イベントレポート 東京オートサロン 2024

MORIZO Garageでモリゾウ氏とジャーナリストの愛車座談会

「愛車座談会」をテーマとしたセッションに登壇したモリゾウ氏(トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏)

 幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催中の「東京オートサロン2024」。TOYOTA GAZOO Racingブースにおいては会期中に多数のトークセッションが設けられており、初日となる1月12日にはモリゾウ氏(トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏)と弊誌の元編集長でもあるインプレス 執行役員 コンシューマメディア事業部長 谷川潔氏、ベストカー総編集長 本郷仁氏、自動車研究家の山本シンヤ氏の4名で、「愛車座談会」をテーマとしたセッションが開催された。なお今回、同ブースでは「MORIZO Garage」としてステージ上にモリゾウ氏の愛車6台が展示されており、それにまつわるエピソードを披露する場となった。

 冒頭、MCのトヨタ自動車 富川悠太氏とモリゾウ氏の掛け合いでは、オートサロン16年目となる今年は「普通のクルマ好きのおじさん」としての立場で参加したとコメント。会場内を歩いたところ、コロナ禍を経てようやく「本来のオートサロンってこうだったよねっていうような熱が戻ってきた」「やっぱり、改めてここは自分のクルマを自慢する場所だっていう風に感じました」と述べた。

モリゾウ氏とジャーナリストによる愛車座談会が開催された
コロナ禍を経てようやく本来のオートサロンが戻ってきたとモリゾウ氏
インプレス 執行役員 コンシューマメディア事業部長 谷川潔氏
ベストカー総編集長 本郷仁氏。着ているジャケットは当日の格好があまりにもラフだったためモリゾウ氏から借りたというもの
自動車研究家 山本シンヤ氏

 ジャーナリスト3名が登壇したところでトークセッションならぬ公開取材の場に移行。まず出された質問は「愛車って何台持っているんですか」というもの。モリゾウ氏は「数えたことはないけれどGRMNとかの限定車は結構持っている」とのこと。入手経路は普通にディーラーでとのことだったが、抽選となることの多い限定車だけに本来は入手困難。だが、そこは「なんとか1台よろしくお願いできませんでしょうか」と無理やりオーダーを入れてもらっているとか。その点に関しては「そのぐらいの特権を使わせてください」と会場を笑わせた。

 そして、まず最初に焦点があてられたのが、GRカローラ。「RZ(グレード)だけどモリゾウエディションのシートがついてたりとか、特別じゃないですか」と山本シンヤ氏から突っ込みが入ると「うーん」と少し唸った後、「リアル・モリゾウエディション」だと釈明。本来のモリゾウエディションはマットカラーかつリアシートレスとなっているが「リアルに使うためには(シートが)4つ必要なんですよ。それと洗車するには普通のRZの塗装のほうがラクです」と、ある意味、身もフタもない返答。「お金をかけてダウングレードしている」とも。

これはリアルモリゾウエディションだと言い訳するモリゾウ氏
GRカローラ RZ。スタッドレスタイヤが装着されているなど実際によく乗っているようすがうかがえた

 続いては並べられた愛車の中でもひときわ異彩を放っているスズキ「ジムニー」。動くだけの移動手段ではなくてジムニーというブランド価値を持ったクルマであることから興味を持ったものの、納車まで1年待ちとも言われる人気車種となっている。そこでスズキ自動車の鈴木社長に「程度の良い業務用車ってありません? (入れ替える)タイミングが合えばぜひ1台お譲りいただけないでしょうか」と相談したとのこと。その後、少々待ったものの無事、購入できたと顛末を語った。また、同車がAT車であることに対しては「マニュアルもいいんですけど、ちょっと動くにはオートマです」と普段使っているからこその答え。また、MT車を運転できない若い世代の人が増えていることから、ちょっとあれ買ってきてなんて言うときにもAT車なら貸すことができる、と現実的な側面も。また、「日本のね、85%の道ってのは、軽車両じゃないと行き来できない。地方都市に行けば行くほどね、やっぱり軽ってのが日本の国民車だという風に思います」と自動車メーカー代表ならではの意見を述べる場面もあった。

ジムニーは現状ノーマルだが、佐々木雅弘選手がプロデュースする「GR Garage GROW 盛岡」にカスタマイズをオーダーしたとか。オートサロンに持ってきてもいいクルマにすると言いつつも、「車高だけは維持する」と使い勝手にこだわる場面も

 もう1台挙げられたのが、ヤマハのスクーター「ビーノ」。こちらは2輪車で動く必要があったから購入したと言いつつも、「本当はベスパが欲しかった」と本音もチラリ。ただ、高額でありすぐに乗れるような出物に出会うにはタイミングも必要となることから、街にある普通のバイク屋で中古バイクを探して手に入れたとのこと。現車を見た際にはユーズドタイヤにタイヤカバーにもヒビがある状態で、「ちょっと綺麗にしておくから〇〇日後に来てください」と言われたものの、納車時には全部新品になっていたとか。あとからモリゾウ氏だと気づいたであろうバイク屋店主氏には同情の念を禁じ得ない。

ステッカーはモリゾウ氏自身による貼り付けだというビーノ
納車時の顛末を笑顔で語るモリゾウ氏

 そして「iQ “GAZOO Racing tuned by MN”」(公式ではiQ GRMN Superchargerと紹介されているが、デザイン的にこちらが正解のはず)。こちらはGAZOO Racingが立ち上がった初期のカスタマイズモデルで6速MTや専用チューニングサスペンションなどを装備し100台限定で販売されたクルマ。それをベースに当時モリゾウ氏が着用していたヘルメットのカラーであるワインレッドを室内外の随所に配置している。加えてルーフにはカーボン柄のステッカーを貼り付けと、“クルマ好きおじさん”らしいカスタマイズが随所に施されている。

100台限定のカスタマイズモデルを当時のシグネチャーカラーであるワインレッドでさらなるドレスアップ
「インテリアもカスタマイズしているんです」と自慢気なモリゾウ氏

 今回の東京オートサロンで初登場となったのが「LBX MORIZO RR CONCEPT」。こちらは現在のモリゾウ氏がシグネチャーカラーとしているイエローをフィーチャー。シートベルトはもちろんブレーキキャリパーやグリル部にもアクセントとして入れられている。ちなみに「RR」は「ROOKIE Racing」の略。ここで谷川氏から「これは(中身が)普通のLBXじゃないんですよね?」と尋ねられると、「それは時期が来たらきっと。これはまだまだ乗れてませんから、公道は」と口を濁した。

LBX MORIZO RR CONCEPT。見た目だけでなく中身にも秘密がありそうだが、そのあたりの公表は「時期が来たら」と濁した
愛車を語りつつ終始楽しそうなモリゾウ氏。まさにクルマ好きのおじさんといったイメージだった
当初「運動靴にその金額を払う常識はない」と嫌っていたが、ある時、実際に履いてみてから相棒になったというマルジェラのスニーカー。LBXの開発時、このスニーカーのようなクルマにしてくれませんかと要望したという

 続いて本郷氏が「皆さん、見たいですよね」と向かったのが「センチュリー GRMN」。モリゾウ氏が注目すべき場所として紹介したのがリアの電動スライドドア。当初、運転手が回り込んでドアを開けてゲストを招くという設定だったが、アルファードなどがショーファードリブンカーとして利用される機会が多くなってきたことからオプション設定したと説明。シートに関してもほぼフラットになってガラスルーフから空も見えると快適性が高いことを実際に乗り込みつつ紹介した。

センチュリー GRMN
オプション設定される電動スライドドア(写真はワールドプレミア時のもの)

 ひと通りステージ上のクルマに触れたところで、「今回のクルマは全部エンジン車(とハイブリッド車)ですね」と山本氏。モリゾウ氏は「こだわりはないですけど、単にガソリン車は好きですね、私」と答えるとともに、「やっぱりカーボンニュートラルって言ってね。どうしても1つの選択肢にしようという動きが、 確かにこの3年間は強かったと思います。ですけど、そのカーボンニュートラルっていうのは、 それぞれの国のエネルギー事情でも炭素を下げることが目的であるんであれば登り方は違うはずだし、それプラス、日本には550万人の自動車産業に関わってる人がいます。これがひとつの選択肢、仮に電気自動車だけというのを選ばれちゃうと部品点数が3分の1ほど減りますからね。そうすると、エンジンに関わってきてずっと人生そこにこだわってクルマ産業に貢献してきた方々の人生ってなんだったのって。それで、そこに今後エンジンに関わる、エンジンが好きだって言って学校で勉強してきたのにそういうチャンスがないという人の夢をなくすには、ちょっと早いんじゃないのと思う」と短絡的な世論の動向に警鐘を鳴らすコメント。カーボンニュートラルの敵は炭素と見据え、「ひとつの選択肢になることばっかり急ぐんじゃなくて、今できることをやって炭素を減らせる方法があるならそれをまずやろうよ」と呼びかけるとともに、ハイブリッド車などによりCO2を23%も減らしたのは日本だけであることを「もっと誇りに思ってくださいよ」と述べた。

 最後に「今日はほんとに限られた時間でありましたけど、ありがとうございました。数ある工業製品の中で愛がつくものというのはクルマだけであります。それには私自身もモリゾウもこだわっていきたいと思います。工業製品ではあっても愛を付けてくれるエモーショナルな存在、相棒であるような存在、そんなクルマを作り続けたいという風に思っております。ですから、そういう意味で皆さんも愛車にたくさん思い入れがあると思います。どうぞ、ほんとに、どこのメーカーのクルマであれ、タイヤの数は4輪であれ2輪であれ6輪であれ、是非ともエモーショナルな存在としてね、今後もクルマのこと、トラックのこと、バイクのこと、ほんとに愛を持って接していただきたいなと思います。我々はこちらサイドにいて是非とも、もっといいクルマ作りという終わりがない旅ということでやってまいりますので、是非とも一緒にクルマ作りを通じて我々も未来を作っていきたいという風に思いますので、是非とも、クルマ好きのみんなと作る未来作りはこうなるぞ、というのをですね、 一緒に作る旅、ぜひ一緒にご参加いただきたいという風に思います」と締めくくった。

会うたびに色紙を書いてもらっているという本郷氏。名前が本名だったりモリゾウだったりと変化するようだが、実はそこにも意味があるという
安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。