東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】ボッシュ、インクリメントPとの協業について「自動運転による交通事故をなくすには高精度マップが必要」
モーター、パワーエレクトロニクス、トランスミッションを統合した「イーアクスル」を2019年ごろ量産
2017年10月27日 16:07
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
10月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第45回東京モーターショー2017」が開幕した。27日はプレビューデー、28日~11月5日は一般公開日となる。
世界最大級の自動車部品サプライヤーであるボッシュ(ロバート・ボッシュ)はプレスデー2日目の26日、東展示棟にある同社ブースにおいてプレスカンファレンスを開いた。
ボッシュ モビリティソリューションズ統括部門長のロルフ・ブーランダー氏は、「現在、自動車産業は大きな変革期を迎えています。テクノロジーの進化が、私たちの想像以上に速く進み、自動車を含むモビリティのあり方に革新をもたらそうとしています。2015年のモーターショーでモビリティの未来は、自動化、ネットワーク化、電動化と申し上げましたが、この2年間で3つのトレンドは大きく前進しました。しかし変革はまだ始まったばかりです。ボッシュはこれらの3つのアプローチにより交通事故のない、ストレスのない、排出ガスのないモビリティを将来は実現させるつもりです」。
「現在考えられているモビリティの概念を根底から変えてしまうことは簡単なことではありませんが、未来のモビリティは現在のモビリティが抱える問題を解決する具体的なアクションによって実現することと理解しています。ボッシュは、未来のモビリティへ続く道を切り開くソリューションを有しています。この戦略は前回のモーターショーから変わっておらず、前回皆さまにお約束したことをどのように実現しているか、あらためて紹介します」と挨拶した。
インクリメントPとの協業について「自動運転による交通事故のないモビリティの実現には高精度マップが必要」
自動運転による交通事故のないモビリティの実現について、ブーランダー氏は「ボッシュの目標は交通事故を最小限に抑えること。東京では10万人の道路利用者のうち3~5人が事故で命を落としています。この数字を減少させなくてはいけません。システムによって自動制御される自動運転は人間より素早く反応できるだけでなく、人間よりも用心深いのです。自動運転の実現で、より多くの命を守ることができますが、実現するためにはクリアにしなければいけない重要なステップがいくつかあります」と述べ、いくつかのハードルについて説明。
「1つは高精度マップ。自動走行するクルマは自社の正確な位置情報を常に把握している必要があり、ボッシュはヨーロッパと中国で主要な地図情報プロバイダと高精度マップの開発に取り組んでいます。さらにボッシュは、車両のレーダーから取得したデータをボッシュのクラウド上で加工し、マップを作成するパートナー企業のクラウドと連携して自動運転用の非常に高精度なマップを作成することで、車線内の自車位置を数cm単位の精度で把握できるようになる『ボッシュ・レーダーロードシグネチャー』の開発に取り組んでいます」と紹介するとともに、「日本でも高精度マップ開発のためのマッププロバイダとして、インクリメントPとの協力を本日発表しました。これによりヨーロッパ、中国に加え、日本でも高精度マップ開発を進められ、さらにグローバル展開を拡大させることになります」と、同日発表したインクリメントPとの協力についても語った。
ネットワーク化でストレスフリーなモビリティを実現
続けてブーランダー氏は、「モビリティのネットワーク化は現代の人々が抱える問題や道路交通におけるストレスを改善します。しかし、実現のためには何百万にもおよぶデバイスをネットワークに接続し、新しいサービスを構築しなくてはいけません。最近ボッシュは『Bosch IoT Cloud』という自社クラウドと、『Bosch Automotive Cloud Suite』と呼ばれるコネクテッドサービスを開発するためのソフトウェアプラットフォームを立ち上げました。これらによりボッシュはコネクテッドサービスをワンストップで提供できるようになり、2018年から外部向けに提供を開始します。すでにボッシュではコネクテッドサービスの開発に取り組んでいます。ここにあるジャガー初のSUVである『F-PACE』は、ボッシュのさまざまなコネクテッドサービスを見ていただくデモ車両です」と話し、車載ソフトウェアのOTA(無線通信)アップデートや、日本国内でも提供が開始されているeCall(自動緊急通報)などのサービスを紹介した。
エミッションフリーへのアプローチ
続けてエミッションフリーについては、「私たちの命の源であるきれいな空気がなければ、自動化もネットワーク化も意味がありません。これがボッシュがエミッションフリーなモビリティを目指す理由です」と目的を示した。
そして、「都市部のモビリティが急速に電動化していくと考えられますが、今後も長期にわたり内燃機関とモーターが共存し続けると推測されます。ボッシュでは、2025年には約2000万台のハイブリッド車とEVが生産されると予測しますが、同じく2025年でも、およそ8500万台のガソリン、またはディーゼルの新車が登録される見通しなので、EVだけで非常に野心的なCO2削減目標を達成することはできません」。
「ボッシュはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、eモビリティのすべてにおいてパワートレインのリーディングカンパニーであり、かつカーメーカーのトップパートナーであり続けるために、eモビリティの製品ポートフォリオにおいて今後重要な役割を果たすイーアクスル(eAxle)を紹介します。イーアクスルは既存のカーメーカーでも新規参入企業でも、eモビリティの開発期間を削減することができるスタートアップのようなパワートレーンで、モーター、パワーエレクトロニクス、トランスミッションを1つのユニットに統合し、コンパクトなパワートレーンを実現しました。小型電動車両からハイブリッドのSUVまで、幅広い車種に利用可能です。コンポーネント自体の複雑さが減少するだけでなく、ボッシュからカーメーカーの生産ラインに直接送ることが可能なので開発期間も削減でき、試作品は複数のお客さまに評価いただいており、2019年ごろの量産を予定しています」と、イーアクスルによる開発工数の削減や、低コスト化が進むであろうことを語った。
また、ボッシュのプレミアム電動アシスト自転車用ユニット「Active Line Plus」を搭載した、ビアンキ(Bianchi)、コラテック(Corratec)、ターン(Tern Bicycles)、トレック(Trek Bikes)といった有名ブランドの電動アシスト自転車が、2018年より日本でも販売されると紹介していた。
日本での売上高は日本国内の自動車生産台数を上まわる成長率
また、ブーランダー氏は「今までの実績や未来への戦略的な投資により、ボッシュのモビリティソリューション部門の売り上げは成長軌道にあり、2016年の部門売上は全世界で約439億ユーロ。2017年の成長率は前年比7%増で、世界自動車生産の3倍となる見とおしです。日本での売上高も2017年の日本国内の自動車生産台数を上まわる高い成長率が予測されています」と、成長過程にあることをアピール。
加えて「安全で快適、環境に優しいモビリティの実現に取り組む私たちのモチベーションは、コーポレートスローガンである『Invented for life』にあります。技術によって人々の生活の質、Quality of lifeを向上させることがボッシュの企業活動の最大の目標であり、創業者ロバート・ボッシュのDNAとして受け継がれています。技術の劇的な進化を社会に役立てるために必要とされる専門知識、長年の経験、強い意志がボッシュにはあるのです。自動車業界のリーディングカンパニーであり続けるためには、既存のビジネスモデルの固執せず、常にボッシュの企業としてあるべき姿を変化させていきます」とプレゼンテーションをまとめた。