ニュース

24年ぶりにフルモデルチェンジした新型「コースター」は「86」と異なる方法でアルミテープ装着

アルミテープで車内の空気を整え、操縦安定性をアップ

2016年12月22日 開催

新型「コースター」

 トヨタ自動車は12月22日、マイクロバス「コースター」をフルモデルチェンジ。2017年1月23日に発売すると発表し、同日に東京 お台場のメガウェブで記者発表会を実施した。

 24年ぶりのフルモデルチェンジで4代目となるコースターの価格は、バスが594万~887万2200円、ビッグバンが619万3800円~677万1600円。このほか、新型コースターのバリエーションなどについては関連記事「トヨタ、24年ぶりに『コースター』をフルモデルチェンジ。2017年1月23日発売」を参照していただきたい。

 発表会の詳細については追って記事掲載する予定だが、本稿では発表会終了後に行なわれたコースター開発陣と取材陣による合同懇談会で明らかにされた情報をご紹介する。

4枚のアルミテープで車内の空気を一体化

合同懇談会に参加したコースター開発陣の3人。左からZU 主任 梁井康平氏、CVZ-ZU 主査 山川雅弘氏、ZU 主幹 服部達哉氏

 懇談会は取材陣からの質問に開発陣が応える質疑応答形式で行なわれ、このなかで乗り心地や走行性能が向上した要因について質問。開発陣の服部氏からルーフ、側面、フロアの骨格を一体化して環状構造を採用したことによるボディ剛性の強化、従来はリア側のみに装備していたスタビライザーをフロント側にも装着して前後のロール剛性の配分を最適化したこと、フロント側面のサイドマーカーランプやフロア下のエンジンアンダーカバーに「エアロスタビライジングフィン」を追加したことなどによる空力特性の改善、先代モデルのランニングチェンジとして2014年にショックアブソーバーの構造を刷新したことなどが挙げられた。

新型コースターでは、フロント側面のサイドマーカーランプなどに「エアロスタビライジングフィン」を追加

 この解説がひと段落したところで、山川氏から服部氏に「アルミのところは」と水が向けられ、服部氏が少し逡巡しながら「あれ、いいんですか」と確認したあと、服部氏から「最近、トヨタ車で話題になっている、アルミのテープ。実はコースターにも貼っています」と明かされた。

 アルミテープ装着による運動性能の変化は、弊誌でも橋本洋平氏による「86」試乗インプレッションで紹介し、ツイッターのコメントなどで大きな反響となった。

 スポーツクーペの86ではドアウィンドウとステアリングコラムカバーにアルミテープを装着し、車外の空気の流れを整えて直進性やハンドリング性能を高めているが、コースターでは車内のルーフトリム上部(車体側)に4枚のアルミテープを設置しているという。このアルミテープについて、トヨタではしっかりと特許も申請して取り組んでるものの、「効果は本当に、ウソみたいに体感できるんですが、まだ理屈については解析し切れていません」(山川氏)とのこと。

 効果としては、コーナーなどでステアリング操作をしたときに、帯電している車内の空気はクルマの動きと必ずしも同期して動くとは限らない。これを山川氏は「水を入れた容器を動かしたときに、水が遅れて動くような現象が空気でも起きているのではないか。と、言われています」と表現。ここにアルミテープを貼ることで、車体と空気が一体で動くイメージになると説明された。これにより、車両の挙動がすっきりとスムーズに変化し、操縦安定性が向上。また、走行中に耳に届くこもり音も減少して居住性も高まるとアピールされた。

 山川氏は「あれだけ大きなクルマですから、内部の空気もそれなりの質量があって、そのようになるのではないか、という仮説です」と解説。しかし、走行している車内の空気は物理的な観測が難しいので、物理現象としてとらえにくいと明かした。

 実際に車両実験部の担当者からアルミテープ装着について提案されたとき、服部氏も半信半疑のままテストを行なったが、装着、非装着で乗り比べると、驚くほどの変化を体感することになったことから正式に採用されることになったという。

新型コースターのルーフトリム上部には、乗員から見えない内側に50×50mmサイズのアルミテープ4枚を設置。帯電した空気の電圧を下げて走行性能と居住性の向上を図っている