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ボッシュ、日本市場に新導入する電動アシスト自転車用「eBike」システム発表会&試乗会
トレック、ビアンキなど4社のクロスバイクなどに搭載して2018年から順次発売
2017年11月3日 06:51
- 2017年11月2日 開催
ボッシュは11月2日、モータードライブユニットを含む電動アシスト自転車用システム「eBike」を発表。このシステムを採用した自転車メーカー4社の製品を披露した。「eBike」は欧州などで展開している製品を日本向けに最適化したもので、採用自転車製品は2018年初旬から順次デリバリーが開始される。現在のところ4社から6モデルが登場予定で、価格帯は23万円~40万円前後。
メーカー | モデル名 | 価格 | 発売予定時期 |
---|---|---|---|
Trek | VERVE+ | 23万40円 | 2018年1月 |
corratec | E-POWER X VERT 650B | 40万円前後(予価) | 2018年2月以降 |
E-POWER SHAPE | 30万円前後(予価) | ||
LifeS | |||
tern | Vektron S10 | 29万8000円(税別) | 2018年3月 |
Bianchi | Lucca-E | 27万8000円(税別) | 2018年5月以降 |
スペックからは見えない「乗れば分かる」日本専用チューニング
オートモーティブ関連製品などで知られるボッシュが日本の電動アシスト自転車市場に参入するのは今回が初めての試み。発表したのは、モータードライブユニット、走行モード切り替えスイッチを兼ねるメーターディスプレイ、リチウムイオンバッテリー、充電器の4コンポーネントで、一般消費者向けに販売するものではなく、自転車メーカーに供給するものとなる。
ボッシュが開発したこれらのコンポーネント一式はeBikeシステムという名称で、すでに2010年から欧州市場に投入している。他地域の市場動向や自社の開発リソースなどを見極めながら徐々に事業拡大を進め、このたび日本市場に参入することとなった。
日本市場には7年遅れの参入と言えるが、導入する製品はボッシュのラインアップのなかでも世代的に最も新しいもの。現在欧州などで供給しているドライブユニットは、市街地走行からスポーツ向けまで5種類をラインアップしており、日本向けにはこのうち街や郊外での利用に適した比較的適用範囲が広い「Active Line Plus」1種類が導入される。ドライブユニットの連続定格出力は250W、最大トルクは50Nm。
また、メーターディスプレイは3種類あるうち「Intuvia」1種類を導入する。スピードメーターやオド・トリップメーター、バッテリー残量の表示に加え、「OFF」「ECO」「TOUR」「SPORT」「TURBO」という5種類の走行モードを選択できる機能を持つ。通常はハンドル中央に設置されるが、ハンドルグリップ付近に設置可能なリモコンも標準装備し、走行モードや表示する情報を手元で切り替えられる。
バッテリーについても4種類あるうちの「PowerPack 300」1種類を導入する。電力量は300Wh、容量は8.2Ahで、専用充電器「Charger」を使って約2.5時間で満充電できる。バッテリーは自転車装着状態でも、取り外して屋内でも充電が可能。
導入製品を絞っている理由は、主に電動アシスト自転車に関わる日本国内のアシスト率の上限規制や認証取得の有無によるもの。ただし、ドライブユニットのActive Line Plusについては開発当初から日本市場を見据えた設計やチューニングを施していることを特徴としている。
ボッシュ オートモーティブエレクトロニクス事業部の高橋大輔氏や、eBikeシステムの開発に携わるフアド・ベニーニ氏らは「乗れば(他社モーターとの違いが)分かる」とひと言。数値化されたスペックではなく、実際に日本の道路環境でライディングしたときの“エクスペリエンス”を重視したチューニングを施していることを強調した。
eBikeシステム搭載自転車は、4社6モデルが2018年初旬から登場予定
eBikeシステムを搭載した自転車製品としては、現在のところ4社の6モデルが予定されている。米自転車メーカーの「Trek(トレック)」は油圧ディスクブレーキ、埋め込み型前後ライトなどを採用したクロスバイクタイプの「VERVE+」1モデルを、23万40円という比較的リーズナブルな価格で販売予定。販売目標台数を1500台/年とする強気の設定で、2018年1月からデリバリーを開始する。
イタリア老舗ブランドの「Bianchi(ビアンキ)」からは、日本で人気の高い20インチ小径車のMINIVELOシリーズをベースにした「Lucca-E」1モデル2カラーが登場予定。もちろん、BianchiならではのCelesteカラーが採用され、27万8000円(税別)で2018年5月以降に発売する。
ドイツの自転車メーカーである「corratec(コラテック)」からは、ディスクブレーキの「E-POWER X 650B」とリムブレーキの「E-POWER SHAPE」というタイプの異なるクロスバイク2モデルに加え、ゆったりしたライディングポジションの「LifeS」の計3モデルが登場する。いずれも2018年初旬からの発売を予定。価格は未確定としつつも、E-POWER X 650Bが40万円前後、他2モデルは30万円前後を想定している。
折りたたみ式自転車を中心に手がける台湾発祥のメーカー「tern(ターン)」は、N字に折りたたむことのできる「Vektron S10」を2018年3月にリリース予定。小径ながらも太めのタイヤを装着して走行安定性を高めているほか、折りたたんだ状態でもタイヤを転がして楽に運べることも特徴としている。2018年3月に29万8000円(税別)で発売する。
違和感のない走り出しとレスポンスのいいスポーティな乗り味
発表会当日は公園内での試乗会も実施され、Trek VERVE+とtern Vektron S10の2モデルに試乗することができた。搭載されるeBikeシステムは自転車のモデルに関わらず共通の仕様。ギヤの段数の違いなどによって基本的なセッティングパラメーターが異なる場合もあるとしているが、パワーの出方や細部の挙動に変わるところはないと考えていい。
走り出して最初に気付くのが、停車状態からスタートするときの踏み込みのスムーズさと違和感のなさ。国内メーカーの電動アシスト自転車では、停車時にペダルに乗せた足をわずかに踏むと、アシストモーターが“迷う”かのように小刻みに動くことがあるが、ボッシュのeBikeではそういった挙動は一切なく、走り出した瞬間に初めてアシストがスムーズに加わるようになっている。
OFFを含めて5種類ある走行モードは、それぞれはっきり区別がつくほど違いを感じられ、最もアシスト力の強いSPORTやTURBOのモードでは、ギヤを最大限に高くしていても、発進からアシスト上限となる24km/hまで軽々と加速する。
そんないいところもあれば、気になったところもある。SPORT/TURBOモード時、3速や4速などの低めのギヤを使って12~13km/hくらいで流していると、唐突にアシストが加わったり加わらなかったりを繰り返すシーンがあった。これについて高橋氏によれば「最も議論したところで、意図的にそうしている」とのこと。
eBikeシステムの自転車に乗り慣れていくと、多くのユーザーがレスポンスのよさを求めることになるため、SPORT/TURBOモード時はあえて瞬時にアシスト力を高め、スポーティな乗り味になるようチューニングしているという。反対に、TOUR/ECOモードではそうしたアシストの境目をなくすチューニングにしているようだ。
アシストのない従来型の自転車では、取り回しや走行時の軽快さを考慮して可能な限り軽量化できるようキャリパーブレーキや細いタイヤが選ばれる傾向にあった。しかし、今回発表されたモデルのほとんどは、重量や走行時の抵抗といった面でデメリットになりがちなディスクブレーキと太めのタイヤを装着している。
これは、電動アシストがあるからこその選択と言えるだろう。基本性能が十分に向上した電動アシスト自転車では、軽さよりもどれだけ安全に、安定して走ることができるか。さらにその自転車で思い描く乗り味を実現できるかという点にフォーカスできることがメリットになると考えられる。
日本の法規制もあって、ドライブユニットやバッテリー容量の選択肢が少ないのは残念なところだが、eBikeシステムによって電動アシスト自転車を設計する自由度が高まることは間違いなく、今後はほかの自転車メーカーからも、全く新しいコンセプトの電動アシスト自転車の登場が期待される。