イベントレポート

三菱電機モビリティ、DMS搭載のキャデラック「エスカレード」で先進運転支援システムをデモ

2025年10月30日〜11月6日 開催
DMSのデモンストレーションに使用したキャデラックのフルサイズSUV「エスカレード」

「ジャパンモビリティショー2025」(プレスデー:10月29日~30日/一般公開日:10月31日~11月9日)の三菱電機モビリティのブースでは、同社が開発している先進運転支援システムのDMS(Driver Monitoring System)を車内に搭載した、キャデラックのフルサイズSUV「エスカレード」を展示している。

 同社ブースの安心安全&快適ゾーンに展示された車両の車内では、運転中のドライバーの生体情報を収集し、わき見運転や居眠り、体調異常などを検出することができるデモンストレーションが行なわれていて、ディスプレイのボタンを押すとハンドルの奥にあるカメラがドライバーを認識して、顔の位置などを基に座席の高さ、背もたれの位置を自動で調整。最適なポジションにシートを移動させることができる。

 また、シートベルトのバックルがはまっていても、シートベルトが正しく装着できていないことを画像認識で判断して警告するほか、わき見が多いことや、スマホを片手に持って運転していることなども検知し、注意を喚起する。

DMSのデモンストレーションの様子
ハンドルの先にカメラが設置されている
映像をもとにして、自動的にシート調整を行なう
わき見運転をしていることを検知しているところ
ドライバーの体勢から、体調異常を検知する
体調異常を検知した場合には設定した電話番号に自動発信する
緊急コールが発信されたことを通知。同時に血液型や疾患情報などを病院と共有する
ドライバーだけでなく車室内全体の動きをカメラで捉えて異常を検知する
運行管理分野などで利用するDMS機能付きドライブレコーダー
車室内に簡単に設置ができるパートナーロボ

 三菱電機モビリティのDMSは、資本提携を行なっているオーストラリアのSeeing Machinesと協業しており、ドライバーを撮影した映像をもとに、顔の向きや視線を高精度に検出し、三菱電機モビリティが持つ漫然運転や体調異常などの状態を推定する技術との組み合わせによって、各種サービスにつなげている。

「目の開閉、口の開閉、顔の傾き、視線、脈拍、呼吸などの情報を読み取り、それらの情報を組み合わせることでドライバーの状態を推定できる」という。ドライバーの体勢が変化して、体調の異常を検知することも可能で、車内で倒れ込んだことなどが分かると、あらかじめ設定していた電話番号に自動発信する。搬送先の病院などには、ドライバーの血液型や疾患情報なども共有し、迅速に適切な処置が受けられるようになるという。

 また、近赤外線カメラやサーマルセンサー、車内レーダーユニットなどの複数のセンサーを使用することで、ドライバーの状態をより詳細に把握できるようになるとしていて、現在、助手席や後部座席を含めた車室内全体を把握できる機能の開発にも取り組んでいる。

 さらに、今後はクルマだけに留まらない幅広い領域にも拡大していく予定であり、工場の生産ラインへの応用なども視野に入れている。「ドライバーを守るDMSから、人を見守るHMS(Human Monitoring System)に進化させ、安心安全で、快適な社会の実現につなげる」との説明があった。

 ブース内には、運行管理分野などで利用するDMS機能付きドライブレコーダーを展示。パートナーロボによる見守り機能も紹介。「企業の管理者がデータをもとに、それぞれのドライバーに対して適切な指導を行なうといった利用が可能になる」としている。

三菱電機モビリティのブース
ブースの構成

 また、インフラ&環境保全ゾーンでは、次世代パワーユニット「Xin1」が展示されており、電源、インバータ、モーターのシステム連携を紹介。ビッグデータとつなげたデータ利活用構想を紹介した。さらに、AIを活用したインフラ資産管理サービス「Urban Hawk’s」を展示。交通インフラの維持、管理に向けて、路面や道路標識の劣化などを検知して、分析できることを紹介している。

電源、インバータ、モーターのシステム連携を紹介
統合ゲートウェイECUを展示
汎用スマートモーター。収集したデータをクラウドで分析できる
AIを活用したインフラ資産管理サービス「Urban Hawk’s」

 ウェルビーイングゾーンでは、自動配送モビリティサービス「Cartken」を展示し、公道や商業施設、工場などの様々なフィールドで活躍している事例を紹介。配送ロボットの活用によって、社会課題となっている労働力不足の解決に向けた提案を進めていることを示した。

自動配送モビリティサービス「Cartken」

 三菱電機モビリティは、2024年4月に発足したばかりの事業会社だが、三菱電機の自動車機器事業を担う部門が分社したものであり、1933年に第1号製品を発売して以来、90年以上の歴史を持つ。

三菱電機モビリティの田中和徳社長

 三菱電機モビリティの田中和徳社長は「当社は、『培った技術の深化と革新、創造への飽くなき挑戦により、豊かなモビリティ社会の実現に貢献する』を理念に掲げ、三菱電機とのシナジーを生かしながら、時代のニーズにあわせた製品開発を通じて、世界中の人々の移動を支える。従来事業の枠を超え、様々なパートナーとの連携を進めていく」と抱負を述べた。

 三菱電機モビリティでは、電動化およびICE(内燃機関)による「パワートレイン領域」、DMSおよびEPS(電動パワーステアリング)による「SDV領域」に加えて、社会課題を解決するソリューション提供を行なう「新規領域」を成長戦略の柱に掲げている。

「パワートレイン領域」では、電動化市場の不確実性に対して、リスク分散を図るべく、電動化とICEのバランス運営によって対応。とくに、電動化は早期の安定収益化に向けて、アイシンとの協業活動を加速。2025年度中にXin1の実機レベルの先行開発を完了させる。

 ICEでは、既存アセットの最大活用によって、収益力を持続。この分野でもパートナー連携を推進する。

「SDV領域」では、ソフトウェアによる価値が拡大していることを捉えて、新たな事業の柱にする姿勢を強調。田中社長は「これまで蓄積したドメイン知識や技術、ノウハウをパッケージングしたソフトウェアを生かすことができる。これをスケールし、事業化するチャンスが訪れている」とコメント。アセットライトをベースとしたビジネス体制を実現するとともに、パートナー連携を含めて、ダイナミックなリソースシフトを推進する考えを示した。

 また、「新規領域」においては、ヒューマンモニタリング、インフラ資産のスマート化、搬送モビリティなど、社会課題に貢献するあらゆるモビリティ領域に挑戦するという。「従来の4輪事業の枠を超え、陸上や海といったフィールドにとらわれない事業を進める」とした。

 三菱電機では、デジタル基盤「Serendie(セレンディ)」により、データを活用した事業横断型ソリューションを創出。「循環型デジタル・エンジニアリング企業」への取り組みを加速しているところだが、三菱電機モビリティでもこれに連動した動きを進める。

 田中社長は「三菱電機モビリティの技術および知見と、三菱電機の幅広い事業領域から集めたデータを掛け合わせることで、お客様やパートナーと新たな価値を生み出す」と述べた。

大河原克行