ダイナミック・パークアンドライドとスマートパーキングを体験 東京都、ITS-Safety2010で公道デモンストレーション |
2月25日より臨海副都心地区で開催されている「ITS-Safety2010」。ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)に関する各種展示や実験車両の公道デモンストレーションなどが行われているが、これに合わせて、東京都が提案する「ダイナミック・パークアンドライド」と「スマートパーキング」の公道デモが開催されている。これは東京都が交通渋滞解消のために取り組んでいる「ハイパースムーズ作戦」の1つとして検討されている技術となるが、他の自動車メーカーの多くの試乗が、基本的には事前申し込みが必要なのに対し、この試乗は当日申し込みが可能。早速試乗してきたので、その模様をお届けする。
東京都がブースを構える「ITS-Safety2010」の屋外展示場。奥には日本科学未来館が見える | 東京都のブースではデモ機の展示や体感試乗の受け付けが行われている |
■東京都が進める渋滞対策「ハイパースムーズ作戦」
都内各所で頻発している渋滞の問題を解消するために、東京都では環状道路の整備などを進めている。しかし、今ある道路のままで渋滞を解消する、より即効性のある対策として取り組んでいるのが「ハイパースムーズ作戦」だ。その作戦の1つとして今回展示されたのが、ダイナミック・パークアンドライドとスマートパーキングと呼ばれる技術。
すでに、都内の駐車場を案内するWebサイトとして、東京都道路整備保全公社が運営している「Sパーク」という情報サイトがある。このサイトでは、駐車場の場所はもちろん、駐車料金や駐車場の規模、大型車の駐車の可否、そしてリアルタイムの満空情報などを提供しているが、ダイナミック・パークアンドライドやスマートパーキングは、この「Sパーク」が持つ駐車場の情報を、カーナビなどのルート案内に利用しようというもの。データ通信を使って、カーナビにリアルタイムの駐車場情報を提供することで、公共交通機関の利用も含めた渋滞考慮リルート探索や、目的地周辺のスムーズな駐車場探索が可能となる。
さらに希望の駐車料金や愛車が駐車可能な駐車形式などを設定しておくことで、自分の希望にあった駐車場が自動で検索される。実際に運用する上では、カーナビやPND(Personal Navigation Device)に新たなプログラムを組み込む必要があるが、ハード的には既存のインフラや技術を使って実現可能なシステムであり、即効性のある渋滞対策として期待される。
Webサイトの「Sパーク」では、都内の駐車場のリアルタイムの満空情報を提供。その駐車場の利用料金や営業時間、3ナンバー車やRV車の駐車可否、詳細な情報が提供されている | ダイナミック・パークアンドライドとスマートパーキングの説明用パネル |
イー・モバイルの「EM・ONE α」に、ゼンリンデータコムのナビゲーションアプリ「いつもナビ」を使ってナビとして利用 |
今回展示されていたシステムは2種類で、ケンウッドのカーナビを使ったシステムと、イー・モバイルの情報通信端末「EM・ONE α」でゼンリンデータコムのナビゲーションアプリ「いつもナビ」を利用したもの。特に「EM・ONE α」を利用したシステムは、通信機能は本体内臓の上、アプリケーションのアップデートも容易なため、ユーザーにとっては少ない初期投資で利用できるメリットがある。ただし、データ容量が小さいため、画像を使った案内という面では、HDDナビに分がある。
■「ダイナミック・パークアンドライド」と「スマートパーキング」とは?
では、具体的にダイナミック・パークアンドライドやスマートパーキングの内容について紹介していこう。まずダイナミック・パークアンドライドは、カーナビを使って目的地に向かっている途中で渋滞が見つかった時、渋滞を回避する移動手段として電車などが利用可能だった場合、最寄りの駅とその周辺の空きのある駐車場を検索し、新しいルートを提案するというもの。従来のカーナビでもVICS情報を使って渋滞考慮リルートを行う機種があるが、この時の選択肢として、電車などの公共交通機関を使ったルートが追加されると思ってもらえばいい。
スマートパーキングは、カーナビで目的地に近付いた際に、目的地周辺の空きのある駐車場を探し、そこを新たな目的地として案内するもの。駐車料金など、希望の駐車場を事前に登録しておくことで、好みの駐車場を選択してくれる。この条件設定は、ダイナミック・パークアンドライドでも有効だ。
試乗したのはケンウッドのカーナビが搭載された日産セレナだ |
今回の試乗では、ケンウッドのカーナビを搭載したスバルの「レガシィ」と日産自動車「セレナ」、イー・モバイルの「EM・ONE α」が搭載されたセレナ2台の計4台が試乗車として用意されていたが、我々は、案内の映像がたくさん表示されるというケンウッドのカーナビを登載したセレナに試乗することにした。
■いよいよ試乗に出発、目的地は幕張メッセだ。
試乗では、東京都のブースが置かれている青海西臨時駐車場から、幕張メッセを目的地に設定して出発。出発時点のルート案内では、国道357号線を使ったルートが案内されている。しばらく走ると、首都高湾岸線辰巳JCT(ジャンクション)新浦安方面の渋滞を知らせるメッセージが表示され、ルート探索が行われる。利用可能な公共交通機関が見つかったことを伝えるメッセージが表示されると、続けて利用可能な駐車場の情報、利用する交通機関の所要時間や料金が表示される。
今回のデモで提案されたのは、葛西臨海公園駅の駅前にある葛西臨海公園駐車場に駐車し、JR京葉線を使って海浜幕張駅まで向かうというもの。実際には複数の駐車場の候補の中から利用者が選択する形になるが、試乗では自動的に駐車場が選択された。駐車場が決まれば自動で目的地が変更され、その駐車場を目的地としたルート案内が開始される。これがダイナミック・パークアンドライドのデモンストレーションだ。
続いての帰路では、スマートパーキングのデモンストレーションが行われた。目的地には「ITS-Safety2010」の屋内展示会場となっている日本科学未来館が設定される。日本科学未来館は最初に出発した青海西臨時駐車場のすぐそばにあるので、ナビが提案するルート案内は来た道を戻っていく形だ。出発してしばらくすると、帰路でも公共交通機関の利用が可能とのメッセージが表示され、新木場駅周辺にある夢の島公園駐車場の情報と、新木場駅から日本科学未来館の最寄駅である東京テレポート駅までのりんかい線を利用したルートが提案された。これは往路と同じくダイナミック・パークアンドライドによるもの。しかし帰路ではこれには応じず、車での目的地到達を目指す。
目的地に近付くと目的地周辺の駐車場検索しているとのメッセージが自動的に表示され、条件にあった最寄りの駐車場として、青海西臨時駐車場が提案される。これも実際の運営では複数の候補から選択される形になるが、今回のデモでは選択肢は1つ。これを選べば目的地が変更され、青海西臨時駐車場までのルート案内が開始される。
■今からでも間に合う東京都の公道デモンストレーション
今回のデモは、あらかじめ想定された状況をシミュレートする形だった。そのため、駐車場の選択などは行えなかったが、最寄りの駐車場の中から、自分の希望にあった駐車場を探してくれるのは、駐車場の数が不足しがちな都内では、強い味方になるだろう。また、公共交通機関の利用に関しても、利用料金や所要時間まで教えてくれるのは、東京に不慣れな人にとっても心強いはずだ。東京都のブースでは、ダイナミック・パークアンドライドやスマートパーキングの実用化に向けて、試乗デモや展示デモを実際に体感してもらってのアンケートを行っている。「ITS-Safety2010」に行ったらぜひ体験してもらいたい。試乗車は4台で、道路状況によるが試乗は40分~1時間程度。受け付けは先着順なので早めの受け付けがお勧めだ。
(編集部:瀬戸 学)
2009年 2月 27日