イベントレポート

住友ゴム、「次世代スイッチ」でタイヤ特性や形状を事前に最適化する「次世代モビリティタイヤ」公開

一般公開日:2025年10月31日~11月9日 開催
入場料:1500円~3500円(小学生以下はアーリーエントリーを含め無料、高校生以下はアーリーエントリーのみ3500円でそれ以外は無料)
ダンロップブースで展示されている次世代タイヤの未来像を示す「次世代モビリティタイヤ」

「ジャパンモビリティショー2025」(一般公開日:2025年10月31日~11月9日、会場:東京ビッグサイト)に出展している住友ゴム工業は、プレスデー2日目となる10月30日に西展示棟4階 西3ホール・W3203の同社ブースでプレスブリーフィングを実施した。

 ダンロップブランドを前面に押し出したブースでは、「R.I.S.E.」をテーマに設定。長期経営戦略「R.I.S.E. 2035(ライズ ニーゼロサンゴ)」をビジュアル化して、話題の独自技術「アクティブトレッド」と「センシングコア」を掛け合わせた次世代タイヤの未来像となる「次世代モビリティタイヤ」を紹介。

 さらにプレミアムスポーツタイヤ、大外径オフロードタイヤ、モーターサイクル用タイヤなど、将来のダンロップ製品に対する期待とワクワクを感じさせるコンセプト製品、サステナブル素材を使用したタイヤの展示などを実施している。

西展示棟4階 西3ホール・W3203にあるダンロップブース

次世代モビリティタイヤは「次世代スイッチ」でタイヤ特性や形状を事前に最適化

プレスブリーフィングで登壇した住友ゴム工業株式会社 常務執行役員 タイヤものづくり統括 松井博司氏

 プレスブリーフィングでは、最初に住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏のビデオメッセージをスクリーンに表示。山本社長はブースの展示概要について紹介したほか、2025年1月に欧州、北米、オセアニア地域における4輪タイヤのダンロップブランド商標権などを取得したことから、グローバルでダンロップの世界観を統一して強力に推進していく状況だと説明。これを受け、今回はブースの展示がダンロップブランドで統一されている。

住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏のビデオメッセージ

 ビデオメッセージ終了後には、住友ゴム工業 常務執行役員 タイヤものづくり統括 松井博司氏からブース内で展示しているコンセプトタイヤについての解説が行なわれた。

 展示の目玉となる次世代モビリティタイヤでは、独自技術である「アクティブトレッド」と「センシングコア」を掛け合わせ、次世代モビリティ向けの体験価値を創出。次世代のモビリティ社会ではライドシェアや公共交通機関、物流・配送などさまざまな場面で車両が自動運転を行なうと想定し、自動運転でも安全・安心な人の移動、荷物の輸送を実現するため、「アクティブトレッド」と「センシングコア」の両技術をアクティブセーフティの機能に進化させていく。

次世代モビリティタイヤは「アクティブトレッド」と「センシングコア」を掛け合わせた技術を採用する

 同社のオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」にも搭載されている「アクティブトレッド」は、温度や水分などの外部環境の要因に反応してゴムが性能を変化させる革新的技術となっているが、この考え方をさらに推し進めた「次世代スイッチ」は、外部環境に依存することなく、ゴムの特性や形状をプロアクティブ(能動的、先まわり)に変化させるコンセプトとなっている。

 具体的には自動運転する車両の走行予定ルートで起きる路面変化を「センシングコア」で検出。この情報をトリガーとして「次世代スイッチ」でタイヤの特性や形状を事前に最適化してアクティブセーフティを実現するという。

次世代モビリティタイヤでは「次世代スイッチ」を使ってタイヤの特性や形状を事前に最適化

 モデルケースとして示されたシーンでは、自動運転で走行するルートの一部で大雨が発生。路面が滑りやすくなっていることを「センシングコア」で検知して、その情報をクラウドに集約。安全に走行するために必要なタイヤの特性や形状がこれから該当ルートを走行する車両に送られ、「次世代スイッチ」がタイヤを最適化。スリップなどを防止して安全・安心な走行を実現するというコンセプトが示された。

次世代モビリティタイヤが効果を発揮するモデルケース。クラウドで集約した情報を次世代スイッチとして使い、濡れた路面でもタイヤがスリップしないよう最適化してアクティブセーフティを実現する

 最後に松井氏は、「当社独自技術の『アクティブトレッド』と『センシングコア』を軸に、自動運転車が走行する次世代モビリティ社会の安全・安心の実現を目指します。そしてゴム起点のイノベーション創出を継続し、魅力的な商品やサービスを新たな体験価値として提供してまいります」とコメントしている。

アクティブトレッドとセンシングコアを進化させて新たな体験価値を提供していく

「次世代モビリティタイヤ」(コンセプト)

次世代モビリティタイヤ(コンセプト)

 CASEやMaaSといった自動車業界を変革させる技術に対応し、次世代モビリティでの装着を想定した次世代モビリティタイヤのコンセプト製品。独自技術のアクティブトレッドとセンシングコアを採用して、「安心・安全で」「ワクワクする」体験価値を提案する。

次世代モビリティタイヤのトレッドパターン。あくまでイメージとのこと
左側に置かれたタイヤ型のディスプレイで、タイヤの特性や形状を事前に最適化させるイメージを表現している

「プレミアムスポーツタイヤ」(コンセプト)

「プレミアムスポーツタイヤ」(コンセプト)

 高性能な車両では高い運動性能と高速走行時の安全・安心な品質が求められる。これを実現するため、「プレミアムスポーツタイヤ」は次世代成形機を使い、高性能なスポーツタイヤを高い精度で生産する。

プレミアムスポーツタイヤの装着イメージ
プレミアムスポーツタイヤのトレッドパターン
プレミアムスポーツタイヤの解説パネル

「大外径オフロードタイヤ」(コンセプト)

「大外径オフロードタイヤ」(コンセプト)

 嗜好性の高いSUVやピックアップ車向けとなる「大外径オフロードタイヤ」では、サイズによるインパクトに加えて優れた真円度と高いデザイン性が求められる。この課題を新製造システム「太陽」を活用することで高次元でクリアしていく。

オフロードでの走破性を高めるため、サイドウォールにもパターンが施されている
大外径オフロードタイヤのトレッドパターン
大外径オフロードタイヤの解説パネル

「サステナブルタイヤ」(コンセプト)

「サステナブルタイヤ」(コンセプト)

「サステナブルタイヤ」は長年にわたって研究を続けている「ロシアンタンポポ」に由来する天然ゴムを使ったタイヤ。赤道付近の限られたエリアで栽培可能な「ゴムノキ」と比較してロシアンタンポポはより幅広い温帯で栽培できるため、原材料の供給リスクを低減させることが可能となる。主に根の部分に天然ゴムのもととなるラテックスが含まれ、収穫後に乾燥させてから抽出する。

サイドウォールでは「ロシアンタンポポ」の収穫からバイオテクノロジーによる原材料抽出、タイヤへの加工、実際の使用といった一連の工程を示している
トレッドパターンにはミニバン/小型SUV用タイヤ「ENASAVE RV505」の金型を利用している
ロシアンタンポポの標本。主に根の部分に天然ゴムのもととなるラテックスが含まれている
サステナブルタイヤの解説パネル

 また、展示エリアでは「資源循環型カーボンブラック採用タイヤ」も展示。8月に開催された「2025 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT SPRINT RACE」でGT300クラスの6チームに供給されたこのレース用タイヤは、チャーリー・ファグ選手がドライブする777号車「D'station Vantage GT3」が2日間に分けて行なわれたレース1/レース2の両方で優勝を果たし、環境負荷の低減を目指したタイヤでも従来型のタイヤに劣らぬ戦闘力を発揮できることを世に示した。

「資源循環型カーボンブラック採用タイヤ」
SUPER GTのGT300クラス向けとなるレース用タイヤ
レース用タイヤなのでサイドウォールにサイズ表記などは施されていない
資源循環型カーボンブラック採用タイヤの解説パネル

「アグレッシブアドベンチャータイヤ」(モーターサイクル用・コンセプト)

「アグレッシブアドベンチャータイヤ」(モーターサイクル用・コンセプト)

「アグレッシブアドベンチャータイヤ」はさまざまなモトクロスシーンで培ってきたオフロード性能をフィードバックして、操作性に優れたパターンデザインを開発して採用している。

アグレッシブアドベンチャータイヤのトレッドパターン
装着車両はBMWの「R 1300 GS Adventure」
佐久間 秀