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TRD、SUPER GTの空力担当チームも開発に参加した新型「C-HR」用カスタマイズパーツ

オンロードイメージの「Aggressive Style」とオフロードイメージの「Extreme Style」

2016年12月14日 発売

2500円(税別)~16万5000円(税別)

C-HR Aggressive Style

 TRD(トヨタテクノクラフト)は12月14日、トヨタ自動車から同日発売された新型コンパクトSUV「C-HR」に対応する各種カスタマイズパーツを発売した。価格は2500円(税別)~16万5000円(税別)。

 C-HRが属するコンパクトSUVというカテゴリーでは、SUVのイメージである力強い走行性能に加え、近年は一般道での優雅な走りも求められる傾向となっている。それらを踏まえたうえでTRDが作るC-HRパーツには「Your Only Fan SUV~あなただけのSUVの楽しさを提案~」というコンセプトが掲げられた。

 エアロパーツの製品展開では、オンロードイメージの「Aggressive Style」と、オフロードイメージの「Extreme Style」という2つのラインアップを設定。これに加えて、新しい発想のスポーツシートカバーと、運動性能を高めるモーションコントロールビーム(MCB)、さらに18インチアルミホイールなども設定している。

 Aggressive Styleの各パーツは、フロントスポイラー(LED付・7万5000円[税別])、サイドスカート(5万7000円[税別])、リアバンパースポイラー(4万3000円[税別])、リアトランクスポイラー(3万2000円[税別])、フロントバンパーガーニッシュ(3万2000円[税別])、18インチアルミホイール&ナットセット1台分(15万6500円[税別])、スポーツシートカバー(9万円[税別])となっている。

C-HR Aggressive Style

 Extreme Styleのアイテムはフロントスポイラー(3万6000円[税別])、オーバーフェンダー(8万円[税別])、マッドフラップ(カラーはレッド、ブラックの2色・3万円[税別])、リアトランクスポイラー(3万2000円[税別])、18インチアルミホイール&ナットセット1台分(15万6500円[税別])だ。

C-HR Extreme Styleの製品イメージ

TRDらしさとTRDらしくないところを真面目に追求

C-HR Aggressive Styleのフロントマスク。複雑な造形に見えるフロントスポイラーだが、実はノーマルバンパー開口部のラインを生かしたものになっている。また、歩行者保護の観点から万が一の衝突時にケガが大きくならないよう配慮されている。このコンセプトはExtreme Styleも同様とのこと

 各アイテムの詳細について、TRDで製品についての解説を聞くことができたのでそのコメントを紹介しよう。デザイン担当者によると「TRDはモータースポーツに直結したイメージが強く、クルマ好きの人に好まれるようなアイテムを作り出してきたところですが、C-HRは広いユーザー層に人気が出るようなクルマです。そこでTRDとしては、いつもどおりのレース直系からくる硬派なもの作りスタイルから、欧州車に見られるようなお洒落なカスタムカーを作ることを意識してみました」と基本コンセプトについて語られた。

 ラインアップするエアロパーツが「Aggressive Style」と「Extreme Style」の2パターンになったことについては「TRDではレースとラリーでの活動を行なっているので、それぞれからフィードバックした技術を入れていくため、オンロードとオフロードの2バージョンで開発しました」という。

 撮影車として用意されていたのはオンロードイメージのAggressive Style。販売予想でもこちらがメインになると想定されている。構成パーツはフロント、サイド、リアのスポイラーとグリルガーニッシュ、それにトランクスポイラーがになるが、前述のとおりC-HRは幅広いユーザーに乗られるというイメージのクルマなので、スポーツ派のユーザーを主に相手にしてきたTRDとしては、やはりデザインに苦労したとのこと。これまで機能や性能を重視してもの作りをしてきた組織内において「仕事の方向性について」は真剣な議論になってしまうためである。

フロントバンパーガーニッシュは写真のブラックのほか、シルバーも用意されている
18インチの「TRD TF6」を採用。Aggressive Style(写真)ではブラックマイカ、Extreme Styleではダイヤモンドカットシルバーを標準設定
「86」でも採用する「ドアハンドルプロテクター(3000円[税別])」もラインアップ

 TRDにはいろいろな部署があるが、今回のC-HR用エアロパーツ開発には商品開発室のほか、SUPER GTの空力について担当するチームと、乗り心地や走行安定性を研究するチームも参加している。ただ、日ごろこれらのチームは仕事で関わり合うことがなく、同じ会社内でも接点がない。そこで今回は、C-HR用アイテム開発の担当部署である商品開発室がまとめていったという。

 まとめ作業のなかで一番時間を掛けたのが、商品コンセプトの「お洒落に見える」というこれまでのTRD製品としては軟派な部分。ここについて真意をしっかりと話し合って納得してもらい、そのうえで各部署の譲れない部分を聞いて落としどころを探った。その結果、それぞれの部署で「空力性能」をキーとしてプランを出すことでまとまった。

 ちなみにTRDの分析によると、ノーマル状態のC-HRの空力特性は街乗りでキビキビ動くことを狙っているようで、フロントリフト気味の方向で設計されているとのこと。それに対してTRDパーツを装着するユーザーは高速道路などでもドライブを好む人が多いので、高速域で安定するエアロパーツを求める声があるという。そこで全体的にバランスを取り直して、どの速度域でも安定感を出すことを狙ったということだ。

 その特性を作るための部位としては、まずフロントスポイラーのカナード部が挙げられる。大きさ、場所とも最適の位置に設けていて、ここで整流した風はクルマのサイドにきれいに流れていく。

 また、フロントスポイラーのセンターは、前面からの風をクルマの下面に送り込む形状。C-HRをはじめ、最近のクルマはフロア下の形状を整えることで下面の空気を効率よく流す作りになっているので、前からの風を下面に送り込むのは正解だが、TRDのエアロパーツではそれに加えてサイドスカート内側をフロアに対して垂直な壁になるような形状にすることで、フロア下に空気のトンネルを作っている。すると前から入った空気がより整った形で流れ、さしずめ空気のレールの上を走る感じようなイメージで走行安定性が向上するという。

フロントスポイラー側面にあるカナードは、横に逃げる風を整流してフロントリフト傾向を軽減。さらにボディサイド面にきれいに流すことで走行安定性の向上も図っている。両サイドにLEDのデイライトが埋め込まれており、LEDなしも4万円(税別)でラインアップする
表面からは見えないが、裏側はフロアに対して垂直の壁になるような形状を採用。フロアと合わせて空気の通るトンネルを作っている

 ただ、風の量は車両の速度が高まるにつれて増え、エンジンルーム内を抜けてきた風、タイヤハウスから流れてくる風などいろいろなところから下面に風が入ってくる。一定の速度を超えるとその風がホイールベースの中心あたりで混じり合って爆発的に膨れるため、下面の風がサイドスカートを超えて横から漏れてしまう。

 そこでサイドスカート後端を飛行機の垂直尾翼のような形状にすることで、横漏れした風を整流してリア側に効果的に跳ね上げる工夫も盛り込まれている。これはレクサスの最新モデルでも採用されている技術とのことだ。そしてリアバンパースポイラーで下面を抜けた風をきれいに後方に抜いている。

サイドスカート後端の翼形状は、横漏れした風を整流し直して後方に流す役割を持つ
リアバンパースポイラーからフロア下の風を後方に抜いている

 では、サイドスカートとリアバンパースポイラーの設定がないExtreme Styleではエアロパーツに効果がないかといえばそうではない。フロントスポイラーにはオフロード車的なイメージを持たせつつ、Aggressive Styleとは異なる方法でカナード形状を作り、フロア下に空気を取り入れるスタイルにしている。

 ボディ側面の風の流れは、Extreme Styleの特徴であるオーバーフェンダーがサイドの風の流れを整流するという。これはTRDがSUPER GT参戦で得た「オーバーフェンダーは空力の特性作りに効く」というノウハウを元に、空力チームが最適な形状を提案。デザイナーが実際のカタチに落とし込んでいるというもの。こういった発想と形状はほかでは見たことがない。お洒落だがきちんと効果があるというコンセプトを代表するようなアイテムと言えるだろう。

Extreme Styleの空力イメージ

 外観の最後はリアスポイラー。C-HRは純正状態でルーフ後端に大きめのリアスポイラーが付いているが、これはデザイン性が強いものとなっており、前述したようにフロントリフト傾向のクルマにあまり効果的なリアスポイラーを用意すると、高速走行時にフロントリフトが強くなる恐れもある。

 しかし、そこはトヨタも当然把握していて、実は長く見えるスポイラーも途中に大きなスリットを設け、効きすぎないように効果を抑えている。ところが、このスリットを通過した風は乱流となってしまうため、ある条件下での高速走行時にリアシートあたりに僅かな振動を感じることが、走行安定性を研究するチームから改善すべき点として挙げられていた。

 そこで製作したのがリアのトランクスポイラー。角度が大きいダックテール形状とすることで流れてくる空気を跳ね上げ、リアを押しつけることでルーフスポイラーからの乱流が関わる振動発生を抑えている。それに加えてトランクスポイラーで跳ね上げた風は、リアバンパースポイラーから上がってくる風を引っ張る効果もあるので、まさに一石二鳥なアイテムなのだ。

ダックテール形状のスポイラー。ノーマル状態がフロントリフト気味なので、リアスポイラーだけを追加するとよりフロントリフトが強くなるように思うところだが、実験した結果、リア後端で空気を整流するとルーフと下面の空気の流れが改善するようで、フロントリフトが収まる傾向になったという

 インテリアではドライビングポジションの適正化と座り心地の向上を目的とした「スポーツシートカバー」についてまず解説された。構造面では腰の部分のホールド性を高めるため大型のサポートパッドを装備。さらに背面と腰の部分のサポートパッドには身体のズレに追従するクッション材として「エクスジェル」を使用。そして座面には低反発ウレタンを使って構成しているのだが、これに加えてとくに面白い部分として取り上げたいのが座面のリブ(横向きの縫い目)について。

 クルマのシート座面においてのリブはデザインや製法的なものという認識が一般的だと思うが、TRDはリブを入れることでできる凹部に尾骨部分が引っかかることを利用し、加減速の前後Gで身体が揺さぶられてもおしりが前にずれるのを防いでいる。

赤いパイピングやステッチなども特徴的なスポーツシートカバー。フロントシートには腰まわりを支えるエクスジェル入りのパッドを備えているほか、ステッチの位置を工夫して前後Gに対して下半身を支える力を高めている

 従来のシートカバーはファッション性の向上を狙ったり、汚れても洗えたり交換できるといった実用的な道具というイメージが強かったが、このスポーツシートカバーでは新素材や新形状を採用することで、シートを交換することなくホールド性を高めることに成功している。

 最後に紹介するのがシャシーの補強パーツであるMCB(モーションコントロールビーム)だ。装着場所はフロントバンパー内のレインホース前部、リアバンパー内のレインホース後端の2カ所に、左右を繋ぐ形で取り付けている。このMCBを装着することで剛性の適正化とシャシーに伝わる振動を減衰させることができるので、スタビリティと快適性がアップするのだ。C-HRはすでに誌面掲載されているプロトタイプのインプレッション内でも動きのいいクルマと評価されているが、MCBを付けることでさらにシャープな挙動を手に入れられるだろう。

走行中の微振動やボディの変形を吸収・減衰して乗り心地を改善し、コーナーでのロール速度を抑制して4輪の接地性を高めるMCB(8万円[税別])

 C-HRはすでに数多くの先行受注が入っていると言われているだけに、そのぶん街中で同し車種に出会う機会も増えていくことだろう。そうなると「人とは違うクルマ」を求めるオーナーにとってカスタマイズは必然とも言える選択になるだろう。せっかく最新モデルのC-HRを手に入れるのだから、ただほかと違うというだけではなく、こだわりをもって開発されたTRD製品のようにこだわって選んでいただきたい。