人とくるまのテクノロジー展 2019

コンセプトカー「Concept-愛i」や動的快適システム「AceS IUS」など将来を見据えた展示を行なうトヨタ、トヨタ車体、トヨタ紡織

2019年5月22日~24日 開催

入場無料

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日までとなっており、入場は登録を行なうことで無料となっている。

 本稿ではトヨタ自動車、トヨタ車体、トヨタ紡織のブース展示について紹介する。

トヨタ自動車

 東京モーターショー 2017で展示されたコンセプトカー「Concept-愛i」が再登場となったトヨタブース。

 Concept-愛iはディープラーニングなどの技術を用いてドライバーの表情や動作、声色から感情や覚醒度などを推定。そのほかにもWeb上のニュースなどの一般情報、SNS発信や位置情報、車内での会話履歴といった情報を比較し、頻出するトピックからドライバーの嗜好を推定する人を理解する技術を採用。さらに、自動運転技術を組み合わせることで、ドライバーの感情を読み取って危険時には自動的に自動運転に切り替わったり、触覚や嗅覚までも利用してリラックス状態に導いたり、といった機能を備える。

Concept-愛i

 Concept-愛iはあくまでもコンセプトカーの位置付けながら、より近い将来の自動運転を見据えた、ドライバーの覚醒度推定を行なうシステムのデモ機も用意されている。こちらは単眼IRカメラと距離センサーを組み合わせたもので、あくびや瞬きといった顔の表情、手の動作などを検出するとともに、ディープラーニングを用いた推定機能によりドライバーの覚醒度を推定するもの。

覚醒度推定のシステムは中央(モニター下部)にIRカメラ、距離センサーはステアリングを避けるため左右に設置される
座った状態
あくびをしている状態。ドライバーが自覚できない覚醒度の低下がみられる
ほほに手をあてて飽きが来た状態。こちらも覚醒度が低下していると判断
システムの説明

 そのほか、EVやハイブリッド車向け電池の本命とされる全固体電池など、電動化システム向けパーツも展示されている。

2020年度半ばを目指して開発が進められている全固体電池
SiC半導体による燃費向上と小型化
ネオジムの使用量を減らした新型磁石。2分の1程度まで減らしても高い保持力を維持可能
非接触充電はカバー範囲が限られるため、自動駐車との組み合わせを模索
そのほかの展示パネル

トヨタ車体

 トヨタ車体は「アルファード」などのミニバンや商用車、フレーム付SUVなどを手がける完成車両メーカー。ブースでは「Beyond Eco!」をテーマに植物材料を使った部品を展示している。

 ポリプロピレンに杉間伐材を10~30%ほど混合した材料「TABWD(タブウッド)」は、樹脂だけの場合より軽量で価格も安いといった特長を持ち、すでに製品として採用も始まっている。製品化を目指しているアイテムとして、古紙や段ボールといったリサイクルパルプを使用した吸音材、針葉樹材を樹脂でサンドイッチしたフロアボードなどを展示している。

TABWDを使った製品
TABWDを使ったハニカムボードは製品化検討中
再生紙を使った吸音材
ラワン材ではなく国産針葉樹を使ったサンドイッチボード
「ヴォクシー」のウェルキャブに採用されているサイドリフトアップチルトシートも展示されている

トヨタ紡織

 トヨタ紡織はシートをはじめとする内装パーツなどを手掛けるサプライヤー。シートでいえば「ヴィッツ」のようなコンパクト系からレクサス「LC」のようなラグジュアリーモデルまで開発している。

 国内初出展となる動的快適システム「AceS IUS」は、乗員の感情を声と脈拍から判断し、振動や光、音、香りなどにより車室内の環境を変化させることで快適な環境を実現するもの。また、同様の環境が続くと飽きてしまうことから、あえて逆の感覚を付加することも行なう。このシステムは自動運転レベル4を見据えたもので、ただ単に快適さを追求するのではなく、その感覚を持続させることで安全な移動をサポートするわけだ。

 そのほかに目を引いたのが「光ファイバー表皮」だ。表皮に光ファイバーを織り込むことで、照明とは異なる独特なイメージを演出できる。負荷がかかるシート表皮には向かないとのことで、ルーフやドアトリムといった部分での採用になりそうだ。

動的快適システム「AceS IUS」。シート座面に脈拍を取得するセンサーを内蔵するほか、触覚を刺激するためにマッサージ機能も付く
オーバーヘッドコンソールにも脈拍を感知するカメラを内蔵。音楽を再生するスピーカーや香りを出すシステムも備える
システムの説明
表皮一体発泡工法を採用したスポーツシート。GR系のカスタマイズモデルのほか、レクサス系のスポーツモデルにも採用されている。ただ、残念なことに市販化は未定
光ファイバーを使った表皮

安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。