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【ボッシュ モビリティ エクスペリエンス 2017】レベル3自動運転システムを搭載したテスラ「モデルS」改造車に乗ってみた

レーザースキャナーとステレオカメラ、NVIDIA GPUで実現

2017年7月6日(現地時間) 実施

ボッシュのレベル3自動運転システムを搭載したテスラ「モデルS」改造車

 世界最大級の自動車部品サプライヤーであるボッシュ(ロバート・ボッシュ)は7月6日(現地時間)、ドイツ ボックスベルクにある同社最大のテストコース「ボックスベルク プルービンググランド」において「ボッシュ モビリティエクスペリエンス 2017」(Bosch Mobility Experience 2017、以下BoschME 2017)を開催した。このBoschME 2017では、自動運転や電動化などボッシュの持つさまざまな最新技術を展示。部品展示だけでなく、実際の自動車に組み込まれた状態での試乗会も実施している。

 本記事では自動運転コーナーで同乗試乗を実施していた、レベル3自動運転システムを搭載したテスラ「モデルS」改造車を紹介する。

通常のモデルSと異なるものが、ホイールハウス直後に装着されている
レーザースキャナー
ステレオカメラ。ボッシュはステレオカメラでの認識を推し進めている

 このレベルx自動運転にはさまざま定義があるが、世界共通の認識としてレベル2までは安全運転に係わる監視、対応主体がドライバーであり、レベル3以上がシステムになる。

日本における自動運転レベル定義の改定

 日本は2017年5月30日に政府が発表した「官民ITS構想・ロードマップ 2017」において、自動運転レベル規定を改定。基本的には官民ITS構想・ロードマップ 2017で示された自動運転レベルで記事を記載していく。この簡易版が国土交通省から発表されており、掲載しておくので目を通しておいてほしい。

国交省が示した「官民ITS構想・ロードマップ 2017」の簡易版
自動運転レベル定義の改定
実現時期予測

 まず、現在実用化され街中を走っている自動運転車というのは最高でもレベル2の自動運転車になる。代表的なものは日産自動車の「プロパイロット」で、8月に発売になるスバル「レヴォーグ」に搭載された「アイサイト・ツーリングアシスト」もレベル2の自動運転システムになる。このレベル2までは、運転責任はドライバーにあり、そのため“安全運転支援システム”と表現されることが多い。

 レベル3以上は、システム責任の概念が入ってくるため法改正が必要とされており、官民ITS構想・ロードマップ 2017においても「関係省庁の密接な協力のもと、IT 総合戦略本部を中心に、2017年度中を目途に、高度自動運転実現に向けた政府全体の制度整備に係る方針(大綱)をまとめるものとする」としている。つまり、レベル2とレベル3の自動運転車では、そこに大きな違いが存在しており、超えるべき課題も山積している。ちなみに、完全マニュアル運転はレベル0自動運転、自動ブレーキ(減速)やACC(Adaptive Cruise Control、加減速)などはレベル1自動運転と定義されており、多くの人はレベル0自動運転車もしくはレベル1自動運転車に乗っていることになる。

ボッシュのレベル3自動運転車

ドライバーの顔認識を行ない、パーソナライズを実施

 ボッシュがBoschME 2017で同乗試乗を実施したモデルS改造車は、次世代の自動運転レベルであるレベル3を実現する(提案する)もので、車体周囲に6つのレーザースキャナー(LiDAR)を搭載、フロントウィンドウ内側にはステレオカメラを搭載していた。最新の量産版モデルSでは、近距離用、中距離用、遠距離用の単眼カメラが搭載(ただし、現時点で動作しているのは1つ。将来的なソフトウェアアップデートでアクティブになるとしている)されており、まったく異なったシステムで動いているのが分かる。そのためテスラエンブレムは黒くシールが貼られており、あくまでボッシュの実験車との位置づけになる。

 そしてカメラやレーザースキャナーを統合して環境認識を行なうのはNVIDIAのGPUになるという。「DRIVE PX 2を搭載しているのか?」との質問には、「NVIDIA GPUだ」と答えてくれており、実験車のためデスクトップPCでNVIDIA GPUを利用しているものになるのだろう。

 このモデルS改造車には、ドライバーモニタリングカメラが搭載されており、乗車時にドライバーを認識。ドライバーの好みに応じたポジション、音楽の選曲などが可能になるという。このドライバーモニタリングはレベル3自動運転において必須ともいえるもので、自動運転中にドライバーの異変を察知したら路肩に寄せるなどのコントロールを行なうためにも使われる。

ドライバーを認識

 同乗走行デモでは、V2Xによる車車間通信によってバイクの接近を知るところから始まり、レーザースキャナーによる環境認識の見える化(テスラ モデルSの17インチディスプレイが便利)などを提示。自動運転可能なルートになるとステアリングホイールのスポーク部が青く発光し自動運転に移行する様子や、自動運転不可能なエリアになると赤く発光してドライバー運転モードに移行する様子、そして自動的に路肩に止まるなどの同乗走行デモを行なってくれた。

レベル3自動運転走行
レーザースキャナーの認識画面。上の映像のほうが分かりやすい

 レベル3自動運転では、一部区間はシステムでの運転で、必要なときには運転者へ戻すとなっているので、それをステアリングインフォメーションで示した形だ。自動運転可能な区間は、地図がしっかり整備された高速道路とイメージすればよいだろう。渋滞などの街中は高度なレベル2自動運転で、高速道路は楽々のレベル3自動運転でという生活を模したものになる。

 記者は2015年1月に開催された「CES 2015」において、ボッシュの自動運転車に同乗したことがあるが、僅か2年で自動運転の質が格段に向上していた。2015年のボッシュ自動運転車(CESは1月開催なので、実質的には2014年車)は白線があると認識した段階でステアリング操作が入るもので、極端な場合蛇行運転気味の操作になっていた。近くしか見られない、もしくは演算遅れによるものかと思われるが、それと比べるとしっかり遠くまで認識し、走るコースを完全に理解してるモデルS改造車の運転は別物といってよく、ベテランドライバーの域に達していた。もちろん、2015年車はガソリンエンジンかつ大渋滞のラスベガスという実環境、今回のモデルS改造車はコントロールの容易なEVかつホームタウンである自社のテストコースという条件の差はあるものの、僅か数年でこれほど進歩するのかという驚きがあった。

自動運転走行中

 発着地点戻る直前では、ドライバーモニタリングシステムがどのようにドライバーを認識しているかが示され、そこでは目の位置や視線、視距離などがビジュアライズされていた。

最後のデモはドライバーモニタリングシステムをビジュアライズ。視線や視距離が示されている

 ボッシュはレベル3自動運転が実現可能な未来であることをこのモデルS改造車で示し、このシステムをベースにした自動運転車が市販車として登場してくる時期もそう遠くはないだろう。