人とくるまのテクノロジー展 2023

「電動化」の加速でバイク用から自動車用モーターなど、幅広いソリューションを展示するヴァレオ

2023年5月24日 発表

ヴァレオ「eMotorBike」

 ヴァレオは、5月24日に開幕した「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」(パシフィコ横浜:5月24日〜26日開催)に出展、「電動化」「ADAS(先進運転支援システム)」を中心に「インテリアエクスペリエンスの再創出」「ライティング・エブリウェア」に関する最新技術を紹介している。

 電動化に関する展示では、125ccクラスの内燃機関モデルと同等の性能を有する48V電気駆動システムを搭載した「ヴァレオ eMotorBike」や、ヴァレオとルノーが共同開発しているレアアースフリーの業界初の200kW電動モーター「EESM」を展示、2輪から、小型モビリティ、ハイブリッド車、バッテリEVまでに対応するソリューションを展開していることを強調した。

「ヴァレオ eMotorBike」:ヴァレオ「eMotorBike」は独自の48V電気駆動システムを搭載したフル電動モーターサイクルのデモカー。これは、ヴァレオの48Vシステムのパフォーマンスを体感いただくためのデモ用電動バイクで、eMotorBikeは48Vのプロトタイプ空冷式モーター、ベルト式トランスミッションと電子制御ユニットが包含されたシステムを搭載し、最大出力9.5kWを発生して、125ccクラスの内燃機関モデルと同等の性能を有するとしている
「ヴァレオ/ルノー 巻線界磁形同期モーター」:ヴァレオとルノーが共同開発しているレアアース・マグネットを一切使用しない新世代の自動車用電動モーター(EESM)をジャパンプレミアとして展示。ヴァレオは高密度の銅を使用する独自ノウハウにより少ない電気エネルギーでより多くの電力を生成するステーターを開発、ルノーはレアアースを使用しないEESMローター技術によりエネルギー性能を高める。このレアアースフリーの業界初の200kW電動モーターは2027年から量産予定

 ヴァレオブースでは、そのほかにも、自動運転車が警察官や工事現場の作業員などの交通整理の動作を理解し、指示に従うようにするソリューション「ヴァレオ パントマイム」や、2024年より量産開始予定「ヴァレオ SCALA 3」のデモンストレーションが実施されている。

「ヴァレオ パントマイム」:ヴァレオは、AI(人工頭脳)に関する専門知識を活用したパントマイムの実演を日本で初めて実施。これは、自動運転車が警察官や工事現場の作業員などの交通整理の動作を理解し、指示に従うようにするソリューション。道路工事などの複雑な環境で自動運転車が運行する際に特に重要な技術となり、パントマイムは、サイクリストなど道路を利用する交通弱者の動きを予測して、安全で効率的なナビゲーションを行なうことができ、都市環境で動作する自動運転車にとって不可欠なツールになるとしている
2024年より量産開始予定「ヴァレオ SCALA 3」:ADASの加速に貢献するイノベーションとして、ヴァレオは第3世代の長距離用LiDAR「SCALA 3」の検知デモンストレーションを行なった。ヴァレオSCALA 3は、車両周辺の3D画像を生成し、毎秒1200万ピクセル以上という高解像度と、反射率の低い物体の場合でも200m、反射率の高い物体であれば300mという検出範囲を誇る。照明のない黒いアスファルト道路にある物体を、150m離れた場所から識別することができ、ヴァレオSCALA 3搭載車は、高速道路で最高速130km/hで自動走行する場合も、緊急事態を自律的に管理できるとしている
「ヴァレオ ADASドメインコントローラー」:ヴァレオが開発している新しい車両アーキテクチャの中枢であるADASドメインコントローラー。これは、コネクティビティ、データリレーなどと連携する真のハブとなり、電子制御とインテリジェントな電源管理を集中化。大量のデータをリアルタイムで処理・分析して、迅速かつ正確な意思決定を行ない、刻々と変化する道路状況に対応し、車両が正確な軌道決定を行なうことができるとしている。ヴァレオのドメインコントローラーはあらゆる種類のSoCと互換性を確保する
「ヴァレオ セントリカム」:ヴァレオはジャパンプレミアとして、カメラ・クリアリング・ソリューションである「セントリカム」を披露。これはレンズカバーを高速で回転させ、雨粒や雪、虫、泥、塩などを払い飛ばし、クリーンなカメラ視界を維持する特許取得済の独自ソリューション。洗浄ノズルタイプに比べ洗浄液の消費量をカメラ一台あたり58%削減でき、ウォッシャータンクを小型・軽量化することができる
「ヴァレオ 22kW車載充電器と4kW DCDCコンバーターのコンボ」:22kW車載充電器と4kW DCDCコンバーターのコンボは、400Vや800Vバッテリー、単相や3相系統電源など、幅広い車両構成や国の電源要件に対応。バッテリー充電機能に加えて、車両が接続されたグリッドや電気負荷にエネルギーを供給できる双方向機能を備え、スマートグリッドへのゲートウェイになるとしている
電動化には車室内とバッテリーのサーマルマネージメントのソリューションも大切。ヴァレオは、従来のキャビンの暖房に加え、冬期の急速バッテリー予熱にも使用できる高電圧クーラントヒーターを展示。この第2世代はヒーターエレメントを2個の小型の物に変更してより薄い箱型形状とし、パッケージング性を高めた。また、冷媒ダイレクト方式のバッテリークーリングプレートは、冷媒を直接プレートに流すためバッテリー専用のクーラント回路が不要となり、部品点数の少ないコンパクトで軽量な製品設計が可能
「ヴァレオ リサイクル樹脂活用 HVACユニット」:2022年に竣工したヴァレオジャパン苅田工場(福岡県)で製造する、リサイクル樹脂活用 HVACユニット。同製品は樹脂部品の重量比で約80%にリサイクル材を採用しながら、従来材料と同等のエアコンユニット性能を確保した
「ヴァレオ アクティブライティングシャッター」:今回初展示のアクティブ ライティング シャッターは、エアロダイナミクスを向上させる従来のアクティブ・グリルシャッターのルーバ―端部に LED ライトを装備したもの。LEDライトでさまざまな動きのある点灯を行ない、車外へのコミュニケーションを可能とし、EVの充電状態を伝えたり、歩行者にメッセージを伝えるなどの用途を想定している
インテリアエクスペリエンスの再創出に関して、ヴァレオはドライバーモニタリングシステムを展示。赤外線カメラとAIアルゴリズムでドライバーの眠気や注意散漫の兆候をチェック。これは命を救う技術であり、自動運転モードから手動運転モードへ安全に移行できるようにし、また顔の表情を認識することで、ドライバーの気分に合わせた音楽や車室内のライティングを提案することもできる
編集部:椿山和雄