かった、自動車メーカーの考える未来の自動運転車は、不要なものが取り除かれた快適さを追求したものではあるものの、無機質に思えるところもあった。旭化成では「五感で快適さを作り出せないか」を発想のスタート地点に、そうした機械的な無機質さを排除すべく、同社が持つ多数の素材技術を用いて「自然との調和」を意識した車内空間としてデザインした。

 外装のドア付近には大胆に本物の木材を配し、車内フロア部には人工芝のマットと、水辺をイメージして発光するアクリル素材が貼り付けられている。シート部は同社独自のスエード調人工皮革「Dinamica」を採用。中央にはテーブルがあり、その視線の先には走行状況が分かる大型の曲面ディスプレイが埋め込まれ、天井は走行場所や周囲の環境に応じて映像が変化するディスプレイ(展示ではプロジェクターによる投影)となっている。

自然を感じさせる車内空間
ドア付近には本物の木材を使用している
車内の雰囲気
シートにはスエード調人工皮革のDinamicaが使われている
人口芝マットが貼り付けられた水辺をイメージしたフロア
車内の大型ディスプレイを用いてデモンストレーション
天井は走行時の周囲環境などに応じた映像が映し出される

 指向性スピーカーを搭載しており、ライドシェアなどの用途で複数人が乗車していても、その中の特定の1人だけに音声アナウンスを届けるといった機能を実現する。また、桜並木の通りを走行しているときは、車両に搭載された香り発生装置で桜をイメージさせる香りを再現するといったこともできる。デモンストレーションでは、実際に車内映像の変化や香りなどを体感可能だ。

前方の足下に指向性スピーカーを配置
シート横にあるタッチセンサーで、写真左上に見えるライトの明るさを調節できる
中央に見えるダクトから香りが流れてくる

 コンセプト展示で使われている素材のうち、半分ほどはすでに同社から市販されている製品や技術を利用しているとのこと。木材については現状では実車両に使用することはできないものの、デザイナーからの「クルマに木材を使いたい」という要望は多いとしており、将来的に安全性などの課題が解決されることを期待している。

「近い未来」のクルマに搭載されることが見込まれる技術も展示。これは無塗装でさまざまなカラーや素材感を再現できる樹脂成型技術
塗装したのに近い優れた外観と、耐傷性を持つことに加え、環境にも優しいとしている
車内のCO2濃度を検知できるセンサー。濃度が上昇した際に自動で換気を行なうようにすれば、居眠り運転の防止にも役立つだろう
シートに使うことで座り心地を快適にする3次元構造のファブリック素材

日沼諭史

日沼諭史 1977年北海道生まれ。Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、四輪・二輪や旅行などさまざまなジャンルで活動中。Footprint Technologies株式会社代表取締役。著書に「できるGoPro スタート→活用完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。2009年から参戦したオートバイジムカーナでは2年目にA級昇格し、2012年にSB級(ビッグバイククラス)チャンピオンを獲得。所有車両はマツダCX-3とスズキ隼。