人とくるまのテクノロジー展 2019

市光工業、2年間のヒアリングで進化させた「コミュニケーション ライティング」など日本初公開

助手席から出る人をアシストする「新構造ドアミラー コンセプト」も

2019年5月22日~24日 開催

入場料:無料(登録制)

市光工業ブースで日本初公開されている「コミュニケーション ライティング」の実物大モックアップ

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜・展示ホールで5月22日、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2019 横浜」が開幕。4件の技術を日本初公開する市光工業は、一般開場の10時を前に会場内で報道関係者向けの発表会を開催した。

 フランスに本拠地を置くヴァレオグループのライティング企業としてプレゼンテーションを行なった市光工業は、日本初公開の4件のうち「コミュニケーション ライティング」「センサー内蔵ヘッドライト」「新構造ドアミラー コンセプト」の3技術について解説を実施した。

市光工業株式会社 マーケティング部 部長 箕川彰一氏

 プレゼンテーションでは市光工業 マーケティング部 部長の箕川彰一氏が登壇。今後の“自動運転時代”を見すえた新技術であるコミュニケーション ライティングは、車両が次にどんなアクションを起こすのかについて、歩行者など車外にいる人に光を使ってアピールするもの。2017年の同技術展でも出展しており、その時点ではボディ外周にライン状に設置したLEDの発光色を変化させ、色や点灯具合などの組み合わせでメッセージを伝えるものとなっていた。

 箕川部長はこれまでの2年間で約500人にからコミュニケーション ライティングについて意見を聞き、そこで得た内容をフィードバックしたのが今回の実物大モックアップになると説明。より分かりやすい表現にして伝える情報の量を増やすため、車両前面の広い部分を表示エリアに使い、色の可変が可能なRGB LEDや、今後、クルマでの使用が認可されると言われている自動運転用のブルーグリーンなど、約400個のLEDを配置しているという。

 具体的な表示内容では、現在規格化が進行中となっている「ADマーカー(自動運転マーカー)」をはじめ、車両から歩行者や自転車に乗る人に向けた注意喚起、他のクルマなどに乗る人に向けて感謝などを伝えるコミュニケーション、クルマから所有者に向けたメッセージなどを想定。シーンごとに色や形状、点灯パターンを変えて利用するという。

 今回の展示でも、実物大モックアップを使って設計意図などを紹介しつつ、来場者からのフィードバックを集め、今後の法制化が見込まれるコミュニケーション ライティングの制度作りに関わっていきたいと箕川部長は述べた。

目にした人の意見をフィードバックして、2017年はライン状の発光で行なっていた意思表示を図形も使って行なえるように進化させた
規格化が進行中の「ADマーカー(自動運転マーカー)」を先行して採り入れている
LEDの発光でボディに図形などを表示するほか、道路上に矢印などを投影してさまざまな意思表示を行なう

 センサー内蔵ヘッドライトでは、ヘッドライトやリアコンビネーションランプが車体の四隅にレイアウトされていることに着目。自動運転などで利用するレーダーやLiDERを設置する場所として有利であり、ヘッドライトユニットでは水や汚れから灯体を保護するカバーがあり、センサー類を内蔵することで灯体同様に保護することが可能。さらにヘッドライトのクリーニングシステムを追加すれば、汚れを洗浄剤で洗い流すこともできる。さらにヘッドライトに備えている光軸調整機構を利用して、センサー類がカバーする位置を最適に保つことも可能になるという。

 このほかにも、センサー類につながるケーブルをヘッドライトユニットとしてモジュール化すれば、センサーとコントロールユニットなどを接続するハーネスを集約でき、車両生産時の工程簡素化も実現できると箕川部長は紹介した。

 なお、ヘッドライトユニットに収めるレーダーやLiDERはヴァレオ製となっており、グループ内の協業によるシナジーであることも合わせてアピールしている。

ヘッドライトのユニット内にレーダーやLiDERといったセンサー類を配置することで、センサー類を汚れなどから保護し、クリーニングシステムを使うことで泥や雪などが付着した時に洗い流せることが大きなメリットとなる

 3つめの新構造ドアミラー コンセプトは、ライティングではなくミラーを動かすアクチュエーターについての新技術。従来型のドアミラーでは、ミラーハウジングの展開&格納と、鏡面の視認範囲調整でそれぞれアクチュエーターを用いているが、これをドアミラー基部に設置するアクチュエーターに集約。鏡面を固定することでミラーハウジングとのクリアランスが不要になり、結果的に鏡面の面積はそのままにミラーハウジングの前面投影面積を約20%小型化。燃費の向上や風切り音の提言に寄与するという。

 これに加え、アクチュエーターの作動スピードを大幅に向上。これにより、従来から行なっている視認範囲の調整やリバースギヤと連動する角度変更に加え、ウインカー操作に連動して車両側面の視認性を高めたり、助手席の乗員がシートベルトを外したことをトリガーに、歩道側の後方確認ができる位置に鏡面を動かすといったアシスト機能を追加できる。また、高性能化のためアクチュエーター自体はサイズアップするが、2個を1個に減らすことで車両の軽量化にもつながるとのこと。

 箕川部長はドアミラーをカメラシステムなどに置き換える技術トレンドが進んでいるものの、一方で鏡面で後方確認するドアミラーもなくならず、そんな潜在的な需要に応えつつ、ドアミラー自体を進化させていきたいとした。

ドアミラーを動かすアクチュエーターを1個に集約。動作の高速化でウインカーやシートベルトと連動する新しいアシスト機能を実現する

編集部:佐久間 秀