イベントレポート

豊田合成、ポータブル水素カートリッジ3本を搭載可能なFCV「フレスビーハイコンセプト」世界初公開

2025年10月31日~11月9日 一般公開
入場料:1500円~3500円
豊田合成ブースで世界初公開された「FLESBY HY-CONCEPT(フレスビーハイコンセプト)」

「ジャパンモビリティショー2025」(一般公開日:2025年10月31日~11月9日、会場:東京ビッグサイト)に出展している豊田合成は、プレスデー2日目となる10月30日に西展示棟4階 西4ホール(W4101)にあるブースで製品や技術などについて展示を行なっている。

 豊田合成ブースでは、未来のモビリティと暮らしを支えるため取り組んでいる技術をアピールするため、同社が得意とするゴムやプラスチック分野の最新技術を搭載したコンセプトモデル「FLESBY HY-CONCEPT(フレスビーハイコンセプト)」を世界初公開。さらに自動運転で移動する車内でくつろぎの時間を過ごせるようにする「Welpit(ウェルピット)」も世界初公開し、そのほかにも体験型展示などを用意して紹介している。

西展示棟4階 西4ホール・W4101にある豊田合成ブース

「FLESBY HY-CONCEPT」(世界初公開)

FLESBY HY-CONCEPT

 FLESBY HY-CONCEPTはトヨタ自動車の「MIRAI」などでも採用されている高圧水素タンクを搭載し、多彩な将来技術を盛り込んだFCV(燃料電池車)のコンセプトモデル。

 MIRAIにも搭載する小型側の高圧水素タンク1本を固定装着するほか、車体後方に「ポータブル水素カートリッジ」を3本搭載可能。走行距離を拡大することに加え、カートリッジに対応する小型水素ステーションで充填済みのカートリッジと使い終わって空になったカートリッジを入れ替え、充填の待ち時間をなくすといった運用も可能。さらに移動先にあるカートリッジ対応の調理器具や発電機に水素を供給するなど、水素の利活用を拡大する役割も与えられている。

FLESBY HY-CONCEPTは多彩な将来技術を盛り込んだFCVのコンセプトモデル
脱着可能な「ポータブル水素カートリッジ」を3本搭載可能
ブース内では定期的にポータブル水素カートリッジの脱着デモを実施している
FLESBY HY-CONCEPTと並んでポータブル水素カートリッジを実際に持ち上げて重量を体感できる実物もされており、70MPaの高圧水素を閉じ込めるカートリッジは非常に強固な構造となっており、重量も8.5kgとなかなかに重い
「H2 STATION」は、現状はポータブル水素カートリッジを立てておくスタンドの役目しか持っていないが、将来的にはこのような小型の充填機をコンビニなどの要所に配置して、モバイルバッテリのレンタルサービスのように利用してもらうことをイメージしている
ポータブル水素カートリッジの解説パネル

 ポータブル水素カートリッジはすでに運用がスタートしており、トヨタなどのイベント中に水素でバーベキューを行なったり、コーヒーを焙煎したりというシーンで利用されているとのこと。FCVを走らせる以外にもさまざまなシーンで水素の利用を目指している。

 FLESBY HY-CONCEPTではポータブル水素カートリッジの運用例として「水素スクーター」(コンセプトモデル)を用意。リアタイヤ上の「サイドストレージ」に折りたたんで格納状態にした水素スクーターの本体を収納しておき、出かけた先で必要になったら取り出して組み上げ、FLESBY HY-CONCEPTからポータブル水素カートリッジを1本抜いて取り付けることでちょっとした移動に利用できるようになる。また、本体側面にはコンセントなども設定され、非常用電源としての利用も想定されている。

「水素スクーター」(コンセプトモデル)
ポータブル水素カートリッジを外して折りたたむとコンパクトにまとまる
スマートフォンをメーターとして利用
強固な構造のポータブル水素カートリッジをシートとして利用する
本体側面にコンセントなども設定。非常用電源としての利用も想定する
FLESBY HY-CONCEPTのリアタイヤ上にある「サイドストレージ」に水素スクーターを格納できる設計にもなっている

 また、車外の人を保護する安全装備として「ポップアップフェンダー」を採用。フロントフェンダーとフロントタイヤカバーに可動機構を備え、歩行者や自転車と衝突する危険がある場合は事前にポップアップフェンダーを展開。衝突時にポップアップフェンダーが衝撃を吸収してダメージの軽減を図る。さらにAピラーには「ポリマーショックアブソーバー」を装備して、衝突時のエネルギーを吸収する構造としている。

 バンパーなどボディの一部はゴムやプラスチックのリサイクル材を使った「サステナブル外板ボディ」となっており、ヘッドライト間のグリル部分やドアパネル、フロントウィンドウ後方のダッシュボードには多彩なデジタル表示が可能な「ボディサイネージ機能」を搭載。自車の前方を走る車両や歩行者などに向けたメッセージなどを表示してコミュニケーション可能としている。このほか、ルーフ上には同社が開発を進めている「ペロブスカイト太陽電池」を設置。柔軟性が高いペロブスカイト太陽電池が複雑なルーフ形状に合わせて取り付けられている。

フロントフェンダーとフロントタイヤカバーに可動機構を備える「ポップアップフェンダー」を採用
Aピラーには衝突時のエネルギーを吸収する「ポリマーショックアブソーバー」も備える
ルーフ上に柔軟性が高い「ペロブスカイト太陽電池」を設置
衝突などの危険を検知して、文字やアイコン、警告音などで周囲に通知する「ボディサイネージ機能」
ドアパネルでもアラート表示を実施。合わせてフロント側のポップアップフェンダーも作動している
「電動スケートボード」(コンセプトモデル)

 このほか、同社が展開している技術をアピールするコンセプトモデルとして、ワイヤレス給電機能を活用した「電動スケートボード」もFLESBY HY-CONCEPTと並んで展示。

 この電動スケートボードでは、「おくだけ充電」といった名称で車内装備として普及してきた「qi」などの電磁誘導式のワイヤレス給電機能とは異なる「磁界共振式」を採用。電磁誘導式のワイヤレス給電は送電範囲が限定的だが、磁界共振式では離れた場所にある機器にも給電が可能というメリットを持つ。電動スケートボードはタイヤの分だけ車載する充電器からデッキが離れてしまうが、磁界共振式を採用しているため充電可能となっている。

 また、ブース内では独自に行なっているスタンプラリーのスタンプに、磁界共振式のワイヤレス給電で発光するLEDを内蔵。qiなどの電磁誘導式とは大きく異なる送電範囲などを体感できるようにしていた。

「磁界共振式」を採用するワイヤレス給電機能に対応し、車両に積むだけで自動的に充電できる
テーブルに仕込まれた磁界共振式のワイヤレス給電機能により、スタンプに埋め込まれたLEDが発光。青と赤の2個のスタンプが同時に光っている点も磁界共振式の特徴となっている
電動スケートボード(コンセプトモデル)の解説パネル

「Welpit(ウェルピット)」(世界初公開)

「Welpit(ウェルピット)」(世界初公開)

 自動運転による移動時間を有効活用し、くつろぎや癒やしの時間にするコックピットコンセプトのWelpit。ルーフに設定されたレーダーセンサーを使ってシートに座る人の体調や気分などを検知。状態に合わせた映像や光、音、香りなどを組み合わせて車内演出を行ない、ウェルネス(心身の健康)を向上させる。また、長時間の移動で退屈しないよう、リズムアクションゲームなども用意している。

 疲れを癒やすリフレッシュ演出では、シートヒーターを活用する「温泉モード」を設定。さらにバイブレーター機能を組み合わせた「ジェットバスモード」、映像や香りなどによって「ゆず湯」「バラ湯」を楽しめる「変わり湯モード」などのバリエーションもラインアップしている。

着席後には前方から操作パネルを兼ねたスクリーンが電動スライドして映像の表示スペースを拡大
ルーフに設定されたレーダーセンサーでシートに座る人の体調や気分などを検知
シートヒーターを活用する「温泉モード」では、バイブレーター機能を組み合わせた「ジェットバスモード」や香りによる「変わり湯モード」などもラインアップ
リズムアクションゲームなども用意

「自動二輪車用エアバッグ」(世界初公開)

「自動二輪車用エアバッグ」(世界初公開)

 今年6月に実車を使った衝突試験を行なった「自動二輪車用エアバッグ」の技術についてはミニチュアモデルの展示で紹介。実車での試験では自動2輪が正面衝突した場合にエアバッグがどのように展開するか、乗員の体の受け止め方をどのようにすればよいのかなどを検証。今後は実際の環境下での試験やシミュレーション技術を活用し、4輪車の衝突事故とは異なる状況で乗員する保護する課題解決に向けて継続的に開発を進めていくとしている。

開発を進めている自動二輪車用エアバッグについてミニチュアモデルを使って紹介
自動二輪車用エアバッグの解説パネル
ブース内ではFCV向けの高圧水素タンクもカットモデル展示されていた
佐久間 秀