イベントレポート

ダンロップの次世代「オールシーズンタイヤ」2024年秋発売へ 水や温度に反応する新ゴム技術「アクティブトレッド」採用

会期:2023年10月26日~11月5日

特別招待日:10月27日

一般公開日:10月28日~11月5日

入場料:1500円~4000円

住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏が新開発のアクティブトレッドについて語った

 住友ゴム工業は、「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト:2023年10月26日〜11月5日)にダンロップブースを出展。水や温度に反応してゴムが柔らかくなるという新技術「アクティブトレッド」を発表するとともに、同技術を搭載した次世代「オールシーズンタイヤ」を2024年秋に発売予定であることを予告した。

 プレスデー2日目10月26日、ダンロップブースで行なわれたプレスブリーフィングに、住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏が登壇。山本氏はまず「企業が事業活動を行ううえでの環境は大きく変化をしてきました。カーボンニュートラルへの急激なシフト、サスティナビリティを重視した経営が求められています。さらにモビリティ社会においても急速な変革が起こっています。このような環境の中、私たちは社会と企業の持続的成長を目指し、安全で環境に優しいサスティナブルなタイヤ開発を進めてまいりました。そして、クルマに求められる価値観が変化するなかで、タイヤに求められる価値を改めて考えました。様々な天候に対応でき、1つのタイヤで安全快適に運転ができること。タイヤを履き替える必要がなければ省資源となり、環境負荷を低減することができます。ですが、そのためには路面の様々な状況に対応できる性能が必要になります」と、新技術開発の背景を話した。

 そして、新たに発表した新技術「アクティブトレッド」について、山本氏は「従来のタイヤは水で滑る、氷で滑るのが常識でした。濡れた路面、凍った路面でも安心して走行できるように、路面と接するトレッドのパターンなど様々な研究開発を重ねて、私たちはタイヤの常識を変えるゴムそのものを新たに発明をいたしました。あらゆる道にシンクロするゴム、それがACTIVE TREAD(アクティブトレッド)です。 アクティブトレッドは、水や温度などの外部環境にシンクロをして性質が変わる独自のゴム技術でございます。こちらは特許を申請中です」と新技術を紹介した。

住友ゴムが新たに開発したゴム「アクティブトレッド」が発表された
アクティブトレッドは路面状況に応じてゴムの性質がスイッチする。特許申請中
水の上では水にゴムが触れることで性質が変化してグリップが高まるという
同じタイヤでドライとウエットでの制動距離が変わらないとのこと

発想の転換で、水や温度に反応して柔らかくなるゴムを開発

水に反応してゴムが柔らかくなるので路面への密着がたかまる

 アクティブトレッド技術のポイントについて、山本氏は「アクティブトレッドのポイントは2つあります。1つ目は水に触れると柔らかくなることです。タイヤは濡れた路面で滑りやすくなるためこれまでは水は排除すべきものと考えてきましたが、一方で水を味方にできないだろうか、と言う意見もありました。そこでわれわれは発想を転換いたしました。水に触れることで分子レベルの結合が離れることにより性質がスイッチし、しなやかなゴムへと変化。このことにより路面にしっかりと密着しグリップ性能が向上するのです」と説明した。

 そして、2つ目のポイントについて、山本氏は「低温で柔らかくなるということです。一般的に路面が冷えていると、タイヤのゴムが硬くなり路面への密着しにくくなります。そこで凍った路面でのみ柔らかくなるゴムを作れないだろうか? そんな常識を壊すような材料を模索してきました。そして画期的な新素材を作り出すことができました。この素材と当社が培ってきたゴム材料技術を融合させることにより、低温状態でもゴムが柔らかく路面に密着し、冬の氷上であっても 安心なドライブの実現を目指します」と紹介した。

次世代オールシーズンタイヤを2024年秋に発売へ

アクティブトレッドを採用する製品は2024年にオールシーズンタイヤとしてデビュー予定

 ダンロップでは、新たに発明された「アクティブトレッド」技術を採用する次世代オールシーズンタイヤを2024年秋に発売するという。

 山本氏は「このように路面の状況に合わせてタイヤのゴム自体が変化をするという、ゴムの常識を変える技術を初めて搭載する次世代オールシーズンタイヤは2024年の秋に発売いたします。突然の降雨、降雪でも安心して運転していただけるとともに、冬の時期のレジャーでもタイヤを履き替えることなく出かけることができるので行動範囲が広がります。そしてアクティブトレッドはさらに進化をします。今後主流となるEVは、低燃費性能と雨天や降雪時のグリップ力との両立が求められています。これらは本来、相反する性能でございますが、アクティブトレッドは路面にあわせてゴムが自動で性質を変えることでタイヤ性能を異次元で両立可能にする技術であるので、EV用のタイヤにも活用してまいります。また、この性能は、自動運転車やカーシェアリングなどでも安全な走行を確保することができます。将来は地域、季節にかかわらず、使い続けることができるタイヤを目指してまいります。タイヤの控えを減らすことで地球環境の負荷を低減し、サステイナブルな社会の実現にも貢献してまいります」とアクティブトレッド技術への期待感を語った。

雨だけでなく突然の降雪でも対応。ドライブの安心感が高まるタイヤだ
深田昌之