イベントレポート 東京オートサロン 2022

豊田章男社長、新型Zを堪能したあとパーツメーカーやチューナー、タイヤメーカーを訪問 「文化に発展しつつある世界に期待をしたい」

2022年1月14日 実施

フジツボのブースで佐々木雅弘選手(奥)、井口卓人選手(手前)と一緒にマフラーをのぞき込むモリゾウ選手ことトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏(中央)

 1月14日~16日、「東京オートサロン 2022」が開催された。この東京オートサロンで話題となったのが、14日にトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏がサプライズで会場に登場し、佐々木雅弘選手、森田京之介記者の2人で行なうはずだったトヨタイムズの会場練り歩き企画に参入したことだ。3人はスバルブースにいた井口卓人選手を仲間に加え、豊田社長がオンラインカンファレンスで「Zには負けませんから」と触れた新型Zの日本仕様が初公開されている日産ブースにアポなしで突撃。そのこともさらに話題となった。

 その模様は関連記事でお届けしているとおりだが、記事公開後読者の方からTwitterで「アキオ(豊田章男)がZに乗ってニコニコ~」(えるぬーん@Ernoon_eightさん)というコメントが。記者は写真を撮りながら、豊田社長とZの組み合わせは結構しっくりしているなと思っていたが、その発想(Zとアキオ、楠みちはる著「湾岸MIDNIGHT」参照)まで思い至らなかったので、改めて読者の発想の豊かさに感動したし、感謝したい。

日産ブースで新型Zの説明を受ける御一行

チューナーやパーツメーカー、カスタムカーが東京オートサロンの主役

小倉クラッチが出展するはずだった場所で解説

 日産ブースに立ち寄るのはTOYOTA GAZOO Racingのプレスカンファレンスでバトンを渡したし、新型Zにも触れたので大きな練り歩きの目標に入っていたようだった(でも、アポなし)が、豊田章男社長、佐々木雅弘選手、井口卓人選手、森田京之介記者の練り歩き御一行としては、チューナーやパーツメーカー、カスタムカーの紹介をメインに行なおうという意図が強く感じられた。

 日産の前には、展示がキャンセルとなった小倉クラッチを紹介し、そこに立っていた立て看板に、一行が訪れた証としてモリゾウ選手のモリゾウステッカーを貼っていた。

 日産以降は、なにやら一行で相談し、チューナーやパーツメーカーのブースへ分け入っていた(ただし、アポなし)。

 クスコ、フジツボ、HKS、レイズ、フリヂストン、横浜ゴム、TOYO TIREとどんどんブースを訪れ、担当者をなんとか見つけ説明を受けていく。たとえばフジツボでは、クルマの下をのぞき込みマフラーを確認。藤壺取締役の勧めによって、サイレンサーを持ち上げてその軽さを体感するなど、最新のチューニングパーツを確認していた。

 HKSではエンジンの説明を聞き、ブリヂストンでは佐々木雅弘選手が開発ドライバーを務めるスポーツタイヤ「ポテンザ RE-71RS」に着目。さらに今回の東京オートサロンで新製品「アドバン ネオバ AD09」の説明を横浜ゴムの政友部長から聞く。さらにその横にはTOYO TIREがランクルを展示していたので記念写真を自ら撮りに行くなど、チューナーやパーツメーカーの展示を一人のクルマ好きとして楽しんでいるように見えた。

ブリヂストンブースで石橋秀一CEOと記念写真
ブリヂストンブースにあった佐々木雅弘選手、井口卓人選手のサインにモリゾウステッカーを貼り付ける
クスコブースへ
フジツボブースではサイレンサーを持って軽さを体感
藤壺取締役と記念写真
HKSでエンジンの説明を受ける
横浜ゴムでは政友部長から話題の新製品である新型ネオバについて話を聞く
TOYO TIREではランクルの展示があったので、豊田章男社長自ら記念写真を撮りに行っていた
こちらはホイールメーカーであるレイズのブース。トヨタのル・マン24時間4連覇を支えるメーカーだ
2022年のGT300クラスに参戦する30号車 GR86の説明を受けていた

 豊田章男社長はクルマや運転の好きなモリゾウ選手でもあるものの、日本の自動車業界を引っ張り、東京モーターショーを運営する日本自動車工業会の会長でもある。東京オートサロンの会場を見ながら、考えていたのは日本の自動車業界のことなのか、それとも次回の東京モーターショーのことなのか、それを外からうかがい知ることはできなかった。

 東ホールから始まった一行の練り歩きは、途中の中ホールを通過して西ホールの日産へ。そこでチューナーやパーツメーカーを紹介したあと、中ホールへ向かう前に一休み。およそ2時間近く精力的に各ブースを回っていた。その一休みの最中に豊田章男社長にここまでの東京オートサロンの印象を聞いてみた。

豊田章男社長のコメント

 普段のオートサロンに比べれば、主催者、出展者がコロナ禍のなかで感染防止に気を使ってくれていることを感じたよね。ただ、雰囲気そのものはクルマ好きや運転好きが集まってきて、「どうだ、ボクの作品を見てみろよ」とやっている。(オートサロンは)そういう品評会じゃないですか。それをやっている人たち、同業者、(クルマを)使う人。そのような人たちが見ている雰囲気は、やはりオートサロンはモーターショーとは違ったね。

(東京オートサロンは)ある面モリゾウとしてもより自由になれるというか、より笑顔になれる。スキップをしてとは言いませんが、疲れを知らずに歩き続けることができる。それはやっぱりここの雰囲気があるんじゃないのかな。

 2年ぶりにできたオートサロンだし、毎年ここで新年のごあいさつもしていた。これで新年が始まるというイメージだし、自分自身のスタートもここからできた。

 成瀬さんとボクがやり始めたGAZOOも、最初に受け入れてくれたのはこの場であるし、それから何よりも昔はOEM(自動車メーカー)もチューニング対しては「なんだよ~」という部分もあった。

 昔はお互いにそのような感じだったものが、最近はお互いが役割として一緒にやるともっと楽しいクルマができるねとか、もっとクルマのポテンシャルを出せるんじゃないかなとか、そういう関係になりつつある。

 今後、文化に発展しつつある世界に期待をしたいと思いました。

(会場は)クルマ好きのモリゾウとして回っているけど、ときどきトヨタの社長になったり、ときどき自工会の会長になったりしていた。気持ちはクルマ好きで回らせてもらって、クルマ好きのおじさまでした(笑)。

 ただ、初めてここに出展したときは、ハイエースとノアヴォク(ノア&ヴォクシー)しか素材として使ってくれていなかった。トヨタというのは(オートサロンでは)ワンボックスメーカーだった。それが、ハチロクやGRヤリスが出て多くのところで扱ってくれている。本当に多いじゃないですか。これは正直うれしい。うれしいというか、10年以上前に最初にオートサロンに来たときに比べると全然違いますね。

 オートサロンはもともと、部品系、チューナー系、ユーザー系が「自分のクルマがすごいだろう」と参加する品評会だった。そこにOEMが参加するのはいいのだけれど、軒先を借りているので、OEMが参加したことによって今までずっとこの世界をやってきた人たちと相乗効果が出て、お互いもっといい文化、そういうものになっていくという流れを感じた。それが願いだったし、(そういうのが)いいじゃないですか。今のは自工会会長発言でしたかね(笑)。

東京オートサロンの会期すべてに関わった豊田章男社長

 このコメントをもらったあと、記者は別の取材もあって一行と別れた。その後聞いたところによると、一行はこのあと中ホールや中央エントランスで数々の紹介を行ないつつ旅を続けていたようだ。

オートサロンを佐々木王子と徘徊…と思いきやモリゾウ乱入!【前編】
オートサロンを佐々木王子と徘徊…と思いきやモリゾウ乱入!【後編】

【1月19日追記】
 その後一行は、中ホールでアップガレージを通過中に「JAPAN CAR AWARDS授賞式」に遭遇。トヨタ自動車株式会社さまの声に引かれ、新型BRZとGR86が新車部門を受賞した授賞式に豊田章男氏は飛び入り参加することになった。

 さらに土曜日にはモータースポーツ未来会議に豊田章男社長、佐々木雅弘選手、井口卓人選手は生出演(佐々木選手は練り歩いた金曜日の夜も生出演)。日曜日には豊田章男社長がモリゾウ選手として今シーズンのWRCマシンであるGRヤリス ラリー1のデモランを某所(メガウェブ)で行なうなど、東京オートサロンの会期にすべて関わるなど、精力的な活動を続けていた。

レーシングドライバーによるモータースポーツ未来会議 前夜祭
レーシングドライバーによるモータースポーツ未来会議1
レーシングドライバーによるモータースポーツ未来会議

 3日間フルに活動していた豊田章男社長は、トヨタやレクサス車をカスタムカーのベースにしてくれた人たちに「ありがたい」と語っていたほか、2年ぶりに東京オートサロンを開催してくれた関係者へお礼の言葉を述べていたのが印象的だった。その感謝の気持ちとクルマへの深い愛情が、豊田章男社長の原動力であるかもしれないものの、パワフルな行動力には圧倒されまくりだった。

編集部:谷川 潔