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三菱電機、「IR Day 2024」でアイシンとの合弁会社設立について漆間啓 社長兼CEOが言及

2024年5月29日 開催

三菱電機株式会社 執行役社長 CEOの漆間啓氏

 三菱電機は5月29日、同日に開催した「IR Day 2024」において自動車機器事業について説明を行ない、アイシンとの合弁会社設立について三菱電機 執行役社長 CEOの漆間啓氏が言及した。

 漆間社長兼CEOは、「電動化ビジネスは多くの投資が必要であり、それを加速していかなくてはならないという危機感があった。1社では体質を強化することはできず、協業することがいいと考えて合弁会社化に踏み切った。アイシンと組むことが電動化においてプラスになると判断している」とし、「三菱電機は電機メーカーとして、インバータやモーターの最適制御などに力を持つが、これを自動車に適合させるには限界があった。アイシンとの協業により、eAxleブランドの中で開発ができるようになり、ニーズに対して最適な提案ができる近道になる。三菱電機のパワーエレクトロニクス技術、モーター技術、制御最適化技術と、アイシンの強みである車両適合やシステム統合などのインテグレーション技術によるシナジーの最大化が図れる。それがアイシンとの合弁会社の設立につながっている。自動車メーカーとの新たなプロジェクトに関しては、アイシンと開発を進め、2026年度以降の収益回復を見込んでいる」と述べた。

 三菱電機では、自動車機器事業を低成長および低収益のセグメントに位置付けており、構造改革および選択と集中を推進。課題事業としていたカーマルチメディア事業の終息を決定しているほか、2024年4月には自動車機器事業を行なう会社として三菱電機モビリティが事業活動を開始。さらに、同社から電動化事業を分割した新会社をアイシンとの合弁で設立することを発表するなど、大規模な構造改革を進めている。合弁会社は三菱電機および三菱電機モビリティで66%の出資比率を持つ。

2024年4月に自動車機器事業を行なう会社として三菱電機モビリティが事業活動を開始。さらにアイシンをパートナーとして合弁会社の設立に基本合意した
三菱電機グループの強みとアイシンの強みでシナジーの最大化を図る

 漆間社長兼CEOは、「自動車産業は産業構造の転換期を迎えており、これを成長のチャンスと捉え、自動車機器事業を再成長させたいと考えている。環境変化を見据えた選択と集中を進めることで収益力を高めていく」と述べ、「カーマルチメディア事業の早期終息の推進、ガソリン車向けのICE(Internal Combustion Engine)事業の出口戦略の明確化、グローバルでの生産体制の見直しにより適正な体格への転換を進めている。一方で、電動パワーステアリングなどの収益力のある事業にはリソースを集中させていく」と語った。

 また、アイシンとの合弁会社では、BEV、PHEV、HEVなどの多様化する電動化ニーズに応え、次世代電動車に搭載するモーター、インバータと、それらの制御ソフトウェアを車両やシステム目線で最適化し、製品の開発、生産、販売を行なうことを改めて示した。

三菱電機株式会社 専務執行役 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀邦彦氏

 一方、「IR Day 2024」ではインダストリー・モビリティビジネスエリア(BA)の取り組みについて、三菱電機 専務執行役 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀邦彦氏が説明した。加賀氏は三菱電機モビリティの社長も兼務している。

 モビリティ(自動車機器)事業は、2023年度は売上高が9441億円、営業利益率3.3%の実績となり黒字に転換。2025年度は売上高8000億円超、営業利益率4%以上を目指す。加賀氏は「パートナーとの連携により、事業ポートフォリオの入れ替えを進めており、2030年度以降のCASE事業の拡大期に備える。また、電動パワーステアリングなどのレジリエント事業の安定収益化を目指す」とした。

 また、「カーボンニュートラルへの貢献」「快適な移動機会の提供」「交通事故の撲滅」の3点からモビリティ事業に取り組む姿勢を示した。なお、アイシンとの合弁会社の設立時期は1年以内を想定しており、業績への連結影響は2026年度以降になる。現時点では具体的な事業計画などは発表していない。

 2024年4月1日から事業を開始した三菱電機モビリティでは、事業ポートフォリオ戦略として「CASE(電動化・ADAS)関連事業」「電動パワーステアリング製品などの強みが活かせるレジリエント事業」「カーマルチメディアをはじめとする課題事業」「全社成長事業への貢献」の4つの柱を掲げ、事業を推進している。

 加賀氏は「電動化領域においては次世代電動車向け製品に関する合弁会社の設立に関して、アイシンと基本合意に至り、より深いところでニーズに対応したモノづくりができる。これまではインバータの制御に対して、どんなものが求められているのかを直接情報を聞くことができなかったが、アイシンとの連携により、自分たちの技術のどこを磨いたらいいのかが分かるようになる。アイシンの技術者とともに、お互いに技術とニーズを理解し、分担し、統合できる。一段進化したビジネスができる」とした。

 また、「レジリエント事業では選択と集中による収益改善が進んでいる。ソフトウェア技術の強化など、注力分野を絞りながら収益性を重視したオペレーションを行なう。課題事業については、お客さまとの協議を重ねながら早期終息に向けたスキームを策定し、着実に歩みを進めている。これらの構造改革の進捗と連動しながら、モノづくり力や資産を、グローバル生産拠点を持っているFA制御システムや、空調冷熱システム事業に転用する計画を具体化しつつある。事業ごとの責任体制を明確にし、スピーディに事業運営を進める」と述べた。

三菱電機モビリティの事業ポートフォリオ戦略
ポートフォリオ戦略について

 ADASについては自前主義から脱却し、パートナー戦略を推進する姿勢を示しており、引き続き外部のパートナー企業との連携を模索していることを明らかにした。

 自動車産業は、中長期のトレンドとしてはBEVへの転換が進むことが予想されており、三菱電機ではパワーエレクトロニクス技術、センシング技術、無線通信技術、モーター技術のほか、自動化・小型化技術、生産設計・施策評価、加工技術といったモノづくり領域において強みが発揮できると考えている。

 加賀氏は「多様な顧客に多様なニーズがあり、カバレッジを広くして対応することは必要である。それが大きなオポチュニティにつながる。高効率化やコンパクト化の両立、軽量化とコストの両立といった複合的な要求に応えることが必要である。これに対応するために、技術資産の磨き上げと、パートナー協業による中長期での事業ポートフォリオの最適化を図っていく。2024年度以降は構造改革の実行と効果の刈り取りのフェーズに移行する。事業基盤の強化による収益力の強化、事業展開による再成長を目指す」との姿勢を示した。

 また、「三菱電機はテクノロジーコングロマリットであり、テクノロジーで勝ち筋を持つことが大切である。だが、電動化の領域では単一のコアテクノジーだけではその実現が難しい。複数のコアテクノロジーを、足し算ではなく掛け算のような形でインテグレートでき、より強いものにすることが重要である。そのテクノロジーが多様なニーズに応えられることも重要である。これからはそれに向けた技術開発、設計開発、モノづくりが大切になる」と語った。

市場環境と自動車機器事業の強み