人とくるまのテクノロジー展 2023

水素エンジンや「MT-09」のエンジンを組み込んだレンジエクステンダーなどを展示するヤマハ発動機ブース

2023年5月24日~26日 開催

入場無料(登録制)

ヤマハ発動機ブースで展示されているレンジエクステンダー「αlive RX」と「SHEV」

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」が5月24日~26日の会期で行なわれている。入場料は無料(登録制)。

 #111にあるヤマハ発動機ブースでは、自動車向け製品・技術のコンセプトブランド「αlive(アライヴ)」の各種展示が行なわれている。

水素エンジン「αlive H2E」

水素エンジン「αlive H2E」

 既存のエンジン技術を活かせる「αlive H2E」は、水素を直接燃焼させて得られるエネルギーを駆動力として使いつつ、潤滑用のエンジンオイルの燃焼で発生するごく微量のCO2以外は排出しない内燃機関。

 αlive H2Eのエンジン排気量は171ccで水素噴射圧は0.4MPa、最大発電量は1.7kWとなる。モビリティのパワートレーン以外にも、発電機などでの活用も有力視されている水素エンジンは、カーボンニュートラルの選択肢を広げていく新たな技術であり、ウェル・トゥ・ホイールの観点から、脱炭素時代のカギを握るエネルギーの1つとして注目されているという。

αlive H2E
αlive H2Eの主要スペック

レンジエクステンダー「αlive RX」

レンジエクステンダー「αlive RX」

「αlive RX」は小型軽量ハイパワーエンジンとヤマハで内製開発したモータ技術の融合によるレンジエクステンダーユニットのコンセプトモデルで、電動モビリティの活用領域拡大を提案する技術となっている。

 展示モデルではスポーツバイク「MT-09」に搭載する直列3気筒DOHC 845cm 3 エンジンを採用して、コンパクトなユニットでありながら88kWのエンジン定格出力、80kWの発電電力を発生。供給電力は300Vとなり、小型・軽量・ハイパワーが求められる乗用ドローンなどへの搭載を想定して開発されている。

αlive RX
αlive RXの主要スペック

エレクトリックエンジン「αlive EE」

エレクトリックエンジン「αlive EE」

「αlive EE」は420kWのモータ2個を中央の減速用ギヤユニットに接続し、左右輪を個別に制御することも可能な小型モビリティ向け電動パワートレーン。コイルにセグメントコンダクタを採用して占積率を上げ、高出力・高効率で軽量なユニットを実現していることに加え、これまでのエンジン開発で培ってきた鋳造技術と熱マネジメント技術などを活用し、優れた冷却性能も備えている。

αlive EE
αlive EEで使われるインバータ
αlive EEの主要スペック

サウンドデバイス「αlive AD」

サウンドデバイス「αlive AD」

 サウンドデバイスの「αlive AD」は、専用の音響LSIを内蔵するコントロールユニットと追加スピーカーを使い、本来はエンジン音とは無縁なバッテリEV(電気自動車)などに運転状況に応じたエンジン音を提供する技術。車両のCANデータをコントロールユニットに送ってアクセル開度などのデータと連動させ、あたかも自分のアクセル操作でエンジンが快音を響かせているように感じさせるものとなっている。

 これまでのエンジン開発で培ってきた知見から生み出された独自の専用音源は、エンジンの作動によるランブル音や駆動用モータが発する高周波音などをリアルに再現。サーキットテストも行なってサウンドチューニングを重ね、ドライバーに高揚感や躍動感を抱かせる“エモーショナルサウンド”を追求しているという。

 ブースでの展示では「V8」「V10」「EV」の3種類を用意して、バーチャルサーキットでの走行中にどのようなサウンドが車内に響くかヘッドホンを使って体験できるようにしている。

「V8」「V10」「EV」の3種類でサーキット走行する車両のエンジンサウンドをαlive ADが生成。走行状況に合わせた迫力あるサウンドを体感できる

シリーズハイブリッドコア「SHEV」

シリーズハイブリッドコア「SHEV」

 シリーズハイブリッドコア「SHEV」は、ヤマハの産業用マルチローター部門が手がけた小型ドローン向けシリーズハイブリッドのコンセプトモデル。

 ドローンを飛行させる際、レスポンスに優れるモータはパワーを制御しやすく扱いやすいが、長時間にわたって運用させる場合はエネルギー密度の高いガソリンで動かすエンジンにアドバンテージがある。そこで、それぞれが持つ優位性を活用するためエンジンを電源供給ユニットとして使うドローン向けのシリーズハイブリッドが開発されることになった。

 20.6kWのエンジン定格出力を持つSHEVは、供給電圧300Vで最大約4時間の連続飛行時間を実現。約70kgのユニット重量で、ペイロード(積載物)は最大約17kgとなっている。

SHEVは発電エンジンユニット、バッテリ(補助動力)、インバータ、配管、配線などで構成されている
SHEVの主要スペック
佐久間 秀