イベントレポート

アイシン、もの作りの会社から「移動の価値を創造する会社」へ 吉田守孝社長が語る

2025年10月31日~11月9日開催(一般公開)
株式会社アイシン 取締役社長 吉田守孝氏

 アイシンは、「ジャパンモビリティショー2025」(一般公開:10月31日~11月9日、東京ビッグサイト)に出展。今年のジャパンモビリティショーでは「心を動かす移動の未来」をコンセプトとし来場者に新たな移動の価値を提案する展示物、コンテンツが用意されている。?

 主な出展内容としては2つのパートに分かれていて、メインステージで未来からやってきた「アイシンの博士」が、アイシンの知能化技術で安心、快適、便利になった自身の愛車(次世代モビリティ)を紹介しつつ、実車デモンストレーションとともに「心を動かす移動の未来」を体感できるものとなっている。

 ここに登場する「博士の愛車」は、博士が以前から大事に乗っているハイラックスサーフをベースした知能化技術を搭載車という設定のコンセプトカーだ。

興味深いテーマをユニークな展示で見せるアイシンブース
アイシンブースの入口。ガレージをテーマにしたユニークなスペースとなっている
アイシンの博士の愛車はアイシンの知能化技術を搭載したハイラックスサーフ。今回のコンセプトカーだ

 つぎに「博士のガレージ」をイメージした「A’s GARAGE」という空間が作られている。こちらはアイシンの電動化、知能化に関する製品などが展示されているものだが、作業台をイメージしたテーブルに置かれていたり、ブース内の小物や照明など含めたデザインがまさに「クルマ好きのガレージ」なので、従来の製品展示ではなく、まるで博士がこれから作業する部品が置かれているような印象を受けるものになっていた。

「A’s GARAGE」内の作り
作業台風の展示台に最新の製品が置かれている。あくまでも製品展示であるが、内装の雰囲気から作業待ちのために置かれた部品のようにも見える
アイシンが力を入れている知能化技術についての解説を黒板にまとめたような展示がされている
知能化技術に使用する各種機器のほか、アイシンは同時にそれらを制御するためのソフトウェアを作っている

 実際に筆者も「A’s GARAGE」に入っているが、その時に感じるはずがない「油くささ」を感じたような錯覚を覚えた。それぐらい見た目が「ガレージ」だったのだ。この空間はおもしろいので、ジャパンモビリティーショーに出かける際はぜひ体験してもらいたい。

 なお「A’s GARAGE」では「心を動かす移動の未来」と、それを実現する知能化技術を「人に寄りそうモビリティムービー」が流されるので、こちらも併せて見ていただきたい。

「A’s GARAGE」は小物遣いも見ていて楽しいもの。ここは細かい作業を行なうような机をイメージしたもの。壁には世界各国のアイシンの拠点や、そこで働く人の写真の飾られている
壁には工具がかけられる。机の上にははんだごてと何かの制御用ユニットが置かれていて、博士が「ハイラックスサーフに新しい機能をするための作業中」というストーリーを感じる
展示台の下にはオイル缶やタイヤが置いてある。これも凝った演出だと思っていたが、なんとこれらのオイルやタイヤはアイシンの製品だった。大手カー用品店や自動車修理工場で取り扱っているそうだ
ガレージの中にソファーなどを置くスペースを作るというのは憧れる
壁には棚が設けられる。ここに置かれているのはアイシンの製品。トランスミッションはトヨタ2000GT用。アイシンが初めて作ったマニュアルミッションだ
反対側の壁には写真が飾ってある。アイシンは今年で60周年ということで、歴史を見せる展示になっている

アイシン 取締役社長 吉田守孝氏によるプレスカンファレンス

スピーチの冒頭、アイシンが掲げる経営理念「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」とジャパンモビリティショー2025のテーマがつながっていることについて触れた

 10月30日には、アイシンブースで取締役社長である吉田守孝氏がブレスカンファレンスを行なった。

 吉田氏はまず今回のジャパンモビリティショーのテーマについて触れ、「ショーのテーマである“わくわくする未来を探しに行こう”ですが、これはアイシンが掲げる経営理念『“移動”に感動を、未来に笑顔を。』とも繋がっています。私たちアイシンは時代や環境の変化に柔軟にスピーディーに対応しながら成長を続けてきました。人の心を動かす移動の力を信じ、移動に関わる幅広い製品を揃えたクルマに仕立て、それらをテストコースで評価していくことでクルマを深く理解します。それだけにカーメーカーに最も近いサプライヤーとしての信頼を築いてきました」と切り出した。

アイシンの経営理念

 現在の自動車業界は大きな変革期を迎えていて、これまでの枠組みを超えた新たな行動が求められている中、アイシンはものづくりの会社から「移動の価値を創造する会社」へと変革を進めているという。こうした取り組みを進める中で、今回はいくつかの現在進めている事業の内容が紹介された。

 まず、1つ目は「美しい地球を未来を残したい」というテーマに沿う、カーボンニュートラル実現に向けた電動化への取り組みだ。こちらでは主にパワートレーン、回生協調ブレーキ、熱マネージメント、空力デバイスなど多くの電動化製品を揃えていて、これらを組み合わせることで、クルマ全体での燃費向上と安全で気持ちのいい走りを目指しているとのこと。

クルマ全体にアイシン製品が使われている

 主力となるパワートレーンについては、これまで磨き上げた小型化高効率化の技術をベースにATやCVTだけでなく、e-Axle、ハイブリッド、プラグインハイブリッドまでフルラインナップで揃えている。

 次世代に向けては駆動、電力変換、熱マネジメントなどの機能を統合する電動ユニットの開発を加速し、航続距離への貢献だけでなくスペース効率を大幅に向上させることで、より設計の自由度の高いクルマ作りが可能な状況を作っている。

 それに加え、家庭用燃料電池や太陽電池などエネルギー領域の技術開発を進めることで、エネルギーを使うだけじゃなく作る、貯めるをマネジメントするエネルギーバリューチェーンの構築にも取り組んでいるとのことだ。

クルマのスペースは限られている。その中に新たな機能を追加するためには、それらを置く場所の確保も必要。そのために小型化、高効率化が重要になる
グローバルな生産体制の展開によりスピーディーな生産が可能となっている

 2つ目の内容は心を動かす移動の未来を実現するモビリティへの挑戦。これについて吉田氏は「アイシンの目指すことは全ての人に自由で安全な移動を実現すること、移動した先の体験を含めた移動の時間をより豊かにすることです」と切り出した。

 アイシンはこれまでブレーキ、ステアリング、カメラセンサーなどの技術を通じてクルマの安全向上に取り組んでいる。また、パワースライドドアやサンルーフ、カーナビゲーションなど移動を快適に楽しくする製品も数多く送り出しているが、これらに加えてAIを積極的に活用しながら、的確に認知判断を行ない、高い精度で実行する制御技術を進化させているという。この取り組みにおいては、アイシンだけでなく他社との連携も視野に入れながら開発を加速させ、移動の時間に新たな価値を提供したいと考えているとのことだ。

 そして最後に「アイシンの博士」を紹介した。博士の愛車は1990年代のハイラックスサーフをベースにしたコンセプトカー。博士が家族の思い出とともに大事にしてきた愛車をアイシンの技術によって進化。「乗車する人と対話し、心を通わせながら、快適で安全な新しい移動の価値を提案するものです。アイシンはこれからも心を動かす移動まで、世界中の皆様に笑顔になっていただきたい。そして皆さまとともにわくわくする未来を作っていきたいと思います」と結んだ。

吉田氏はスピーチの中で「アイシンの目指すことは全ての人に自由で安全な移動を実現すること、移動した先の体験を含めた移動の時間をより豊かにすることです」と語った
博士の愛車は1990年代のハイラックスサーフをベースにしたコンセプトカー。博士が家族の思い出とともに大事にしてきた愛車をアイシンの技術によって進化。「乗車する人と対話し、心を通わせながら、快適で安全な新しい移動の価値を提案するもの
深田昌之