イベントレポート 東京オートサロン 2024

トヨタ豊田章男会長、新たなエンジン開発プロジェクトの発足を報告 「エンジンに携わる技を持った人たちを失ってはいけない」と強烈に呼び掛け

2024年1月12日~14日 開催

東京オートサロン2024において「モリゾウから新年のご挨拶」を実施

 TOYOTA GAZOO Racingとレクサスは1月12日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催中の「東京オートサロン2024」において、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏による「モリゾウから新年のご挨拶」を実施した。

 通常、こうした場で行なわれるプレゼンテーションは、プレスカンファレンスとして企業理念や今後の展望を述べる時間となるが、同氏は2023年にトヨタ自動車代表取締役社長とともに自工会(日本自動車工業会)会長の座を退いたことから、「ようやく私は“普通のクルマ好きのおじさん”に戻ることができた」と述べ、ずっとこうなれる日を夢見ていたと笑顔であいさつした。また、そうしたことからステージ上には6台の愛車も展示された。

「普通のクルマ好きのおじさんに戻ることができた」とコメント

 あいさつの冒頭、「能登半島で発生した大地震ならびに飛行機事故によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます」と、深い悲しみからスタートする2024年になったと前置き。「今の日本には“クルマを動かす550万人”のたくましい現場」があり、「被災された方々が、1日も早く日常と笑顔を取り戻せるよう、550万人の仲間とともにモリゾウ自身も動いてまいります」「今こそ対立や分断、争いや誹謗中傷をやめて、お互いに助け合い、笑顔で『ありがとう』と言い合う。そんな大人の姿を見せる時だと思っている」とコメントした。

 モリゾウ氏としては「クルマ好きの皆さん!一緒に未来を作りましょう!」の言葉をもとに動き続けていると述べ、2023年は1年をかけて3つのことをしてきたという。

 その1つめが「未来の仲間をつくること」。全国のレースやラリーに出場した先で小学校を訪問し、「未来の主役である子どもたちに『クルマって楽しい』を感じてもらいました」と述べ、「グラウンドで感じた音や匂いや土煙が『楽しい』という記憶になっていれば大成功。全国の小学校にグローブは届けられませんが、『楽しいクルマの記憶』を少しでもお届けできれば」と、今年もそうした活動を続けていくことを考えていると述べた。

 2つめは「国を超えた仲間づくり」。台湾、フィリピン、タイといったアジア各国でクルマのお祭りを開催し、フィリピンとタイには自身も参加し「とにかく現地はクルマに対する想いが熱い!」と感激。その一方、日本では期待どころか「この産業を衰退させたいんじゃないか」と思えるようなことばかり言われている気がすると吐露。いま現在、自動車産業をはじめとした社会全体でカーボンニュートラルが叫ばれているものの、「その山の登り方は国や地域によって違います。ただ、共通して必要なのは『クルマへの想い』なんじゃないでしょうか?」と問いかけた。そして「海外には熱い想いを持った仲間たちが沢山いることが分かりました」「今年もモリゾウは、そんな仲間を探したい! そして会いに行きたい。そんな仲間に会えると元気になれるんです!」と話す一方、「今年、モリゾウは日本にどれだけいるのでしょうか……」と、日本のクルマ好きを不安にさせるようなひと言も。

「日本では自動車産業を衰退させたいんじゃないかと思えるようなことばかり言われている気がする」と複雑な胸中を吐露

 そして3つめが「未来のために仲間を守ること」。同社ではカーボンニュートラルの実現に向けバッテリEVだけでなく、水素エンジンにも挑戦。2023年は液体水素を燃料として富士24時間レースを走らせるなど、エンジンの革新にも力を入れてきた。それは仲間と一緒じゃないと未来を作っていけないためであり、「550万人の中にはエンジンの部品を作っている仲間たちもたくさんいます。日本を支え、これからの日本を強くしていく技を持った人たちです。この人たちを失ってはいけません」と力強くコメント。また「エンジンに携わる人たちは、最近、銀行からお金を貸してもらえないこともあるそうです。そんなこと絶対にあってはならない……、なんとかしていきたい」という思いもあると述べた。

敵は炭素
これからの日本を強くしていく技を持った人たちを失ってはいけない

 そこでモリゾウ氏がとった行動が、トヨタでの「カーボンニュートラルに向けた現実的な手段として、エンジンにはまだまだ役割がある! だから、エンジン技術にもっと磨きをかけよう!」というプロジェクトの立ち上げ。この提案に現在の代表取締役社長である佐藤恒治氏はもちろん経営陣も共感、新たにエンジン開発を進めていくプロジェクトが動き出したという。その成果が出るには時間がかかってしまうかもしれないものの、「エンジンを作ってきた皆さん、エンジンを作り続けましょう! これからもみんなの力が必要なんです! 今までやってきたあなたたちの仕事を絶対に無駄にはしない!」との声が届いてほしいと思っていると述べた。

エンジン技術に磨きをかけるプロジェクトを発足。手前には4気筒ターボエンジンらしきハイパフォーマンス系のユニット、後方には少し毛色の異なるユニットが見える

 最後に、クルマの動力はエンジンをはじめバッテリEV、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、水素など幅広い選択肢があるものの、「動力はなんでもいいんです! 真実はいつも1つ。敵は炭素ということだけです!」とカーボンニュートラルにはさまざまな道があることを示唆。そのうえで「未来はみんなで作るもの! 私はクルマ好きの皆さんと一緒に未来を作っていきたい! 皆さん一緒に未来を作っていきましょう!」とあいさつを締めくくった。

フォトセッション
安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。